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東アジア地域協力の現況 - 日本国際問題研究所

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東アジア地域協力の現況

中西寛(京都大学教授)

*本コラムは、韓国外交安保研究院と当研究所の主催で2009年10月29-30日に ソウルで行われた日韓協議に際し作成したディスカッション・ペーパーである。

はじめに

過去1年の間に東アジア地域情勢に影響する要因として以下のような項目を挙げること ができよう。

1) 米オバマ政権の発足 2) 中国の存在感の上昇

3) 東アジア多国間枠組みの動向(ASEAN、日中韓会合、6者協議)

4) 鳩山政権の発足と東アジア共同体推進方針の提示

各要因について簡単な分析を加えることで、東アジア地域環境に関する現状分析を行い たい。

1. 米オバマ政権の発足

総じてオバマ政権のこれまでの対外政策の重心は世界経済危機の克服、米欧、米ロ関係 の改善、イラク、アフガニスタン戦争の処理とイスラム世界との関係改善にあり、イラン、

北朝鮮の核問題については事態の進展にやや受動的に対応している状況である。対東アジ ア政策に関しては今のところ前政権からの政策の延長線上で対応しており、重要な政策的 イニシアティブはまだ示していない。

本年1月の政権発足後、ヒラリー・クリントン国務長官は最初の外遊先として東アジア を選び、日本、インドネシア、韓国、中国を歴訪した。日本、韓国との間ではブッシュ前 政権の政策を基本的に踏襲し、在日米軍の再編、在韓米軍の駐留継続、日中韓に中国も加 えた6者協議で北朝鮮問題を処理する姿勢を示した。インドネシアではイスラム社会との 友好と東南アジア友好協力条約加入の意向を表明した。中国では、前政権が始めた米中戦 略経済対話を拡大し、政治・安全保障を加えた米中戦略・経済対話を開始することで合意 した。

この米中戦略・経済対話は7月下旬、ワシントンで開催された。会議後の共同声明では 二国間関係の改善を評価し、軍事及び文化交流の推進と国内経済重視の経済政策、金融体 制強化、エネルギー・気候変動等に関する対話合意などグローバルな協力、6 者協議の継 続等が謳われている1。 この会合に先立ってオバマ大統領は「米中二国間関係は他のいか なる二国間関係にも劣らず重要」と表明したが、オバマ政権の世界戦略において対中関係 が柱の一つであることを示したものと言えよう。事実、アメリカではブレジンスキーやバ ーグステンなど著名な政策アナリストがG2 論を唱えているし、アメリカの主要閣僚が訪 中を果たしている他、中国の人権、少数民族問題でも強い反応を抑えている。

他方で米中間の議題として東アジアないしアジア太平洋といった地域レベルでの政策が 殆ど言及されていないことも注目される。9 月に発足した日本の鳩山政権は東アジア共同

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体推進を重要外交政策に掲げているが、オバマ政権は支持も反対も明確にしていない。こ れはオバマ政権としてアジア太平洋政策を十分に固めていないことの反映ではないかと考 えられる。11月に予定されるオバマ大統領のアジア歴訪の前後に体系的なアジア政策の 表明を準備していることも可能性としてあるが、今のところそうした徴候は見えない。

2. グローバルに存在感を高める中国

これまでの所、今回の経済危機を通じて中国は世界的な存在感を上昇させることに成功 した。昨年の北京オリンピック開催を機に中国は自らの国際的存在感を意識しており、鄧 小平の示した「韜光養晦」方針を変えていく方向に動き出している。空母保有の方針を軍 関係者が公言し、建国60周年記念に大規模な軍事パレードを行うといったことも、純軍 事上の意義よりも政治的意味の方が大きいであろう。

こうした変化に伴って、中国の外交政策の視野は東アジア地域よりもより広いグローバ ルな世界への関心を強めているように見える。そこには北朝鮮問題を除いて、台湾問題を はじめとして東アジアにおいて中国から見て緊急性を要する課題が少なくなったという要 因も作用しているであろう。経済関係で中国の比重が高まる流れがある以上、敢えて東ア ジア地域協力といった構想を追求するよりも、自然な経済の流れに任せた方が望ましいと 考えている可能性がある。対称的に、チベット、ウイグル問題、なかんずく後者は中央ア ジア、イスラム世界とも関連性が深い問題である。また、資源獲得等の関心から中東、ア フリカへの関与も強まっている。

中国の対外政策の第一の柱は対米協調であり、アメリカの G2路線に同調し、財務省証 券購入などによってアメリカ経済を支える意向を示している。しかし G2路線に対しては 警戒心もあり、慎重な姿勢を保っている。

同時に中国としては国際機関や上海協力機構などの多国間枠組みにおいて米中関係をヘ ッジし、かつ牽制する方針のようである。話題を呼んだ周小川中国人民銀行総裁の国際通 貨体制に関する論文で、周は一国の通貨が世界通貨となっている現状のドル体制の問題を 指摘しつつ、国際通貨の利用拡大、たとえばSDRの活用を提案した。更にG20会合な どを通じて中国など新興国のIMFでの発言権拡大を主張している。また、6月にはロシ アで上海協力機構首脳会議が開催され、多極化や国連改革を訴えたエカテンブルグ宣言2を 採択、同時に第1回BRICs首脳会談も開催した。

最近の日中韓首脳会議や日中首脳会談でも中国は鳩山政権の東アジア共同体構想に対し て一般的支持を表明しているものの、今のところは様子を見ている状況である。現時点で は、6者協議を存続させ、対北朝鮮政策で発言権を確保しながら、米中関係を主軸とする 方針以上に新たなイニシアティブを東アジア地域に関して提起する動機はあまりなさそう である。

3.東アジア多国間枠組みの動向

本年4月にタイのパタヤで予定されていた ASEAN+3首脳会議及び東アジア・サミッ トは、アピシット政権に反対するタクシン派のデモによって開催されずに終わった。この ことが象徴するように、ASEAN ないし東南アジア諸国は一つの曲がり角にあり、それが 東アジア地域協力にも影響を与える要因となっている。

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ASEAN にとっての最大の課題はミャンマー(ビルマ)問題である。タン・シュエ国家 平和発展協議会議長率いる軍事支配は強固であり、アウンサン・スー・チー女史は引き続 き軟禁状態に置かれ、学生、僧侶等の反体制活動も効果的に封じ込められている。ウェブ 米上院議員が8月にミャンマーを訪問し、タン・シュエ、スーチーなどと会談、オバマ政 権も軍事政権との対話の意向を示しているが、ミャンマーの内政が変化する展望は今のと ころ存在しない。

中国、インドの経済的台頭やイスラム主義の高まりによって、東南アジア諸国の置かれ ている政治経済的条件は変化しつつある。ASEAN は結束を保つであろうが、構成国間で 権力バランスの変化が起きる可能性はある。インドネシアでは7月の大統領選挙でユドヨ ノ大統領が再選され、安定を示している。来年ASEAN議長国を務めるベトナムもASEAN 内での発言力を伸ばす可能性があるだろう。

今年7月にタイ、プーケットで開催されたASEAN地域フォーラム(ARF)の議長声 明3では、北朝鮮、アフガニスタン、ミャンマー、南シナ海、友好協力条約、反テロリズム と越境犯罪、自然災害対応、パンデミック、軍縮不拡散といった項目が採りあげられた。

中では、相次ぐ地震、ハリケーン等の自然災害に対する管理面での協力強化が目につく。

ASEAN地域フォーラムにおける協力の実質化は自然災害対応を含む、新たな脅威分野(感 染症、テロ等)の比重が増していく傾向を示している。

日中韓首脳会談は1999年から ASEAN+3首脳会談の際に行われたが、2005年 以降開催されていなかった。2007年から再開されたが、昨年12月、日本の麻生前首 相がホストとなって福岡で、ASEAN会合と離れた日中韓首脳会談が初めて開催された。

この会談と、それに先立つ11月の財務大臣会合でチェンマイ・イニシアティブの拡大 方針が示され、翌年2月の ASEAN+3財務大臣会合でその方針が承認されたことは、東 アジア地域協力における日中韓三国のイニシアティブを示したと言えよう。12月の福岡 会談では、日中韓三国間での通貨スワップを強化することが合意され、これに沿って日韓、

韓中の通貨スワップが拡大された。

また、日中韓首脳会議で採択された「日中韓行動計画」は主に経済、文化等に関する多 数の協力分野を掲げた上で、東アジア地域協力については「ASEANとの協力、東アジア 地域協力の促進及び地域において主導的役割を果たすASEANの支援を強化する」と謳い、

地域協力に関するASEANを尊重する姿勢を示した4。しかし4月のパタヤでのASEAN+3 首脳会議が流会に終わる一方で短時間だが日中韓首脳会議が行われたことが示すように、

地域協力における主導性を巡ってASEANと日中韓の間で競合関係が生じる可能性は否定 できない。

ASEAN 地域フォーラムや日中韓会議を通じて、6 者協議が朝鮮半島及び北東アジア地

域の平和と安定のために重要なメカニズムであることが強調されてきた。しかし北朝鮮の 挑発行動が続き、また、オバマ政権が潜在的な敵との直接対話を拒否しない姿勢を示して いる以上、米朝協議の比重が高まる可能性が強い。その場合、6 者協議は朝鮮半島及び北 東アジアにおける中国の主導性を示す性格が強まるであろう。米朝、中朝関係が基軸とな る中で日本、韓国、ロシアは6者協議でいかなる役割を果たすべきか、頭を悩ませること になるだろう。

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4. 鳩山政権の発足と東アジア共同体論

8月30日の総選挙の結果、日本では民主党が圧勝し、社民党、国民新党と連立した鳩 山由起夫政権が発足した。選挙前の公約、いわゆるマニフェストの大半は内政問題に関し てであり、外交についてはごく一般的な表現にとどめられているが、首相就任直後に鳩山 首相が国連関連の諸会議や首脳会談、G20首脳会議に参加したこともあって新政権の外交 姿勢に注目が集まることになった。

中でも鳩山新首相が特に関心を抱いていると思われるのが、アジア外交であり、東アジ ア共同体の推進である。鳩山首相は早期に村山談話の継承を表明し、歴史問題の政治問題 化を回避する姿勢を示した。更に、アメリカで開かれた日中、日韓首脳会談に続いて10 月上旬には韓国、中国を歴訪し、日中韓首脳会議に出席した。

日中韓首脳会議で鳩山首相は「日本はアジアの一員であり、日米関係を重視しながらも、

アジア重視の政策を進めていく、日中韓で実際の協力を進め、開放性、透明性、包含性と いう考えの下に三国を核として地域協力を進め、その先に東アジア共同体を構想していく」

と述べ、日中韓主導で東アジア共同体構築を目指す意向を表明した。また、鳩山首相は環 境・気候変動、大学間交流、経済協力等で三国間協力を進める提案を行った。特に経済協 力では「日中韓投資協定の早期妥結」「日中韓FTAに関する民間研究の結果を政府間で議論」

といった内容に言及し、日中韓の経済緊密化を重視する姿勢を示した5

また、日中首脳会談では東アジアガス田問題に言及しつつ、ヨーロッパの石炭鉄鋼共同 体(ECSC)設立の例を挙げ、東シナ海を「友愛の海」とする提案を行った。対して温家 宝首相は東シナ海を「平和・友好・協力の海」にしたいと述べつつも、この問題は機微な 問題であるので、国民の理解と支持が必要である旨述べ、鳩山提案に対しては明確な姿勢 を示さなかった6。また、日韓首脳会談でも李明博大統領は、東アジア共同体が基本的には 正しい方向であるとしながらも、前提となるいくつかの事案が解決されなければならない とした7

そもそも鳩山政権の唱える東アジア共同体構想の具体的内容はまだ明らかになっておら ず、その範囲や態様も示されていない以上、他国の反応が曖昧なのも理解できる。恐らく 東アジア共同体の主張は、民主党内に存在する複雑な対外路線の公約数、すなわち自民党 の対外政策と見なされているもの、典型的には「アメリカとの関係が良好ならアジアとの 関係はうまく行く」という小泉元首相の言葉のような姿勢への批判があり、アメリカとの 関係は維持しながらもある程度の距離を保ち、「自主性」を持ちたいという感情があるのだ ろう。加えて、鳩山首相が唱える「友愛」概念の発案者である祖父であり元首相の鳩山一 郎は、この言葉をヨーロッパ統一運動を推進したクーデンホフ・カレルギーの著作の fraternityという言葉の翻訳として使用したという背景もある。それは原子論的な個人主 義を批判して社会的連帯を訴える思想であり、クーデンホフ・カレルギーはfraternityを 実現する共同体としてヨーロッパを抱いた8。 鳩山首相の頭の中には、ヨーロッパ共同体 に相当する構想として東アジア共同体構想がある可能性がある。しかしヨーロッパ統合は、

二つの世界大戦の記憶や冷戦の文脈において可能だったのであり、今なお各国の主権との 関係が問題になっている現実を踏まえると、鳩山政権の友愛外交が東アジア共同体へと結 実する道は険しいといわねばならないだろう。しかし鳩山政権の問題提起は、やや下火と なっていた東アジア地域協力論に一石を投じたことは確かである。

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おわりに

米中戦略・経済対話や最近の北朝鮮情勢の展開を見ても、現在の地域情勢はアメリカ、

中国の主導性が高まる傾向にあり、しかもその二国は明確な地域政策を示していない。他 方、ASEAN 内の混乱や北朝鮮問題に関する6者協議の行き詰まり、日本の相次ぐ政権交 代は、アジア太平洋地域での多国間協力の動きをやや低調なものとしている。

しかしASEANの安定の回復、北朝鮮問題を巡る多国間協力、日中韓会合の定例化など は東アジアにおける地域協力が進展する可能性を高める。今年から来年にかけて、日韓を はじめとする諸国が東アジア地域協力に対してどのような姿勢をとるかが注目される。

1 http://www.ustreas.gov/press/releases/tg242.htm

2 http://www.sectsco.org/EN/show.asp?id=87

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http://www.aseanregionalforum.org/PublicLibrary/ARFChairmansStatementsandRepo rts/tabid/66/Default.aspx

4 http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/area/jck/doc_ap.html

5 http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/area/jck/jck_sum_gai.html

6 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/jc_sk_0910.html

7 http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/09kyoudou.html

8 鳩山由起夫「祖父・一郎に学んだ『友愛』という戦いの旗印」『ボイス』2009年9月 号(http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=197)

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