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2009 年衆議院総選挙と日本政治の展望

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2009 年衆議院総選挙と日本政治の展望

河野勝(早稲田大学政治経済学術院教授)

*本コラムは、韓国外交安保研究院と当研究所の主催で2009年10月29-30日に ソウルで行われた日韓協議に際し作成したディスカッション・ペーパーである。

なぜ 2009 年に政権が交代したのかを考えるためには、なぜ長い間政権交替が起こらなか ったのかにも答える必要がある。これは簡単には答えられない問題である。しかし、ここ 数回の選挙結果を分析すると、民主党の勝利が、今回の選挙に限定された短期的・突発的 な要因によってもたらされたわけではなく、ここ 10 年ほどの間にわたって起こった日本 政治の変化がその背景にあることが見えてくる。それゆえ、民主党政権は 1993 年の細川

(護煕)連立内閣のように短命で終わることは考えにくい。今後の日本政治の鍵を握って いるのは、むしろ大敗を喫した自民党の再建の可能性にかかっている。

自民党と民主党の獲得議席の合計は、2003年の総選挙では414議席(全体の86.3%)、

2005年では409議席(85.2%)、そして2009年では427議席(89.0%)と、日本では2003 年から自民党と民主党の2大政党制が定着してきた。このことは、有力候補が自民党と民 主党のふたりの候補者に絞られる可能性が高い小選挙区選挙においても、少数政党にも有 利であるといわれてきた比例代表のもとでも当てはまる。今回の選挙は、日本で2大政党 システムが確立した中で、比較第一党と比較第二党とがその立場を交換したケースだった。

今回の選挙では民主党が圧勝した。選挙における得票率を表す指標としては、相対得票 率と絶対得票率とがある。相対得票率とは、各党の得票数を有効投票数で割った値であり、

絶対得票率とは、各党の得票数を選挙当日の有権者数を分母にして割った値である。過去 3 回の総選挙の比例代表での主要政党の相対得票率の推移をみると、今回の選挙で民主党 が獲得した42.4%は、現行の選挙制度が導入されて以来、一つの政党が比例代表で得た相 対得票率としては過去最高であり、しかも比例11ブロック全てで第 1位であった。いく つかの選挙をまたいで政党の勢力の伸張を示すのに適している絶対得票率をみると(絶対 得票率は有権者総数を分母とし投票率の影響を受けないので、その値はその時々の突発的 な政治状況に左右されない政党の基礎的な体力を判断するのにより適している)、小泉純一 郎首相のもとで自民党が圧勝した 2005 年の総選挙(郵政選挙)においても、民主党はそ のひとつ前の 2003 年総選挙とそれほど変らない絶対得票率を得ていた。このことは、民 主党がすくなくとも 2003 年以降着実に「地力」をつけてきたことを表し、小泉旋風が吹 き荒れた中にあってもその基盤が崩れなかったことを物語っている。

民主党は政党としてだけではなく、個人の候補者も地力をつけてきた。個々の民主党候 補者の「勝ちっぷり」がどれほど変化したのかを、過去3回の選挙において、自民党と民 主党の候補が直接対決し、そのふたりが当選もしくは次点だったという選挙区に注目して 検証する。自民党候補が勝った場合の勝ち方と民主党候補が勝った場合の勝ち方とを比べ るために、「接戦度=(1 位の候補者得票-2 位の候補者得票)÷有効投票数」をみると、

2003年当時では全般的に自民党が勝つ場合は圧勝し、民主党が勝つ場合は僅差で勝ってい たが、自民党の「圧勝ぶり」は2005年の郵政選挙でも2003年と変わらず、落選した民主

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党の候補は小泉旋風が吹き荒れるなか踏ん張って善戦したことが分かる。他方、民主党の 候補者が勝つ場合のパターンは 2009 年に大きく変化し、自民党候補者の「圧勝ぶり」と 逆転するまでになった。しかも、2009年の民主党は、2003年当時の自民党と比べて、ど の候補者もまんべんなく直接対決において圧勝していた。民主党は、ここ数回の選挙を通 じて政治家個人としても地力を固めてきたことが今回の大勝利につながったといえる。

投票率の影響について分析すると、前回 2005 年の総選挙(2003 年は 59.9%に対し 67.5%)では、投票率が大幅に上昇したことが、自民党の勝利に結びついたが、今回の総 選挙(投票率69.3%)においては、前回の小泉郵政選挙以上に、高い投票率が民主党に有 利に働いた。さらに、今回の選挙において、共産党が選挙戦略を大きく変更したことも民 主党の勝因の一つであった。共産党は、1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されて以 来、原則として300すべての小選挙区で候補者を立てることを目指してきた。しかし、2007 年9月に開かれた第5回中央委員会総会において「比例代表に力を集中する」として、今 回2009年の総選挙では、小選挙区の候補者を大幅に絞り、「共産空白区」が一気に増えた。

その結果、共産擁立区に比べて、共産空白区における民主党の得票率の方が、相対得票率 でみても絶対得票率でみても高くなっていたことから、自分の選挙区に共産党の候補者が いない場合、共産党を支持する有権者の多くが民主党(の候補者)に投票したことが分か る。

逆に、自民党が大敗した要因は、一つには小泉以前の伝統的な支持者たちの自民党離れ に今回の総選挙でも歯止めがかからなかったのではないかという点、もう一つは小泉ブー ムのもとで前回 2005 年に自民党を支持した人々が今回の総選挙ではきびすを返すように 離反していったのではないかという点に求められる。小泉ブームは、自民党の都市部や中 間部においてこれまでにない支持を集めることに成功しただけでなく、実は農村部を中心 とする伝統的な自民党支持の回復に一定の効果をあげていた。しかし、2009年の総選挙に おいて、農村部の支持は、2003年のレベルを下回るほどに、自民党から離れていった。農 村部において、2005年から2009年にかけて投票率は上昇したが、それももはや自民党を 下支えする力とはならなかったのである。

2009年における自民党は議席の上では大敗したといえ、絶対得票率では(農村部をのぞ き)ほぼ 2003 年のレベルにまで戻っただけに過ぎないことがわかる。いってみれば、自 民党は 2003 年当時とくらべて、今回の総選挙でそれほど大きな「地力の衰え」をみせた わけではないのである。にもかかわらず、劇的な選挙結果となり政権交代が起こったのは、

前回につづけて 2009 年の総選挙でも投票率が高くなったことによって、たとえ同じレベ ルの基礎体力を維持していたとしても、それだけでは競争に勝てない新しい政治状況が日 本に生まれてきたからにほかならない。

最後に今後の展望を述べる。日本の政治は、1993年から94年にかけて小選挙区比例代 表並立制が導入されたことで大きなショックを受けたが、この 10 年の間にそのショック から徐々に立ち直ってきた。投票率も上昇し、政党システムは確実に二大政党化の方向に 進んできている。こうした流れにのって台頭してきた民主党の政権は、たとえさまざまな 政治的苦境にたたされることがあったとしても、政権を投げ出すようにして短命におわる とは考えにくい。仮に民主党が来年の参議院選挙において、単独で過半数を占めるような 勝利を収めるとすると、民主党は現在の連立を解消することが予想される。衆参両院にお

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いて単独多数派を掌握した場合、民主党の政権はさらに安定したものとなるであろう。唯 一の不安材料は、党が分裂する可能性であるが、筆者自身は、(現時点では予測することも 不可能なような)スキャンダルなどが起こり参議院選挙で大敗を喫するようなことがない 限り、その可能性は小さいと考える。それゆえ、今後の日本政治の行方を左右する鍵を握 っているのは、民主党というよりは、むしろ野党となった自民党にある。

しかし、自民党には苦難の道が待ち受けている。第一に、自民党は野党としての経験が これまでにない。政権党であることから得られるさまざまなメリット、すなわち利益誘導 型政策、メディアへの露出、政治資金へのアクセスなどをすべて失った中から、自らの再 建をはかることは、自民党にとって大きな試練というほかない。第二に、自民党は、長期 凋落傾向に歯止めをかけられていない。それは、端的にいって、同じ政策や同じ選挙戦略 を続けているのでは再生が不可能であるという危機的な状況に自民党が置かれていること を物語っている。第三に、自民党は、長期凋落傾向が、連立のパートナーであった公明党 との選挙協力を織り込んだ上でもなお続いてきたという、非常に厳しい現実に直面してい る。次回の参議院選挙で、両党が与党時代と同じような選挙協力を結ぶとは考えられない。

当然、その先の衆議院選挙においての両党の関係も、今のところは不透明である。自民党 の再生は、公明党の固定票に頼らないところをベースラインにして、ゼロからではなく、

マイナスのスタート地点からやり直さなければならないのである。

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