耐久消費財消費と経済成長
馬 田 哲 次
1 はじめに
図1は実質GNP成長率の5年間移動平均をとったものである。それは,
58年から68年まで約10%の成長を続け,それから76年まで低下を続けてい る。その後,77年から89年まで,約4%の成長を続け,90年から93年まで 再び低下し,93年から95年まで1%台の成長である。
本稿の目的は,このような実質GNP成長率の低下を説明する簡単な経 済モデルを提示することである。その際,経済成長率を規定する要因とし て消費需要,とりわけ耐久消費財の需要が重要であることが明らかにされ
る。
新古典派の経済理論によれば,実質GNPの大きさを決めるのは労働市 場である。そして,労働市場は完全雇用である。この枠組みでは,実質G NPの変動をうまく説明することは困難である。
ケインジアンの理論によれば,経済の変動をもたらすのは,設備投資の
大きさである。
このケインジアンの理論を否定するつもりはないが,経済の成長率を中 長期的に規定しているのは消費需要ではないだろうか。そして,その消費 需要の中でも耐久消費財の需要が大きな要因を占めているのではないのだ
ろうか。
バブル崩壊後の日本経済は,低成長率にあえいでいる。消費税率の引き 上げや医療費の負担率の引き上げ,或いは金融システム不安がその原因だ
といわれている。これらの要因が無関係だとは思わないが,耐久消費財が
一46−(622) 第46巻第5号
普及し,消費炉成熟していることがより根本的な原因ではないだろうか。
もしそうだとすれば,減税で景気を刺激することは難しい。減税して可処 分所得が増加しても,その所得の増加分は貯蓄に回され消費需要は伸びず,
景気は回復しないことになるからである。政府支出を増加しても,GNP はその分しか伸びず,効果はないことになる。
II節では,新古典派の実質GNP決定理論と問題点が, III節ではケイン ジアンの実質GNP決定理論と問題点が簡単に説明される。 IV節で耐久消 費財の普及率を考慮した経済成長モデルが示される。モデルの特長は,消 費を耐久消費財消費とした場合に,その普及によって消費が制約されるこ とと,購二入された耐久消費財によって基礎消費が増えることである。そし て最後にV節で本稿のまとめと今後の課題が述べられる。
図詔 実質GNP増加率5年移動平均
12
10
8
6
4
2
0
5859606162636465666768697071 72737475767778798081 82838485868788899091 929394959697
年
(出所)経済企画庁ホームページより作成
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99 新古典派の実質GNP決定理論
ここで,新古典派の実質GNP決定論について簡単にみてみよう。簡単 なマクロ経済モデルを考える。政府も海外との取引もない簡単なモデルで
ある。実質GNPをY,実質消費をC,実質投資を1とおくと,
Y=C十1 (1)
と書くことができる。
新古典派は,Yが労働市場で決まると考える。つまり,労働市場におい て労働需要関数と労働供給関数の交点で均衡の実質賃金率と雇用率が決ま る。その雇用量は完全雇用である。そして,マクロ経済の生産関数が与え られていると,雇用量が決まっているので,生産量つまり実質GNPが決 定される。そして,生産されたものは,セイ法則により過不足なく消費と 投資に分割される。
この場合,どのように実質GNPの変動を説明するかというと,例えば,
政府支出が増加した場合は,将来の増税を予想して労働供給曲線が右側に シフトする。その結果,雇用量が増加し,実質GNPも増加すると説明さ れる。しかしながら,このとき実質賃金と物価水準が低下してしまう。雇 用量が増加するときには実質賃金と物価水準は上昇するのが通常であるが,
理論と現実が逆である。実質GNPの変動をうまく説明することができな
い。
醐 ケインジアンの実質GNP決定理論
ケインジアンの理論は,先ほどの(1)式において,1がYを決めると考え る。つまり,基礎消費をA,限界消費性向をcとすると,消費関数を,
C=A十cY (2)
と書くことができる。(2)を(1)に代入して,
一48−(624) 第46巻第5号
A十1
(3)
Y= 1−c
となり,1がYを決めることになる。
短期的にはこのような関係があることを否定しないけれども,投資の大 きさが消費と独立して決まるだろうか。企業が設備投資をするのは,何ら かの意味で資本ストックの不足を感じているからである。つまり,予想さ れる生産量と比較して資本ストックが不足しているときに,その不足分を 投資する。そして,投資が行われると資本ストックが増加し,生産能力が 増加するので,資本ストックを正常に稼働させるためには需要量がその分 増加しなければならない。(1)式をみれば,投資が無限に増大していけば需 要問題はなくなるようであるが,はたしてそうだろういか。消費関数(2)と
も関連することであるが,所得が増加したときに,限界消費性向に所得の 増加分をかけた分消費を増加させるだろうか。購入したい商品があり,予 算制約内であればそうするだろう。しかし,購入したい商品がない場合に は,消費はそれほど増加しない。経済学は,人間の消費欲求は無限であり,
購入したい商品は無限に存在すると仮定してきたが,現実をみるとそうで はない。消費需要が飽和するということを考慮したモデルを考える必要が
ある。
9V 耐久消費財の普及を考慮した経済成長モデル
この節では,耐久消費財の普及を考慮した経済の動学モデルを考える。
モデルの基本的な考え方は,(1)式でいうと,CがYを決めるモデルである。
モデルを考える前に,現実の経済データをみてみよう。図2は民間最終 消費支出増加率の5年聞移動平均のグラフである。実質GNPのそれとよ
く似た動きをしている。
図2 民間最終消費支出5年移動平均
12
10
6
4
2
o
sS δ 母 げ 浄 浄 や ペレ や や や S sSC 乎 寧 sS ㊥ gSC 攣 gts
(出所)経済企画庁ホームページのデータより作成
次に耐久消費財の普及率をみてみる。図3が耐久消費財の普及率を商品 ごとにプロットしたものである。概ね,60年代に普及率が上昇している商 品が多い一方で,70年代以降は,普及率が伸びない商品が多くなっている。
このグラフは,全体的な特徴をみるのにはわかりにくいので,それをみ るために単純に普及率の平均をとってみる。耐久消費財の普及率を総合的 にみる一つの指標を考えるのは難しい問題であるが,ここでは単純に平均
をとってみる。
一
50−(626)
第46巻第5号図3 耐久消費財普及率
120.0
100,0
80.0
60.0
40.0
20.0
7・
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年
(出所)経済企画庁ホームページデータより作成
図4 耐久消費財普及率の平均
70
60
50
40
30
20
10
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Etaliiil: 差・繭
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一◎一じゅうたん 一fi5一応接セット
ユニット家具
→←温水洗浄便座
+洗髪洗面化粧台
+システムキッチン
ー温水器
一一ガス瞬間湯沸器 電気冷蔵庫 電子レンジ 電気洗たく機 ・・衣類乾燥機
t、.一ふとん乾燥機 ttt・電気掃除機
一石油ストーブ
…・一…・温風ヒーター
…砂…ファンヒーター
・温風暖房機
→o電気カーペット
ー帯一力ラーテレビ 唖衛星放送受信装置
一一ビデオカメラ
ービデオディスクプレーヤー
+カラオケ装置
+ステレオ
+CDプレーヤー
→←ワープロ
→一プッシュホン
0
5758596。61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
年
(出所) 経済企画庁ホームページデータより作成
図4がそのグラフであるが,全ての耐久消費財のデータが毎年あるわけ
21
20 75
2020
22
熟
一2 2019
20 33
3030 35ゴ535 4242τ2424242
42
v
7
19 19 15..17 17 8 9
11 15
15
.り
1 1 1 , 1 1 o , r I 層 冒 1 1 } 1 l I 1 . I I I 1 9 1 1 冒 幽 1 「 .
ではないので,各年ごとの普及率の合計を,データがとられている商品数 で割ったものである。グラフに書かれている数字は,その年にデータが取 られている商品の数である。データが増えた年に普及率の平均値が低下し ていることが多い。これは,新たにデータが取られた商品は,それまでに データが取られていた商品の平均的な普及率よりも普及していないことに よる。そして,その商品が,以前にデータが取られていた商品と同程度に 普及すれば,普及率の平均値は,以前と同じような値をとることになる。
グラフをみても分かるように,61年から73年までは,63年から66年を除 いて普及率の平均値は増加している。63年,64年は,実質GNPと実質民 間消費の増加率5年移動平均も低下している。73年から81年までは,グラ フの傾きがそれ以前より低下しているが,平均値は増加している。そして,
82年以降は,平均値はあまり増加していない。
普及率の平均が増加していることは耐久消費財がよく売れていることを 意味する。逆に近年は,普及率の平均値は横這いであり,耐久消費財はあ
まり売れていないことを意味する。
従って,次のようなことが考えられる。つまり,耐久消費財の普及率の 増加が消費の大きさを決め,消費の大きさが投資の大きさを決め,実質G NPの大きさを決める。
次に,消費と投資の関係であるをみてみよう。図5は,1956年から1997 年までの,前期実質民間消費と実質民間投資の自然対数をとったものをそ れぞれ横軸と縦軸にとったものである。両者は対数線形の関係を持ち,何 らかの要因で,その線形関係がシフトしているようである。つまり,前期 民間実質投資をC−1,民間設備投資を1とすると,
1=z6C_1り (4)
の関係がある。なお,ここで,U, vはパラメータである。そして,何 らかの要因により,Uが小さくなっている。ということである。
今期の消費と今期の投資をプロットしても同様な対数線形関係がみられ る。どちらが正しいかは厳密に実証分析をする必要があるが,本稿の目的
一
52−(628)
第46巻第5号は,耐久消費財の普及により消費需要が制約され,実質GNPの成長率が 低下することを示すモデルを提示することにあるので,動学モデルを作り やすいということで,今期の投資と前期の消費が対数線形にある投資関数
を考えることにする。
図5 前期実質民間消費と実質民間設備投資(ともに自然対数値)
12
11
10
翌
i9
≦
8
7
6 10 10.5 11 11.5 12
1n民間消費前期
(出所)経済企画庁ホームページデータより作成
以上のことから,次のようなモデルを考える。
Y,=C,十ろ十G,
C,=A,十1)t
t−1 t−1
D、−min(dY,,(aΣD、(H一ΣD、)))z=O i=O
t
A,一∂ΣD、
1=0
ろ=πC払、
ここで,Cは民間実質消費,1は民間投資,
NP, Aは基礎消費, Dは所得に依存する消費,
12.5
(5)
(6)
(7)
(8)
(4)
13
Gは政府支出,Yは実質G
Hは耐久消費財普及数の最大値である。なお,添え字のtは時間である。
(5)式は,財・サービス市場の需給一致式である。ここで考えている商品 は耐久消費財であるが,そのほかにも投資財と,耐久消費財の購入に伴っ て発生する消費需要(これを基礎消費と考える)も考えている。したがっ て厳密にモデル化するならば,少なくとも3部門のモデルにしなければな
らないが,簡単化のため1部門モデルにしてある。簡単化のため,耐久消 費財は無限の耐久期間を持っているとしている。なお,特別な場合を除い て,G=0とする。
(6)式は,消費関i数である。消費は二つの部分からなると考える。一つは 基礎消費であり,もう一つが,所得に依存する部分である。
(7)式は,所得が増えたとき,耐久消費財を購入する場合もあるが,耐久 消費財を既に所有していて購入しない場合があるのでそれを定式化したも のである。耐久消費財はロジスティック曲線に従って増加する場合が多い ので,その制約をつけたものである。
t−1 t−ユ
D・−aΣDi(fl 一ΣD,) (9)
1=O z=0
ということは,耐久消費財の消費がそれを購入した数と今後購入する数の 積に比例することを表している。
所得がそれよりも少なければ所得に消費1生向をかけた分の消費が行われ るが,所得がそれを越えていた場合は,消費は購入可能な耐久消費財数に 制約される。この制約がかからない場合は,基礎消費が増加していくこと
を除いて,通常のケインジアンの消費関数と変わらない。
(8)式は,基礎消費が今期までに購入された耐久消費財の一定割合である と仮定した式である。耐久消費財を購入すればそれにともなって,固定的 な支出が増える場合が多い。自動車を購入すれば,自動車保険やガソリン 代,車検代等がかかる。電話を購入すれば基本料金と通話料がかかる。冷 蔵庫を購入すれば電気代がかかる。これらのことを考慮したものである。
(4)式は,先程述べた投資関数である。
一
54−(630)
第46巻第5号(7)式で,D=dYの場合を考える。
(6),(8)式を(5)に代入して,
t−1
}7一ろΣD・+ろdY+dY+∫+G
i=o
従って,Yは次のように決定される。
t−1
∂ΣD、+z+G Y一釜≒(ろ十1)
(10)
(11)
よって,D=dYの場合,基礎消費を除いた消費は次のようになる。
t−1
∂ΣD汁z+G
D−dflt= Zld(ろ+1)
従って,基礎消費を除いた消費は次のようになる。
t−1
ゐΣD汁1+Gt.、 t.、
D−min(蒔≒(ろ+、)・・》(H一勲))
従って消費は次のようになる。
t−1
c一ろΣD,+ bZ),+z)t
FO
(12)
⑬
(14)
実質GNPは,⑳式で決まる実質民間消費と実質設備投資と実質政府支 出の和として求まる。
D。と11を初期値として与えると,以下計算される。シミュレーションの結
1やb,dが大きければ,㈲式より消費はロジスティック曲線に 制約される。その場合のシミュレーション結果が図6と図7である。図6 は耐久消費財の普及数を示したもので,図7は実質GNPの成長率を示し たものである。なお,このときのパラメータは,
Do=0.1,11=0.001,
耐久消費の最大値=100,ロジスティック曲線の係数a=0.00014 果は以下の通りである。
まず,
投資関i数の係数u=0,002,投資関i数の係i数v=1.4 限界消費係i数d=0.8,基礎消費係数b=0.01である。
実質GNP成長率は,ほぼ一定の値から,耐久消費財が普及するにつれ て小さくなり,マイナスになってから0に上昇している。
図6 耐久消費財普及数(消費の制約がある場合)
f20
100
80
60
40
20
0
1 42 83 124 165 206 247 288 329 370 411 452 493 534 575 616 657 698 739 780 821 862 903 944 985
時間
図7 実質GNP成長率(消費の制約がある場合)
16
14
1.2
て
08 06 04 02
0
一〇2
炉輪
鱒朔」 舳凸「w
》
で
ρ冠 一
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} 窄ぐ亀 吋 赫
序
\
\
\
璽一礫期鱗・際騨
ρ論[ん び 》 軋33 65 97 129161 193225257289321 353385417449481 513545577 609641673705737769801 833865897
92996199
時間
一
56−(632)
第46巻第5号パラメータu,y, d, bの値を小さくすると,消費の制約がかからな い場合になる。先ほどのパラメータの値で基礎消費係数bの値だけを0.003 にしてシミュレーションした結果が,図8,図9である。図8は耐久消費 財の普及数を,図9は実質GNPの成長率を示している。なお,この場合 は,最初は消費の制約を受けないが,402期から消費の制約を受けている。
消費の制約を受けると実質GNPの成長率は低下し,大きくマイナスの値 をとってから0に近づいていく。
図8 耐久消費財普及数(402期以後消費の制約を受ける場合)
120
100
80
60
40
20
0
柵:毘髄粒緊司輔 酢ヲ師 魅 P回嗣一冒占罰齢一凹一一一一『『一一一
レ
阿
陛→ r 闇輔 も 隔圧 附
1 42 83 124 165 206 247 288 329 370 411 452 493 534 575 616 657 698 739 780 821 862 903 944 985
時間
図9 実質GNP成長率(402期以後消費の制約を受ける場合)
14
1.2
1
0.8
06
O.4
02
0
一〇.2
一〇4
時間
次に財政政策の効果をみてみる。図9の場合で,100期目だけ政府支出を 0.00001行った場合が図10である。政府支出が増加することによって消費が 増加するので,成長率はその期は増加している。しかしながら,次の期に 大きく低下し,またもとの水準に戻っている。
図10 実質GNP成長率(100期目に政府支出)
2.5
2
1
0
弱滞 糟脳闘A一隙胤欄煙峨脚躍惜㎜ε馴剛
¶ 、
P 騨 阻
一
33 65
97129161193
2252572893213533854174494815135・5触964・6737・57377698
皿燃脾㎎97929961 99
o
,
◇
33 65 97 129 161 193225257289321 35338541
74494815135455
41 673705737。瀟講欝欝
話b炉99時間
一58−(634) 第46巻第5号
次に,図9の場合で,402期に政府支出を0.00001行った場合が図11であ る。このときは,消費は制約を受けているので増加せず,政府支出の増加 分のみGNPは増加する。そしてまた,成長率はもとの水準に戻る。なお,
GNPの増加分がわずかなため,グラフには表れていない。
図11 実質GNP成長率(402期目に政府支出)
1.4
1.2
1
0.8
06 04 02
0
一〇2
一〇A
だト ㌃ 載
砧饗 、{
}
ゴ
33 65
97129−93225257289321353385417449481513545 ヤ96416737°57377198
バー 曜
一89792996199
時間
V まとめと今後の課題
本稿では,耐久消費財の普及を考慮した場合に,消費需要がそれによっ て制約を受け,実質GNPの成長率が低下する簡単なモデルを提示した。
消費が耐久消費財普及の制約を受けていないときには,政府支出の増加が 消費の増加をもたらし,実質GNP成長率を増加させるが,その制約を受
けているときには消費は増えず,政府支出の増加分しか実質GNPは増加 しないことも示すことができた。
本稿のモデルは1部門モデルであったが,これを多部門に拡張し,新た な消費財の出現と,生産財との関連を考慮すれば,より現実に近いモデル になるかもしれない。
また,設備投資と消費に関連があることは分かったが,その関連を厳密 にみていくこと,特に,投資関数の下方シフトがどのような要因で起こっ ているのかを解明することが重要なことである。本稿のモデルでは,経済 の短期的な変動は,説明できない。投資関数に下方シフトの要因その他を 組み込むことによって,短期的な変動も説明できるかもしれない。
さらに,経済の成長率を中長期的に規定しているのが耐久消費財の普及 であるとすれば,新しい商品を次々に開発していかない限り,経済はいず れ停滞することになる。そのための政策も重要な研究課題である。
参考文献
経済企画庁ホームページ;http://www.epa.go.jp
中谷巌(1993),『入門マクロ経済学 第3版』日本評論社 塩沢由典(1997),『複雑系経済学入門』生産性出版
吉川洋(1984),『マクロ経済学研究』東京大学出版会