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細胞概日時計の人為的制御 - J-Stage

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382 化学と生物 Vol. 54, No. 6, 2016

細胞概日時計の人為的制御

体内時計を人工タンパク質で操作する

体内時計は24時間周期で振動する「発振系」を中心 として,外部環境の変化に応答して時刻を調節する「入 力系」と,時刻情報をさまざまな生理現象として表現す る「出力系」から構成されている.そして,この約24 時間周期の概日時計は,中枢のみならず,末梢細胞や培 養細胞においても存在する.哺乳動物細胞において,体 内時計の発振に必要な時計遺伝子が同定されてから20 年近くが経過し,発振メカニズムの詳細は次々と明らか になってきた.一方,24時間型の現代社会において,

体内時計の乱れと生活習慣病との関連が指摘されるな か,これからは,体内時計を人為的にコントロールする ことが必要とされている.個体レベルでは,強制的に強 い光を浴びることによって体内時計を調節する光療法が 実際に医療の現場で進められつつある.しかし,細胞レ ベルでは,概日時計を直接かつ選択的に操作する試みは まだ萌芽期にある.

図1に示すように,哺乳動物細胞の概日時計の発振系 を司るコアクロックでは,ポジティブ因子(BMAL1, 

CLOCK)とネガティブ因子(PER, CRY)による転写 翻訳フィードバック制御を介して,時計遺伝子自身の発 現が24時間周期で変動すると考えられている(1)(図 1B).さらに,これらの因子はさまざまな遺伝子プロ モーターに作用し,下流の遺伝子の発現を24時間周期 で変動させる.その結果,発振系で刻まれる時刻情報が さまざまな生体機能に反映される(出力系)(図1C). また,体内時計は外部刺激に応答して位相をシフトさせ る「入力系」を有している(図1A).光刺激は中枢時計 の代表的な同調刺激であるが,培養細胞においては,血 清やデキサメタゾン,フォルスコリンの刺激によって,

リズム位相が前後にシフトすることが知られている.

しかしながら,これらの同調刺激は細胞内のさまざま な遺伝子発現を変動させてしまう.そのため,体内時計 の同調にとって,どの遺伝子,どのエレメントが重要で あるのかが明らかではなかった.また,同調刺激に伴っ て意図しない副反応が生じてしまうという問題がある.

概日時計研究や時間治療にとって,時計遺伝子が構成す

図1哺乳動物細胞の概日時計システムの 概略と人為的な概日時計制御の試み

(A)入力系;外部環境の変化に応答して時 刻を調節する.同調刺激の一つであるグルコ コルチコイドは,時計遺伝子 プロ モーター中のGREに作用するほか,さまざ まな遺伝子プロモーターのGREにも作用す る.(B)発振系;コアクロックでは,BMAL1,  CLOCKによって などの時計遺伝 子の発現が誘導される.翻訳されたPERと CRYタンパク質は複合体を形成して核内に 移行し,BMAL1, CLOCKに対して抑制的に 働き,その結果,自身の発現を抑制する.こ のようなフィードバック制御を介して,時計 遺伝子自身の発現が概日周期で変動する.

(C) 出 力 系;時 計 制 御 遺 伝 子 はBMAL1,  CLOCKによる正の制御とによる概 日周期的な抑制を受け,概日振動発現する.

(D)  プロモーター中のGREに選択的 に作用する人工転写因子による人工入力系構 築の試み.(E)人工タンパク質を用いた概 日振動発現の誘起.

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る分子時計機構を直接かつ選択的に制御することが望ま れる.末梢細胞ではグルココルチコイドの刺激によって 概日リズムの位相がシフトすること,また,時計遺伝子 プロモーター上にグルココルチコイド応答配列 が存在することが知られている.そこで筆者らは,

のグルココルチコイド応答配列を標的とする人 工転写因子によって体内時計の同調を人為的に誘起でき ないかと考えた(図1D).近年のゲノム編集技術にも利 用されるジンクフィンガーを鋳型とする人工転写因子を 設計したところ,この人工転写因子は標的DNAに特異 的に結合し,概日リズムの位相シフト,すなわち同調を 誘起した(2).この結果は,入力系における の重 要性を示すのみならず,副反応を抑えた時間治療の新し い概念へ,大きな前進をもたらすことが期待される.

また,出力系に着目すると,哺乳細胞内には何百とい う遺伝子が24時間周期の発現パターンを示す.その多 くは,時計タンパク質BMAL1/CLOCKによる正の制御 と,PER/CRYによる負の制御を受ける時計制御配列を プロモーター中に有しており,時計制御遺伝子と呼ばれ ている(図1C).一方,時計制御配列をもたず,本来は 発現振動しない遺伝子の発現を,人工的に約24時間周 期で変動させることができれば,遺伝子発現リズム異常 や生体リズム研究のための新しい方法論になることが期 待される.そこで,BMAL1/CLOCKヘテロダイマーを 標的プロモーター近傍で人為的に形成させれば,PER やCRYによる抑制を24時間周期で受けるのではない か? またその結果として,標的遺伝子の発現を24時 間周期で振動させることができるのではないか? と考 えた.ジンクフィンガーが任意のDNA配列に対してデ ザ イ ン で き る こ と を 利 用 し,ジ ン ク フ ィ ン ガ ー と BMAL1,もしくはCLOCKとの融合体を細胞内で発現 させた.その結果,ジンクフィンガーの結合配列をプロ モーター中に有する場合に,24時間周期の発現振動を 誘起させることができた(3)(図1E).遺伝子発現の日内 変動はさまざまな生理現象や疾病に反映される.これま での遺伝子発現制御においては,対象遺伝子の「発現量 の増減」のコントロールに主眼がおかれていた.それに

対し,本人工時計出力システムを利用して,時間ととも に変化する個々の遺伝子の「発現リズム」を自在に操る ことが可能になれば,新しいリズム研究,リズム治療の 展開が期待される.

さらに,リズム発振系に摂動を与える小分子化合物の スクリーニングも近年進展している(4, 5).時計遺伝子プ ロモーター駆動性のルシフェラーゼ遺伝子の発現パター ンを指標として,数々のタンパク質リン酸化酵素の阻害 剤がスクリーニングされている.これに加え,特記すべ きことに,コアクロックに含まれるCRYに直接かつ選択 的に作用してその安定性に影響を与える小分子が,概日 リズムの周期を変動させることが明らかにされている(6)

以上のように,人工タンパク質や化合物を用いて高い 標的選択性をもって体内時計を人工的に制御すること は,そのメカニズムの解明はもちろん,リズム治療の実 現に向けた新しい方法になると考えられる.

  1)  S. M. Reppert & D. R. Weaver:  , 418, 935 (2002).

  2)  M. Imanishi, A. Nakamura, M. Doi, S. Futaki & H. Oka-

mura:  , 50, 9396 (2011).

  3)  M.  Imanishi,  K.  Yamamoto,  H.  Yamada,  Y.  Hirose,  H. 

Okamura & S. Futaki:  , 7, 1817 (2012).

  4)  T. Wallach & A. Kramer:  , 589, 1530 (2015).

  5)  T. Hirota & S. A. Kay:  , 551, 267 (2015).

  6)  T. Hirota, J. W. Lee, P. C. St. John, M. Sawa, K. Iwaisako,  T. Noguchi, P. Y. Pongsawakul, T. Sonntag, D. K. Welsh,  D. A. Brenner  :  , 337, 1094 (2012).

(今西未来,京都大学化学研究所)

プロフィール

今西 未来(Miki IMANISHI)

<略 歴>1997年 京 都 大 学 薬 学 部 卒 業/

2002年同大学大学院薬学研究科博士課程 修了,博士(薬学)/同年カリフォルニア大 学サンフランシスコ校博士研究員/2003 年京都大学化学研究所助手/2007年同助 教/2015年 同 講 師,現 在 に 至 る<研 究 テーマと抱負>核酸を標的とする人工タン パク質の開発と生命現象解明への応用,特 に現在は生物リズムに興味をもっています

<趣味>ピアノ

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.382

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◆本人支援 支援者と1対1の関係を築き、そこから、少しずつ安心できると思える人間関係を広げてい きます。ひきこもりからの回復した方で「ひきこもっているときは、24時間自分を責め続けて いて苦しかった」と、ご自身の体験を語ってくれた方がいました。そのような生活で支援者と 出会っても、すぐには、人をなかなか信用できないという難しさはあります。