日本農芸化学会 2012 年度大会トピックス賞 発表番号:2J14a10
演 題: 大豆から単離・精製した DNA 合成酵素阻害活性物質による抗炎症作用 発 表 者:水品善之1,2、高橋義洋3、竹内倫文4、栗山磯子1、菅原二三男4、吉田弘美1,2
(1神戸学院大栄養・栄養、2神戸学院大・LSC、3(株)小倉屋柳本・開発研、
4東理大院理工・応生科)
連 絡 先
氏名(ふりがな):水品 善之(みずしな よしゆき)
住所:〒651-2180 兵庫県神戸市西区伊川谷町有瀬 518
所属:神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 食・健康学部門(食品栄養学研究室)
電話:078-974-1551 FAX:078-974-5689 e-mail:[email protected] 研究のトピックス性
大豆(
Glycine max
L.)の新規な健康機能性開発を目指して、哺乳類の DNA 合成 酵素に対する阻害活性を調べました。「蒸し大豆」に DNA 合成酵素阻害が見られた ので、その成分2物質を同定しました。これらは、セレブロシド(1)とステロ イド配糖体(2)であり、共にグルコース1分子が結合した化合物でした。これ ら2物質は、哺乳類の DNA 合成酵素分子種のうちλ(ラムダ)型を特異的に阻害 して、マウス耳へ起炎剤 TPA の塗布で生じる浮腫に対する抗炎症活性を示しまし た。(学術的トピック性)これら2物質は、「水煮大豆」は含まれておらず、その煮汁中にありました。従っ て、大豆の加工工程で成分が煮汁へ溶出してしまう「水煮大豆」よりも溶出がな い「蒸し大豆」の方が健康機能性を秘めていることが分かりました。(社会的トピ ック性)
研究の波及効果
大豆中には、DNA 合成酵素λ阻害活性に基づいた抗炎症活性成分が存在すること が明らかになりました。この活性成分は、「蒸し大豆」もしくは水煮大豆の「煮汁」
に含まれています。従って、水煮大豆よりも「蒸し大豆」の摂取をお勧めします。
大豆由来の抗炎症成分を利用した機能性食品・化粧品の開発が期待できます。
1.DNA合成酵素阻害活性 2.マウス耳抗炎症活性 を測定
活性の強さ:
「水煮大豆」 < 「蒸し大豆」
「水煮大豆」 「蒸し大豆」
セレブロシド(1) ステロイド配糖体(2)
O OH
O OH
H H H
OH
OH
活性成分2物質の単離・精製 NMR, MS による化学構造の決定
これら2物質は、立体構造シミュレーションにおいて Clog P・pKa・長さ・幅が ほぼ同じ数値であった
⇒ 分子構造上の共通性(グルコース配糖体)が生理活性の類似性に起因