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第三章 多極化と対米バランス - 日本国際問題研究所

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第三章  多極化と対米バランス 

 

中国とロシアは冷戦後、国境確定を進めながら信頼醸成に努めてきた。ロシ アは中国にとって最新鋭兵器、エネルギーの供給源であり、中国にとってます ます重要な存在になっている。また、イスラム過激派対策などから中国は中央 アジアとの関係強化もはかっており、ここでもロシアの理解が必要だ。もとも と、米国の一極支配を嫌う両国が多極化を進めるために中ロ関係を深めるとい う構図があるが、米国からの「敵視」は恐れている。中国は「富国強兵」を進 めるなかで、ロシアをいかに活用しようとしているのだろうか。 

 

中ロ関係 

  中ロは 2001 年、永久的な友好関係を誓う善隣友好条約を締結した。2004 年  10 月には、訪中したプーチン大統領と胡錦涛主席が「中ロ行動計画」に調印。

また、未確定だった東部国境の紛争地について、確定に同意する協定書に調印 した。確定したのはアムール川とアルグン川の二つの島で、両国が共同管理す るとともに、水域も共同使用する。これによって、両国間の国境、領土問題は すべて解決した。 

 

《中ロ善隣友好条約》(骨子) 

両国間の問題は平和的に解決する/互いに核の先制攻撃をせず、戦略核の標的 にしない/ロシアは台湾が中国と不可分であると認め、台湾独立に反対する/

国境地域の軍備削減を強める/経済、軍事技術などで協力を進める/この条約 はいかなる第三国に対抗するものでない。    (朝日新聞、2001 年7月 17 日) 

 

条約や協定を積み上げる一方で、両国の指導者が毎年、相互訪問も続け、信 頼関係の強化をはかってきた。両国には、国際政治での多極化をめざすという 思惑の一致もある。また、ともに国内に独立活動を抱える。ロシアにはチェチ ェン、中国には台湾問題があり、両国は互いの立場に理解を示している。 

また、中国はロシアの最大の兵器輸入国で、軍の交流も進んでいる。2005 年 には初めての合同軍事演習を計画している。 

  経済関係はあまり伸びていない。2004 年の総貿易額は 200 億ドルにとどま った。ロシア市場の投資環境が整っておらず、中国の大型企業がロシア進出を

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ためらっているのも大きな要因の一つ。両国は 2010 年には 600 億から 800 億 ドルに増加させることで合意している。中国はロシアからのエネルギー輸入に 期待をかけており、原油・天然ガスの輸出入は急速に拡大していきそうだ。 

  中ロ両国は協力面の成果が目立つが、問題も少なくない。ロシアにおいても 中国脅威論が持ち上がっており、ロシア側が領土問題や移民問題で懸念を示し ている。 

 

中ロのエネルギー協力および両国間の問題について、ロシア専門家でもある 中国国際問題研究所の夏義善氏に聞いた。 

 

【エネルギー協力】 

「以前はロシアが石油、天然ガスの売り込みに積極的だったが、中国は必要 ではなかった。2000 年9月に朱鎔基首相がモスクワを訪れてから、ロシアがエ ネルギー源となった。原油価格の上昇、中国の発展に伴って、ロシアのエネル ギーは中国において地位が上がってきた」 

「パイプラインのルートは、2000 年当初はアンガルスク―大慶だったが、ア ンガルスク―ナホトカが浮上した。日本も加わってきて、ナホトカを主張した ためだ。さらにタイシェト―ナホトカとなった。中国の中には『ロシアの背信 行為』と受け止める人たちもいる。プーチン大統領が訪中した際、主に環境問 題のため、タイシェト―ナホトカを選ぶと中国に通告があった。このパイプラ インは中国国境から 70 キロの地点を通り、中国まで引けると話した。また、

ロシアは中国に対し、鉄道輸送の方法で 2005 年に 1000 万トン、2006 年に 1500  万トンを供給する協定を結んだ。 3000 万トンに増加することもロシア側で検 討している模様で、これが実現すれば、当初のアンガルスク―大慶計画に相当 する量の石油が送り込まれることになる。年内にカザフと中国の間のパイプラ インが完成するため、タイシェト―大慶のパイプラインができるまで、これを 利用して石油を運ぶことも検討されているようだ」 

 

【問題点】 

「ロシアでも中国脅威論が広がっている。帝政時代にロシアが獲得した広域 な領土を返還してほしいと、中国からいずれ要求があるのではないかと懸念し ている。このため、ロシアの要求に応じて、『双方は互いに領土の要求を持ち

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出さない』との一項目を中ロ善隣友好条約に加えた」 

「もう一つは移民問題だ。不法移民について、ロシアは5万人とか、100 万人 とかいう。私の計算では、結婚した人も含め、4万人を超えない」「過去に特 殊な状況があった。ロシア側は無政府状態だったし、中国側もコントロールが 難しかった」「プーチン大統領の昨年の訪中時に不法移民問題に関する作業グ ループを置く協定にサインした。グループは極東地域、東シベリア地域の移民 数、不法移民者数の正確な数字を数える。また、その経緯を調べる。そして、

この問題の解決方法を探り、健康的な交流に導く方針だ」 

「中国脅威論は今後も存在し続けるだろう。中国が発展を続けるからだ。ロ シアは比較的弱い中国を見慣れてきたので、適応しにくい。思想的な準備がで きていないのではないか。中国脅威論が完全に消えるのは不可能だと思う。た だ、こうした見方はロシア社会の主流ではない」 

 

中央アジアと中ロ 

中ロ両国は上海協力機構のメンバーとしても協力を続けている。反テロの合 同軍事演習を実施するなど、着実に機能強化をはかっている。 

1996 年4月、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの5カ 国首脳が上海で、「国境地域の軍事分野での信頼強化協定」に調印したのがス タート。「上海ファイブ」と呼ばれたが、2001 年6月にウズベキスタンも交え て「上海協力機構」を創設した。また、加盟国が抱えるイスラム教徒の分離独 立運動と対決するため、反テロ、反分離主義、反過激主義をうたう上海協定に も調印した。中国には新疆ウイグル自治区の「東トルキスタン」独立運動、ロ シアはチェチェン武装勢力が存在する。2002 年には反テロセンターの設置を 決定した。 

そして、2004 年6月、ウズベキスタンの首都、タシケントで開いた第4回首 脳会議では、非加盟国アフガニスタンのカルザイ大統領をオブザーバーとして 招き、アフガンの正常化に協力していくことを決めた。 

ソ連崩壊後の信頼醸成から始まった機構だが、関心はしだいにイスラム過激 派対策に移り、さらに、米国抜きで中央アジアの地域安全保障を話し合う場と しての性格も見せ始めた。 

一方、2003 年8月、カザフスタン東部の中国国境地域でテロ対策の合同軍事 演習を行い、中ロ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの5カ国が計 1000 

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人以上となる兵を派遣した。多国間の軍事演習に中国が参加するのは初めて。

この後、中国新疆ウイグル自治区のイリ地区でも2日間の合同軍事演習を実施 した。中国国内で外国の軍隊と演習を行うのも初めてという。 

 

米国と中ロ 

  中ロ間が密接になれば、米国の警戒は高まる。そこで、両国は米国などから 警戒されないよう、「同盟せず、対抗せず、第三国に向けない」の方針をアピー ルしている。米国に警戒されれば、中国のマイナスは大きい。対ロ外交と対米 外交をいかに調和させていこうとしているのか。 

対米外交に詳しい傳夢孜氏と、対ロ外交に詳しい夏義善氏は以下のように語 る。 

 

傳夢孜氏 

「大国間で真の信頼関係を築くことは容易でない。大国と小国の間では可能 で、たいへん深い相互信頼に達することが可能だ。とはいえ、大国間でも協力 はできる。米国にとって中国との関係は有利なのだ。貿易や具体的な問題の解 決、中国の民主化の促進などがある。ロシアとの関係では、冷戦の遺産である 核兵器の削減や、ロシアを民主的な国家にするのに有益だ。国家間で徹底的な 信頼関係は得られないが、ある部分では互いに必要だ」 

「中国もロシアも完全な民主国家ではない。2004 年の初めから米国はロシア の政治に批判的態度を見せている。中央集権が復活し、プーチン大統領が独裁 を進め、メディアの自由を制限したからだ。また、グルジア、ウクライナ問題 が起きた。冷戦後、米国は中東欧に重点を置いていたが、それが終わり、中東 から中央アジアへ移ってきている。中央アジアは米国にとってブラックホール だ。非民主的で、遅れており、これらを変えないとテロリストを生みやすく、

反米の社会風潮ができ、独裁が出現する。米国の重点は中央アジアにあり、ロ シアの警戒を引き起こしている」 

「戦略上で言えば、米国が展開している多くのことは、ロシアに向けられて いる。真正の戦略的競争は米ロ間で行われており、両者間には核兵器や戦略兵 器がある。中国は米国と戦略的な競争をやろうとは思っていないが、ロシアは その気がある。ロシアは大国の地位を維持し、戦略兵器に頼っている。米中間 にも矛盾があり、相互に不信感があるが、全体的に言えば、米中関係は米ロ関

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係より良いだろう」 

 

夏義善氏 

「ロシアとの関係を発展させることで米国との関係を損じることは絶対にで きない。これは大前提だ。米中関係は重要な中でも重要な関係だ。我々国家の 経済利益、政治的利益、安全保障の利益、外交的利益のいずれにおいても、米 国と良い関係を持つことは相当に重要だ」 

「軍事演習はこれまで多くの国とやっている。しかし、ロシアとは一度もや ったことがない。米国が心配するのは、ロシアに安心していないし、中国にも 完全には安心していないからだ。ロシアは米国を破壊できるミサイルを持って いる。ロシアは超大国ではないが、軍事においては米国の脅威となる国だ。重 要なのは、中国がロシアとの関係を発展させる過程で、米国の誤解を招かない ことだ。米国には冷戦思考をもつ伝統的勢力がいるし、ロシアにもいる」 

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