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超高層建築の防災計画・業務継続計画

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テーマ5 小課題番号5.2

超高層建築の防災計画・業務継続計画

建物の即時使用性判定と超高層街区の防災対策への展開

キーワード:超高層建築物、即時使用性判定、

罫書き装置、業務継続計画、防災対策

1.はじめに

本研究は、「超高層建築の防 災計画・事業継続計画」

をテーマに、超高層建築物 内の企業、大学、公的 機 関などの防災計画や事業継 続計画に必要な方策につ いて検討を行なったもので ある 。防災街区の形成を 考える上で、一棟数千人が 居住する超高層建築物の 防災対策を検討することは、図1に示すように、個 別企業の事業継続性や地域 の防災力を高める上で 重 要な要素となる。

図1 防災街区の形成における研究の位置づけ

研究期間中、2011年3月11日の東日本大震災に より、首都圏において、超 高層建築物の室内被害や 多数の帰宅困難者などが発 生した。この教訓や経験 を生かす田めに、当初の研 究計画や目的を見直し、

より実践的な超高層建築物 の防災計画・事業継続計 画の策定に向けて必要な検 討を進めてきた。各年度 の主な研究成果は以下の通りである。

1)超高層建物内の大学にお ける施設管理計画に基づ く防災計画・事業継続計画の策定

(2011~2012年度)

①業務優先度調査に基づくBCPの枠 組み策定

②首都直下地震における財務影響評価

③工学院大学のBCP策定 のための調査研究 2)負傷者数の軽減と実践的 な緊急対応計画の検討

(2012~2013年度)

建物内の負傷者の発生に関する振動試験 3)超高層建物の即時使用性 判定手法の検討

(2013~2015年度)

即時使用性の客観的な評価 の一つとして、簡便な 罫書き装置を開発、工学院大学新宿校舎に設置。

チェックシートと併せ、建 物管理者を対象とした 被災度判定手法の提案と訓練による検証

4)高層建 物街 区、 晴海ト リ トンス クエ ア にお ける地 域継続計画(DCP)の検討

(2012~2015年度)

超高層建物と周辺施設か ら構成される街区の防災 計画、事業継続に向けての問題点、課題を抽出。

本報告では、5 年間のまと めとして、 各年度に実 施した内容の概略を示すと 共に、後半に実施した超 高層建物内の企業が重要業 務を継続するための前提 となる建物、施設の使用性 判定の方法と、超高層建 物で構成される街区での防 災対策、街区継続計画作 成に向けて晴海トリトン街 区への展開事例 を中心に 述べる。

2.研究内容

2-1 施設管理計画による防災計画・事業継続計画の 策定

工学院大学を対象に以下の調査を実施し、3つの 観点より取りまとめた。

1)東日本大震災時における 震災対応業務調査 2)事業継続のための災害へ の備えなどの調査 3)通常業務の被災時優先度 調査

震災対応業務、業務の優先度などの調査により大 学BCP策定に必要な基礎 資料の取りまとめ 、工科 系大学のBCPの枠組み構 築を試みた。図2は、業 務分類の概要である。

図 2 工科系大学の業務分類の事例 宮村正光村上正浩久田嘉章 三好勝則吉田倬郎**久保智弘***

(2)

2-2 首都直下地震における財務影響評価

東日本大震災の際、宮城県内の私立大学で地震被害 により研究教育費(修繕費、 奨学金)などの支出増加 に対応して、収入として寄付金・補助金の増加があ った。東日本大震災の結果を基に研究教育費の修繕 費と奨学金について、工学院大学を対象に東京湾北 部地震が発生した場合にどの程度増加するか、推計 した結果、修繕費が 2010年度の30〜40倍、奨学金 の支払いが2010年度の約8倍の増加となることが 判明した。関東地方の私立大学で何らかの被害が発 生した場合に備えて、支出増を賄うための収入につ いて検討する必要がある。被災時にも継続・復旧す べき優先業務選定の基本方針が必要となる。

2-3 工学院大学の BCP 策定のための調査研究 超高層建物内にある工科系大学のBCPのあり方 について検討した。学内の 業務の洗い出し に基づき、

各部署の災害時における業務の優先順位、BCP作成 に必要な基本情報を各部署へのヒヤリングやアンケ ート調査などにより把握した。一方、各部署の優先 度の評価基準の全学レベルでの調整、対象リスクや、

RTO設定などは、別途検討 すべき重要課題 として明 らかになった。学内のさまざまな資源(リソース)の 効率的な振り分けを大学の基本的使命である業務と の関係で整理し、事前の被災対応と、被災時も継続 が必要な業務を把握する必要がある。図3は大学の 業務と資源配分の考え方を示した一例である。大学 で優先されている業務を、被災時も継続が必要な業 務の絞り込みに利用できると考えられる。

図 3 大学の業務と資源の配分の考え方

3.事業継続性と建物の使用性判定の考え方

東 京 都 は 首 都 圏 周 辺 で の 大 地 震 発 生 時 に 懸 念 さ れ る帰宅 困難 者へ の対応 とし て、『 東京 都帰 宅困難 者対 策条例』を制定し、混乱を 避けるため、建物、施設の 安全性の確保を前提として、できるだけ帰宅せず、72 時間を目途に、建物内にと どまるよう企業に要請して いる。この場合、前提とな るのは建物の 構造躯体の健

全性の判断であるが、専門 的な知識をもたない建物管 理者にとって、構造躯体の 健全性を即座に評価するこ とは極めて困難で、建築専 門家も即座に駆けつけるこ とは難しい現状にある。3日間滞在するためには、構 造躯体の健全性に加え、電 気、水道、トイレや空調設 備、室内居住空間の確保な ど、業務継続に必要な ライ フラインの機能確保も求められる。即ち、地震発生後 には、即時に退避行動を起 こすべきか否かの 建物健全 性の判断とその後の3日間 の滞在に必要な機能性や 、 使用性についての判断も求められる。図4はこれらの 関係を整理したものである。

図 4 使用性と事業継続性の考え方

4.高層建築物における即時使用性判定のフロー 4-1 建物健全性判定の考え方

建物の構造健全性の判断は 、建物内に滞在して業 務を継続するか否かの判断 の前提となるもので、非 常に重要であるが、現在ま で確立された手法はなく、

正確な評価は専門家でも難しいとされている。

図 5 建物即時健全性の判断フロー

(3)

テーマ5 小課題番号5.2

ここでは専門的な知識をも たない建物管理者でも、

即時に推定できる方法の構 築を目指して、 地震計等 の計器観測と目視を組み合 わせた種々の方法を継続 的に検討してきた。超高層 建物のような重要な建物 に対しては、既に地震計か らの情報を活用して自動 判定される精度の高い、即 時被災度判定システムが 導入されているものもある が、導入費用や維持管理 が高額となるため、すべて の高層建物に導入するの は難しい現状にある。一方 建物管理者にとっては、

目視による判断が難しいた め、何らかの客観的な判 断基準が必要であるとの意 見も多い。そこで、安価 で簡便に建物の被災度を判 定するができる装置とし て、「けがき」による 装置を 開発した。試作モデルに よる振動試験を踏まえて、 建物内への設置による実 地震の観測による検証を行 っている。このけがき装 置は、原則、高層建物の特 に層間変形角の大きくな る階に設置し、目視による 簡易チェックシートと合 わせて用いることで、早期 に建物の被災度を把握す ることを目的としている。 同時に、安価な情報端末 装置、iPadを使い、建物の 揺れを計測して健全性を 確認する方法についても同 様に、実証実験を行って いる。地震発生直後の建物 健全性の概略の流れは図 5のようになる。地震発生 後にはまず火災の発生、

傾斜など建物全体に係る判 定を行 う。その後、各種 のモニタリングシステムや 装置を活用し て構造健全 性の判定を行い、退避行動 の判断を行う。 構造部材 の健全性が確認された場合 は、目視によるチェック シートを活用して、各階ご との判定を行い、立ち入 りの可能性や一時使用性の 判定を行う手順となって いる。

図 7 建物即時使用性判定の評価例 4-2 罫書き装置の実験及び地震観測による検証

罫書き装置は建物の層間変形を計測するため、通常 3m程度 の階高の 間に吊り 材と支柱が 必要とな る。そ のため図8に示すような実験装置を製作し、観測波形 を入力して、罫書き 装置の 応答特性を検証 した。さら に工学院大学の地震時の応答性状を考慮し、層間変形 角が大きい、11階、21階、24階の3か所に装置を設 置 し て 、 地 震 計 、 簡 易 地 震計(iPad mini)か ら 得 ら れ る観測波形との比較を行い、その精度検証を継続的に 行っている。振動実験では 強震時で増幅が見られる反 面、実際の地震観測では、層間変形 角小さいこともあ り、最大振幅が若干異なっ ている。今後も継続的な観 測、検証が必要である。

(1)11階への設置 (2)観測された軌跡 図 8 罫書き装置の設置と観測事例 図 6 目視によるチェックシートの例

2階 地下1階

× △

 「○」のみの場合、カテゴリーⅡ~Ⅲの判定は「○」とする  1以上の「△」の場合、カテゴリーⅡ~Ⅲの判定は「△」とする  1以上の「×」の場合、カテゴリーⅡ~Ⅲの判定は「×」とする

2階 地下1階

× △

× △

× △

2階 地下1階

○1 ○2

建物の即時使用性の判定 2.建物各階の判定 2.1 カテゴリーⅠの判定

カテゴリーⅠの判定

2.2 カテゴリーⅡ~Ⅲの判定

カテゴリーⅡ~Ⅲの判定

 判定記入凡例  ×:危険  △:要注意  ○:調査済 3.総合判定

 判定記入凡例  ×:危険  △:要注意  ○:調査済

カテゴリーⅡの判定 カテゴリーⅢの判定 1.モニタリング、ケガキの判定

モニタリング、ケガキの判定

 判定記入凡例  ×:危険  △:要注意  ○:調査済  モニタリング、ケガキの判定が「×」の場合は、3.総合判定へ

調査項目

×

①- 間仕切壁

変形(ゆが み)等はほと

んど見られ ない

わずかな変 形(ゆがみ)

等が見られ

転倒や明瞭 な変形(ゆ がみ)が見ら

れる

①-

外壁 内壁

ずれや変 形、ひび割 れはほとん ど見られな

わずかなず れや変形、

ひび割れが 見られる

大きな変形

(ゆがみ)、

脱落等が見 られる

(鉄骨造) ンの降伏がパネルゾー

見られる 小さな局部 座屈変形が 見られる

・大きな局部 座屈変形が 見られる

・接合部破 断が見られ

変形(ゆが み)はほとん

ど見られな

わずかな変 形(ゆがみ)

が見られる が、開閉障 害は無し

明瞭な変形

(ゆがみ)が 見られ、開 閉障害は有

窓・ガラス

変形(ゆが み)、ひび割 れ等はほと んど見られ ない

わずかな変 形(ゆが み)、ひび割 れ等が見ら れる

脱落や明瞭 な変形(ゆ がみ)、ガラ スの割れ等 が見られる

「○」のみ→「○」

「△」が1以上→「△」

「×」が2以上→「×」

カテゴリーⅠの総合被害ラ ンク

調査部位 調査内容 被害イメージ

窓枠の脱落、変形

(ゆがみ)、ひび割れ 等の被害が見られる か。

外壁に、脱落、変形

(ゆがみ)、ひび割れ 等の被害が見られる か。

間仕切壁に転倒や 変形(ゆがみ)等の 被害が見られるか。

扉に変形(ゆがみ)、

開閉障害等の被害 が見られるか。

柱の変形や接合部 の破断が見られる か。

被害ランク

-7.5 -5 -2.5 0 2.5 5 7.5

-7.5 -5 -2.5 0 2.5 5 7.5 mm mm

(4)

5.超高層街区晴海トリト ンスクエアへの展開 5-1 晴海トリトンスクエアの概要

新宿西 口地 域の みで なく 、 都心の 高密 度地 域で は、

協 議 会 な ど を 中 心 と し た 街 区 単 位 で の 街 区 継 続 計 画

(DCP:District Continuity Plan)を構築する取り組 みが行なわれている。地域 の安全と秩序維持のために、

街区レベルでの災害対策を取りこんだ、より実践的な DCPの構築が不可欠である 。具体的な、DCP構築に 取組んでいる大規模開発の事例として、晴海アイラン ド ト リ ト ン ス ク エ ア を 対 象 に 検 討 し た 内 容 を 以 下 に 示す。本施設の概要を写真 1に示す。大きく、3つの 超高層建物と一つの低層棟、これらを結ぶ 共用部で構 成され てい る。 各棟内 は棟 別の管 理を 行っ ている が、

街 区 の 統 一 管 理 者 で あ る ㈱ 晴 海 コ ー ポ レ ー シ ョ ン を 中心に、スーパーブロック 全体の統一的な管理を行っ ている。電源、給水設備に ついては街区全体で一括し て 設 置 さ れ 、 空 調 用 の 熱 源 は 地 域 冷 暖 房 (DHC) か ら供給される。

写真 1 晴海トリトンスクエアの施設全景

図 9 新宿と晴海の管理体制の相違

新宿西口地域と晴海の管理体制は図9に示すよう に、晴海では各棟が晴海コ ーポレーションに より統 一管理され、情報が共有し やすい が、多くの異なる テナントが同一建物内に混在している点は、2 つの 地域に共通である。実際の 研究は、晴海トリトンに

おいて大学、各棟ビルオー ナーおよび防災管理者、

街区統一管理者、事務局等 で構成される委員会によ り行われた。検討期間は 2011年より 4年わたりほ ぼ 月 1回 の 頻 度 で 開 催 さ れ 、 現 在 も 継 続 中 で あ る 。

本施設は、高い耐震性と信 頼性を持つ大規模複合 建築として設計され、災害 に対して十分な対策を施 しているものの、東日本大 震災発生時の対応を踏ま え、本施設の現状を分析し た結果、以下の課題が明 らかになった。調査した主 な課題を整理し、表 1に 示す。

表1 現状の課題と今後の検討事項

1)負傷者への対応

超高層建物では、長周期成 分が卓越した揺れが長 時間継続することにより、 家具、什器類の移動転倒 や天井の落下等に伴う負傷 者が発生することが想定 されるが、街区内の診療所 では、医師、看護師、医 薬品等の資器材、受入れス ペースに限界があ り、多 数の負傷者には対応しきれ ないことが 懸念される。

重症者の災害拠点病院への 搬送が優先されるが、ト リアージが機能しないと多 くの軽傷者 が病院に駆け つけ、災害拠点病院での重 症者への対応に支障が生 じる恐れがある。街区内で 対応するためには救護所 スペースや医療関係者を確 保すること、応急手当に 使用する医薬品や医療用資 器材を備蓄することが求 められる。また、災害拠点 病院等への患者の過度な 集中を回避するためには、 街区内での医療機能の分 担と必要な対策を検討し、 軽傷者にはそれぞれのビ ルや地域で対処する態勢を 構築することが必要とな る。

2)建物安全確認

現状で一部の建物にアン ボンドブレースや地震計 が設置され、判定マニュア ルと共に、被災程度の客 観的な評価が行なわれてい る。一方で、データの回 収方法や、結果に対する即 時判定方法など課題も残

X Z

・・・ 管理者 管理者 管理者 ・・・

テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント

・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・

新宿西口本部 建物管理者

晴海トリトン本部

・・・ 管理者 管理者 管理者 ・・・

テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント テナント

・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・

新宿西口本部 建物管理者

晴海トリトン本部

晴海トリトン 新宿西口

四方、橋で囲まれたエリア。 東には新宿駅。

北側に被害想定が大きい月島がある。 西には被害想定が大きい地域。

月島の先の北側に大きな病院がある。 エリア内に大学がある。

防災製品を扱っている企業がある。

都庁などの行政組織もある。

晴海トリトン 新宿西口

四方、橋で囲まれたエリア。 東には新宿駅。

北側に被害想定が大きい月島がある。 西には被害想定が大きい地域。

月島の先の北側に大きな病院がある。 エリア内に大学がある。

防災製品を扱っている企業がある。

都庁などの行政組織もある。

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テーマ5 小課題番号5.2

されている。そのため、よ り簡便なけがき装置の導 入や目視によるチェックシ ートの活用などを検討 中 である。

3)帰宅困難対応

1万8千人近い勤 務者がい る中で避難場所が4000 人しか収容できないのを考 慮すると、帰宅困難者を 受け入れるのは難しい現状 にある 。屋内に滞在でき ない場合の想定も必要で、 トイレや備蓄品、電力な ど 72 時間滞在可能な機能 維持や、 受け入れスペー スの安全性の確保や備蓄品 の確保など課題は多い。

晴海トリトンとしては帰宅 困難者を基本的には受け 入れる姿勢で、入居者の避 難場所に指定されている 各棟ロビーや会議室に受け 入れスペースを確保(約 4000人)しているが、当然 入居者優先となる。

4)火災対応

火災は初期消火の訓練の徹 底、火災通報システム などを活用して、最優先に 対応する仕組みで、屋外 避難訓練などを重ねており 、継続的な訓練により避 難方法と併せ、検討が必要。

5)情報伝達

トリトン内の通信設備は基 本的に電力依存してお り、統合防災センターと各 防災センターとの通信は 可能であるが、テナントと の通信手段はな い。防災 センターにテレビ電話を設置してあるが、24時間の 非常電源使用後は通信が途 絶する可能性がある。個 別のテナントの状況は把握 できず、必要情報の確保 のために、トリトンの電源 に依存しない通信手段の 確保ベーパーや人海戦術に よる多重化、系統別の冗 長性の確保が望まれる。

6)洪水、津波対応

想定津波高さが低いことや 、人工地盤への避難が 可能なことから、適切な避 難計画、方 法を示すこと により、対応可能。

5-2 超高層街区としての DCP 構築に向けて

1)DCPの考え方

施設の立地条件、街区特性 を踏まえた上で、独自の TSCP(Triton Square Continuity Plan) を構築する ことを目標とし、検討を進 めている 。TSCP構 築のた めの検討フローは、図10に示す通りで、特に目標水 準とRTOを明確にし、機 能を維持、継続するため実 行 す べ き ボ ト ル ネ ッ ク や 街 区 と し て の 重 要 な 役 割 を 特定する。想定地震ごとに 設定した目標水準と、現状 の課題を比較し、目標水準 を達成するための方策を考 慮し、目標と現状との ギャ ップを埋めるため に、事前

のハード、ソフト両面の対 策、発災時の対応を明確し て、具体的な対策に優先順位をつけて、実行する。

図 10 TSCP 構築のフロー 2)目標水準の設定

想定される被害をレベル別に具体化し、各シナリオ を作成した。シナリオは想 定地震の事象、ライフライ ンの状況に区別して作成することで、災害の内容をよ り具体化し、各々の目標水 準をより明確に決めること ができる。現状分析、災害 シナリオ、ボトルネック考 察を踏まえ、以下の目標水準、RTOを設定した。

① 大震災時でも高い耐震性・安全性を確保する。

② 帰宅困難者が 72h滞在できるようにする。

③ 入 居者 と各 棟管理 会社 とのス ムー ズな 情報伝 達が できるようにする。

④ 原 則と して 各棟内 で対 応し、 困難 な場 合は統 合お よび他棟の力を借りる。

⑤ 一定時間内での業務再開を可能にする。

レベル別の目標水準を表2に示す。

表 2 地震レベルに応じた目標水準

建物強度 安全な避難 帰宅困難対応 情報収集・伝達 業務継続 レベル1 通常大地震

(震度6弱)

建物が無損

業務が24h以 内に再開可

(電気・空調・

ELV・トイレが 復旧)

レベル2 直下型地震

(震度7)

構造体がほ ぼ無損傷

全停電前に、

指定場所(2F ロビー)に避 重傷者と一 般者が混乱 せずに避難 できる

入居者・来訪 者がテナント 内および2F ロビーで72h 滞在可能

各テナントで 応急処置 X棟ロビーに 指定救護所 を移設、重傷 者を応急処 中央区救護 所へ搬送

同上 通信用電源 の確保

業務が1週間 後に再開可

(電気・空調・

ELV・トイレが 復旧)

レベル3 想定外の大 地震

入居者・来訪 者が倒壊前 に避難

建物外に避 重傷者と一 般者が混乱 せずに避難 できる

入居者・来訪 者が屋外で 72h滞在可能

重傷者を中 央区救護所 へ搬送

人海戦術で の情報伝達

レベル4 津波

(AP+5.6m以 上)

建物が無損

人命を最優 先し、1F以下 の全員が10 分以内に2F に退避

入居者・来訪 者がテナント 内または2F ロビーで72h 滞在可能

各テナントで 応急処置 重傷者は慈 恵医大クリ ニックで応急 処置

人海戦術で の情報伝達

レベル 想定事象 目標水準

救護体制 各棟防災セ ンター⇔入居 者(テナント)

の連絡手段 の確立 統合防災⇔

各棟防災セ ンターの連絡 手段の確立 各テナントで 応急処置 重傷者は慈 恵医大クリ ニックで応急 処置 中央区救護 所へ搬送 重傷者を2F

まで容易に 搬送できる

入居者・来訪 者がテナント 内で72h滞在 可能 現状分析

リスクマッピング

⇒対象ハザードの特定 課題の抽出

課題の抽出(主な5項目)

負傷者、帰宅困難、建物安全確認、

情報伝達、火災対応等

TSCPの提案 目標水準の設定 RTOの設定

長時間、長周期成分の揺れに伴う、家具什器 の転倒、天井など2次部材の損傷

目標と現状のギャップ評価

戦略の立案 AIA(街区影響度分析)

地震レベルに応じた目標水準の 設定、想定外地震への対応 各棟個別の、街区として影響評価

目標水準の達成のために必要な 方策と現状の評価

目標水準の達成のための実行的 な対策立案と優先順位づけ

(6)

3)情報伝達システムの活用 に向けて

被災情報の即時把握は、TSCPの構築に向けて、最 も重要な項目の一つである。特に大規模複合施設では、

関係者が多く、災害時に必 要情報を共有し、効果的な 支援活動を相互に行うためには、お互いの情報をより 早く共有し対応する必要がある。そのためには、日常 業務の中での情報伝達システムを活用し、習熟してお くことが重要になる。日常 の情報伝達システム活用例 を表3に示す。さらに、災害時に被災情報をいかに早 く把握し、2次災害軽減の対策が実行されるかを具体 的な訓練を通して、検証し た。具体的には図11に示 す Webを利用した被災情報入力システムを試作し、

テナントを含めた活用訓練を行った。訓練後のアンケ ート調査により、入力のし やすさ、使い勝手などの 便 利さや課題を分析した。棟 ごとに入力機器が異なるこ とや、訓練そのものへの参 加 意欲については課題も挙 が っ た 。 館 内 情 報 を 建 物 管 理 者 と フ ロ ア ー 利 用 者(テ ナ ン ト)が 共 有 す る こ と で 、 建 物 の 現 状 を 相 互 に 把 握 する。建物管理者は、被害 の把握と対応が行え、テナ ントは、状況を報告するこ とで必要な資器材や協力の 依頼が行える。

表3 情報の伝達方法の活用例

図11 情報伝達のしくみ

最終成果と今後の課題

研究後半で得られた主な成果と課題は以下の通り である。

1)高層建物入居者の業務継 続の前提となる建物の 即 時使用性を、建物管理者で もごく簡便に 評価する方法 として、目視によるチェッ クシートと 罫書き装置を組 み合わせた方法を提案した。実験的な検証と共に、超 高層建物への適用事例として、工学院大学新宿校舎の 3か所に設置した。設置後 、小地震ではあるが、実地 震での記録が得られ、装置 の有効性を確認した。今後 より大きな実地震での検証と具体的活用法の訓練で の検証が必要である。

2)新宿西口地域での取り組 みの研究成果に基づき、超 高層建築物群から構成される晴海トリトン街区の事 業 継 続 計 画 (TSCP) の 構 築 に 向 け 、 検 討 を 行 っ た 。 各棟間の被災情報伝達、相 互の連携方法、建物安全確 認など街区継続計画の構築に向けて、数回の訓練で検 証した。今後、テナント参 加 率の向上と、より実践的 な訓練を重ねることにより、超高層建築から構成され る周辺地域を含めた街区の防災力向上に寄与すると 思われる

謝 辞

本 研 究 を 行う 上 で、日 建総 研 の岡 垣 、李様 、(株)晴 海 コ ー ポ レ ー シ ョ ンの 谷 本社 長 、谷 川部 長 は じ め、 晴 海ト リ トン ス ク エ ア の 関 係 企 業 の 多 く の 皆 様 に ご 協 力 を い た だ き ま し た 。 訓 練 検 証 には 西 口協 議 会の 関係 者 の 皆 様、 客 員 研 究 員鱒 沢 様 、け が き 装置 開 発 、製作 に 際し て は 、客 員研 究 員児 島 様 、 免 震 テ ク ノ古 畑 様、 大 林組 諏訪 様 、 武 設計 、 武居 様 、大 学 院 生 湯 澤 伸伍 君 他の 多 くの 方々 に ご 協 力頂 き まし た 。謝 意 を 表 し ま す。

参 考 文 献

1) 諏 訪 仁 、 宮 村 正 光 、 久 田 嘉章 、 村 上 正 浩 、鱒 沢 曜 児島 帝 二 、 武 居 由 紀 子 、 湯 澤 伸 伍 : 超 高 層 ビ ル 街 に お け る 地 震 後 の 建 物 被 害 確 認 と 即 時 使 用 性 判 定 に 関 す る 研 究, 第14回 日 本 地 震 工学 シ ンポ ジ ウム, 2014,12

2) 久 保 智 弘 、宮 村 正 光、岡 垣 晃 、李 致雨 、大規 模 複合 施 設 に お ける 震 災対 策 の構 築に つ い て 、 第14回 日 本地 震 工 学 シ ン ポジ ウ ム, 2014,12

3)岡 垣 晃 、李 致 雨 他:大 規 模複 合 施 設 にお け る大 規 模震 災 対 応 に 関 す る 研 究 そ の 1 街 区 継 続 計 画 構 築 の た め の 調 査 、 日本 建 築学 会 大会 梗概 集 (北 海道 ), 2013 年 8 月 4) 東 京 都 : 東 京 都 帰宅 困 難 者対 策 条 例

5) 工 学 院 大 学 : 総 合研 究 所 EE C 研 究 報告 書 、2009年3月 6) 工 学 院 大 学 都 市 減災 研 究 セン タ ー:工学 院 大学 地震防災 訓練報告

・情報提供、安否確認

・震度情報の連絡

・WEB情報システムの利用 各棟 ⇔入居者 統合⇔各棟

本番

・関連情報のやりとり 震度情報

確認 レベル

1~4 大地震

(震度6 以上)

簡易 訓練

・震度情報の連絡 震度情報

確認 レベル0

軽地震

(震度5 以下)

日常 利用

・ビデオ会議等の開催

平常時

活用 情報伝達システム活用例

建物損傷 レベル 把握

・情報提供、安否確認

・震度情報の連絡

・WEB情報システムの利用 各棟 ⇔入居者 統合⇔各棟

本番

・関連情報のやりとり 震度情報

確認 レベル

1~4 大地震

(震度6 以上)

簡易 訓練

・震度情報の連絡 震度情報

確認 レベル0

軽地震

(震度5 以下)

日常 利用

・ビデオ会議等の開催

平常時

活用 情報伝達システム活用例

建物損傷 レベル 把握

各棟 連絡 テナント 各棟 連絡 テナント

各棟 テナント

震度情報

受信連絡

各棟 テナント

震度情報

受信連絡 記録保管

統合 各棟

震度情報 震度情報

震度計

受信連絡 記録保管

統合 各棟

震度情報 震度情報

震度計

受信連絡

各棟 テナント

震度情報 外部情報 状況連絡

各棟 テナント

震度情報 外部情報 状況連絡 外部情報

統合 各棟

震度情報 震度情報 外部情報

震度計

状況報告 外部情報

統合 各棟

震度情報 震度情報 外部情報

震度計

状況報告

統合 各棟

お知らせ 連絡

統合 各棟

お知らせ 連絡

Referensi

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 手洗い・咳エチケットの徹底をお願いしま す。 *マスクについては入手困難な状況が続いてい ますが、集団感染のリスクを避けるため、でき る限りマスクの着用をお願いします。 マスクの作り方 文部科学省ホームページ 「子どもの学び応援サイト」内 https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien

【問題9】ア、イ、ウ、エ、オは、石綿含有建材についての記述である。これらの記述の中から適切な ものがいくつあるか、選択肢①、②、③、④から正しいものを選びなさい。 ア.屋根ふき下地材として施工される石綿含有ルーフィングはレベル3建材であり、石綿含有率が 高く目視でも石綿含有の有無が識別できる。 イ.配管保温材はレベル2だが、配管のパッキンはレベル3である。

収入状況届出 保護者等情報 画面 前回の申請時に登録し た保護者等情報が表示 されるので、正しいことを 確認します。 「入力内容を保存して 収入状況の取得へ進む」 ボタンをクリックします。 ・個人番号カードを使用して 自己情報を提出する場合 10ページへ ・個人番号カードを使用して 自己情報を提出しない場合 15ページへ。 •メールアドレス、電話番号

3.要件を満たすことが困難である学部等 学部等名 なし

24 【問題】ア、イ、ウ、エは改修工事や増築工事を見落とさない調査についての記述で ある。選択肢①、②、③、④はこれらの記述が適切(○)であるか、不適切(×) で あるかの組み合わせを示したものである。組み合わせとして正しいものを選びなさ い。 ア. 増築や改築を行った場所を見落とさないためには、建築物の所有者や利用者など へのヒアリングが重要である。 イ.

2 (2)会計利益に基づく報酬制度を採用する会社の特徴 調査によると、採用する割合が業種によって異なる (Conference Board,1979) 例:小売業よりも製造業のほうがボーナス制度を採用して いる会社の割合が大きい 理由: インセンティブ仮説 他の条件が等しければ、利益額と、特定の経営者の行動が会

自宅に帰ったら ☆移動・感染防止順守の状況を帰宅後行動チェックシートに記載し、自宅に戻った日の翌日から3 日以内に学生課に提出してください ☆健康管理記録は移動中および帰宅後も記録してください ※感染防止対策の順守の状況によっては個別に対応する場合もあります。 《守ってほしいこと》 ・公共交通機関での移動中および不特定多数の人がいる場でのマスク着用

教育出版 2020 年 4 月 3 図3 複式展開例1 「直接指導」では,「間接指導」時のための指示を することが多いが,直接指導を行うことができるた め,児童の反応を見ながら新出語彙や新出のセンテ ンスの指導を行うことに適している。新しいことが らを学習するときには児童に安心感を与える必要が あるため,「直接指導」で慣れ親しませなければなら