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続・金谷健一のここが変だよ日本人の英語 第2回 金谷健一 岡山大学

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【講座】 情報・システムソサイエティ誌 第8巻第4号(通算33号)

続・金谷健一のここが変だよ日本人の英語 第2回

金谷健一 岡山大学

今回は英語の発音を取り上げる.国際会議では 発音が変でも意味が通じればよいし,英語国(英,

米,加,豪)生まれ以外は皆なまりがあるから気 にする必要はないという考えもある.それでもよ い発音のほうが研究の評価や説得力にプラスにな ることは間違いない.

ただ,英語国に10年以上暮らしている人でも 誤った発音やアクセントがなかなか直らないこと を見ると,これは自覚しなければ決して進歩しな いようである.前回取り上げた挨拶と同様に,「正 しくなくても困らない」ことが進歩を妨げている.

ここではそれを克服するための知識をまとめる.

1. 日本語のアクセント

外国人がなまりがあるのは,ネイティブが最初 から正しい音を覚えるのに対して(地方や階級に

よっては“正しい”か疑問の場合もあるが),外国

人は無意識にまず母国語の音律を用いるためであ る.そこで日本人はまず日本語の音律を知ること から始めなければならない.

日本語の音律は多くの日本人は知らないが(学 校で教えないから),外国人向け日本語教本や放 送アナウンサーの訓練マニュアルなどに書いてあ る.日本語アクセント辞典も市販されている.

日本語(標準語)は2段階の高低アクセントか らなり,各単語は次の3パタンのいずれかである.

I. 高|· · ·低 II. 低|· · ·

III 低|· · ·|· · ·

上下の線は高低を表す.· · ·はその間一定の高さ が保持される.このパタンは「第1音節と第2

音節で高さが変化する」という特徴がある.だ から単語と単語の間で音程変化が生じ,耳で聞 いて単語と単語の区切りが識別できる.つまり,

平坦にタンゴトタンゴノクギリガシキベツデキ ルというと単語と単語の区切りが識別できないが,

|ンゴト||ンゴノ||ギリ|ガシ|キベツ|||ル というから単語と単語の区切りが識別できる.

2. 英語の発声パタン

英語は文の冒頭は必ず高く始まり,ある音節で 急速に降下し,直後に反発して次の単語の始まり の高音とつながる.辞書ではその急速に降下する 母音の上に´が付けられ,「アクセントの音節」と も呼ばれる.だから音程変化は単語の途中で起こ り,単語と単語の間が連続的に発声される.

しかし日本人は高い音から勢いよく話し出すの が苦手で,どうしても遠慮がちに低い音から始め るから,その時点でもう自然な英語にならない.

低い音から始めると必然的に高い音に上げなけれ ばならないが,英語にはこのような上昇パタンは 存在しない.その上,単語と単語の間で音程を変 化させるので,音声が不連続になり,英語として 非常に不自然である.

日本人は英語にあり得ない音声パタンで話しな がら,自分は流暢に話していると思い込んでいる.

それを聞く日本人も,「あの人は英語がすらすら喋 れる」と感心する.これが不自然に聞こえたらヒ アリングは既に日本人の域を越えている.

3. 日本語のアクセント移動

日本語の音律にはもう一つ著しい特徴がある.

例えば「ビデオ」は ビ|デオ だが,その後に「画

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これは日本語に美しい響きを与える機能であり,

外国人の日本語が不自然なのはこの習得が難しい からである.しかし,これを英語に適用すると極 めて不自然な響きになる.にもかかわらず日本人 は無意識にこれを適用し,video image, computer vision, image processingのような2 単語からな る名詞は必ず前の単語を上昇パタンで発音する.

この癖は前置詞(句)でも生じる.例えば日本人 はbyを単独の語としては全員正しく発音できる が,by と何かが来ると,一音節のbyを無理 に2音節化して バ|イ と上昇パタンで発音する.

through, during, usingなどすべて上昇パ タンになる.

これを日本人の注意すると,多くの人は意外な 顔をして,「そのほうが“自然” ではないですか」

と反論する.音声は先入観があると自分が信じて いるように聞こえるので,これを自力で発見する ことは相当困難である.

4. 外来語のアクセント移動

私には理由がわからないが,英語をカタカナ読 みにするときに,日本人はアクセントのパタンを 変えることが多い.

まず,第1音節にアクセントがある英単語を,

日本語としては後方にアクセントを移動させる ことが多い.例:´alphabet |ルファベッ|ト,

´asterisk |ステリ|スク,h´ıstogram |ストグ|ラム.

これは「日本人にとって冒頭アクセントは発 音 し に く い か ら 」と は 解 釈 で き な い .な ぜ な ら,逆に後にアクセントのある英単語を日本語 としては冒頭アクセントにすることがあるから である.例:adr´ess |ドレス,facs´ımile

ファ|クシミリ,End´eavor|ンデバー(スペー

スシャトルの名前) ,cons´ent |ンセント,

ev´ent|ベント,id´ea|イディア.

なぜ原音に逆らったパタンに反転するのか.私 の想像では外来語だということを強調するために

(そのほうが外国語らしく聞こえると思い)原語 にない冒頭アクセントにするのではなかろうか.

逆に,明らかに外来語のものは,それが外来語で あることを目立たせないように(生意気に聞こえ ないように)原語からアクセントの位置をずらす のではないだろうか.

しかしその結果,英語で話すときも日本式アク セントが当てはまると勘違いして誤った発音にな りがちである.注意が必要である1)

5. 国際会議発表で間違えやすいアクセント 日本人が国際会議でアクセントを間違える筆頭 は´ıntegrateであろう.私の経験では99.99%の日

本人がintegr´ateと発音している.これは「積分

する」という意味で理論研究によく現れるが(積 分記号R

は´ıntegral),異分野の知識や複数の手法 を「統合する」という意味で応用研究でも盛んに 用いられている.

先入観は恐ろしいもので,発表後の質疑でネイ ティブが“How do you ´ıntegrate them?”と聞い ているのに“We integr´ate them by ...”などと答 えている.英語が“音”として聞こえないので,永 久に気がつかないであろう.

冒頭アクセントの動詞は,日本人にとってア クセントが後ろにあるほうが“英語らしい” と 感 じ る よ う で あ る .同 様 の こ と が´estimate, c´alculate, f´ormulate, s´ımulate, ´oscillate, f´ascinate, s´ubstitute, c´onstitute, ´organize, s´ummarize, f´ormalize な ど で も 起 き て い る .

ate, ute, izeの形の動詞に間違いが起きや

すいようだ.

6. 日本人が間違えやすいwaの音

日本人が間違えやすい筆頭はwa, warの音であ

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る.これらはウォーと発音され,ワーではない.例 えばwar(戦争)はウォー(×ワー),warm(暖 かい)はウォーム(×ワーム),wall(壁)はウォ ール(×ワール),walk(歩く)はウォーク(×

ワーク)である.このように古くから日本語とし て定着した外来語は正しい音を保存している.明 治の先人はするどい耳を持っていたのであろう.

しかし最近はローマ字に引きずられたwar = ワーの表記が氾濫するので,日本人のほとんど が正しく発音できなくなっている.例:Warner brothers(ウォーナーブラザーズ,×ワーナーブ ラザーズ),warp(ウォープ,×ワープ),award

(アウォード,×アワード),warning(ウォーニ ング,×ワーニング).ゲームや漫画にも「時空 のワープ」などが出てくる.このためネイティブ が正しい音で問いかけても,先入観のために気づ くことはない.

同様にwaも古いものは正しくウォと表記され ていたが,最近ではwa =ワと誤って表記される ことが多い.人名のWalterはウォルター(×ワ ルター),Walt Disneyはウォルト・ディズニー

(×ワルト・ディズニー)である.wantのウォン ト(×ワント),watchのウォッチ(×ワッチ),

washのウォシュ(×ワッシュ)も正しい.

しかし人名のWashington(ウォシントン,×

ワシントン),Watson(ウォトソン,×ワトソ ン),Watt(ウォット,×ワット)は誤った表記が 流布している.だから「入れ換える」のswap(ス ウォップ,×スワップ),「保証」のwarrant(ウォ ラント,×ワラント),「白鳥」のswan(スウォ ン,×スワン),「ワルツ」のwaltz(ウォルツ,×

ワルツ)もほぼ100%の日本人が誤る2). 誰がスワップなどと言い出したのだろう.部活 にワンダーフォーゲル部というのがあるが(語源は ドイツ語),「さまよう」はwander(ウォンダー)で あり,ワンダーというと不思議に思う(wonder).

最も基礎的なbe動詞の過去形wasすら,ウォズ なのに,ほとんどの人はワズと発音している.

7. その他のポイント

それ以外で気になるのは,日本人のc´onsequence

( 結 果 ) ,c´onsequently( ゆ え に )を そ れ ぞ れ コン|シー|クエンス,コン|シー|クエントリー と 発 音 す る 癖 で あ る .s´equence( 列 )の 発 音 に 引 き ず ら れ た の で あ ろ う が ,ア ク セ ン ト は 冒 頭 に あ る .ま た sequ の 部 分 は 軽 く シ ク ま た は セ ク と 発 音 す る .同 様 に s´ubsequence

( 続 き ) ,s´ubsequently( 続 い て )も 日 本 人 は サブ|シー|クエンス,サブ|シー|クエントリー と 発音する癖がある.

どうも日本人は´ıntegrateと同様に,冒頭アクセ ントが苦手のようだ.また冒頭アクセントではな いが,repres´ent(表す)の出だしのreははっき りとレと発音しなけらばならなにのに,ほとんど の日本人は リプリ||ント と言っている.

またateで終わる語は動詞なら[eit]と発音さ れるが,名詞や形容詞なら[@t]となる.軽くイッ トといえばよい.しかし多くの日本人がエイトと発 音している.例:「正確な」accurate [ ´ækjur@t](ア キュリット,×アキュレイト),「推定値」estimate [´est@m@t](エスティミット,×エスティメイト),

「親密な」intimate [´int@m@t](インティミット,×

インティメイト),「情熱的な」passionate [p ´æS@n@t]

(パッショニット,×パッショネイト),「微妙な」

delicate [d´elik@t](デリキット,×デリケイト).

母音のeはアクセントがあればエと発音される が,それ以外は軽いアとなる.例えば´ıtemはア イタムでありアイテムではない.その他´excellent

(エクサラント,×エクセレント),pr´esident(プ レジダント,×プレジデント)など切りがない.こ れらはエを軽く発音すれば問題はない.アクセン トのないエを常に弱く発音するように心がけよう.

一方,単独のaはアクセントがあれば[æ]また

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は[ei]のどちらかであり,アと発音されることは ない.例えばradius(レイディアス,×ラディウ ス),radiation(レイディエイション,×ラディ エーション),radiator (レイディエイタ,×ラ ディエータ),radiance(レイディアンス,×ラ ディアンス)などのraで始まる単語が誤りやすい.

その他,det´ermine(ディターミン,×デター マイン),polyh´edron(ポリヒードラン,×ポリ へドロン),pr´edator(プレダター,×プリデイ ター)などの誤りにも気がつく.またsomeは単 語によって読み方が違うことに注意.例:t´ıresome

(タイアサム),chr`omosome(クロウマソウム).

これまで述べた日本人の誤りはすべて思い違い から生じているので,論文を読んでいて知らない 単語が出くるたびに辞書の発音記号3)で確か めるのがよい.

8. 原稿を読むと通じない

国際学会で最も重要なことは,決して原稿を読 まないことである.これは昔から言われているこ とであるが,それでも原稿を読む人が絶えないの は,読まなければ言うことに詰まってしまうとい う恐怖心からであろう.それは理解できる.しか し,原稿を読んで何の解決にもならないどころか,

かえってマイナスである.

原稿が文章として正しく書いてあるなら,それ を配布して聴衆に読ませれば問題ないが,本人が 読むと,まず人が聞いて理解できない.私も原稿 を読んでいる発表を聞いて理解できないことを何 度も経験した.正しい英語ならどんなに速く話さ れても理解できるが,発音の誤りや日本式の不自 然な抑揚があれば,速く読まれると理解できない.

理解できる限界速度はその発音のよさで決まる.

原稿を読む人は他人(ネイティブも)の英語能 力を過信している.英語を読んでいるのだから,

英語がわかる人はわかるはずだと思い込んでいる.

しかし,自分では正しく読んでいるつもりでも,

ほとんどの日本人は前述のような誤りを侵してい る.だからある速度以上では理解不可能となる.

一方,原稿なしで話すと,どんなに途切れ途切 れでも,発音や表現に誤りがあっても理解できる.

言葉とその人の思考速度が一致しているので,そ の思考が聴衆に伝わってくる.それを読み上げら れると,たぶんこういうことを言いたいのだろう という解釈が追いつかず,何もわからないうちに 終わってしまう.聴衆が馬鹿にされたようで非常 に腹立たしく,反感を持つ.もちろん研究も評価 されず,大変なマイナスである.

それに対して,どんなに英語が下手でも原稿な しでがんばれば非常に効果的であり,プラスの評 価となる.ともかく努力して場数を踏むことであ る.それが必ず将来の進歩につながる.ぜひがん

ばってほしい. (続く)

1) 最近,テレビや新聞でcomputer graphicsをコ ンピュータグラフィックと言ったり書いたりして いるのに出会う.もちろん末尾のsは複数ではな mathematics, physics, economicsなどと同じ 学問名のsであり,これがないとおかしい.本会 会員が間違えることはないと思うが,マスコミの 影響は大きいので,やがて「グラフィック」が定 着するかも知れない.

2) 辞書には例えばswan [swAn|swOn]のような発 音記号が書いてある.前が米音で後が英音である が,[A]=アではない.[A][O]も日本語のアやオ より口の中を大きく開け,音はオに近い.これは 例えばnotも同じであり,[nAt|nOt]である.日 本語よりずっと口を大きく開けながら「ノット」

と言えばよい.日本語のアは口をあまり開けない から,日本語式に「ナット」というとnut [n2t]

(豆)になってしまう.

3) そのためには発音記号の読み方を知る必要があ る.中学や高校では教えないようだが,ぜひ覚え てほしい.ただし,発音記号を知っていても,そ れが表す音を正しく理解していない人が多い([A]

=アの誤解など).発音記号とネイティブの発音 とを常に比較して記号の表す音を正しく理解する ことが大切である.

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