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PDF 『中国・朝鮮における租界の歴史と建築遺産』(神奈川大学人文学研究叢書27) 内田青蔵(神奈川大学工学部建築学科教授)

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85  本書は,年以来神奈川大学を拠点として 組織された租界研究グループの研究成果をまとめ たもので,租界研究グループによる研究成果とし ては第弾にあたる。「まえがき」によれば,当 初,租界研究グループは,中国における日本租界 を対象に日本人側の研究者を中心に研究を進めて いたが,やがて,中国や韓国の研究者と学術ネッ トワークを立ち上げ,研究領域も租界の建築遺構 の研究といった文理協働型の研究グループへと発 展してきたという。本書は,そうした文理協働型 研究グループの研究成果をまとめたものであり,

それゆえ極めて広範囲にわたる研究領域を扱うと いう独自の特徴がそのまま本書のタイトルに示さ れているのである。

 さて,本書は,第一部「租界の行政と産業」,

第二部は「租界建築の保存と再生」の部構成を 執り,それぞれ編と編の合計編の論文から 構成されている。お判りのように先に述べた文理 協働型研究の成果が第二部としてまとめられてい るのである。ちなみに,この第二部の執筆者は一 人を除けば他はすべて中国並びに韓国に研究基盤 を持つ研究者であり,極めて充実した学術ネット ワークを組織し,その成果を蓄積していることが 窺えるのである。

 評者は,日本近代建築史を専門とするものの,

居留地建築や東アジア建築に精通するものではな い。それでも,建築遺産というタイトルが気にな るし,それゆえ興味はおのずと第二部にある。し かしながら,第一部の論文も興味深く,大いに刺 激を受けた。すなわち,第章の年の吉岡 警部被殺事件を取り上げ,漢口の日本租界におけ る日中の攻防を扱った論文は,基本資料をもとに

日中の取り上げ方の違い・解釈の違いなどを明ら かにした極めて精緻な論考といえるであろう。お そらく,これまで過去として葬り去られていた真 実を再考することは,われわれ日本人からすれば 往々にして悩ましい結果をもたらすことにもなる が,今後の日中関係を考える際には,忘れてはな らない姿勢といえるであろう。また,第章の上 海日本人社会の「文明開化」運動を扱った論文 も,極めて興味深かった。こうした国際的な視点 に立つ租界研究者からは視野が狭すぎると批判さ れるところであろうが,評者は日本側からの近代 を見てきたこともあって,居留地に関する興味も 日本に押し寄せた欧米建築の動向に片寄ってい た。そのため,日本が侵略後に様々な建築を建て たという動きの前段として,日清修好条規の締結 後には,上海に日本居留民が押し寄せ,様々な問 題を引き起こしていたといった視点は全くなかっ た。その意味で,第章同様に,第章の問題意 識も日本の近代を再考するためには欠かせないも のといえる。また,生活史的観点からも興味深い 論考でもあり,風俗などに特化した考察などもお おいに期待したい。

 さて,第二部では,第章「上海・青島におけ る在華紡−その概要と居住環境」,第章「天津 における文化遺産の現在−開発と保存のダイナミ クス」,第章「武漢における旧日本租界の建築 再生」,第章「仁川の旧清国租界地にある建築 の保存と再生」の編の建築の保存再生関係の論 文が収められている。以下,具体的にその内容を 紹介したい。第章では上海・青島で経営されて きた日本紡績工場(在華紡)の歴史とその社宅の 概要が紹介されている。研究はまだ途中段階で,

〈書評〉

大里浩秋・貴志俊彦・孫安石編著

『中国・朝鮮における租界の歴史と建築遺産』

(神奈川大学人文学研究叢書 27)

内田青蔵(神奈川大学工学部建築学科教授)

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86 工場地内の様々な施設の配置計画などの詳細な分 析までには至っていないものの,その資料は膨大 で,こうした基本的な資料をもとにした社宅研究 は,近年,日本国内でも積極的に解明されつつあ るテーマであり,今後の成果により日本国内の事 例との比較研究等への発展の可能性を秘めた研究 といえるであろう。第章では天津の旧租界地が 経済開発地区の標的として開発される中での近代 化遺産としての租界建築の保存の問題を行政側の 諸制度や条例との関係性などを詳細に紹介してい る。第章では武漢の租界建築の状況を,漢口新 四軍軍部旧蹟記念館の再生計画を事例として紹介 している。そして,第章では仁川に存在してい た清国租界の形成過程と共に仁川の清国租界に建 てられた建築の特徴を明らかにし,あわせて,こ の地区の代表建築である住商複合建築の保存再生 の状況を詳細に報告している。

 これらの収録された編の論文を読んで想うこ とは,そこに共通する租界建築の保存・再生問題 についてである。日本でも旧居留地の建築はもち ろんのこと,大都市から地方の至るところで様々 な歴史的建造物の取り壊しは一向に止まず,大き な社会問題となっている。昨年も,東京では日本 の伝統芸能の殿堂ともいえる歌舞伎座の取り壊し やわが国の震災建築のはじまりである明石小学校 という震災復興時の小学校建築の保存問題が大き

く報道された。個人的には天津の報告の中で紹介 されているように,歴史的建造物を単なる「文化 遺産」としての価値だけではもはや維持管理は出 来ず,市場経済化の中で新たな経済的活動を生み 出す「文化資産」として見つめ直す文化経済学と でも称する学問体系の構築される必要性を強く感 じたし,さらには技術的問題から言えば保存修復 技術学といったものも必要と思う。こうした提案 は日本国内でも見られるものの,いまだ実現され てはいない。その意味でこうした歴史的建造物の 保存・再生のための新たなる学問体系の構築を,

わが国だけではなく先ずはこうしたネットワーク を活用しながら東アジアを中心にして議論し,共 通した学問体系を共同で構築することが出来れば と思う。

 いずれにせよ,第二部には,中国並びに韓国に おける建築遺産への取り組みの現状が丁寧に報告 されており,建築保存に興味を持つ研究者にとっ ても刺激的な一冊といえるであろう。なお,最後 に欲を言えば,同じ建築を扱いながらも,建築様 式や建築部位の呼称が異なり,何を指しているの かが不明な部分も見られる。東アジアの研究者た ちの議論の輪を広げる為にも,極めて難しいこと であろうが,そうした用語の統一や解説があれ ば,より充実したものとなっていたように思う。

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