【平成30年度 日本保険学会全国大会】
第Ⅱセッション(法律系)
報告要旨:坂本 貴生
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規約上の自動更新条項と更新拒否条項
(一律掛金・一律保障の共済を中心に)
日 本 コ ー プ 共 済 生 活 協 同 組 合 連 合 会 坂 本 貴 生
1 . は じ め に
大 規 模 生 協 共 済 1が 提 供 す る 共 済 の 中 に は 、 男 女 一 律 掛 金 、 一 定 の 年 齢 グ ル ー プ 内 で 掛 金 一 律 の も の が あ る 2。 そ の 共 済 は 、1 年 間 を 共 済 期 間 と す る も の の 、 契 約 者 の 申 出 が な い 限 り 、 一 定 年 齢 ま で 自 動 的 に 更 新 さ れ る 。 大 規 模 生 協 共 済 が 提 供 す る こ の 種 の 共 済 の 保 有 契 約 件 数 は 3,000万 契 約 を 超 え て お り 、 受 入 共 済 掛 金 で は 8,000 億 円 に 及 び 、 生 命 医 療 保 険 分 野 に お い て 、 一 定 の シ ェ ア を 占 め て い る 。
こ の 種 の 共 済 契 約 に は 、 自 動 更 新 条 項 と 更 新 拒 否 条 項 が 定 め ら れ て お り 、 自 動 更 新 条 項 に つ い て は 、 生 命 保 険 会 社 の 自 動 更 新 条 項 と 概 ね 同 様 の 定 め に な っ て い る も の の 、更 新 拒 否 条 項 に つ い て は 、共 済 特 有 の 更 新 拒 否 事 由 が 定 め ら れ て い る 。
一 方 、 適 格 消 費 者 団 体 は 、 近 年 、 生 命 保 険 会 社 、 共 済 団 体 な ど に 消 費 者 契 約 法 10条 な ど を 根 拠 に 申 入 れ が 行 わ れ る よ う に な っ て お り 、約 款・規 約 の 法 令 適 合 性 の 観 点 か ら の チ ェ ッ ク が 重 要 と な っ て き て い る 。
本 報 告 で は 、① 消 費 者 契 約 法 10条 及 び 改 正 民 法 の 不 当 条 項 規 制 と の 関 係 で の 自 動 更 新 条 項 の 有 効 性 、 ② 大 規 模 共 済 生 協 特 有 の 更 新 拒 否 条 項 の 解 釈 を 検 討 す る 。
2 . 自 動 更 新 条 項 の 消 費 者 契 約 法 10条 該 当 性 3
判 例 に よ る 消 費 者 契 約 法 10条 の 適 用 の 判 断 枠 組 み は 、ま ず 問 題 と な る 契 約 条 項
1 大 規 模 生 協 共 済 と は 、 全 国 労 働 者 共 済 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ( 以 下 、「 全 労 済 」 と い う 。)、 全 国 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ( 以 下 、「 全 国 生 協 連 」 と い う 。) お よ び 日 本 コ ー プ 共 済 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ( 以 下 、「 コ ー プ 共 済 連 」 と い う 。) の3共 済 を 指 す ( 江 澤 雅 彦 「 大 規 模 生 協 共 済 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 」『 生 協 の 共 済 今 、 問 わ れ て い る こ と 』( コ ー プ 出 版 ( 株 )、2008年 )96 頁 参 照 )。
2 冨 永 紅 「 共 済 の 特 徴 と 役 割 」 損 害 保 険 研 究 73巻 4号(2012年)123頁 参 照 。
3 生 保 契 約 の 自 動 更 新 条 項 が 消 費 者 契 約 法 10条 の 要 件 に 該 当 す る か 否 か 論 じ た も の と し て 、 菊 妻 左 知 夫「 生 保 契 約 の 自 動 更 新 条 項 と 消 費 者 契 約 法 第10条 」生 命 保 険 経 営 84巻 6号(2016 年 )4頁 参 照 。
【平成30年度 日本保険学会全国大会】
第Ⅱセッション(法律系)
報告要旨:坂本 貴生
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に つ き 、 前 段 要 件 の 存 否 を 判 定 し こ れ が 肯 定 さ れ る と き に は 、 後 段 要 件 の 存 否 を 判 定 し 、 こ れ も 肯 定 さ れ る 場 合 に は 、 当 該 契 約 条 項 は 無 効 と な る と い う 2 段 階 の 構 造 を と っ て い る 4。 そ こ で 、 本 件 自 動 更 新 条 項 の 前 段 要 件 と 後 段 要 件 の 該 当 性 に つ き 、 検 討 す る 。 併 せ て 、 適 格 消 費 者 団 体 に よ る 差 止 請 求 訴 訟 と の 関 係 も 検 討 す る 。
3 . 民 法 改 正 と の 関 係 ( 定 型 約 款 条 項 の 新 設 )
民 法 改 正 に よ り 、 定 型 約 款 条 項 が 新 設 さ れ た の で 、 自 動 更 新 条 項 が 民 法 第 548 条 の 2 第 2項 ( 不 当 条 項 ・ 不 意 打 ち 条 項 ) に 該 当 し 、 契 約 内 容 と な ら な い の で は な い か が 問 題 と な る 。 不 当 条 項 ・ 不 意 打 ち 条 項 該 当 性 を 検 討 す る 。
4 . 更 新 拒 否 条 項
更 新 拒 否 事 由 は 、 概 ね 「 こ の 会 が 、 共 済 契 約 の 更 新 を 不 適 当 で あ る と 認 め た と き 」 と 定 め ら れ て い る 。
裁 判 例 で は 、 こ の 条 項 の 解 釈 と し て 、「 他 の 運 用 例 に 照 ら し 、・ ・ ・ 更 新 拒 否 が 著 し く 不 合 理 で な い か ど う か と の 観 点 か ら 判 断 す べ き で あ り 、 か つ こ れ を も っ て 足 り る 」 と し た も の が あ る 5。 こ れ に 対 し て 、 更 新 拒 否 の 判 断 は 重 大 事 由 解 除 と 同 等 の 事 由 を 求 め る べ き と の 見 解 も あ る 6。
他 分 野 で は 、 更 新 拒 否 に つ き 、 借 地 借 家 法 で は 法 定 の 要 件 が 定 め ら れ 、 民 法 改 正 の 議 論 で は 、 継 続 的 契 約 の 更 新 拒 否 要 件 に つ き 、 議 論 さ れ た 経 緯 が あ る 。 そ の 他 の 継 続 的 契 約 に お け る 裁 判 例 で も 、 合 理 的 な 理 由 を 求 め る も の も あ る 7
他 分 野 の 法 令 、 裁 判 例 、 民 法 改 正 議 論 も 参 照 し つ つ 、 本 件 共 済 契 約 の 特 色 も 考 慮 に 入 れ て 、 更 新 拒 否 条 項 の 解 釈 を 検 討 す る 。
4 山 下 友 信 「 保 険 法(上)」(有 斐 閣 、2018年)160頁 、 道 垣 内 弘 人 「 消 費 者 契 約 法 10条 に よ る 無 効 判 断 の 方 法 」 野 村 豊 弘 先 生 古 希 記 念 論 文 集 ・ 民 法 の 未 来 ( 商 事 法 務 、2014年 )378-379 頁 参 照 。
5 高 松 地 判 平 成 3年 5月30日 判 タ 770巻250頁(1992年)参 照 。
6 甘 利 公 人 「 協 同 組 合 共 済 の 法 制 度 の 現 状 と 課 題 」 生 協 総 研 レ ポ ー ト 79号 48頁 (2016年 ) 参 照 。
7 東 京 地 判 平 成 20年9月 18日 判 時 2042号20頁 (2009年 ) 参 照 。