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解約返戻金の約款規制 東京海洋大学 金岡 京子

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Academic year: 2023

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(1)

解 約 返 戻 金 の 約 款 規 制

東 京 海 洋 大 学 金 岡 京 子

1 . は じ め に

( 1 ) 現 行 の 解 約 返 戻 金 約 款

現 行 保 険 実 務 に お い て は 、 保 険 契 約 者 が 継 続 中 の 保 険 契 約 を 任 意 に 解 除 す る 際 に 、 そ の と き ま で に 支 払 わ れ た 保 険 料 に 基 づ き そ の 保 険 契 約 の た め に 計 算 さ れ た 金 額 の う ち 、 そ の 保 険 契 約 者 に 返 還 す べ き 金 額 が あ る 場 合 は 、 そ の 保 険 商 品 の 特 性 上 別 段 の 合 意 が あ る 場 合 を 除 き 、 そ の 金 額 ( 以 下 、「 解 約 返 戻 金 」 と い う 。) を 返 還 す る 旨 の 約 定 が な さ れ て い る こ と が 多 い 。 そ し て こ の 約 定 は 、 通 常 は 、 普 通 保 険 約 款 で 定 め ら れ て お り 、 そ の 普 通 保 険 約 款 の 内 容 は 、 保 険 業 法 に 基 づ き 事 前 規 制 を 受 け る と と も に 、 契 約 締 結 前 に 開 示 す べ き 情 報 提 供 規 制 、 及 び そ の 計 算 規 制 を 通 し て 、 そ の 適 切 性 保 障 が 保 険 監 督 法 上 強 化 さ れ て い る 。

し か し な が ら 、 保 険 監 督 法 上 の 規 制 は 、 個 別 保 険 契 約 の 効 力 を 直 接 規 律 す る も の で は な く 、 現 行 商 法 に 私 法 上 の 効 果 を 定 め る 対 応 規 定 が な い 現 行 法 の 下 で は 、 民 法 9 0 条 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 、 も し く は 同 1 0 条 に よ り 不 当 条 項 と 認 め ら れ た と き に 、 そ の 保 険 約 款 の 条 項 が 無 効 と な る 可 能 性 が あ る に 過 ぎ な い 。

従 来 か ら 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 が 、 非 常 に 漠 然 と し て お り 、 普 通 保 険 約 款 の そ の 他 の 箇 所 に 記 載 さ れ た 補 足 説 明 及 び 解 約 返 戻 金 例 表 と 照 ら し 合 わ せ て 熟 読 し た と し て も 、 平 均 的 保 険 契 約 者 が こ の 約 定 の 適 切 性 を 判 断 す る の は 困 難 で あ る こ と が 指 摘 さ れ て き た が 、 現 行 の 実 体 的 保 険 監 督 へ の 期 待 に 寄 せ る 方 向 性 に 比 べ 、 さ ほ ど 大 き な 問 題 と し て 取 り 上 げ ら れ て こ な か っ た と 思 わ れ る 。

と こ ろ が 、 消 費 者 契 約 法 の 改 正 に よ り 、 団 体 訴 訟 に よ る 普 通 保 険 約 款 の 内 容 規 制 が 可 能 に な り 、 ま た 法 制 審 議 会 保 険 法 部 会 に お い て 解 約 返 戻 金 に 関 す る 契 約 法 上 の 規 律 が 検 討 さ れ て い る 現 在 の 状 況 を 考 慮 す る な ら ば 、 個 別 契 約 に 適 用 さ れ る

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普 通 保 険 約 款 の 内 容 規 制 の あ り 方 を 根 本 的 に 検 証 す る こ と が 必 要 で あ る 。

( 2 ) 検 討 対 象

そ こ で 本 報 告 に お い て は 、 第 一 に 、 現 在 実 務 で 使 用 さ れ て い る 解 約 返 戻 金 約 款 及 び そ の 補 足 説 明 等 の 現 状 に つ い て 、 そ の 保 険 種 類 の 特 性 に 応 じ た 分 類 を し た う え で 、 そ の 内 容 の 問 題 点 を 抽 出 す る こ と と す る 。 具 体 的 に は 、 終 身 保 険 、 変 額 年 金 、 医 療 保 険 、 積 立 傷 害 保 険 の 普 通 保 険 約 款 を 取 り 上 げ て い く こ と に な る 。 こ の 検 討 で は 、 解 約 返 戻 金 が 支 払 わ れ な い 保 険 商 品 の 約 款 の 内 容 も 対 象 に 含 ま れ る 。 第 二 に 、 現 行 法 の 下 で 、 こ の よ う な 問 題 点 を ど の 程 度 ま で 解 決 可 能 で あ る か 検 討 し 、 現 行 法 の 内 容 規 制 に 一 定 の 限 界 が あ る と す れ ば 、 ど の よ う な 解 決 手 法 が 考 え ら れ 得 る か 提 示 し た い と 考 え る 。 こ の 検 討 に お い て は 、 保 険 業 法 の 商 品 認 可 の 審 査 基 準 に 掲 げ ら れ て い る 透 明 性 原 則 、 普 通 保 険 約 款 に お け る 解 約 返 戻 金 計 算 方 法 の 開 示 規 制 、 契 約 締 結 前 の 重 要 事 項 及 び 注 意 喚 起 情 報 説 明 義 務 の 規 律 状 態 及 び そ の 限 界 を 最 初 に 考 察 し 、 次 に 保 険 業 法 に お け る 解 約 返 戻 金 計 算 の 適 切 性 規 制 と の 関 連 で 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 の 適 用 範 囲 を 検 討 す る 。 さ ら に は 、 保 険 業 法 上 の 透 明 性 原 則 規 制 を 受 け て 認 可 さ れ た 約 款 が 、 消 費 者 契 約 法 1 0 条 に よ り 、 更 に 規 制 を 受 け る 可 能 性 が あ る か 否 か を 検 討 す る 。

第 三 に 、 比 較 法 的 分 析 を 行 う た め に 、 ド イ ツ に お け る 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制 を 検 討 す る 。 具 体 的 に は 、 透 明 性 原 則 に よ る 内 容 規 制 及 び 対 応 す る 約 款 の 改 訂 状 況 、 保 険 契 約 法 及 び 保 険 監 督 法 に よ る 規 律 状 態 を 概 観 し た う え で 、 継 続 中 の 保 険 約 款 の 内 容 を 変 更 す る た め の 手 続 確 保 に つ い て も 考 察 す る 。 こ の 考 察 に お い て は 、 保 険 契 約 法 の 規 定 を 再 現 し た 普 通 保 険 約 款 の 内 容 が 、 不 透 明 で あ る と 判 断 さ れ た 根 拠 に つ い て 、 特 に 重 点 的 に 論 じ る こ と に な る 。 ま た ド イ ツ で は 、 現 行 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に 基 づ き 、 無 効 と さ れ た 既 契 約 約 款 の 内 容 が 、 保 険 監 督 法 上 適 切 と 認 め ら れ た 監 査 人 の 承 認 を 得 て 変 更 さ れ て い る が 、 そ の 変 更 内 容 が 再 び 連 邦 通 常 裁 判 所 に よ り 無 効 と さ れ 、 新 保 険 契 約 法 草 案 の 内 容 を 基 準 と す る 裁 判 官 の 補

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充 的 契 約 解 釈 を 通 し て 変 更 さ れ て い る 。 こ の 問 題 は 、 今 後 日 本 で 既 契 約 約 款 を 改 正 す る 必 要 性 が 生 じ た と き に 検 討 し な け れ ば な ら な い 課 題 を 示 し て い る 。

最 後 に 、 今 後 の 課 題 と し て 、 ど の よ う な 法 規 制 を 通 し て 、 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 の 実 質 的 な 適 正 化 を 図 る べ き か 考 察 す る こ と と す る 。

2 . 解 約 返 戻 金 約 款 及 び そ の 補 足 説 明 の 現 状

( 1 ) 積 立 金 の あ る 長 期 保 険 契 約 の 約 款 ① 終 身 保 険

A 生 命 保 険 相 互 会 社 ( 以 下 「 A 社 」 と い う ) の 普 通 保 険 約 款 1 に よ れ ば 、「 保 険 契 約 者 は 、 保 険 金 お よ び 年 金 の 支 払 事 由 発 生 前 に 限 り 、 い つ で も 将 来 に 向 か っ て 、 保 険 契 約 を 解 約 し 、 解 約 返 還 金 を 請 求 す る こ と が で き ま す 。」 と 定 め 、 保 険 契 約 に お け る 保 険 契 約 者 に よ る 任 意 解 除 権 を 認 め て い る 。 解 約 返 戻 金 に 関 し て は 、

「1. 解 約 返 還 金 は 、 会 社 の 定 め た 方 法 に よ り 計 算 し ま す 。2. 解 約 返 還 金 額 は 、 別 表 5 に よ っ て 例 示 し ま す 。(3.4. 略 )」 と 定 め 、 具 体 的 な 金 額 及 び そ の 計 算 方 法 に つ い て は 、 別 表 、 し お り 等 の 補 足 説 明 、 及 び 契 約 締 結 時 の 説 明 資 料 に よ り 開 示 し て い る 。 別 表 に は 、 金 額 例 表 で あ り 、 正 確 な 数 値 が 必 要 な 場 合 は 、 保 険 者 の 職 員 ま た は 最 寄 の 店 舗 に 照 会 で き る こ と を 明 記 し た 上 で 、2 0 歳 か ら 1 0 歳 間 隔 で 、 男 女 別 に 保 険 料 払 込 年 数 1 年 か ら 7 年 ま で の 間 の 金 額 例 が 示 さ れ て い る 。 さ ら に

「 ご 契 約 の し お り 」の 補 足 説 明 に お い て は 、「 解 約 と 解 約 返 還 金 」と い う タ イ ト ル で 2 頁 使 用 し 、 解 約 す る と 多 く の 場 合 、 解 約 返 還 金 は 、 払 込 保 険 料 総 額 よ り 少 な い 金 額 に な る こ と 、特 に 契 約 後 短 期 間 で 解 約 す る と 解 約 返 還 金 は ま っ た く な い か 、 あ っ て も ご く わ ず か で あ る こ と 、 並 び に 保 険 料 は 預 貯 金 の よ う に そ の ま ま 積 立 て ら れ る の で は な く 、 そ の 一 部 は 年 々 の 死 亡 保 険 金 の 支 払 に 、 他 の 一 部 は 契 約 の 締 結 ・ 維 持 に 必 要 な 経 費 に あ て ら れ 、 そ れ ら を 除 い た 残 額 と し て あ ら か じ め 定 め ら れ た 金 額 が 払 い 戻 さ れ る こ と 等 が 、 契 約 例 を 示 す 図 と と も に 説 明 さ れ て い る 。

1 第 一 生 命 保 険 相 互 会 社 、 5 年 ご と 利 差 配 当 付 更 新 型 終 身 移 行 保 険 「 ご 契 約 の し お り 定 款 ・ 約 款 」2 7 条 、2 8 条 参 照 。

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他 方 、解 約 返 戻 金 の な い 特 約 を 提 供 し て い る B 生 命 保 険 相 互 会 社( 以 下「 B 社 」 と い う ) の 普 通 保 険 約 款 2 に お い て は 、 保 険 契 約 者 が 将 来 に 向 か っ て 保 険 契 約 を 解 約 し 、 解 約 払 戻 金 を 請 求 で き る こ と を 定 め る 中 途 解 除 権 の 内 容 に つ い て は 、 上 記 A 社 と 同 様 の 内 容 と な っ て い る が 、 特 約 に つ い て は 、 解 約 返 戻 金 の あ る 特 約 の 場 合 に 、 解 約 払 戻 金 請 求 権 が あ る こ と を 明 記 し て い る 。 ま た B 社 の 約 款 で は 、 主 契 約 、特 約 名 を 明 ら か に し た う え で 、解 約 払 戻 金 の 計 算 方 法 が 示 さ れ て い る 点 で 、 A 社 の 約 款 と は 異 な っ て い る が 、 計 算 方 法 と し て は 、 保 険 料 を 払 い 込 ん だ 年 月 数 に よ り 計 算 す る こ と 、 及 び 特 約 の 保 険 期 間 が 保 険 料 払 込 期 間 と 同 一 の 場 合 は 解 約 払 戻 金 が な い こ と が 示 さ れ て い る に 過 ぎ な い 。 B 社 の 約 款 に は 、 別 表 を 参 照 指 示 す る 規 定 は な い 。 B 社 の 「 ご 契 約 の し お り 」 の 補 足 説 明 は 、 上 記 A 社 の 説 明 及 び 図 と 同 様 の 記 載 が み ら れ る が 、 保 険 料 を 生 命 保 険 の 運 営 に 必 要 な 経 費 に あ て る と い う 説 明 に お い て 、 括 弧 書 き で 、 経 費 ( 販 売 、 証 券 作 成 、 維 持 管 理 等 の 経 費 ) が 例 示 さ れ て い る 。 契 約 締 結 時 に 説 明 書 面 と し て 申 込 者 に 交 付 さ れ る 注 意 喚 起 情 報 に お い て も 、「 ご 契 約 の し お り 」に 掲 載 さ れ て い る 補 足 説 明 の 要 約 が 示 さ れ て い る 。

② 変 額 年 金

A 社 の 変 額 年 金 保 険 約 款 3 に よ れ ば 、 保 険 契 約 者 の 中 途 解 約 権 を 定 め る 条 項 の 内 容 は 、 終 身 保 険 の 場 合 と 同 様 で あ る が 、 解 約 返 還 金 に つ い て は 、 変 額 年 金 の 特 性 に 応 じ て 、別 表 を 参 照 指 示 し つ つ 、そ の 計 算 基 準 日 と 計 算 方 法 を 明 記 し て い る 。 具 体 的 に は 、 解 約 返 還 金 は 、 計 算 基 準 日 と し て の 解 約 日 ( 指 定 書 類 到 達 日 末 ) の 積 立 金 額 か ら 、 解 約 日 の 基 本 保 険 金 額 に 契 約 日 か ら 解 約 日 ま で の 年 数 に 応 じ た 別 表 に 定 め る 率 を 乗 じ て 得 た 金 額 を 差 し 引 い た 金 額 と し 、 別 表 に よ っ て 例 示 し た も の で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。 そ の 他 、 契 約 日 か ら 起 算 し て 1 0 日 以 内 に 解 約 が あ っ た と き の 例 外 計 算 方 法 、 計 算 基 準 日 、 特 別 勘 定 資 産 の 売 買 に 伴 う 変 則 事 項 を 例 外 的 に 定 め て い る が 、原 則 は 上 記 の 計 算 原 則 に よ る も の と 思 わ れ る 。別 表 に は 、

2 日 本 生 命 保 険 相 互 会 社 、 有 配 当 終 身 保 険 ( H11) 普 通 保 険 約 款 3 2 条 、3 3 条 参 照 。

3 第 一 生 命 保 険 相 互 会 社 、 引 出 機 能 付 災 害 2 割 加 算 型 変 額 年 金 保 険 ( H1 6) 普 通 保 険 約 款 2 5 条 、2 6 条 参 照 。

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経 過 年 数 1 年 か ら 7 年 ま で が 毎 年 、 以 後 1 0 年 目 か ら 5 年 ご と に 、5 種 類 の 特 別 勘 定 の 運 用 実 績 に 応 じ た 解 約 返 還 金 額 が 例 示 さ れ て い る 。 も っ と も こ の 例 表 の 下 に 示 さ れ て い る 小 さ な 文 字 の 注 意 書 き に は 、 特 別 勘 定 の 運 用 実 績 と し て 示 さ れ た 例 示 金 額 は 、 特 別 勘 定 の 運 用 に か か わ る 費 用 と 契 約 の 締 結 ・ 維 持 な ど に 必 要 な 費 用 ( 保 険 契 約 関 係 費 ) を 控 除 し た 後 の 数 値 で あ る こ と 、 及 び 契 約 日 か ら 1 0 年 経 過 後 の 年 単 位 の 契 約 応 答 日 前 に お い て は 、 経 過 年 数 に 応 じ て 「 基 本 保 険 金 額 × 解 約 控 除 率 」 の 解 約 控 除 を 積 立 金 額 か ら 差 し 引 い て 計 算 す る こ と 等 が 付 け 加 え ら れ て い る 。 し た が っ て 、 こ れ ら の 注 意 書 き を あ わ せ て 解 読 す る こ と に よ り 、 は じ め て 解 約 返 戻 金 額 の 例 示 計 算 方 法 及 び 例 示 金 額 を 理 解 す る こ と が 可 能 に な る 。

補 足 説 明 の 役 割 を 果 た す「 ご 契 約 の し お り 」で は 、解 約 返 還 金 の 説 明 の 箇 所 で 、 経 過 年 数 1 0 年 目 ま で の 解 約 控 除 率 が 具 体 的 数 値 で 示 さ れ 、 ま た 特 別 勘 定 の 資 産 総 額 に 対 す る 年 率 ま た は 毎 月 の 一 定 額 で 示 さ れ た 契 約 関 係 費 、 特 別 勘 定 毎 に 設 定 さ れ た 運 用 に か か る 費 用 が 示 さ れ て い る 。 こ の 点 に 関 連 し て 、 契 約 申 込 時 に 交 付 さ れ る 注 意 喚 起 情 報 書 面 に お い て 、 解 約 返 還 金 額 が 一 時 払 保 険 料 の 金 額 を 下 回 る こ と が あ る こ と 、 契 約 後 1 0 年 未 満 で 解 約 す る 場 合 に は 、 運 用 部 分 に お い て 解 約 控 除 が 差 し 引 か れ る こ と 等 が 説 明 さ れ て い る 。 さ ら に 商 品 の し く み と し て の 給 付 内 容 を 説 明 す る 箇 所 に お い て 、 特 別 勘 定 の 運 用 実 績 と 解 約 返 還 金 額 に 関 し 、 や や 詳 し い 文 章 で 別 表 の 補 足 説 明 が 加 え ら れ て い る 。

③ 医 療 保 険

C 生 命 保 険 会 社 ( 以 下 「 C 社 」 と い う ) の が ん 保 険 約 款 4 に お い て は 、 上 記 の 保 険 会 社 と 同 様 に 、「 保 険 契 約 者 は 、将 来 に 向 か っ て 保 険 契 約 を 解 約 し 、解 約 払 戻 金 を 請 求 」で き る こ と を 定 め て い る 。解 約 払 戻 金 に つ い て は 、「 保 険 料 払 込 期 間 中 の 保 険 契 約 に つ い て は そ の 払 込 年 月 数 に よ り 、 そ の 他 の 保 険 契 約 に つ い て は そ の 経 過 年 月 数 に よ り 計 算 」 す る こ と が 示 さ れ て い る 。 さ ら に 、 契 約 締 結 の 際 に 保 険

4 ア メ リ カ ン フ ァ ミ リ ー 生 命 保 険 会 社 、 が ん 保 険 〔2 0 0 0〕 普 通 保 険 約 款 3 0 条 、3 2 条 、4 6 条 参 照 。

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契 約 者 の 申 出 を 受 け て 、 保 険 者 が 承 諾 し た 場 合 は 、 低 解 約 払 戻 金 も し く は 無 解 約 払 戻 金 に 関 す る 特 則 が 適 用 で き る よ う に な っ て い る 。 保 険 契 約 者 は 、 会 社 所 定 の 範 囲 内 で 低 解 約 払 戻 金 割 合 を 指 定 す る か 、 も し く は 解 約 払 戻 金 を 0 と 指 定 す る 方 法 を 選 択 す る こ と が で き る 。そ し て 、保 険 料 払 込 期 間 中 の 低 解 約 払 戻 金 額 は 、「 普 通 保 険 約 款 に よ り 計 算 し た 解 約 払 戻 金 に 、 指 定 さ れ た 低 解 約 払 戻 金 割 合 を 乗 じ て 計 算 す る 」 こ と が 、 明 確 に 規 定 さ れ て い る 。 こ の 低 解 約 払 戻 金 割 合 は 、 契 約 後 変 更 す る こ と が 認 め ら れ て お ら ず 、か つ 、こ の 特 則 の み を 解 約 す る こ と も で き な い 。 解 約 払 戻 金 を ゼ ロ と 指 定 し た 場 合 は 、 保 険 料 払 込 期 間 中 の 保 険 契 約 の 解 約 払 戻 金 は な い こ と が 約 款 上 明 記 さ れ て い る 。

C 社 の 「 ご 契 約 の し お り 」 に お い て も 、 他 の 保 険 者 の 説 明 と 同 様 に 、 預 貯 金 の よ う に 保 険 料 が そ の ま ま 積 立 て ら れ る も の で な い こ と 、 保 険 料 の う ち 一 部 が 年 々 の 給 付 金 等 の 支 払 に 、 ま た 一 部 は 契 約 を 維 持 す る た め の 費 用 に あ て ら れ る し く み に な っ て い る こ と 、 し た が っ て 途 中 で 解 約 す る と 解 約 払 戻 金 は 全 く な い か 、 あ っ て も 払 込 保 険 料 の 合 計 額 に 比 べ て 少 な い 金 額 に な る こ と が 示 さ れ て い る ( こ の 部 分 は 下 線 を 引 い て 強 調 さ れ て い る )。さ ら に 解 約 払 戻 金 0 コ ー ス を 選 択 し た 場 合 に は 、 保 険 料 払 込 期 間 中 に 解 約 し た 場 合 の 解 約 払 戻 金 が な い こ と が 、 下 線 を 引 い て 強 調 説 明 さ れ て お り 、 そ の 理 由 と し て 、 保 険 料 が 割 安 に な っ て い る こ と が 挙 げ ら れ て い る 。

④ 積 立 傷 害 保 険

D 損 害 保 険 株 式 会 社 ( 以 下 「 D 社 」 と い う ) の 長 期 積 立 傷 害 保 険 に 適 用 さ れ る 約 款 5 に お い て は 、 保 険 契 約 者 が 保 険 者 に 対 す る 書 面 に よ る 通 知 を も っ て 保 険 契 約 を 解 除 で き る こ と 、 解 除 の 効 果 は 将 来 効 で あ る こ と 、 及 び 既 に 払 い 込 ま れ た 保 険 料 か ら 別 表 に 掲 げ る 短 期 料 率 に よ っ て 計 算 し た 保 険 料 を 差 し 引 い て 残 額 を 返 還 す る こ と が 、共 通 ル ー ル と し て 定 め ら れ て い る 。長 期 積 立 型 の 傷 害 保 険 の 場 合 は 、

5 東 京 海 上 日 動 火 災 保 険 株 式 会 社 、 新 積 立 傷 害 保 険 (2 0 0 7 8 1 日 以 降 始 期 用 ) 普 通 保 険 約 款 2 0 4 項 、2 1 条 、2 2 2 項 、 積 立 型 基 本 特 約 条 項 9 条 参 照 。

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さ ら に 、 別 表 に よ り 計 算 し た 返 れ い 金 お よ び 当 会 社 の 定 め る 方 法 に よ り 計 算 し た 返 れ い 金 の 合 計 額 を 保 険 契 約 者 に 支 払 う こ と が 定 め ら れ て い る 。 別 表 に は 、 保 険 期 間 5 年 、1 0 年 の 場 合 の 保 険 料 払 込 期 間 に 応 じ た 標 準 例 表 、及 び 計 算 基 準 日 が 解 除 日 で あ る こ と が 記 載 さ れ て い る が 、 具 体 的 な 金 額 に つ い て は 保 険 者 へ の 問 い 合 わ せ を 促 し て い る 。 ま た 、 保 険 契 約 者 か ら の 解 除 の 申 出 が あ っ た と き は 、 B 表 と 呼 ば れ る も の が 適 用 さ れ る こ と が 記 さ れ て い る が 、 そ の 理 由 は 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 解 約 時 の 返 戻 金 に 関 す る 「 ご 契 約 の し お り 」 に よ る 補 足 説 明 を み る と 、 補 償 部 分 に 相 当 す る 保 険 料 は 、 解 約 日 以 降 の 保 険 期 間 に 対 応 す る 金 額 を 保 険 者 所 定 の 方 法 に よ り 算 出 し て 返 戻 す る こ と 、 月 払 、 団 体 扱 の 場 合 は 返 戻 金 が な い こ と が 説 明 さ れ て い る 。 他 方 、 積 立 部 分 に 相 当 す る 保 険 料 は 、 解 約 日 ま で の 経 過 期 間 に 応 じ て 、 こ の 契 約 に 適 用 さ れ る 予 定 利 率 で 計 算 し た 金 額 を 基 準 に 、 保 険 者 所 定 の 方 法 で 算 出 し て 返 戻 す る こ と が 示 さ れ て い る が 、具 体 的 な 金 額 に つ い て は 、 取 扱 い 代 理 店 、 扱 い 者 ま た は 保 険 者 に 問 い 合 わ せ る こ と を 促 し て い る 。

( 2 ) 保 険 約 款 の 特 徴 お よ び 問 題 点 ① 保 険 契 約 者 の 中 途 解 除 権

上 記 2 .( 1 ) で 検 討 し た 保 険 約 款 は い ず れ も 、 保 険 金 及 び 年 金 の 支 払 事 由 発 生 前 と い う 一 部 条 件 付 き の 場 合 も あ る が 、 契 約 期 間 中 に 保 険 契 約 者 が 将 来 に 向 か っ て そ の 保 険 契 約 を 解 除 し 、 解 約 返 戻 金 を 請 求 で き る こ と が 定 め ら れ て い る 。 但 し 、保 険 料 払 込 期 間 中 は 、通 常 の 解 約 返 戻 金 よ り 低 い 金 額 の 解 約 返 戻 金 を 支 払 い 、 も し く は 解 約 返 戻 金 を 支 払 わ な い 特 則 を 合 意 し た 場 合 は 、 そ の 特 則 を 解 約 す る こ と が で き な い た め 、 保 険 料 払 込 期 間 中 に 通 常 の 解 約 返 戻 金 が 支 払 わ れ る 契 約 形 態 に 変 更 す る こ と は で き な い し く み に な っ て い る 合 意 に つ い て は 、 保 険 契 約 者 に 十 分 理 解 で き る よ う 、 保 険 約 款 で 明 記 す る 必 要 が あ る よ う に 思 わ れ る 。 ご 契 約 の し お り に お け る 補 足 説 明 に お い て 、 こ の よ う な 低 解 約 返 戻 金 特 則 に よ り 、 割 安 な 保 険 料 が 維 持 さ れ 得 て い る こ と に 関 す る 簡 単 な 説 明 は あ る が 、 保 険 契 約 者 の 中 途 解 約 権 を 制 限 す る 以 上 、合 理 的 な 根 拠 に 関 す る 説 明 が 更 に 要 請 さ れ る も の と 考 え る 。

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② 解 約 返 戻 金 の 計 算

上 記 で 検 討 し た 解 約 返 戻 金 の 計 算 に 関 す る 約 款 は 、 大 き く 分 け て 三 つ の 型 に 分 類 さ れ 得 る と 考 え ら れ る 。第 一 に 、約 款 本 文 に は 端 的 に 、「 会 社 の 定 め る 方 法 に よ り 計 算 す る こ と 」 を 定 め 、 具 体 例 に つ い て は 別 表 を 参 照 指 示 す る に と ど め て い る も の 、 第 二 に 、 解 約 返 戻 金 は 保 険 料 払 込 期 間 も し く は 保 険 契 約 経 過 期 間 に 応 じ て 計 算 さ れ る と い う 簡 潔 な 計 算 方 法 を 示 し 、特 に 別 表 の 参 照 指 示 を し て い な い も の 、 第 三 に 、こ れ は 変 額 年 金 の 特 性 上 こ の よ う な 記 載 に な っ て い る も の と 思 わ れ る が 、 約 款 本 文 に お い て 、 解 約 返 戻 金 計 算 の 基 準 日 、 及 び 計 算 方 法 の 概 要 を 示 し た う え で 、具 体 例 及 び 更 に 理 解 が 求 め ら れ る 計 算 方 法 の 詳 細 に 関 し て 別 表 の 説 明 に 委 ね 、 参 照 指 示 し て い る も の が あ る 。

ま た 「 ご 契 約 の し お り 」 の 補 足 説 明 に お い て は 、 第 一 分 野 の 場 合 は 、 契 約 例 に 関 す る 図 を 用 い て 経 過 年 数 に よ る 総 払 込 保 険 料 と 解 約 返 戻 金 額 の 差 が 明 ら か に な る 工 夫 が な さ れ た り す る も の も あ る が 、 第 三 分 野 の 場 合 は 、 極 力 、 簡 潔 で わ か り す い 説 明 に と ど め て い る よ う に 見 受 け ら れ る 。 解 約 返 戻 金 に 関 す る 説 明 そ の も の は 、 預 貯 金 と の 相 違 に 着 目 し て 、 保 険 料 の う ち 、 年 々 の 保 険 金 等 の 支 払 に あ て ら れ る 部 分 、 お よ び 契 約 の 締 結 ・ 維 持 に 必 要 な 経 費 に あ て ら れ た 部 分 を 除 い た 残 額 と し て 、 あ ら か じ め 定 め た 金 額 等 と 記 載 す る こ と に よ り 、 総 払 込 保 険 料 よ り 少 な く な る こ と が あ る こ と 、契 約 締 結 か ら 短 期 間 で 解 約 し た 場 合 は 、ま っ た く な い か 、 あ る と し て も わ ず か で あ る こ と が 注 意 喚 起 さ れ て い る 。

変 額 年 金 の 補 足 説 明 は 、 各 保 険 契 約 に か か る 運 用 費 用 、 解 約 控 除 額 が 具 体 的 な パ ー セ ン テ ー ジ で 明 ら か に さ れ て い る が 、 契 約 経 費 と し て 新 契 約 費 及 び そ の 他 の 維 持 費 が 一 括 し て 、 主 契 約 の 特 別 勘 定 の 資 産 総 額 に 対 す る 年 率 で 示 さ れ て い る た め 、 そ の 数 値 の 根 拠 を 知 る こ と は 困 難 な 状 態 と な っ て い る 。

③ 問 題 点

解 約 返 戻 金 の 計 算 に 関 す る 約 款 お よ び そ の 補 足 説 明 か ら 、 解 約 返 戻 金 が 、 保 険 者 所 定 の 計 算 方 法 に よ り 、 そ の 保 険 契 約 の 経 過 年 月 数 も し く は 保 険 料 払 込 年 月 数

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等 に 応 じ て 算 定 さ れ る こ と 、 そ の 具 体 例 が 一 覧 表 の 数 値 で 示 さ れ て い る こ と 、 及 び 預 貯 金 と 異 な り 、 及 び 保 険 金 の 支 払 や 保 険 契 約 締 結 ・ 維 持 の た め に も 保 険 料 が 使 用 さ れ る こ と を 理 解 す る こ と は 可 能 で あ る が 、 具 体 的 に そ の 金 額 の 合 理 性 及 び 妥 当 性 を 判 断 す る た め に 必 要 な 客 観 的 根 拠 を そ の 約 款 の 内 容 そ の も の か ら 読 み 取 る の は 難 し い 状 況 に あ る と 考 え ら れ る 。

3. 現 行 法 に お け る 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制

( 1 ) 保 険 監 督 法 に よ る 規 制 ① 保 険 約 款 の 記 述 に 関 す る 規 制

保 険 業 法 5 条 1 項 3 号 は 、 普 通 保 険 約 款 に 記 載 さ れ た 事 項 が 、 イ 保 険 契 約 者 等 の 保 護 に 欠 け る お そ れ の な い も の で あ る こ と 、 ロ 保 険 契 約 内 容 に 関 し 、 特 定 の 者 に 対 し 不 当 な 差 別 的 取 扱 い を す る も の で な い こ と 、 ハ 保 険 契 約 の 内 容 が 公 序 良 俗 を 害 す る 行 為 を 助 長 し 、 ま た は 誘 発 す る お そ れ の な い も の で あ る こ と 、 ニ 保 険 契 約 者 等 の 権 利 義 務 そ の 他 保 険 契 約 の 内 容 が 、 保 険 契 約 者 等 に と っ て 明 確 か つ 平 易 に 定 め ら れ た も の で あ る こ と 、 ホ そ の 他 内 閣 府 令 で 定 め る 基 準 、 に 適 合 す る か ど う か を 保 険 業 免 許 に 審 査 基 準 と し て い る 。

保 険 業 法 施 行 規 則 11 条 3 号 は 、 保 険 業 法 5 条 1 項 3 号 ホ の 具 体 的 基 準 の 一 つ と し て 、「 保 険 契 約 の 解 約 に よ る 返 戻 金 の 開 示 方 法 が 、保 険 契 約 者 等 の 保 護 に 欠 け る お そ れ の な い 適 正 な も の で あ り 、か つ 、明 瞭 に 定 め ら れ て い る こ と 。」を 掲 げ て い る 。 し た が っ て 、 解 約 返 戻 金 に 関 す る 約 款 に つ い て は 、 こ の 基 準 に 従 い 、 そ の 内 容 の 開 示 方 法 の 適 切 性 及 び 明 瞭 性 が 監 督 法 上 審 査 さ れ る こ と に な る 。

さ ら に 新 商 品 審 査 に 関 す る 保 険 監 督 指 針 Ⅳ- 1 - 1 0 に よ れ ば 、 解 約 返 戻 金 の 金 額 を 保 険 証 券 等 に 表 示 す る 、 計 算 方 法 等 を 約 款 に 掲 載 す る な ど 、 保 険 契 約 者 等 に 明 瞭 に 開 示 す る た め の 措 置 が 講 ぜ ら れ て い る こ と が 、 新 商 品 審 査 に お け る 留 意 点 と さ れ て い る 。 も っ と も 保 険 証 券 は 、 契 約 成 立 時 に 保 険 者 の 承 諾 の 意 思 表 示 の 通 知 と と も に 保 険 契 約 者 に 送 付 さ れ る の が 通 例 で あ る た め 、 契 約 申 込 の 判 断 を す る 際 に 決 定 的 に 重 要 な の は 、約 款 及 び そ の 補 足 説 明 に お け る 明 瞭 な 開 示 の 措 置 で あ る 。

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し た が っ て 、 ど の 程 度 ま で 解 約 返 戻 金 の 計 算 根 拠 、 計 算 方 法 を 明 瞭 に 保 険 約 款 に 記 述 し 得 る か が 課 題 と な る 。 そ の 場 合 、 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 が 、 保 険 契 約 者 等 の 権 利 及 び 義 務 、 と り わ け 保 険 契 約 者 等 が 被 る 可 能 性 の あ る 経 済 的 不 利 益 が 、 明 瞭 に 理 解 で き る よ う に 記 述 さ れ て い る か 否 か 、 及 び そ の 不 利 益 を も ら た す 計 算 基 礎 に 基 づ く 計 算 が 、 合 理 的 な 根 拠 に よ る も の で あ る か 否 か が 、 基 準 と な り 得 る と 考 え ら れ る 。 こ の 基 準 は 、 ド イ ツ 法 で 展 開 さ れ て き た 透 明 性 原 則 と 同 様 で あ る 。

② 保 険 約 款 の 内 容 に 関 す る 契 約 締 結 時 の 説 明 義 務

保 険 業 法 1 0 0 条 の 2 は 保 険 者 に 対 し 、業 務 に 係 る 重 要 な 事 項 の 顧 客 へ の 説 明 措 置 を 義 務 づ け 、具 体 的 に は 保 険 業 法 施 行 規 則 5 3 条 1 項 3 号 に お い て 、保 険 者 は 、 予 定 解 約 率 を 用 い 、 か つ 解 約 返 戻 金 を 支 払 わ な い こ と を 約 し た 保 険 契 約 の 募 集 に 際 し て 、 保 険 募 集 人 が そ の 旨 を 示 し た 説 明 書 面 を 顧 客 に 交 付 し 、 説 明 を 行 う た め の 措 置 を 講 じ な け れ ば な ら な い と し て い る 。

保 険 業 法 3 0 0 条 1 項 1 号 に よ り 保 険 募 集 時 に 説 明 す べ き 重 要 事 項 、な ら び に 同 条 同 項 4 号 の 不 利 益 事 実 の 説 明 事 項 が 、 こ の 問 題 に 関 連 し て い る 。 具 体 的 に は 、 保 険 監 督 指 針 Ⅲ- 3 - 3 - 2( 2 )( 3 ) に よ れ ば 、 保 険 者 は 契 約 概 要 及 び 注 意 喚 起 情 報 と し て 、 保 険 契 約 の 種 類 及 び 性 質 等 に 応 じ て 解 約 及 び 解 約 返 戻 金 に 関 す る 説 明 を し な け れ ば な ら ず 、 ま た 、 一 定 金 額 の 金 銭 を い わ ゆ る 解 約 控 除 等 と し て 保 険 契 約 者 が 負 担 す る こ と と な る 場 合 が あ る こ と を 顧 客 に 告 げ 、 そ の 内 容 を 顧 客 が 十 分 に 了 知 し た こ と の 確 認 を 適 正 に 取 ら な け れ ば な ら な い と さ れ て い る 。

( 2 ) 消 費 者 契 約 法 に よ る 規 制

① 保 険 約 款 の 内 容 規 制 に か か わ る 規 律

解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制 に か か わ る 消 費 者 契 約 法 上 の 規 律 は 、9 条 1 号 及 び 1 0 条 で あ る 。 消 費 者 契 約 の 内 容 規 制 に か か わ る 消 費 者 契 約 法 の 規 範 目 的 は 、 情 報 ・ 交 渉 力 に お い て 劣 位 に あ る 消 費 者 の 正 当 な 利 益 が 不 当 な 内 容 の 契 約 条 項 に よ り 侵 害 さ れ た 場 合 に 、 こ の よ う な 不 当 条 項 の 効 力 を 否 定 す る こ と に よ り 当 該 消 費 者 の 利 益 を 回 復 す る こ と に あ る 。 し た が っ て 、 消 費 者 契 約 全 体 の 効 力 を 有 効 と し

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つ つ 、 不 当 条 項 に 該 当 す る も の の み を 無 効 と す る も の で あ る 。9 条 1 号 は 、 事 業 者 が 消 費 者 契 約 に お い て 、契 約 の 解 除 に 伴 う 損 害 賠 償 額 の 予 定 等 を 定 め た と き は 、 消 費 者 契 約 の 解 除 に 伴 い 当 該 事 業 者 に 生 ず べ き 平 均 的 損 害 を 超 え る 損 害 賠 償 を 消 費 者 に 請 求 す る こ と が で き な い こ と と し て い る 。 こ の 平 均 的 損 害 と は 、 解 除 の 時 期 等 に よ り 同 一 の 区 分 に 分 類 さ れ る 複 数 の 同 種 の 契 約 解 除 に 伴 い 、 当 該 事 業 者 に 生 じ る 損 害 の 額 の 平 均 値 を 意 味 す る も の で あ り 、 こ の 額 は あ ら か じ め 消 費 者 が 算 定 す る こ と が 可 能 な も の で あ る と 解 さ れ て い る 。 本 号 に 該 当 す る 損 害 賠 償 予 定 条 項 か ど う か は 、 文 言 に よ る の で は な く 、 そ の 条 項 の 意 図 す る 実 質 か ら 判 断 さ れ な け れ ば な ら な い と 解 す べ き で あ る 。つ ま り 、形 式 的・硬 直 的 に 解 釈 す べ き で な く 、 規 定 の 趣 旨 で あ る 消 費 者 利 益 確 保 に 合 致 す る 柔 軟 な 解 釈 が 求 め ら れ て い る 6

消 費 者 契 約 法 1 0 条 は 、 民 法 、 商 法 そ の 他 の 法 律 の 任 意 規 定 の 適 用 に よ る 場 合 に 比 べ 、 消 費 者 の 権 利 を 制 限 し 又 は 消 費 者 の 義 務 を 加 重 す る 特 約 で 、 そ の 程 度 が 民 法 1 条 2 項 の 基 本 原 則 ( 信 義 則 ) に 反 す る も の の 効 力 を 否 定 し て い る 。 こ の 場 合 の 信 義 則 は 、判 例 上 、「 当 該 事 案 に お け る 一 切 の 個 別 事 情 を 考 慮 し た 上 で 、契 約 内 容 が 一 方 当 事 者 に 不 当 に 不 利 で あ る こ と 」 を 意 味 す る も の と 解 さ れ て い る 。 ま た 1 0 条 の 「 消 費 者 の 利 益 を 一 方 的 に 害 す る 」 場 合 と は 、 消 費 者 の 法 的 に 保 護 さ れ て い る 利 益 を 信 義 則 に 反 す る 程 度 に 両 当 事 者 間 の 衡 平 を 損 な う 形 で 侵 害 し て い る も の を い う 。 解 釈 上 1 0 条 の 任 意 規 定 の 範 囲 に 関 し て は 、「 民 法 、 商 法 、 そ の 他 の 法 律 」 に は 、 少 な く と も 最 上 級 審 判 例 な い し 確 立 し た 判 例 も 含 ま れ る と 解 す る べ き で あ り 、 ま た 当 該 条 項 が 明 確 で 理 解 し や す い も の あ る か ど う か が 、 信 義 則 違 反 の 評 価 基 準 の 一 つ に な り 得 る と 考 え ら れ 、 し た が っ て 、 こ の よ う な 透 明 性 原 則 に 反 す る 契 約 内 容 は 、 消 費 者 契 約 法 3 条 1 項 の 事 業 者 の 努 力 義 務 違 反 で あ る の み な ら ず 、1 0 条 の 信 義 則 の 要 請 に 反 す る こ と に な る 7 可 能 性 が あ る 。

さ ら に 、消 費 者 契 約 法 1 2 条 3 項 に よ り 、保 険 者 が 9 条 1 項 ま た は 1 0 条 に 反 す

6 落 合 誠 一 『 消 費 者 契 約 法 』1 3 61 3 7 頁 。

7 落 合 誠 一 、 前 掲 書 1 4 71 5 2 頁 。 山 下 友 信 『 保 険 法 』1 3 01 3 1 頁 。

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る 内 容 の 保 険 約 款 に よ り 、 契 約 の 申 込 ま た は そ の 承 諾 の 意 思 表 示 を 現 に 行 い 、 ま た は 行 う お そ れ が あ る と き は 、適 格 消 費 者 団 体 は 、消 費 者 の 利 益 の 擁 護 の た め に 、 当 該 行 為 の 停 止 、 も し く は 予 防 ま た は 当 該 行 為 に 供 し た 約 款 の 廃 棄 も し く は 除 去 等 の 措 置 を 請 求 す る こ と も で き る よ う に な っ た 。

② 消 費 者 契 約 法 に よ る 規 制 の 限 界

現 行 の 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 を 検 討 す る 場 合 は 、 解 約 返 戻 金 の 払 戻 自 体 が 独 自 の 給 付 で あ り 、 契 約 の 解 除 に 伴 う 保 険 者 の 損 害 賠 償 額 を 予 定 す る も の で は な い と 解 す る な ら ば 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 に よ る 内 容 規 制 は 及 ば な い こ と に な る が 、 保 険 契 約 が 中 途 で 解 約 さ れ た 場 合 の 精 算 に か か る 付 随 的 給 付 で あ る と 解 す る な ら ば 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 の 適 用 対 象 と な る と 解 さ れ 得 る 8

上 記 で 検 討 し た 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 を 見 る 限 り 、 そ の 保 険 契 約 の 基 本 給 付 と は 別 個 に 、 保 険 者 の 定 め る 計 算 方 法 に 従 い 、 解 約 さ れ た 場 合 の 精 算 に か か る 付 随 的 給 付 の 額 が 算 定 さ れ 、 保 険 契 約 者 に 払 い 戻 さ れ る こ と を 定 め て い る も の と 解 す る の が 相 当 で あ り 、 し た が っ て 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 の 適 用 対 象 に な る と 考 え ら れ る 。 も っ と も 保 険 者 が ど の よ う な 合 理 的 根 拠 に 基 づ き 、 い か な る 計 算 基 礎 を 用 い て 、 そ の 保 険 契 約 者 の 負 担 す べ き 契 約 関 係 費 用 及 び 解 約 控 除 額 を 算 出 し 、 解 約 時 に そ の 金 額 を 支 払 保 険 料 も し く は そ の 保 険 契 約 の た め に 積 み 立 て た 金 額 か ら そ れ ら の 金 額 を 差 し 引 く か に つ い て 、 約 款 及 び そ の 補 足 説 明 の 内 容 か ら 明 ら か で な い 場 合 は 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 の 事 業 者 の 平 均 的 損 害 の 妥 当 性 を 保 険 契 約 者 が 証 明 す る こ と は 極 め て 困 難 で あ る 。

解 約 返 戻 金 の 計 算 に つ い て 直 接 規 律 す る 任 意 規 定 は 現 行 法 に は な い が 、 商 法 6 8 0 条 2 項 及 び 6 8 3 条 2 項 の 「 被 保 険 者 ノ 為 ニ 積 立 テ タ ル 金 額 」 が 、 解 約 の 際 に 解 約 返 戻 金 と し て 保 険 契 約 者 に 払 い 戻 さ れ る べ き で あ る と 解 さ れ て い る 。 そ し て こ の 金 額 は 、 具 体 的 に は 監 督 法 で あ る 保 険 業 法 施 行 規 則 1 0 条 3 号 の 「 返 戻 金 の 額 そ の 他 の 被 保 険 者 の た め に 積 立 て る べ き 額 を 基 礎 と し て 計 算 し た 額(「 契 約 者 価

8 山 下 友 信 、 前 掲 書 6 5 46 5 6 頁 。

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額 」)」 を 意 味 す る と 考 え ら れ て い る 。 ま た 保 険 業 法 施 行 規 則 1 2 条 1 号 に よ り 、 契 約 者 価 額 の 計 算 が 、 保 険 契 約 者 等 に と っ て 不 当 に 不 利 益 で な い こ と が 、 監 督 法 上 事 前 審 査 さ れ て い る 。 し た が っ て 、 消 費 者 契 約 法 1 0 条 に よ る 内 容 規 制 の 場 合 は 、 商 法 6 8 0 条 2 項 及 び 6 8 3 条 2 項 の 「 被 保 険 者 ノ 為 ニ 積 立 テ タ ル 金 額 」 を 基 準 に 計 算 さ れ た 解 約 返 戻 金 額 に 比 べ て 、 消 費 者 の 利 益 を 一 方 的 に 不 利 に す る 内 容 で あ る か 否 か 、 も し く は 、 不 透 明 な 記 述 に よ り 消 費 者 は そ の 権 利 及 び 義 務 を 正 確 に 理 解 で き な い た め 、 消 費 者 の 契 約 締 結 判 断 を 困 難 に す る 状 態 を 作 出 し て い な い か 否 か が 問 題 と な る 。

現 行 法 の 下 で は 、 解 約 返 戻 金 額 そ れ 自 体 が 不 当 で な い こ と は 保 険 監 督 に よ り 担 保 さ れ て い る も の と 考 え ら れ る た め 、 問 題 は モ デ ル と な る 任 意 規 定 が な い 中 で 、 保 険 監 督 が な さ れ て い る こ と を も っ て 、 解 約 返 戻 金 約 款 が 消 費 者 契 約 法 1 0 条 の 不 当 条 項 規 制 に 耐 え ら れ る も の と 判 断 さ れ 得 る か 否 か に あ る 。 そ の 場 合 、 監 督 法 に 定 め る 内 容 規 制 基 準 を 満 た す も の で あ れ ば 足 り る の か 、 そ れ と も 当 該 契 約 に お け る 平 均 的 消 費 者 の 理 解 に 照 ら し 、 契 約 内 容 と し て 必 要 な 情 報 提 供 及 び 透 明 性 が 欠 け て い る た め 、 そ の 消 費 者 の 契 約 決 定 自 由 が 侵 害 さ れ て い る と 認 め ら れ る な ら ば 、 不 当 条 項 規 制 の 対 象 に な り 得 る か を 検 討 す る 必 要 が あ る 。

さ ら に 解 約 返 戻 金 約 款 が 、 消 費 者 契 約 法 1 2 条 3 項 に よ り そ の 使 用 を 差 し 止 め ら れ た 場 合 に 、 任 意 規 定 が な い と き に は 、 保 険 者 は 何 を 判 断 基 準 と し て 、 い か な る 手 続 に 基 づ き 、 そ の 契 約 内 容 の 欠 缺 を 迅 速 か つ 適 切 に 補 充 す べ き か と い う 問 題 も 残 さ れ て い る 。

( 3 ) ド イ ツ に お け る 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制

① 透 明 性 原 則 に よ る 内 容 規 制

ド イ ツ に お い て は 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 は 、 合 意 さ れ た 一 時 金 を 支 払 う 生 命 保 険 契 約 に つ い て 、 現 行 保 険 契 約 法 1 7 6 条 3 項 に 片 面 的 強 行 規 定 の 定 め が あ り 、 保 険 会 社 が 使 用 す る 解 約 返 戻 金 の 計 算 に 関 す る 普 通 保 険 約 款 の 内 容 は 、 保 険 契 約 法 1 7 6 条 3 項 の 法 規 の 文 言 を 再 現 す る 宣 言 的 条 項 と な っ て い た 。 ま た 解 約 控 除 に つ

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い て も 、保 険 契 約 法 1 7 6 条 4 項 の 解 約 控 除 の 合 意 に 関 す る 片 面 的 強 行 規 定 に 従 い 、 約 款 に 関 連 法 規 を 参 照 指 示 し た う え で 、 そ の 内 容 を 簡 潔 に 再 現 し て い る 宣 言 的 条 項 を 使 用 し て い た 。

た と え ば 、 連 邦 通 常 裁 判 所 2 0 0 1 年 5 月 9 日 で 無 効 と さ れ た 養 老 保 険 の 解 約 返 戻 金 約 款 は 、 次 の よ う に 規 定 さ れ て い た 。「6 条 2 項 ( a ) あ な た は 保 険 契 約 の 満 了 ま で に 、 書 面 に よ り い つ で も 保 険 を 解 約 す る こ と が で き ま す 。 解 約 後 に 、 解 約 返 戻 金 が 存 在 す る 場 合 は 、 あ な た は 解 約 返 戻 金 を 受 け 取 り ま す 。 解 約 返 戻 金 は 、 承 認 さ れ た 保 険 数 学 の 算 式 に 従 っ て 、 継 続 し て い る 保 険 期 間 の 終 結 に 対 す る あ な た の 保 険 の 時 価 額 と し て 計 算 さ れ ま す ( 保 険 契 約 法 1 7 6 条 3 項 )。( b ) 解 約 の 時 点 ま で に 保 険 料 支 払 義 務 が あ る 場 合 は 、 時 価 計 算 の 際 に 適 切 と み な さ れ る 控 除 が な さ れ ま す ( 保 険 契 約 法 1 7 6 条 4 項 )。・ ・ ・ 」

し か し な が ら 、 こ の 約 款 は 、 法 規 の 内 容 を 再 現 す る 宣 言 的 条 項 で あ る た め 当 時 の 約 款 規 制 法 8 条 ( 現 行 民 法 3 0 7 条 3 項 1 文 ) に よ り 内 容 規 制 の 対 象 外 で あ る と 解 さ れ て い た に も か か わ ら ず 、 約 款 規 制 法 9 条 1 項 ( 現 行 民 法 3 0 7 条 1 項 2 文 、 同 3 項 2 文 ) で 明 文 化 さ れ て い な い も の の 規 制 基 準 と し て 判 例 法 上 確 立 さ れ た 透 明 性 原 則 に 基 づ き 、無 効 と さ れ た 。判 決 理 由 に よ れ ば 、保 険 契 約 法 1 7 6 条 3 項 は 、 保 険 会 社 に よ る 契 約 内 容 の 補 充 を 必 要 と し て い る と さ れ た 。 し た が っ て 保 険 会 社 が 、 普 通 保 険 約 款 で 法 規 の 補 充 を 行 う か ど う か 、 ま た ど の よ う に し て 法 規 の 補 充 を 行 う か に つ き コ ン ト ロ ー ル す る こ と は 、 約 款 規 制 法 8 条 に 反 し て い な い と し 、 十 分 な 透 明 性 が 確 保 さ れ て い な い 解 約 返 戻 金 約 款 は 、 約 款 規 制 法 9 条 1 項 の 意 味 で 保 険 契 約 者 を 不 当 に 不 利 に し て い る と 判 断 さ れ た 。 さ ら に 詳 し く 見 る と 、 解 約 返 戻 金 約 款 の 提 供 す る 情 報 は 、 潜 在 顧 客 が 様 々 な 提 供 商 品 と 比 較 し た う え で 当 該 商 品 を 選 択 す る た め に 必 要 な 情 報 を 提 供 し て い な い こ と 、 解 約 返 戻 金 例 表 は 、 こ の 表 に な い 価 額 が 保 険 数 学 の 算 式 に 従 っ て 計 算 さ れ る こ と の み を 指 摘 し て い る が 、 こ の 追 加 説 明 は 、 解 約 返 戻 金 請 求 権 に 関 し 必 要 か つ 十 分 な 説 明 を 保 険 契 約 者 に 提 供 し て い な い こ と 、 及 び 保 険 期 間 の は じ め に 保 険 契 約 者 が 、 相 当 高 額 な 媒 介 報 酬

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を 含 む 契 約 締 結 費 用 を 負 担 す る こ と に よ る 保 険 契 約 者 の 経 済 的 不 利 益 を 指 摘 し て い な い こ と が 、透 明 性 原 則 に 反 す る 理 由 で あ り 、そ れ ゆ え に 無 効 で あ る と さ れ た 。 そ の 後 、2 0 0 1 年 の 債 務 法 現 代 化 の 過 程 に お い て 、約 款 の 使 用 者 が「 明 瞭 に 理 解 で き な い 条 項 」 を 使 用 す る こ と に よ っ て も 、 契 約 の 相 手 方 に 不 当 な 不 利 益 が 生 ず る 可 能 性 が あ る と い う 、 確 立 さ れ た 判 例 に よ る 透 明 性 原 則 は 、 民 法 3 0 7 条 1 項 及 び 3 項 に 明 文 化 し て 規 定 さ れ る こ と に な っ た 。 も っ と も 、 法 規 の 内 容 を 再 現 す る 宣 言 的 条 項 を 司 法 上 無 効 と し た と し て も 、 そ の 条 項 に 代 わ る 新 た な 約 款 を 補 充 す る 場 合 に 、 再 び 同 様 の 法 規 の 内 容 を 規 定 す る こ と に な る た め 、 そ も そ も 透 明 性 原 則 違 反 に よ る 宣 言 的 条 項 の 規 制 は 不 能 で あ る と い う 批 判 も あ っ た 。し か し な が ら 、 こ の よ う な 法 規 の 文 言 を 忠 実 に 再 現 す る こ と で 足 り る 狭 い 意 味 で の 宣 言 的 条 項 で は な く 、 法 規 を 参 照 指 示 し て い る だ け の 場 合 や 、 法 規 の 内 容 を 独 自 の 文 言 で 言 い 換 え て 表 現 し て い る 場 合 や 、2 0 0 1 年 5 月 9 日 判 決 の よ う に 法 規 の 内 容 を 補 充 し た 情 報 提 供 が 必 要 な 約 款 の 場 合 の よ う に 、 広 い 意 味 で の 宣 言 的 条 項 は 、 透 明 性 原 則 に よ る 内 容 規 制 の 対 象 に な る と 解 さ れ る に 至 っ た 。

② 約 款 改 訂 及 び そ の 方 法

そ の 後 、 透 明 性 原 則 に 反 し て 保 険 契 約 者 に 不 当 な 不 利 益 を も た ら す も の と し て 無 効 と さ れ た 解 約 返 戻 金 約 款 は 、 現 行 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に 基 づ き 、 保 険 監 督 法 11b 条 に よ り 任 命 さ れ た 独 立 監 査 人 の 同 意 を 得 て 、同 じ 内 容 で は あ る が 、い っ そ う 透 明 化 さ れ た 記 述 に よ る 内 容 に 変 更 さ れ 、 既 契 約 に も 適 用 さ れ る こ と に な っ た 。 無 効 と さ れ た 約 款 の 欠 缺 補 充 方 法 と し て は 、 民 法 3 0 6 条 2 項 に 基 づ き 、 法 規 を 適 用 す る か 、 も し く は 裁 判 官 に よ る 補 充 的 契 約 解 釈 を 通 し て 行 う 方 法 、 及 び 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ り 独 立 監 査 人 の 同 意 を 得 て 行 う 方 法 が 可 能 で あ る が 、保 険 約 款 の 場 合 は 、 同 一 内 容 の 約 款 を 大 量 か つ 迅 速 に 変 更 す る 必 要 が あ る た め 、 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ る 変 更 が 妥 当 で あ る と 解 さ れ て い た 。 こ の 問 題 は 、 そ の 後 連 邦 通 常 裁 判 所 判 決 、 及 び 保 険 契 約 法 改 正 に お い て も 重 要 な 検 討 対 象 と な っ て い た が 、 最 終 的 に は 新 保 険 契 約 法 1 6 4 条 1 項 に お い て 、 両 者 の 方 法 論 の 調 和 が と

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れ た 規 律 が 設 け ら れ る こ と に な っ た 。

以 上 の よ う に 解 約 返 戻 金 約 款 が 、 広 い 意 味 で の 宣 言 的 条 項 で あ り 、 か つ 契 約 締 結 か ら 短 期 間 で 解 約 し た と き に 保 険 契 約 者 が 受 け る 不 利 益 に 関 す る 具 体 的 説 明 の 補 充 を 要 す る こ と を 前 提 と し た 場 合 に 、 二 つ の 問 題 が 新 た に 浮 か び 上 が る こ と に な っ た 。 第 一 に 、 無 効 と さ れ た 約 款 の 代 わ り に 、 法 規 を そ の ま ま 適 用 す る こ と が す で に 認 め ら れ て い な い た め 、 何 ら か の 方 法 で 約 款 の 内 容 を 変 更 し な け れ ば な ら な い が 、 そ の 場 合 に 、 補 充 す べ き 内 容 に 関 し て も 裁 判 官 の 解 釈 に よ り 確 定 さ れ る べ き で あ る か 、 あ る い は 、 保 険 契 約 法 上 認 め ら れ た 保 険 者 の 補 充 権 限 に よ り 、 適 正 な 手 続 と 内 容 の 妥 当 性 検 証 を 経 た 上 で 、 一 方 的 に 変 更 す る こ と が 可 能 で あ る と す べ き か 、 と い う 問 題 が 生 じ た 。 第 二 に 、 補 充 す べ き 内 容 は 、 新 規 に 何 ら か の 情 報 を 盛 り 込 む こ と で は な く 、 そ れ ま で 抽 象 的 に 記 述 し て き た か 、 あ る い は 参 照 指 示 に と ど め て い た た め 不 明 瞭 に な っ て い た 内 容 を 明 確 化 す る こ と で 足 り る の か 、 そ れ と も 、 無 効 と さ れ た 理 由 の 根 本 に 立 ち 戻 っ て 、 必 要 と さ れ る 情 報 を 検 討 し 、 新 た に 約 款 に 規 定 す べ き か と い う 問 題 が 考 察 さ れ る こ と に な っ た 。 こ の 問 題 は 、 学 説 、 判 例 、 消 費 者 団 体 と 保 険 者 と の 間 で 様 々 な 見 解 に 分 か れ て い た が 、 適 切 か つ 迅 速 な 手 続 保 障 、及 び 内 容 規 制 の 目 的 を 考 慮 し た 連 邦 通 常 裁 判 所 2 0 0 5 年 1 0 月 1 2 日 判 決 に よ り 、 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制 は 新 た な 局 面 に 入 る こ と に な っ た 。

こ の 判 決 後 変 更 さ れ 、 多 く の 保 険 者 が 同 様 の 約 款 を 規 定 す る ド イ ツ 保 険 協 会 の 模 範 約 款 9 条 2 項 は 、保 険 契 約 法 1 7 6 条 3 項 の 計 算 方 法 に 関 す る 法 律 上 の 文 言 を 再 現 し た 内 容 に 加 え 、「 解 約 返 戻 金 は 、・ ・ ・ そ の 時 価 と し て 計 算 さ れ ま す 。 こ の 時 価 で は 、・ ・ ・ が 控 除 さ れ ま す 。( ※ 注 、 場 合 に よ っ て は 、 控 除 の 金 額 、 そ の 影 響 は 、 書 面 に よ る 説 明 な い し は 一 覧 法 で 示 す こ と も で き る 。) こ の 控 除 に よ っ て 、 契 約 継 続 中 の 被 保 険 者 全 体 ( ※ 注 略 ) の リ ス ク 状 態 及 び 収 益 状 態 の 変 化 が 補 償 さ れ ま す 。 こ の ほ か に 、 群 団 化 さ れ た 危 険 準 備 金 並 び に 早 期 解 約 の 為 に 減 少 し た 資 本 収 益 の 補 償 が こ の 控 除 に よ っ て 行 わ れ ま す 。( ※ 注 略 )控 除 及 び そ の 控 除 額 に 関 す る そ の 他 の 説 明 並 び に 保 険 数 学 上 の 指 摘 は 、 保 険 約 款 の 補 足 説 明 に 示 さ れ て い

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ま す 。 あ な た が 解 約 す る と き に 、 あ な た が わ れ わ れ に 対 し 、 こ の 控 除 に 基 づ き 計 算 さ れ た 金 額 が 、 根 拠 に 基 づ け ば 適 切 で な い か 、 も し く は そ の 控 除 が 更 に 低 く 計 算 さ れ る べ き で あ る こ と を 証 明 し た 場 合 に 限 り 、 こ の 控 除 は 、 後 者 の 場 合 に は 、 そ の 証 明 に 応 じ て 削 減 さ れ ま す 。」と い う 規 定 を 追 加 し て い る 。ま た チ ル メ ル 式 に よ る 場 合 は 、 別 途 1 0 条 を 設 け 、 新 契 約 費 と チ ル メ ル 式 の 関 係 、 及 び そ の 不 利 益 効 果 に つ い て 詳 し く 規 定 し て い る 。 さ ら に 、 未 償 却 の 新 契 約 費 、 群 団 化 さ れ た 危 険 準 備 金 、 減 少 す る 資 本 収 益 等 に つ い て 、 詳 細 な 補 足 説 明 が 記 述 さ れ て い る 。 ③ あ る べ き 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 追 及

連 邦 通 常 裁 判 所 2 0 0 5 年 1 0 月 1 2 日 判 決 は 、 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 規 制 の あ る べ き 理 念 、 約 款 の 変 更 手 続 保 障 、 及 び 保 険 契 約 法 改 正 に 及 ぼ し た 影 響 を 考 慮 す る と 、 歴 史 的 意 義 の あ る 判 決 で あ る と 位 置 づ け る こ と が で き る 。 第 一 に 、 連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 判 決 に よ り 無 効 と さ れ た 約 款 の 補 充 が 必 要 な 場 合 は 、 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ り 保 険 者 は 監 査 人 の 同 意 を 得 て 適 切 な 手 続 に 基 づ き 、 既 契 約 の 約 款 を 迅 速 に 変 更 で き る 権 限 を 有 す る こ と を 確 認 し て い る 。 第 二 に 、 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ り 、 民 法 3 0 7 条 の 透 明 性 原 則 違 反 に よ り 不 当 条 項 と さ れ た 内 容 の 保 険 約 款 と 同 じ 内 容 の 約 款 を 補 充 す る こ と は 、 無 効 と い う 法 律 上 の 制 裁 の 裏 を 欠 い て そ の 効 果 を 失 わ せ る も の で あ る た め 、民 法 3 0 6 条 2 項 に 定 め る 補 充 的 契 約 解 釈 の 原 則 に 合 致 し な い と い う 判 断 を 示 し た 。つ ま り 、保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 は 、民 法 3 0 6 条 2 項 に 優 先 適 用 さ れ る が 、 監 査 人 に よ る 内 容 の 適 切 性 審 査 に お い て 、 そ の 内 容 が 民 法 3 0 6 条 2 項 の 趣 旨 に 合 致 し て い る も の で あ る か ど う か を 検 討 す べ き で あ り 、 合 致 し な い と 判 断 さ れ る 場 合 は 、保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ り 変 更 さ れ た 保 険 約 款 は 、 再 び 司 法 上 の 内 容 規 制 に よ り 無 効 と さ れ る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し た の で あ る 。 第 三 に 、 不 透 明 な 約 款 に よ り 、 契 約 締 結 時 の 保 険 契 約 者 の 決 定 自 由 及 び 選 択 自 由 へ の 介 入 が 除 去 さ れ な い ま ま 、 経 済 的 不 利 益 が 覆 い 隠 さ れ た 内 容 の 解 約 返 戻 金 約 款 で あ る こ と は 許 さ れ な い た め 、 こ の 点 に 関 す る 透 明 性 が 求 め ら れ る こ と を 明 確 に 示 し 、 か つ 、 保 険 契 約 者 間 の 適 切 な 利 益 を 配 慮 し た 上 で の 早 期 解 約 者 の

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財 産 権 保 護 の 観 点 か ら 、 新 た に 制 定 法 化 が 予 定 さ れ て い る 最 低 解 約 返 戻 金 を 保 障 す る 内 容 が 、補 充 的 契 約 解 釈 の 基 準 と な り 得 る と い う 踏 み 込 ん だ 判 断 が な さ れ た 。

最 終 的 に 新 保 険 契 約 法 1 6 4 条 1 項 は 、こ の 判 決 等 を 考 慮 し 、現 行 保 険 契 約 法 1 7 2 条 2 項 に よ る 保 険 者 の 一 方 的 変 更 権 限 を 引 き 続 き 保 障 し た う え で 、民 法 3 0 6 条 に よ る 約 款 補 充 の 要 件 を 取 り 込 み 、 か つ 、 様 々 な 方 面 か ら 問 題 が あ る と 指 摘 さ れ て き た 監 査 人 の 同 意 を 廃 止 し 、 最 終 的 な 内 容 の 適 切 性 は 、 裁 判 所 の 判 断 に 委 ね る 規 律 に 変 更 さ れ て い る 。 特 に 重 要 な の は 1 項 2 文 の 「 新 し い 条 項 は 、 契 約 の 目 的 を 維 持 し 、保 険 契 約 者 の 利 益 を 適 切 に 考 慮 す る 場 合 に の み 有 効 で あ る 。」と い う 規 定 で あ る 。立 法 理 由 に よ れ ば 、全 般 的 に 保 険 契 約 者 の 利 益 を 適 切 に 保 護 し て い る が 、 契 約 の 相 手 方 の 具 体 的 な 契 約 目 的 も 保 障 さ れ る 場 合 に の み 有 効 と な り 、 契 約 者 の 利 益 の 擁 護 は 、 保 険 監 督 法 の 基 準 に よ る も の で あ る こ と が 明 記 さ れ て い る 。 さ ら に 重 要 な 観 点 と し て は 、 新 し い 条 項 に よ り 、 契 約 締 結 時 の 均 衡 性 が 回 復 さ れ る な ら ば 、 こ の 2 文 の 基 準 に 合 致 す る と い う 立 法 者 の 考 え 方 で あ る 。

( 4 ) 解 約 返 戻 金 約 款 の 内 容 の 実 質 的 適 正 化 に 向 け た 課 題 最 後 に 若 干 の 課 題 に 言 及 す る こ と と す る 。

第 一 に 、 現 行 実 務 で 使 用 さ れ て い る 解 約 返 戻 金 約 款 は 、 認 可 さ れ た と き の 監 督 法 上 の 基 準 を 満 た す 内 容 で あ っ た こ と は 確 か で あ る が 、 最 新 の 保 険 監 督 法 上 の 内 容 規 制 基 準 に 、 特 に 計 算 の 開 示 に 関 す る 透 明 性 原 則 の 基 準 に よ る な ら ば 、 さ ら に 補 充 す べ き 情 報 が あ る よ う に 思 わ れ る 。 こ の 点 に 関 し 、 ド イ ツ の 宣 言 的 条 項 の 内 容 規 制 で 示 さ れ た 情 報 補 充 の 必 要 性 に 関 す る 基 準 は 参 考 に な る 。

第 二 に 、 法 制 審 議 会 保 険 法 部 会 で 検 討 さ れ て い る 、 保 険 契 約 者 に よ る 中 途 解 除 時 に 一 定 の 金 額 を 払 い 戻 す 規 律 は 、 消 費 者 契 約 法 9 条 1 号 の 特 別 規 定 と し て 必 要 で あ る と と も に 、 任 意 法 規 と し て 規 律 さ れ る 場 合 は 、 消 費 者 契 約 法 1 0 条 が 基 準 と し 得 る 内 容 が 規 定 さ れ て い る こ と が 求 め ら れ る 。 そ の 場 合 に 、 少 な く と も 、 解 約 返 戻 金 計 算 の 適 切 性 根 拠 が 平 均 的 消 費 者 で あ る 保 険 契 約 者 に 理 解 で き る 形 で 開 示 さ れ る 措 置 を 促 す よ う な 規 律 が 必 要 で あ る 。

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第 三 に 、 現 行 約 款 が 消 費 者 契 約 法 1 2 条 3 項 に よ り 使 用 差 止 め に な っ た 場 合 、 あ る い は 最 新 の 監 督 法 上 の 基 準 並 び に 新 保 険 法 の 規 律 に 照 ら し 、 保 険 者 の 判 断 に よ り 既 契 約 約 款 の 変 更 を 行 う 意 思 が あ る 場 合 に 備 え 、 新 し い 約 款 に 変 更 す る た め の 手 続 保 障 が 将 来 的 に は 必 要 に な る と 考 え る 。 そ の 場 合 考 慮 す べ き 規 範 目 的 は 、 ド イ ツ 新 保 険 契 約 法 1 6 4 条 1 項 2 文 と 同 様 の 、契 約 目 的 の 維 持 お よ び 契 約 者 の 利 益 の 適 切 な 考 慮 で あ り 、 監 督 法 の 枠 組 み で 規 律 す る こ と も 可 能 で あ る と 考 え る 。

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