1999 年度 上智大学経済学部経済学科 網倉ゼミナール 卒業論文
「どのポータルサイトが生き残るか?」
A9641432
高井慶子
2000 年 1 月 11 日
一章・ポータルサイト
1 インターネットビジネス
日本国内で、インターネット利用者数は今年中に2000万人を越すといわれている。その 中で、いまだ サイバースペース という新しいビジネスの場における切磋琢磨は激しさを増 している。インターネット通販では、合法非合法問わず、買えない物はないといわれ、インタ ーネットを使っていつでもどこからでも株式投資が可能になっている。
ネットビジネスの威力は、アメリカのみならず日本にも認識されはじめていた。99年に入 って各証券会社がこぞってオンライン取引を始めたのである。ネット通販の分野でも楽天市場、
IPPIN!!などが大企業のネット通販業界での失敗を横目に見ながら、なかなかの成功をおさめて
いる。
27 8 10 23 28 78 64 55
190 110
85 315
154 102 445
205 137 542
251 210 549
283 231 566
390 330 665
490 430 765
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
利用者数 (万人)
1995年6月 1996年6月 1997年6月 1998年2月 12月
日本国内のインターネット利用者数推移 (1995−1999)
家庭から 家庭、勤務先・学校両方 勤務先・学校から
出所 Access Media International,1998 インターネットによって広がったビジネスの場の特徴というものがいくつかある。これは情
報産業技術の発展によって可能になったわけだが、これらを理解せず、ただ闇雲にサイバース ペースにビジネスを打ち立てても失敗するだけだろう。それらの特徴は、顧客の情報を記録す るのが容易であることと、規模の経済により、時がたつと限界費用がゼロに限りなく近づくこ と、さらに、瞬時に反応することが可能という点があげられる。
現在の情報産業技術では、「記録を残す」といったことが容易にできる。さらにそれを活用す るのも比較的容易である。従来紙上で顧客情報を管理していたころには、さまざまな面倒、費 用がかかっていたが、インターネットではそれが容易に管理可能である。今まで記録情報を紙 によって、あらゆるファイリング技術を駆使して、使いやすくわかりやすくまとめて保存しな ければならなかった。そしてそれを一通り調べてその顧客のニーズを前もって予測するなどと いうことは、かなり人的コストがかかり、非常に難しかった。しかし、情報産業技術の発展に より、「記録」とは顧客から送られる顧客情報をパソコンの画面に出し、「保存」をクリックす れば済む、という非常に簡単な作業によって可能になった。さらに、ある条件を満たしている 顧客だけをリストアップすることも可能なことから、顧客個々のニーズを予測するようなマー ケティングも非常に簡単になった。これは情報産業技術の発展による大きな変化であろう。
さらに、情報産業技術の産物は、コピーを無料でできるということも特徴としてあげられる。
ソフトウェアなどは、最初のひとつを作り出すためには非常に多くの資本を必要とするが、そ れ以降、コピーする際にかかる金はからの CD 代のみだけのようなものである。つまり、枚数 を焼けば焼くほど一枚あたりのコストが小さくなるわけである。これはプラスの要因にもマイ ナスの要因にもなると思われる。つまり、情報産業業界の中での競争では、強気に安い値で商 品を販売することも可能であるわけだが、それはつまりどの企業にも言えることなので、お互 いみんながどんどん値を下げていき、採算が取れなくなってしまう可能性もあるということだ。
たとえば普通の、家電などの商品の場合、複数の企業が同じものを販売しているとしても、そ の量産方法を差別化できるために価格を他人に真似されずに差別化することができるわけだが、
ソフトウェアなど情報産業の産物は量産の仕方が一定なので、そういったことができない。情 報産業商品はそういう意味で価格付けは難しいものがある。
最後に、インターネットの発展により、顧客と企業側でのインターアクティブなコミュニケ ーションが可能ということが上げられる。従来、たとえば通販で買い物をするにしても、申込 書を企業に送って、しばらくして企業が振り込み書を送ってきて、それに基づき入金して、や っと商品がくるという何ステップも踏まなくてはできなかったことが、瞬時にできるようにな った。インターネットで商品を探し、申し込み、入金し、しばらくしたら商品がくる。相当な 取引費用の削減である。さらに、顧客の反応がすぐ受信、分析可能になった。時を待たずして 顧客の購買行動をチェック、記録ができるようになったことによって、マーケティングの反応 を非常に早くなった。
これら、情報産業の発展によって有効となった戦略を理解し、活用することがサイバースペ ースで成功する秘訣だろうと思われる。そういったサイバースペースでは、新しい事業がいく つも興っていることは周知のとおりである。インターネット通販、インターネットバンクなど が筆頭に上げられるだろう。そういったなかに、ポータルサイトという新しい事業がある。
かなり最近に始まったこのポータルサイトをめぐる各社の抗争は、かなり混沌を極めており、
実際に大型のポータルサイト製作会社がほかのポータルサイトを買い取るということが最近頻 繁に行われている。しかし、実際ポータルサイトの数は2,3社に限られるだろうという大方 の予想があり、そこで、どのポータルサイトが生き残るのか、生き残るポータルサイトに必要 な条件は何であるのかということを考えていきたい。
2 ポータルサイトとは?
「ポータル」というのは、いわゆる「入り口」という意味である。つまり「入り口サイト」
なわけである。そのことばどおり、いわゆる「ポータルサイト」というサイトは、いろいろな サイトへの「入り口」の役目を果たしている。「ポータルサイト」は、好きなサイトへのアクセ スの補助をしてくれる。その大きな機能に「検索」がある。あるキーワードを入力することに よってそのキーワードに関連するサイトを探してくれるという機能である。そのほかにも、最 近では、ポータルサイト独自のネット通販のサイト、インターネットバンキングのサイト、他 にも顧客一人一人のカスタマイズされたポータルサイトという機能もある。
こういうサイトを最初に始めたのは、Yahoo!である。ヤフーの創始者は、www サイトで彼ら が面白いと思ったサイトを集めてリストにし始めたことからこの「ポータルサイト」をはじめ たという。いまやヤフーは、プロバイダーを持たないポータルサイトでは一番利用者数が多く、
唯一赤字を免れている優良会社である。その時価総額は300億ドルともいわれる。
いわゆる「入り口」としての「ポータルサイト」であれば、インターネット上に無数に存在 すると考える。理念上は、「他のサイトとリンクされているサイト」なら何でも良いわけである からだ。しかし、ここで考えていきたいのは、検索という機能をもち、広告収入によって経営 をおこなっていて、あらゆるジャンルにとらわれない大型サイトのことを考えていきたい。
また、ポータルサイトの中でも、プロバイダー会社、またはインターネット接続ソフトを提 供している会社が作るポータルサイトと、まったくポータルサイトだけを作っている会社によ るポータルサイトがあり、それぞれ事情が異なることも特記しておきたい。プロバイダー会社 にとっては、その会社と契約した顧客には優先的に自分のポータルサイトに導くことができる し、また、インターネット接続ソフトをもつ会社にとっても、自分の商品をつかっている顧客 を優先的に自分のポータルサイトにひきつけることができるわけで、両者はただポータルサイ トのみを作っている会社と比べて有利なのは確かである。現に、AOL や MSN は一方がプロバ イダー会社であり、一方はインターネット接続ソフトを提供している会社で、その利益を大き く生かしているため、かなりポータルサイト戦線の中では優位に立っていると考えられる。
アメリカからもちろん始まったこのポータルサイトで有名なサイトは、アメリカではYahoo!、 AOL、MSN、Infoseekなどが有名である。かつて有名だったExciteはアットホームに、Netscape は AOL に、ジオシティーズは Yahoo!に、それぞれ買収された。こういう意味で、ポータルサ イトというのは非常に変化の激しい業界といえる。日本では、これらの米国でも有名なポータ ルサイトのほかに、NTTアドが製作しているGooというポータルサイトが人気を集めている。
3 ポータルサイトはビジネスとして成立するのか?
ポータルサイトの収入源は広告費である。しかし、多くのポータルサイトが儲かっているか といえば、そうではない。AOL と Yahoo!だけがかろうじて赤字を逃れているが、多くのポー タルサイトは赤字を抱えている。ポータルサイトの命はその「トラフィック(交通量)」である。
それにより、広告媒体としての価値が高まり、広告収入が増え、さらにトラフィックが増えれ ば、オンラインショッピングをする人が増えて、その手数料をかせぐことができる。
多くのポータルサイトが赤字を抱えていることから、ビジネスとして成り立つのかというの が疑問になってくるが、では、なぜ多くのポータルサイトが赤字を抱えてしまっているのだろ うか。
究極な話をしてしまえば、それほど大型なポータルサイトが必要なのかという問題がある。
「ポータルサイト」というのは、いわゆる、いろいろなサイトへの掛け橋の役割を果たして いるわけで、インターネットを利用する「目的」を持っていれば、専門化されたポータルサイ トと検索サイトだけで十分であるから、そういうものが必要なのかどうか疑わしい。
重要になってくるのは、インターネットの利用者がどういう目的でインターネットを利用す るかということだ。もし、ある目的があってインターネットを利用するのであれば、検索サイ トで自分の興味のあるサイトを探したり、専門化されたポータルサイトで情報を探したりすれ ば良いわけだ。
しかし、利用者の目的があまりないとすれば、いわゆる「入り口」の役目を果たすことは必 要だろう。検索サイトというものは、自分の目的からいろいろなサイトへ目指していくものだ が、「ポータル」という役目は、いろいろな興味を徐々に引き出すという機能を果たしているも のであると考えられる。
そういう意味で、インターネットがエンターテインメントの一種なのか、それともただの情 報検索の一種なのかということが大事になってくる。しかし、最近、インターネットを「暇つ ぶし」として利用する人が急増している。そいう人が大半を占めているというのが現実だろう。
特に最近インターネット人口が増えたのも、インターネットのエンターテインメント性が高ま ったからだと考えられるだろう。そうであれば、専門化されたポータルサイトだけでは、目的 がある程度設定されていなければインターネットを活用することができないのであるから、大 型ポータルサイトの必要性は増加傾向にあると思われる。
インターネットの業界では、ブランドというものが大事になってくる。後に詳しく論じるつ もりであるが、たとえばポータルサイトの場合、「このブランド(たとえば Yahoo!)のサイト だから面白いサイトと認識されるだろう」、とか、「このブランドだから広告を載せてみよう」、 などそのサイトのイメージによって人々の反応が変わってくる。つまり、収入は、使いやすさ や機能だけでなく、ブランドイメージによっても左右される。
しかし、いくらブランドイメージが良くても、ブランドがいくつも乱立し、あまりにブラン ドごとに差別化がされていないと、どのブランドも経営的に苦しくなるだろう。共倒れ状態に
なってしまうからである。つまり、このポータルサイトの赤字脱却のためには、ポータルサイ トが2,3個に収束することが必要なのではないかと考えられる。
2章・生き残るポータルサイトに必要なものは何か?
1 インターネットメディアの特異性
この業界における通説として言われるのが、「ハイリスク・ハイリターン」であるということ だ。なぜそういうことになるのかといえば、やはりインターネットというものの特異性による ものが大きいだろう。
インターネットと紙によるメディア(雑誌、本、新聞など)やテレビとの違いは、なんと言 っても、見る画面の違いである。インターネットは、紙上のメディアやテレビと異なり、必要 のある情報を選んだり、必要のない情報を飛ばしたりすることができる。紙上のメディアや、
テレビと異なり、効率的に情報を得ることができるという利点がある。ということは、情報供 給者にとってみれば、効率的に広告を打てるという利点もあるが、同時に、自分の情報源を飛 ばされてしまう可能性もあるということだ。つまり、情報の提供するツボを間違えてしまうと 大損してしまうということだ。
二点目に、紙によるメディアと違い、実態が伴わないということだ。これについてはテレビ におけるメディアと同じである。たとえば、雑誌であれば、その背表紙に宣伝を乗せれば、た とえ雑誌を読み終わったとしても、部屋に置かれていれば、何かのはずみで目に入ることがあ ることがあるかもしれない。しかし、インターネットでは、画面を変えてしまったら、同時に 違うものを見るわけにはいかず、また、コンピューターを始動させるまではどうがんばっても 人の目に入ることはない。つまり、インターネット上での広告では、どれだけ強い印象を一瞬 で顧客にあたえることができるのかが問題になってくる。
三点目に、顧客の問い合わせや態度に瞬時に対応できるということだ。一言でいってしまう と「インターアクティブ」である。つまり、お互いに対してお互いがリアクションを瞬時に行 えるということだ。他のメディアに対してこのインターネットの利点は、これからネット広告 が飛躍的にその規模を拡大するだろう、という定説の理由である。つまり、瞬時に対応しあえ れば、顧客の満足度も、売り手も効果的に広告をうつことができ、それらがポジティブ・フィ ードバックをしあい、双方の満足度は増す。それがインターネット広告の最大の利点である、
と言えるだろう。
これらのインターネットの特異性を理解し、うまく広告をうつことが必要である。そういう ことを理解しないと失敗する。
2 インターネットにおける広告効果とその重要性
ポータルサイトにおいて、その収入源は広告費である、ということは前述したとおりである
が、ここでは、ポータルサイト、はたやインターネットにおける広告について論じていきたい。
どの企業にしても、「広告」がなければ人々が彼らのインターネット内での存在を知ることは できない。インターネット内のホームページというのは、それ自体実態がないもので、行けば 数種類商品が並んでいるような店舗があるわけではないので、どうにかして自社のホームペー ジにアクセスする道を作らなければいけない。そういう意味で、企業にとって広告というのは、
自分の存在を人々に知らせる唯一の手段であるわけだ。ポータルサイトにとっては、広告が重 要な収入源であるが、企業側にとっても非常に重要なものであるといえる。
「インターアクティブ」という言葉がいろいろなところで聞かれるようになった昨今、イン ターネットこそが真の「インターアクティブ」を可能にするデバイスである。インターアクテ ィブであるということは、顧客がインターネットから情報を得られると同時に、情報の提供側 も、顧客に関しての情報を得られるということである。
インターネットによる広告の多くが「バナー広告」というもので、そのバナー(横断幕、垂 れ幕、のぼりを意味する)をクリックすると、その企業についての情報ののっているページや、
その企業のホームページなどを見ることができる。そのインターネットにおける広告の規模は、
今のところそう大きなシェアを得ていないが、(1998年で日本では前年比89%増の113 億円、2000年には300億円を超えるといわれている。日本の広告全体の規模は、199 8年で5兆7600億円なので、全体の0.2%に過ぎない)毎年その規模を倍増しているこ ともあり、今大変注目されている。
インターネットにおける広告は 狭告 であるといわれる。リクルート社は、「行動を伴う情 報については、その目的を持つ人に、きっちりと届ける仕組みが必要である」としている。つ まり、一人一人のニーズにこたえた一人一人異なった広告をうつことが必要、というわけであ る。
そしてバナー広告による効果は、「口コミ」のように、一人一人の無意識なリアクションが、
知らず知らずのうちにグループリアクションとなり、大きな結果にむすびついていく、という ものである。企業がバナー広告をうつ、顧客一人一人が数々のリアクションを起こす、もし効 果的な広告であるなら、一人一人のリアクションがグループリアクションとして、総ヒット数 に反映する・・・というわけである。
前述したとおり、インターネットを利用する人は、はじめあまり目的を持たずに利用し、目 に付いたものから視野を広げていく、という方向性があるため、インターネット上の広告の注 目度が高いといえるだろう。そしてインターネット広告の特徴である「インターアクティブ」
ということをうまく利用すれば、テレビやほかのメディアよりずっと効果的な広告をうつこと ができるだろう。
では実際どうやってポータルサイトで広告がされるのだろうか。「ネット広告」と一言でいっ ても、インターネット内の広告の種類はいくつかある。1つめは、前述した「バナー広告」で ある。そのバナーをクリックすることにより、利用者はその企業についてのさらに詳しい情報 があるページに行き着くことができる。2つめは、「電子メール広告」である。電子メール版新 聞にテキストベースの広告を掲載している。そして3つめは、「ポイントキャスト型広告」であ
り、記事の右上に掲載される30秒間のアニメーションを使った広告である。その中で、やは り大部分を占めるのが、バナー広告であるが、そのバナー広告の料金体制が三つある。ひとつ は、インプレッション保証型である。これはその広告の露出回数を保証し、その回数に応じて 料金を設定するというものである。二つ目はシンプルに期間による料金体制である。最後に、
クリック数保証の料金体制というものもある。
現実的に、ポータルサイト内で広告をうつとしたら、いくらいるのか?人気サイトの一等地 は、一週間に200万円もかかるという。実際には、アサヒ・コムという朝日新聞が提供する 情報サービスのサイトでは、3ヶ月300万円支払わなければならない。そしてポータルサイ トの重鎮、Yahoo!Japanには、一ヶ月に20万ページ100万円(つまり、100万円払うと、
一ヶ月の間に20万ページは広告を出しますよ、ということ)である。
本当に、インターネット広告というのは、従来の広告のようにはいかないようである。「クリ ック数」だけを増やす方法を考えても無駄である。なぜなら、クリック数の数字からは、顧客 がどういうつもりでその広告をクリックしたかわからないからだ。もしなんとなくクリックし ただけであれば、そのクリックした時にさらに得られる情報が、自分の興味を引く内容だった らよし、しかしもしその内容が顧客にとってつまらない内容だったら、クリック数は数えられ るかもしれないが、広告をみることにより、さらに顧客がマイナスイメージを持ってしまった りするかもしれないからだ。つまり、クリック数を増やしただけでは、もしかしたらその大部 分広告がマイナ
スに作用したかもしれず、何もわからないということである。
ネット広告は、このように、今急増しているからといって、おいそれと手を出すと、損をし てしまう可能性があるといえる。しかしポータルサイトにとっては、広告費がその収入の大部 分を占めることから、うまく広告を載せることが、ポータルサイト業界での成功につながる、
といえそうである。
3 ポータルサイトにおけるブランドの重要性
ポータルサイト業界の最大手のひとつ、Yahoo!は、そのブランド力が他を凌駕していると自 負している。その真偽を確かめるのはかなり難しいが、このポータルサイト業界で、ブランド 力が大きな影響力をもっているということは確かである。
インターネットの特異性は、ここではあまり当てはまらないといえる。インターネットの、
どういうサイトでも瞬時に見ることができる、という特徴から、ブランド力はあまり効力をな さず、そのサイト独自の内容の濃さなどに収益は左右されそうである。しかし実際のところ、
インターネットを利用する顧客があまり目的を持たず利用することから、人々はインターネッ ト内を「さまよう」ことになる。そういった中で、人々をひきつけられるものはなにか?それ はポータルサイト内の数々のチャンネル、検索サイト、そして広告である。
ここでは強力なポジティブ・フィードバックの環が存在する。ポータルサイト内の広告やリ ンク先の評判が上昇→このポータルサイトにアクセスすればなにか面白いサイトに行き着くと
いう評判が立つ→企業がリンクしたがったり、広告を出したがったりする→このポータルサイ トに広告を出すための費用を上げることができる→収入が増える→さらに充実したサービスを 提供できる→さらに企業が広告を出したがる→広告費上昇・・・・という環である。
つまり、「このポータルサイトには面白いサイトがある」と顧客に思わせたり、または、「こ のポータルサイトに広告を載せればたくさんの人が注目するだろう」と企業に思わせたりする ことができれば、物事が良い方向へ良い方向へ進む、というわけだ。ブランドイメージがよけ ればよいほど、ポジティブ・フィードバックによってどんどん収益があがる。
しかし、前述したとおり、差別化していないブランドの乱立は共倒れの危険をはらんでいる。
同じくらい力を持ったブランドが複数あり、差別化がなかなか難しい市場で、競い合っている とする。それらのポータルサイトは他に遅れをとらないようにそれぞれ機能を向上させるため に投資をどんどんしていくとする。それぞれ広告費を上げることはままならない。広告費を上 げたら、ほかのポータルサイトに広告の充実性に関して遅れをとってしまう。さらに多くの投 資によって向上できた機能が顧客に受けなければ、投資したお金が全部パアになってしまうこ ともありうる。いくらインターネット人口が増加傾向であるにしても、限りがあるものである から、そういくつもあまり差別化がされていないブランドがあると、それぞれを利用する顧客 も少なくなるわけで、採算が取れなくなってしまう。差別化が難しいとなると、複数のブラン ドの成功というものは難しくなってくる。
Yahoo!は、ブラウザーもインターネット接続ソフトも持たないポータルサイトの中で、その
ブランド力を生かし、どうにかAOL、Microsoftの二大ビッグポータルサイトに食いついている。
この「ブランドの力」こそが、「差別化」というものだといえるかもしれない。つまり、ブラン ド力によって他と差別化することが可能だということだ。
4 カスタマイズの重要性
国内、または米国のものも含めて、多数あるポータルサイトで、今成功するポータルサイト に必要なもののひとつとして言われるものに、パーソナライズされたページというものがある。
つまり、登録して、自分独自のポータルサイトを見ることができるということだ。
ポータルサイトは一種のサービス業である。つまり、他の電化製品などと異なり、限界費用 は、生産量が増えれば増えるほどゼロに近づく。普通のサービス業(?)、たとえば、ホストク ラブを考えてみる。もし、そのホストクラブで、客が満足を得られなかったとしたら、そのサ ービスの価値はゼロである。お金を受け取る代わりに与えるものが形のあるものではない、と いうことだ。ソフトウェアにしても、限界費用は限りなくゼロに近いことを考えると、人々は、
ソフトウェアを買う代金を、ソフトウェア自体というよりもむしろ、購入後のアフターケアや アップデートをあてにして払っているということになる。ここでポータルサイトと通常のソフ トウェアの違いは、顧客の価値判断が、ポータルサイトに乗せる企業の広告費として間接的に ポータルサイトを作る側に影響を与えるということだけである。
究極に考えればポータルサイトはサービス業であると考えれば、顧客の満足度がいかに重要
かということがわかるだろう。そういう意味で、カスタマイズされた商品を提供するというこ とは非常に重要になってくる。
最近なぜカスタマイズされた商品に対する重要性が増してきたかというと、今時代は「マス」
から、「パーソナル」へ移行しているからだという。それは世の中が、特に日本国内で、個性が 尊重され始めているからだろうか。50才以上の人々などは、「他と同じく、わがままはいけな い」、と育てられたから個性のない人が多い、といわれるが、実際そういう風に抑えられていた 反動で最近の人よりもっと個性的担ってしまうともいえないだろうか。とにもかくにも、個性 的な人々は、それぞれ異なる強い主張を持っているわけで、そうなるとそれぞれ違った商品を 提供していこう、というのが最近の流れである。
インターネットのユーザーは、浮気性の人が多い。何回もしつこく前述しているとおり、「さ まよう利用者」が多いからだ。そうであれば、ただなんとなく検索をしたいというのであれば、
どのポータルサイトで行ってもたいした差があるわけでもない。また、いろいろなポータルサ イトで、ただ目に付いたものをクリックするという利用者も多いはずだ。そういう人たちを、
リピーターに仕立てるためには、パーソナライズされたポータルサイトが有効ではないか。パ ーソナライズされたサイトは、もちろん使い込めば使い込むほどもっと使いやすくなるわけで、
そうなると顧客をロックインするにはうってつけとなる。
広告を打つ側にとっても、これほどいいものはない。カスタマイズされたページがあれば、
それからえられる顧客一人一人に関する情報は増大する。そしてターゲットを絞って効果的に 広告をうてるわけだ。そしてそうやって企業側が効果的な広告、顧客の興味のありそうな広告 を選んで載せるようになると、さらに顧客の満足度を増加させる。ここでもポジティブ・フィ ードバックが存在し、良い方向へ転べばどんどん良い方向へ進んでいく。
5 ネットショッピングの利便性
今や、インターネットで買えないものはないという。 それこそ、城から大型戦闘機、モデル の卵子までインターネットで売られている。ポータルサイトの業界において、このネット通販 へのチャネルがわかりやすくなっているか、さらにチャネルがつながっているネット通販のサ イトの質というものも、重要視されている。なぜなら、ネットユーザーの約16%がネット通 販を利用しているからである。
しかし、このネットショッピングという形態が、アメリカから導入された当時は、なかなか 受け入れられなかったようである。本来日本人は、あまり「通販」という、カタログから商品を 選んで購入する、ということ自体にあまりなれていないのである。それに比べてアメリカは、
インターネットが普及する前から、通販というものが日常的に行われていたことから、ネット 通販というものもすぐ受け入れられたのではないかと考えられる。とりあえず、日本では、導 入当時はあまりうけず、IBM の主催の IBM ワールドアベニューというサイバーモールが、1 997年に閉鎖に追い込まれた。
このネットショッピングのサイトを持っているかということがポータルサイトにおいて成功
するひとつにあげられるだろう。なぜなら、ポータルサイトの収入源は、そのサイトに載せら れる広告のための企業からの広告費のみならず、インターネットバンキングを含む電子取引の 手数料だからである。つまり、インターネットを使ってポータルサイトから、すばやくこれら 電子取引のサイトへいけて、手続きも簡単である代わりに、手数料を払わせるというわけであ る。ネットショッピングを開催する企業側客を紹介する代わりに手数料を払ってもらうという わけである。このネットショッピングというものがあるからこそ、ポータルサイトは、顧客と のコミュニケーション機能(たとえばパーソナライズするとか、無料電子メールサービスやチ ャットサービスなど)の上昇を躍起になって進めているのだ。これらの機能によってえられた 顧客情報は、ネットショッピングビジネスに大きく反映することができるからである。
ポータルサイトにとって、有名店を自分のショッピングモールに誘致するのは、成功するカ ギといえるだろう。人々はなんだかんだと言ってもブランドでテナントを探すからである。し かしここでも、ポータルサイト自身のブランド力というものが大きく影響し、さらにそれはい いほうに転べば良いほうにどんどん進む。つまりポータルサイトのブランド力で有名店を誘致 でき、その有名店をサイバーモールに誘致できたことでポータルサイトのブランド力がさらに 増す・・・という具合だ。
では実際どうやってポータルサイトがネットショッピングの店舗とリンクしているのか。た
とえば、Yahoo!では、ユーザーが検索したキーワードに関連する商品が提携ショップのデータ
ベース内にある場合、オンラインショッピングへのリンクボタンが表示されるという方法をと っている。されに、米国では、エキサイトが、自分のほしい商品を検索すると、その商品を扱う 店舗ごとの価格の一覧表がズラリと表示されるサービスまである。
また、サイト内クレジットカード決済に伴う EC に一番最初にのりだしたのは Goo である。
しかし、オンラインショッピングの当たり外れがポータルサイトの収益を左右するとなれば、
他のポータルサイトも将来的にECに手を出さざるをえない。
電子商取引の決済となると、一番大事になってくるのはセキュリティの問題である。今電子 商取引の決算技術で注目されているのがSET(Secure Electronic Transaction)である。この決済は、
クレジットカードを使うことになるが、セキュリティは何重にもなっている。この技術の一つ 目の特徴は、「二重署名」である。デジタル署名された顧客の個人情報は、ネットショップによ って商品を買うために必要な情報(注文情報。住所やメールアドレス、電話番号など)と、決 済に必要な情報の二つに分けられる。決済に必要な情報は、ショップ内では開けない。ショッ プは決済に必要な情報のみを自らのデジタル署名つきで、しかも暗号化し、 PGW(Payment
Gateway、決済情報処理機関、カード会社の決済窓口)に送る。PGW で復号し、本人認証と通
信上での盗聴・改ざんの有無を確認した後、信用照合を行う。二つ目の特徴は、認証局とデジタ ル認証書である。PGW が本人認証を行うため、ネットショップ側としては、「買った覚えはな い」と顧客から抗議されるようなことはなくなったが、一方で、第三者が本人になりすまして 買い物をする、ということは可能である。さらに、PGWもネットショップも、誰かに成りすま してデジタル署名をする可能性もある。そのため、カード会員、ネットショップ、PGWはそれ ぞれデータを暗号化するカギと身元を、第三者機関である認証局(CA)に登録し、認証書を発行
してもらう。それとデジタル署名をあわせれば、第三者が本人になりすます、ということはで きなくなる。しかし、この万全であるセキュリティというものは、多くの手間ひまがかかる。
手間ひまをかけるからセキュリティが有効になるということもあるだろうが、それにしても時 間がかかる。それほど個人情報というものが大切なものであるのかもしれないが、それとビジ ネスとして成り立つかというのは別問題である。顧客が自分の個人情報をそれほど貴重に思っ ていないとすれば、なかなか受け入れられるのは難しいだろう。現状としては、これほどの手 間ひまをかけるほどのメリットがあるとは思われていない。
第三章・各ポータルサイト比較
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
Yahoo! Microsoft Excite Disney AOL Netscape Infoseek Lycos Geocities
時価総額から見た主要ポータルサイトのユーザー1人あたりの価値
月間ユーザー数(十万人)
時価総額(千万ドル)
一人当たり価値(ドル)
注) AOL、Microsoft、Netscapeは、ウェブサイト事業のみ 出所:米インターネット・ドット・コム 1999
米国人気ポータルサイトの比較 (千万人)
2.83 2.68
1.9 1.87 1.75
1.44 1.32 1.3 1.2
0 0.5
1 1.5
2 2.5
3
AOL Yahoo! Geocities MSN Netscape Excite Lycos Microsoft Infoseek
出所:98年の12月の利用者数 米メディアマトリックス社
国内の有力ポータルサイトの一日のページビュー(万単位)
1700
600
350
200 60 20
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
Yohoo!Japan goo
infoseek Japan
excite Lycos Japan フレッシュアイ
出所:日経トレンディ 1999年2月号
各ポータルサイトの比較
A B C D E F G H I
(マイ)ヤフー ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(マイ)エキサイト ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○
(マイ)イサイズ ○ × ○ ○ × ○ × ○ ○
フレッシュアイ ○ ○ ○ × × × × × ×
Goo × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
MSNスタートアップページ △ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○
インフォシーク × ○ ○ × × ○ × × ○
(マイ)ライコス ○ ○ ○ × ○ ○ × × ○ ネットスケープセンター × ○ ○ ○ ○ × ○ △ ○
AOL △ ○ ○ × ○ △ ○ ○ ○
A:カスタマイズ B:自前の検索エンジン C:ニュース D:掲示板 E:フリーメール F:グリーティングカード G:チャット H:ゲーム I:電子商取引
○ :あり ×:なし △:日本語版ではないが、米国版にはある
出所:http://www2u.biglobe.ne.jp/”hakuzou/Link-X8.htm
1 Yahoo!
Yahoo!の成長率
(対2期前) (対3期前)
売上高 150.83% 463.44%
営業利益 273.29% 814.29%
経常利益 298.47% 797.96%
当期利益 285.94% 795.65%
総資産 314.27% 1045.07%
株主資本 320.53% 1496.79%
決算発表日 1999/4/16 1999/4/16
出所:http://www.yahoo.co.jp/
この成長率を見るだけでも、この会社のすさまじい成長率が見て取れる。そんな超優良会社 は二人の若者によって設立された。当時スタンフォード大学の大学院生だったジェリー・ヤン と、デビッド・フィロである。彼らは1994年、博士論文に辟易してその気晴らしにやって
いたwww(World wide web)上の面白そうなサイトをリストアップする、といういわば趣味を、
会社という形に変化させて、Yahoo!が設立された。Yahoo!という名前の由来は、Yet Another Hierarchical Officious Oracle(意訳すると、 またまた登場、系統化されていて、おせっかいな神 の声 とでもなろうか。)である。
彼ら二人で始まった会社であったが、彼ら二人には会社を経営した経験がなかったため、強 力な管理職の人材を必要とした。このとき迎えられたのが、CEOのティム・クーグルと、COO のジェフ・マレットである。
最初検索サイトのみではじまった Yahoo!であるが、その後AOLのチャットや電子メールの 人気ぶりを認識し、自社サイトに取り入れることを考えた。そうしなければ競争に勝てない状 態であった。
Yahoo!Japanは、平成8年1月に設立され、4月に日本語での情報検索サービスを開始する。
同7月に、ロイタージャパン、(株)ウェザーニュースと提携し、ニュース、天気予報などの情 報提供を開始する。同12月に24時間分のテレビ番組表が一覧できる「Yahoo!InterTV」スタ ート。平成9年11月に株式店頭公開、国内最大級の旅行情報サービス「Yahoo! Travel」を開 始。平成10年6月に一日あたりのユーザー利用数において1000万ページビューを達成す る。同7月、My Yahoo! をはじめとする、Yahoo! ページャー、Yahoo! 掲示板、Yahoo! ゲー ムの四つの登録サービスを開始する。同9月、米国アマゾン社とオンライン書籍等販売に関し て提携。一日あたりのユーザー利用数において1500ページビューを記録する。同年10月、
オンライン音楽CDショップMusic Boulevardを運営する。平成11年1月ページビュー200 0万を達成。
Yahoo! における、最大の強みは、ブランド力である。ブランド力があれば、顧客も、有名店
も、寄ってくる。このサイクルはメビウスの環のようにつながっている。顧客は有名サイバー ショップ、またはその広告目当てによってきて、有名サイバーショップは、そうやって集まっ てくる顧客めあてにまた、集まってくる。Yahoo! のブランド戦略は綿密に組まれていて、たと えば、初めてポータルサイトでテレビに宣伝をうったのもYahoo! が最初である。このねらい
は、Yahoo! の利用者を、ネットオタクばかりでなく、ネットサーファー予備軍にも広げようと
いうものである。
このYahoo! の、ポータルサイトとしての機能は、前出した表を見る限り、かなりハイレベ
ルに達していると思われる。特に検索エンジンは秀逸で、検索結果がジャンルわけされていて わかりやすく、また結果は階層化されているので自然と関連項目が表示でき、思わぬ発見をする ことがおおい。方向性がきちんと定まってから検索しても、単に面白そうなサイトを見つける のにも最適である。
2 Excite
Income Statement Summary (All values in millions, except per share items)
FY End.
12/98
FY End.
12/97
FY End.
12/96
Revenue $48 $7 $1
Cost of Sales $32 $14 $5
Gross Operating Profit $16 ($6) ($4)
Operating Expenses
Selling, General & Administrative $48 $35 $19 Operating Income after D&A ($47) ($50) ($25)
Other Income (net) $6 $3 $1
Pre-Tax Income (EBT) ($144) ($219) ($25)
Net Income from Continuing Operations ($144) ($219) ($25) Net Income from Total Operations ($144) ($219) ($25)
Special Income/Changes ($104) ($173) N/A
Normalized Income ($40) ($47) ($25)
Total Net Income ($144) ($219) ($25)
出所:http://excite.com
“All Band, All Device, All the Time”(すべてのグループへ、すべてのデバイスへ、いつも。)と いうスローガンをもつエキサイトという会社は、6人のスタンフォード大学の卒業生によって 作られた。Mark Van Haren, Ryan McIntyre, Ben Lutch, Joe Kraus, Graham Spencer, Martin Reinfried である。彼らは、1993年2月、インターネット上の膨大な情報を処理するソフトウェアを 作ることを考案する。そして「大企業とは仕事をいっしょにしたくない」というこだわりをも ちつつソフトウェアを完成させた。そして1994年12月、「Architext Software」として事 業を始める。その後1995年10月にエキサイトとして正式に稼動し、ネットスケープ、マ イクロソフト、両方と契約を結んだ。1996年には、総収入が$145,000から、$14.03million まで上昇する。
そして、1999年1月にエキサイトはアットホームという高速インターネット接続サービ ス会社に買収される。買収総額は67億ドル。赤字会社による赤字会社の買収である。これに より、「大きな会社のために働かない」というエキサイトの企業スピリッツが損なわれたかどう かはわからないが、他のポータルサイトと競争するに当たって大きな助っ人を得たことになる だろう。アットホームはもともとケーブルテレビの回線を使って高速接続サービスを提供して いる会社であるが、膨大な量に及ぶ同社のサービス利用者の住所や家族構成などの個人情報を
抑えている。それはエキサイトのみならず、どのポータルサイトにとっても、のどから手が出 るほどほしい情報であろう。検索サイトの人気ではYahoo! にリードを許しているエキサイト が、今後巻き返しができるかは、興味深いところである。
ポータルサイトとしての質は、やはり検索サイトが花である。もともと検索サイトから始め たサイトであるだけに、その質はなかなかのものである。パワーサーチという絞込検索ができ て、キーワード以外にも言語、国、地域、ドメインでさらに絞り込むことができる。また、検索結 果から「似たものリサーチ」をクリックすると同義語、類義語から自由に関連サイトを検索する 機能もある。
戦略的にも、結構大きな賭けに出ることも多い。トップページをカスタマイズできるように したのもエキサイトが始めてである。さらに、ネットスケープ社のネットセンターというポー タルサイトの検索サイトへのリンクで、競合他社より目立つスペースを確保するため、700 0万ドル支払った。しかしこのおかげでinfoseekや、Lycosといった検索サイト出のポータル サイトを引き離すことに成功した。
3 イサイズ
イサイズ(Isize)という言葉は、”I”(私)と、”Size”(大きさ)を組み合わせることで、私 の大きさに会った生活の発見、自分なりの個性ある生活の実現を応援する、というコンセプトが こめられている。また、「異彩」→個性という意味合いも含まれている。
イサイズは、1999年一月にMix Juice(1995年3月サービス開始。月刊7500万ペ ージビュー、3億5000万ヒットを記録したサイト)と、あちゃらNAVIという検索エンジ ンを統合したサイトである。リクルートと提携会社が、インターネットによって自分にあった 情報や商品、仕事や学校が見つけられるようなサイトを提供している。Mixjuiceの経験を活かし、
人々の生活の上でのさまざまな目的・欲求に140万件の情報データベースから最も適した情 報や商品を提供している。リクルートが作っていることもあり、レジャー系の情報は充実して いる。「調べ物をしたい」という人よりも、「何か休日にレジャーを楽しみたい」という人のほ うが多くの情報を得られそうなサイトである。Mixjuiceとは、必要な情報や商品を検索できる ということの上に、検索した商品を購入できるという点が大きく異なっている。
検索機能は、イサイズ独自では、「イサイズのポータルサイト内の検索」というものしかなく、
一般的な検索は他の検索エンジンとリンクしているにすぎない。リクルートの目論見としては、
目指すのは「ポータルサイト」よりもむしろ「ハブ(拠点)サイト」であるという。入り口と して、人々が素通りするサイトよりは、拠点にすることらしい。株式会社リクルート電子メデ ィア事業部の大庭広巳氏によると、「インターネットサービスの世界ではポータル(玄関)サイ トという言葉が使われ、多くのユーザーを集めたほうが勝ちだといわれます。しかし、われわれは そう思っていません。目的、興味、関心で人は行動するからです。専門化された、ナンバーワン のサービスが受けいれられるシーンでモールを形成し、購入にいたるまでのプロセスでご満足・
ご納得いただけるサービスを提供していきます」
(http://www.sun.co.jp/cstudy/recruit/recruit.html)確かに遊びたい人にとってはとても充実した内 容だと思う。ターゲットは、20代、30代のOLや若手社員といったところか。内容を見て も、そのポータルサイト競争における方向性をみても、楽観すぎというか、少し見解が甘いの ではないかと思われるが、差別化しようという意気込みは感じる。
4 フレッシュアイ
1998年6月30日東芝によってサービス開始。同年12月には凸版印刷、電通が加わっ て共同で「株式会社フレッシュアイ」を設立する。新会社では、インターネット関連技術をも つ東芝と、出版社をはじめとするコンテンツ業界と密接な関係のある凸版印刷、そしてメディ ア界に精通した電通が、三社自分の持ち味を生かして検索サービスを運営しようというのが狙 い。新しい情報のみをターゲットにした戦略でサービスを提供している。30日以来に登場、
更新したページのみを検索できる。つまり、掲載後一ヶ月を経過した情報は破棄されていくわけ である。さらに、検索を行っても該当ページが消えていたり、古すぎる情報が表示される、と いった今まで検索サイトが抱えていた問題を払拭する内容である。
このフレッシュアイを考案した東芝の担当者は、日本語ワープロを開発した研究開発チーム のリーダーだった河田勉である。彼のチームは、ワープロ開発で培った自然言語処理技術をさ らに発展させ、機械翻訳の研究もやっていた。そんなときに、東芝がインターネット・ビジネ スに乗り込もう、という気運が高まったのである。そこで、この言語処理に関する研究成果を 生かすためにフレッシュアイが誕生した。
1999年11月より「スマート巡回アリゴリズム2」というシステムを導入、1日12回
(2時間間隔)の更新頻度を実現。従来情報が検索結果に反映されるまで1〜2週間かかって いたものが、フレッシュアイが導入した「スマート巡回アリゴリズム」により他社に比べ大幅 に高い情報更新頻度を誇っていた。今回の「2」は、情報更新が活発な優良ぺージの更新情報 を更新頻度別に管理する機能が追加された。フレッシュアイとしては、「インターネットの特性 を最大限に生かしたマーケティングツールとしての定着化」(http://www.fresheye.com/)を目的 とし、そのために新聞社債と以外にも、政府官公庁、金融、コンピューター業界情報、主要企業プ レスリリースなどのビジネス情報の収集機能を強化している。
検索方法は二通り。キーワードを入れて検索売る「フレッシュアイサーチ」と、カテゴリー 別になっているトピックから絞り込んで情報を探せる「トピックサーチ」がある。
着眼点はとてもいいと思うが、どれだけ新鮮な情報を欲している人間がいるかどうかが問題 ではないだろうか。新鮮な情報がほしがる人というのは、同時に昔の情報も知りたがるものだ。
新鮮な情報のみをほしがる人がそんなにいるだろうか。過去の情報は他のサイトでどうぞ、と いうことだろうか。どちらにしても、総合的な検索サイトを持つほかのポータルサイトの中で 競争に打ち勝っていけるかはなかなか難しいところだろう。
5 goo
日本最大規模のウェブのデータベースを武器に、検索エンジンを核に、最新情報を1クリッ クで見られるホットチャネル、フリーメール、電子モールなどの機能を搭載したポータルサイ ト。また日経gooにおいて、日本経済新聞社と共同で情報を提供していたりする。
Gooは、株式会社エヌ・ティ・ティ・アド(NTTアド)、日本電信電話株式会社(NTT)と、
INKTOMI Corporationは、1997年3月サービスを開始した。Gooは、高速処理、検索品質の
高さ、ユーザーインターフェースのカスタマイズ機能などが世界トップレベルであるINKTOMI 社の検索エンジンに、NTTヒューマンインターフェース研究所が開発した日本語処理技術
「Infobee」を統合してスタートした。これにより、当時日本最大のデータベース(国内350
万URL、海外5600万URL 現在は国内3500万URL、海外1億数千万URL)と最高水 準のデータ収集速度(一日あたり200万URL)、検索品質をもつ検索エンジンになったのだ った。
名前の由来は、「global networkが無限大(∞)に拡大し続ける」というインターネットの世 界をシンボライズしたものである。
サービス開始よりわずか5ヶ月で一日あたりのページビューが100万に達し、10ヶ月で 200万に達する。
1999年1月には、Yahoo! Japanと提携し、新たな検索機能として「Yahoo! Goo検索サー ビス」をスタートさせた。このサービスではYahoo! Japanのカテゴリ型検索とキーワード検索 と、gooの、ロボット型全文検索エンジンの長所を引き出す、というものである。実際には、Yahoo!
Japanのデータベースにキーワードが引っかからなかったら、gooの検索を自動的に実施すると
いうものである。
同年5月には、リクルートと提携し、goo内に、リクルートから情報をもらい、車と住宅情 報を載せることを決定した。これにより、リクルートが製作しているイサイズというポータル サイトには、コンテンツ提供先の拡大による利用者の獲得、gooにとっては、コンテンツの拡 充を、相互補完的に行っていくことになった。
さらに同じ五月に、ポータルサイト初のショッピングモール「gooショップ」をオープンし、
下旬には、日本経済新聞社と提携して、「日経goo」というビジネスシーンで必要とされる新聞 雑誌情報や企業情報などを提供することになる。
日本の会社からはじまったポータルサイトにしては、かなり充実度が高いといえる。Yahoo! と 肩を並べられるほどの充実度である。カスタマイズできないことのみが欠点に挙げられるが、
カスタマイズをしないとしても、十分Yahoo!に対抗する力はあると考えられる。
6 MSN スタートアップページ
1998年10月にサービススタート。1998年一年だけでも一億ドル以上MSNのブラ ンドのプロモーションに費やした。
基本コンセプトは「役に立つ、簡単、スピーディ」である。ユーザーが毎日「必要な情報にす ばやくアクセス」できるよう、ニュース、生活情報、サーチディレクトリを中心に、新鮮で充実 した情報を、わかりやすい操作法の元に提供している、とマイクロソフトがわは述べている。こ のポータルサイトの開設により、MSNがカバーするインターネット上の領域は現在の4倍以上 に拡大し、31の国と地域のそれぞれにおいて独自のコンテンツやサービスを提供することに なった。
「マイクロソフトは、ユーザーがインターネットを通じて必要な情報やサービスをより簡単 に手に入れることができるよう、世界規模での投資活動を行っていきます。MSNによって当社 が目指すものは、人々が世界中のどこにいても、するべきことをインターネットを通じてすべて 実現できるようにすることです。」(ピート・ヒギンス マイクロソフト・インタラクティブ・
メディア・グループ担当副社長)とマイクロソフト側は言っている。本当の目論見は、大きな ビジネスチャンスやはりコンピューターに関するすべての機能を統括することにあるのだろう。
今まで機能の統合によって優れた顧客サービスを提供してきたからだ。
ポータルサイト事業に本腰を入れるにあたり、マイクロソフトは、Expedia(旅行サイト)、
Investor(投資サイト)、MSNオンラインサービスなど、多岐にわたる従来のマイクロソフト保
有の各ウェブサイトをMSNの名のもとに、統合させた。さらにチャットや掲示板などのコミ ュニティサービスの機能を追加し、ハブサイトを目指す。
1998年11月にはAmazon.comと提携し、「MSN Shopping」内でのCDやビデオ、DVD の販売について、商品の購入や検索のリンク先をすべてAmazon.comにするというものである。
1999年3月には、ソフトバンク、Yahoo!と手を組んで日本向けにMSN CarPointを進出させ た。米国ではすでにこのサイトには毎月300人以上のアクセスがあり、毎月4.5億ドル以 上の取引が行われていた。
さらに、1999年10月松下電器産業株式会社と提携し、「Hi-HO powered by MSN」のサ ービスを開始した。マイクロソフトが検索機能など、インターネットに不可欠なサービスを提 供し、松下電器はオンラインショッピングを始めとしたPanasonicHi-HOの豊富なコンテンツを 提供する。
1999年11月に登場したMSNショッピングチャンネルを、楽天市場と共同で構築した。
つまり、MSNのショッピングチャンネルに楽天が運営する総合ショッピングモールサイト、「楽 天市場」のディレクトリを掲載した。狙いは、MSNにとっては楽天市場目当ての顧客集め、楽 天市場にとってはMSNから流れてくる顧客であった。
ポータルサイト競争には少し出遅れた形になっているが、その莫大な資産のことを考えれば、
ポータルサイトの覇者になることも可能である。そして何より、インターネットエクスプロー ラーというブラウザーを提供していることから、それに抱き合わせて自社のポータルサイトを 優先的に表示させることも可能である。
7 infoseek
米インフォシーク社は、1994年1月、カリフォルニア州において、スティーブン・カー シュを中心に設立された。同社は、検索サイトを提供するにあたり、三つのミッションを掲げ た。豊富で関連性のある内容、強力で使いやすい検索技術、そして顧客サービスの充実である。
同社は、検索サービスをネットユーザーに無料で提供し、その運営費には広告収入を当てる というポータルサイトのビジネススタイルを最初に始めた企業でもある。
1998年6月に、ディズニーがインフォシーク社の株の43%を所得する。ディズニーの 目論見は、自らの強力なブランドを、インフォシークのネット上の技術力に結び付けて、サイ バースペースで儲けようというものであった。そして1999年1月に、両者によってGoネ ットワークをスタートさせた。このポータルサイトでは、ディズニーが持っていたABCニュ ース、ESPNという資産をインフォシークの技術力とネット顧客によっていかんなく発揮でき るわけだ。www集客力を総合すると、このポータルサイトは、AOLとYahoo!についで第三位 隣、マイクロソフトとネットスケープをしのぐ地位に上った。形的には、しかし、自社のもっ ているwwwサイトへのユーザートラフィックを当てにしている形になっている。「インフォシ ーク」というブランドは、Goネットワークの検索サービスのブランド名称として残されること になった。
1999年11月、米インフォシークは、ディズニーのオンライン部門、Buena Vista Internet Groupに統合された。
日本でのサービスは、1996年10月、米インフォーク社とインターネット系ベンチャー、
株式会社デジタルガレージとの提携によって「infoseek Japan」としてスタートした。1998 年11月からディレクトリのチャンネル化によるコンテンツの充実をはかり、リニューアルを 重ねた。1999年6月、社員やサービスをデジタルガレージのインフォシーク事業本部から 移転し、米インフォシークの100%子会社として株式会社インフォシークが設立された。ア メリカのGoネットワークのコンテンツをそのまま日本語化して転用するようなことはしない らしい。
検索サイトはかなり洗練されていて、gooやYahoo!と十分肩を並べることができるだろうが、
あまり若い層に受けないという難点がある。しかし、もし中高年をターゲットにするなら、ひ たすら検索エンジンの充実に力をいれて、ビジネス仕様にサイトを仕立てるべきだ。
8 Lycos
米ライコス社は、サーチエンジンを中心に情報提供、電子メール、掲示板などを提供し、子会
社のTripod社を通じて個人向けに無料ホームページサービスやチャット機能を提供するコミュ
ニティーサービスを提供している。
同社は、Yahoo!に次いで黒字化を達成している。また、同社は、ユーザーによる格付け機構
を導入したり、ポルノや暴力などに関連するページを検索結果からはずすフィルタリングサー
ビス「Safety Net」を提供している。1998年8月、メールサービス、ホームページサービス、デ ィレクトリサービスなどを運営するWhoWhere社を買収する。これにより、Tripodとあわせて 310万人の会員を誇る世界最大のインターネットコミュニティを形成することになる。また、
同年10月には、Wired Digital社という、検索サイトを持つ会社を買収したり、1999年1月に
は、IBMと、「Aptiva」製品でライコス作成のインターネットスタートページをフィーチャーす
るという契約を交わしたり、検索サイトのみならず、「ポータルサイト」として競合他社との競 争に備える。こういった数々の買収は、それぞれの企業がそれぞれ独自に機能していて、広告 主にアピールするためにだけ統合した、というのが現状である。
ショッピングの分野では、1998年12月、クッキーから玩具まで何でも売るという「Lycos
Store」を発表した。これは、一回の支払いで複数の商品が購入できる ワンストップショッピ
ング という方法を取り入れ、Yahoo!やExciteとは異なる方法である。また、1999年8月には、
Lycos Merchant Centerという、手軽にショップを開店できるというサービスを始めた。ショッ
プに必要なシステムはライコスがわで提供するので、10分以内で販売までの用意ができる、と している。
1998年4月、住友商事株式会社、株式会社インターネットイニシアティブとともに「ラ イコスジャパン株式会社」を設立した。アメリカのポータルサイトの中では、最後の来日とな った。
同年10月、Lycos Japanが本格的にスタートすることになる。URL数1500万URL、検 索サイトは自然文認識で、豊富な絞込みの機能を備えている。さらに、音声や画像といったコ ンテンツを直接検索することも可能となった。画像は約300万、音声は約20万のデータが 登録されている。検索機能だけでなく、「ニュース」や「ウェブガイド」といったオリジナルコ ンテンツも用意する。同年5月、無料eメールサービスを開始。1999年4月にはカスタマイズ
された「My Lycos」をスタートさせる。同年10月に、検索結果の強化を始め、無料ホームペー
ジサービス「Tripod Japan」、新コンテンツ「オートセンター」など、大型新サービスを投入し、
さらに、エイベックス株式会社の協力をえて、人気アーティスト、浜崎あゆみを起用し、マル チタイアッププロモーション インターネットのあゆみ方 を展開する。
均整は取れているポータルサイトだが、決め手がない。これでは、浮気なネットユーザーが たまたま使うくらいの需要しかつかめないだろう。
9 Netcenter
Netscapeは、いわずとしれたインターネット接続ソフト、「Netscape Communicator」を作って いるメーカーである。1994年Jim Clark、Marc Andreesenによって設立され、10月にNetscape
Navigatorを発表。1995年には、ネットスケープの日本法人が設立する。
ポータルサイトの重要性に最初はあまり気づかなかったネットスケープは、ずっとYahoo!に 自社のホームページを貸していた。しかし、いつしか数百万のユーザーが自社サイトを通り抜 けていることに気づいて、1998年3月には自社サイトを賃貸スペース兼広告塔として活用