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NMRと多変量解析を用いた食品成分の総合評価 - J-Stage

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今日の話題

502 化学と生物 Vol. 52, No. 8, 2014

NMR と多変量解析を用いた食品成分の総合評価

世界の緑茶を例に―

1

H-NMR スペクトルからわかること―

核磁気共鳴(NMR : Nuclear Magnetic Resonance)は,

物質の構造上の情報を得るために非常に有用な手法であ る.今では,単離もしくは合成した単一有機化合物の構 造情報を得るために,また,タンパク質の立体構造を決 定するために用いられている.今回は,1H-NMR測定に より得られるスペクトルを新たな視点で解析し,そこに 生物活性に関する情報を合せることで,さまざまな有益 な情報が得られることができる例を以下に紹介する.

NMR法は,物質の原子核に着目した測定法であり,

測定法に留意することで,それぞれの分子を構成する原 子核そのものを定量的に測定できる(1).すなわち,1H- NMRの場合,観測されたシグナルの積分値は,分子の

1Hの数に比例する.そのため,近年では,NMR法が定 量分析にも応用されるようになり(2, 3),第16改正日本薬 局方第一追補では,NMR法を定量技術として取り入れ る取り組みがなされている.定量NMR法では,純度の 明らかな一つの化合物を基準物質として,1H-NMRスペ クトル上での定量分析を行う.食品は多くの成分を含ん でいるが,成分に由来する1H-NMRシグナルが帰属で き,またその成分に由来するシグナルのいずれかが独立 して観測されさえすれば,定量分析が可能である.ま た,食品成分中に1Hが含まれていれば検出されるため,

1H-NMRを用いることで食品中のほとんどの成分につい て,定性および定量分析を行うことができる.

ところで,近年の分析技術や統計技術の発展により,

微量な物質でも,そして多量の情報でも扱うことが可能 となってきている.食品には,さまざまな成分が多数含 まれており,その食品の味や色,機能性は,それら成分 が相互的に作用して発揮されているものも多い.そこ

で,これら成分に関する情報を総合的に得るために,近 年,食品成分に関するメタボローム解析が行われてい

(4, 5).以下,最近われわれが行った緑茶成分に関する

研究を紹介する.

緑茶や紅茶,ウーロン茶などは,同じチャノキ(

)の葉から異なる製法で生産される(6). 緑茶は世界各地で製造されており,摘採地や時期,加工 による違いから,さまざまな種類が存在する.今回,世 界各地で採取・製造された緑茶に着目し,飲む状態での 緑茶中の含有成分を総合的に評価した.日本を含む世界 各地で摘採された33種の緑茶について,80℃の湯で抽 出した緑茶飲料における1H-NMRを測定したところ,

図1に示す1H-NMRスペクトルが得られた.また,緑茶 に含有する各成分(カテキン類,糖類,カフェイン,お よびテアニン)の独立したシグナルを観測することがで きたため,緑茶飲料に含有する成分の定量分析を行うこ とができた.つづいて,得られた1H-NMRスペクトルに ついて,ブルカー・バイオスピン株式会社の多変量解析 ソフトAmixを用いた主成分分析を行った.図2には,

主成分スコアプロット(図2A)およびローディングプ ロット(図2B)を示す.主成分スコアプロットでは,

寄 与 率 が 高 い 順 に 第 一 主 成 分(PC1),第 二 主 成 分

(PC2)とし,それぞれを横軸および縦軸に展開する.

また,ローディングプロットでは,横軸に1H-NMRスペ クトルの化学シフトを示し,シグナルの絶対値が大きい

(シグナルが上下に大きい)ほど,その違いに寄与して いるシグナルだと判断できる.今回の解析により,

図2Aに示すように,今回測定した世界各地の緑茶につ いて,国ごとに分類することができた.そして,図2B

図1日本産緑茶の1H-NMRスペク トル

EC :(−)-エピカテキン,EGC :(−)- エピガロカテキン,ECg :(−)-エピ カ テ キ ン ガ レ ー ト,EGCg :(−)-エ ピガロカテキンガレート.

(2)

今日の話題

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化学と生物 Vol. 52, No. 8, 2014

に示すローディングプロットの解析により,PC1には,

カテキン類およびスクロースが,PC2には主にテアニン が関与していることがわかった.また,日本の緑茶に関 しては,2つのグループに分かれているが,それらは一 番茶(右側)と二番茶(左側)であった.また,情報が なかった市販緑茶については,一番茶と分布が類似して いたため,購入した緑茶は,一番茶であると予想するこ とができた.また,白葉茶(7)に関しては,世界各地およ び日本の緑茶と異なる分布を示すことが明らかとなり,

テアニン含量が高く,カテキン含量が低いことがわかっ た.このように,本手法を用いることで,成分が一定に 保たれているかを評価する品質管理(まとまりを評価)

や特徴的な緑茶を選別すること(違いを評価)が可能で ある.茶には,高い抗酸化活性を示すことがわかってい る(8).そこで,今回用いた33種類の緑茶の抗酸化活性

(DPPHラジカル捕捉活性)を評価したところ,PC1と 負の相関が見られた.すなわち,図2Bにおいて,PC1 で負に大きいカテキン類が,抗酸化活性に寄与している ことがわかり,1H-NMRを用いた本評価法の妥当性が示 された.

食品成分分析と言えば,高速液体クロマトグラフ法や ガスクロマトグラフ法が主流であるが,今回紹介した NMR法は,これらの分析法とは違った見方のできる手 法であり,食品に含まれる成分を一度の測定で総合的に 評価できる.それぞれの分析方法には,得意・不得意な

分野が存在するが,現在では,それぞれの分析装置の精 度や測定法の開発が飛躍的に進んでおり,それらを使わ ない手はない.食品には,さまざまな成分が複雑に含ま れているため,特定の分析手法のみを用いるのではな く,得たい情報に応じた分析法を選べば良い.それらか ら得られる成分や機能性に関する知見を相互的に解析す ることで,食品の総合的な解釈が可能となる.

今回紹介したごちゃごちゃして一見よくわからない食 品の混合成分の1H-NMRスペクトルでも,さまざまな情 報を含んでおり,上手に解析をすることで,食品本来の 顔を明らかにすることができると期待される.

  1) K.  B.  Santosh  &  R.  Raja : , 35,  5 

(2012).

  2) T. Ohtsuki, K. Sato, N. Furusho, H. Kubota, N. Sugimoto 

& H. Akiyama :   , 141, 1322 (2013).

  3) K. G. Neumüller, S. A. Carvalho, J. Van Rijn, M. M. Ap- peldoorn,  H.  Streekstra,  H.  A.  Schols  &  H.  Gruppen :

61, 6282 (2013).

  4) P. Maes, Y. B. Monakhova, T. Kuballa, H. Reusch & D. 

W. Lachenmeier : , 60, 2778 (2012).

  5) F. Wei, K. Furihata, T. Miyakawa & M. Tanakura : , 152, 353 (2014).

  6) A.  Robertson  &  D.  S.  Bendall : , 22,  883 

(1983).

  7) 稲葉清史,中村順行,小林栄人:茶研報,76, 45 (1992).

  8) D. F. Gao, Y. J. Zhang, C. R. Yang, K. K. Chen & H. J. 

Jiang : , 56, 7517 (2008).

(細谷孝博,熊澤茂則,静岡県立大学食品栄養科学部)

図2主成分スコアプロット(A

とローディングプロット(B

スクロース

カテキン類

テアニン スクロース

カテキン類

テアニン

(3)

今日の話題

504 化学と生物 Vol. 52, No. 8, 2014

プロフィル

細谷 孝博(Takahiro HOSOYA)   

<略歴>2002年東京薬科大学生命科学部 環境生命科学科卒業/2004年同大学大学 院生命科学研究科修了/2006年日本学術 振興会特別研究員(DC2)/2008年千葉大 学大学大学医学薬学府創薬生命科学専攻修 了(博士(薬学))/同年星薬科大学薬学部 助教/2010年一般社団法人バイオ産業情 報化コンソーシアム特別研究職員/2012 年静岡県立大学食品栄養科学部助教<研究 テーマと抱負>天然資源に含まれる機能性 成分の研究(天然物化学)<趣味>音楽鑑 賞,犬

熊澤 茂則(Shigenori KUMAZAWA) 

<略歴>1986年名古屋大学農学部食品工 業化学科卒業/1988年同大学大学院農学 研究科博士課程(前期課程)修了/同年三 菱化成(株)(現 三菱化学(株))総合研究 所研究員/1995年博士(農学)(名古屋大 学)/1997年静岡県立大学食品栄養科学部 助手/2003年同大学講師/2004年同大学 助教授/2007年同大学准教授/2010年同 大学教授,現在に至る<研究テーマと抱 負>食品や植物中の機能性成分の分析,お よび食品成分の機能性発現機構の解析<趣 味>テニス,ジョギング

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