日本農芸化学会 2012 年度大会トピックス賞 発表番号:2J11a13
演 題: ピーナッツおよびソバアレルゲンの IgE 結合交叉性エピトープの解析 発 表 者: 勝山 真多 1、岡田 晋治2、小林 彰子 1、田辺 創一 3(1東大院・農・食の安 全、2東大院・農・応生化、2広大院・生物圏)
連 絡 先
氏名(ふりがな):小林 彰子(こばやし しょうこ)
住所:〒113-8657
所属:東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター 電話:03-5841-5378 FAX: e-mail:ashoko@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp 研究のトピックス性
ソバおよびピーナッツは、ともに少量の摂取でアナフィラキシーショックを起 こす深刻な食物アレルゲンです。しかし、臨床試験の難しさからアナフィラキシ ーの原因は未だに解明されておりません。我々は、種が異なるソバとピーナッツ との IgE 交叉エピトープを探索することにより、ピーナッツアレルゲンとしてマ イナーであったオレオシンから、IgE 認識性が高い新規エピトープ配列を明らか にしました。オレオシンは、オイルボディプロテインであり、ソバとの交差配列 は親水性側に露出した N 末端側に位置し、IgE に認識されやすい構造であること が考えられます。さらにソバのトランスクリプトーム配列データに対する相同性 検索により、本ピーナッツペプチドと交差性を示すソバ候補エピトープを見出し ました。
本新規エピトープの発見は、ピーナッツによるアナフィラキシーがオレオシン に起因する可能性、また他にもオレオシンを含む食品が多く存在することから、
今後様々な食品中オレオシンを精査することにより、食品間の交叉性および食品 起因のアナフィラキシー解明に繋がる可能性が考えられます。
研究の波及効果
食物アレルギー診断(パッチテスト)には水溶性タンパク質が用いられおり、
偽判定も多かったのですが、今回、脂溶性タンパク質から高い IgE 結合性エピト ープが発見されたことから、今後、脂溶性タンパク質も評価することにより、臨 床におけるアレルギー診断の精度向上に繋がることが考えられます。また本エピ トープを生かした、アレルゲンの除去およびイムノセラピー等による、アレルギ ーの治療・予防法が開発されることが期待されます。
ソバ(タデ科) ピーナッツ(マメ科)
① ピーナッツタンパク質をキモトリプシンで水解
② HPLC による分離・精製
少量の摂取でアナフィ ラキシーなどを引き起 こす深刻なアレルゲン
共通エピトープ配列?
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
20 40 30 MeOH (%)
*
Absorbance at 220nm
Retention time (min)
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
20 40 30 MeOH (%)
*
Absorbance at 220nm
Retention time (min)
③ ソバタンパク質との Inhibition ELISA による判定
④ 交叉ピークの構造解析
SDQTRTGY
ピーナッツ オイルボディプロテイン
オレオシン3
の N 末端から2~9番目のアミノ酸配列と一致 患者血清 IgE と交叉ペプチド
との結合(推定)
オレオシンは両親媒性で、N 末端側の 親水部がむき出しになっている
用いた血清8例中8例が認識
SDQTRTGYは IgE に認識されやすい構造
ピーナッツによるアナフィラキシーがオレオシンに起因する可能性があり、オレオシンを 含む食品は多く存在することから、今後様々な食品中オレオシンを精査することにより食 品起因のアナフィラキシー解明に繋がる可能性が考えられる
OIL WATER C
Oleosin
N SDQTRTGY
IgE
ソバ花弁 トランスクリプトーム 配列データ
TBLASTN 検索 交叉候補
GAA4HQR01AQ413
他
本成果は以下の論文にて発表した。
Kobayashi S, Katsuyama S, Wagatsuma T, Okada S, Tanabe S. Identification of a New IgE-Binding Epitope of Peanut Oleosin That Cross-Reacts with Buckwheat. Biosci Biotechnol Biochem. 2012, 76, 1182-1188.