2006年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
「パンにおける『ヒット』の考察」
学生番号A0342147 渡辺信平
2007年1月15日提出
目次
1.素朴な疑問
2.検証①:実地調査~次回への展望の発見 サンプル(仮)を用いた調査
調査によって得た印象 次回への展望
3.検証②:アンケート調査 アンケート用紙の作成 1次アンケートの実施 一次アンケートの結果
アンケートから読み取れるもの
4.検証③:サンプル抽出~実地調査②
5.パンにおける「ヒット」をなす為には
6.おわりに
7.参考文献・資料
●「素朴な疑問」
今回卒業論文を製作するにあたり、私は「惣菜パン・菓子パンにおけるヒット」をテーマとした。
このテーマを選択した背景には、いくつかの理由がある。まずは、「ロングセラー」と呼ばれる 商品にはどんな要素が必要なのかということに興味を持っていたからだ。私は、世の中の流行に はそこまで頓着しない性格である。たとえば衣服を買う際にも、その時々の流行のものを買いた いというよりは、永きにわたって「定番アイテム」として市場で正当な評価を得ているものを買 いたいと思うことのほうが断然多い。そして、そのような「定番アイテム」のほうが、より長く、
有効に使うことが出来ると私は思っている。
もうひとつの理由としては、私自身、似たような惣菜パン・菓子パンを購入することが以前から 非常に多いこと、またそこから「私は、何故こんなに長いあいだ、また結構な頻度で同じような パンを(買って)食べているのだろう?」という疑問が浮かんだからである。更に私が購入し続 けているパンは、私と同世代の人々の間で非常に認知度が高く、コンビニエンスストアの多くや、
スーパーマーケット、学生食堂の売店などで購入が可能である(また、売り切れているのを非常 によく目にする)ことを推測することが出来たため、「惣菜パン・菓子パンにおいても定番商品
(ロングラン商品)・ヒット商品と呼ぶに値するものはある」と考え、それらのパンがどうして 定番商品と化したのかについて考察をすることにした。
●検証①:実地調査~次回への展望の発見
まず、仮説を立てる前に、この考察における「主役」となるサンプル商品を独断と偏見で仮に抽 出することにした。そのためにゼミ内での簡易アンケート(4つの商品のイメージを提示し、当 該商品を知っているかどうか、また自ら購入して食べた事があるかどうか、を男女ごとに集計し た。母数は24人、うち男性16人、女性 8 人)を実施し、その結果「知っている」の度数と「購 入して食べた事がある」の度数が高い、「大きなコロッケパン(山崎製パン、以下コロッケと呼 ぶ)」と、「まるごとバナナ(山崎製パン、以下バナナと呼ぶ)」を仮のサンプルとして調査を 開始する事にした。
★サンプル(仮)を用いた調査
私が住んでいる、茨城県取手市の JR 取手駅から車で 5 分圏内にある、有名コンビニエンススト ア・スーパーマーケットでの店頭調査を行った。下が調査対象とした店舗である
•コンビニエンスストア:セブンイレヴン・ローソン・サンクス・ミニストップ・ニューデイズ
•スーパーマーケット:マルエツ・ヤオコー・BIG-A・カスミ
のトータル 9 店舗である。夕方の五時から六時半にかけ調査を行った。
この店頭調査においては、以下の三点に着目して調査をした。
①対象店舗において「コロッケ」と「バナナ」を扱っている店舗数を調査した。
結果は
・コロッケ:7店舗/全9店舗 ・バナナ:8店舗/全9店舗
であった。対象としたスーパーマーケット全ては、「コロッケ」と「バナナ」の両者を取り扱っ ていたが、コンビニエンスストアのうち「サンクス」と「セブンイレブン」では、両店舗ともオ リジナルブランドのパンを展開しているためか、取り扱っていなかった。
②取り扱い状況に着目して調査を行った。
まず、コンビニエンスストア、スーパーの両者において共通しているサンプルの取り扱い状況は、
「コロッケ」が温度の調整機器などが設置されていない普通の棚に陳列され、「バナナ」はチル ド棚に陳列されているというものだった。しかし、コンビニエンスストア・スーパー両者とも各 サンプルを同じような棚に陳列しているのにもかかわらず、両者間では
・コンビニエンスストア:「コロッケ」はパンのコーナーに、「バナナ」はプリンやヨーグルト などと同様デザートのコーナーに並べられており、両サンプルのカテゴライズのされ方が顕著に 現れている。
・スーパーマーケット:両サンプルとも、沢山の商品と共に陳列されているためか、カテゴライ ズのされ方があまり顕著ではない。という差異を感じることが出来た。
ここから、「『コロッケ』は総菜パン、『バナナ』は菓子として扱われている」という印象を持 った。そのため、この二つはお互いに、少し遠いカテゴリーに属していると考え、次回の調査の 際には「総菜パン」と「菓子」の間に属するサンプルを選出することとした。この二つのカテゴ リー間に属する「グレーゾーン」的なポジションを持ったサンプルを交えて調査する事により、
店舗に置けるパン製品の消費についてより詳細な結果が得られるのではないかと考えられたか らである。
③対象店舗におけるサンプルの陳列数に着目して調査を行った。
各店舗におけるサンプルの陳列数を調査した。この項目に関しては、反省点を交えて後に述べる こととする。
★調査によって得た印象
まず、はじめの 2 点に着目した調査では、私は「今回サンプルとした『コロッケ』と『バナナ』
は、それぞれ違うカテゴリーに属している」という印象を得た。そして「両サンプルとも、同一 店舗内における売れ方、購買層はだいぶ違うのではないか。」「コンビニエンスストアとスーパ ーマーケット間では、同じ商品でも売れ方がだいぶ違うのではないか」という予想を立てること
が出来た。
また、この調査によって、次回以降の調査で考慮が不可欠な要素を見つけることができた。「周 囲環境」と「時間帯」と「個数」である。
「周囲環境」は、店舗を取り囲む環境を、調査開始の際に考慮する必要があるという発見である。
調査②の後に、調査対象とした店舗のうちのいくつかで、「近くに高校があるコンビニエンスス トアではコロッケのほうが少なく、近くに住宅地があるコンビニエンスストアではバナナのほう が少ない」といったような現象が見られ、「サンプルの陳列数と店舗周囲の環境の間には相関関 係があるのではないか?」という予想を立てることが出来た。つまり、「店舗周囲の環境によっ て、陳列数およびサンプルの売り上げ数にも差異が出る可能性があるため、あらかじめ店舗周囲 の環境を把握しておき、そこを考慮したうえでの調査が必要である」ということである。(むし ろ、店舗周囲の環境を考慮することによって、購買者層‐商品カテゴリー&具体的な商品の関係 を掴むことが容易になる、ということも考えられた。)
しかし、この相関関係について調べるためには、店舗の「商品補充」や「商品配送」による商品 陳列数の変化や、ランチタイム時などの時間帯による商品の売れ行きの変化を考慮すること(『時 間帯』の考慮)。また、「×月×日の、調査開始時である朝10時の時点では、コロッケの陳列 数は×個であった」といったように、調査をする日の商品数の基準値を正確に把握しておくこと
(『個数』の考慮)、が必要であるということが考えられる。
調査③においては、各店舗、特に店舗周辺の環境が異なる店舗間では、サンプルの陳列数に差が あるという状況が見られた。このことから先にも述べた「周囲環境」の反省を得たのだが、この 反省を踏まえた上での調査をより確実にする為には、基準となる商品数を調査開始の際に正確に 把握し、サンプル数の増減を正確につかむ事が必要不可欠だと考えた。(仮に、もともとのサン プル陳列数を知らないまま調査を続けるとすると、配送などによってサンプル数が増減した際に 正確な結果を得る事が出来なくなってしまう!)
この調査においてはこれらの反省点を踏まえた上での調査が出来なかったため、その点も踏まえ た上で次回以降の調査プランを形成する必要があるという、次回につながる反省を得ることが出 来た。
★次回への展望
今回の調査によって立てることが出来た予想及び反省点を考慮した上で、次回以降の調査では以 下のことを目標とした。
・性別・年齢・職業などによる購買者層ごとの「人気商品」は何かを推測する。
・「総菜」と「お菓子」の間のカテゴリーに属するサンプルを抽出する。また、各カテゴリー
の代表サンプルについての見直しをはかる。
・店舗周囲の環境と購買者層、および売れ筋商品の関係について推測する。
・その他、商品であるパンの認知度、売上数など「人気」が上昇する為の要素を推測する。
そして、ひいては各項目の調査における結果を調査に反映し、より実りあるものにする、という 目標をたてた。
また、取手駅から車で5分圏内での調査では、場所によって購買者の人数にばらつきがあると感 じられた(夕方5時から6時半という同じ帰宅時間帯の中でも、場所によっては20人以上の人 数差があった)ため、次回の調査では、より調査エリアを狭めることが可能な場所での実地調査 をすることにした。
● 検証②:アンケート調査
★アンケートによる調査
実地調査に臨む前に、アンケートによる事前調査を行うことにした。このアンケートでは
① より効果的なサンプル(各カテゴリーごとでの人気が高い商品)の抽出
② 各被験者および被験者の世代間における、パンを購入する際のシチュエーション、商品選択 の傾向、費やす金額
③ 各被験者および被験者の世代間における、パンを購入する頻度
④ 各被験者および被験者の世代間における「『現在よく買っているパン』を知ったきっかけ」
の 4 点を把握すること。そして、より効果的な実地調査につなげることを目標とした。
また、このアンケートを依頼する際には「できるだけ多彩なタイプの被験者グループからの回答 を得る」ということも目標として設定した。私自身、学業の傍らバンド活動にも 4 年間注力し、
さまざまな人々と交流を持ってきた。そこから得た印象を率直に話すとすれば、同じ年齢であっ ても「一般的な大学生」と「アルバイトをしながらバンド活動をしているバンドマン」では経済 状況に違いが見られるということを体感してきた。また、私よりも少し年が上の世代の人達であ っても、社会人とフリーター(更に言えばフリーターの中でも職種によって経済状況にはばらつ きがある)でも同様なことが言えるということも感じた。このような体験から、できる限り多彩 なタイプの被験者から回答を得て、さまざまなタイプの購買パターンを発見することが正確な調 査結果を生むと考えたのである。
①アンケート用紙の作成
以上に述べたポイントを踏まえた上で、作成したアンケートが以下のものである。
(表紙として、免責事項や、プライバシーに関する詳述、二次アンケートへの協力依頼文を記載 したページを作成したが、その箇所は割愛する)
卒業論文作成に関するアンケート
この度はアンケートにご協力していただき、誠にありがとうございます。
さて、このアンケートをご覧になっている皆様は、一日のうちのどこかで、食事やおやつとして「パン」をお店で購入 することはどれくらいあるでしょうか?「ほぼ毎日」という方もいらっしゃれば、「めったに買わない」という方もいら っしゃるかもしれませんね。そのような、日頃皆様が「パン」を買うときの事について、教えていただきたくこのアン ケートをお願いしております。何卒、皆様が普段どうしているのかを思い浮かべながら、お気軽にお答えください。よ ろしくお願いいたします。
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質問①
以下の文章中の選択肢から、普段のあなたに当てはまるものに○をつけ、更にカッコの中に、普段の自分の 生活で当てはまる言葉を書いてください。注:★のついているカッコ内には、複数の回答を書いていただいても構いません。「まるごとソーセージ」や「セブンイ レブンのツナマヨネーズ」といった、記述できる範囲で構いませんので詳細な商品名の記述もお願いします。
私はパンを週に
(
②)
回ほど(
③)
というお店で買って食べる。その際に私が主に買う、お気に入りのメニューは
(
★④)
などである。平均して、一回につき予算は
(
⑤)
円ほどである。質問②
なぜあなたは、質問①の(③ )で回答したお店で食事を買うのでしょうか?該当するものに全てに○をつけてください。「その他」を選択した場合は、よろしければ理由もお聞かせください。
①家・学校・職場から近いから
②好みの商品がそろっているから
③お店が「きれい」「かわいい」「かっこいい」など、その店舗自体が好きだから
④値段が安いから
⑤その他
( )
~質問は次のページに続きます~ 1/2
質問③
質問①のカッコ④で回答した製品を、以下の①~④の中でもっとも近いと考える項目に当てはめてください①食事(商品名: )
②おやつ・デザート(商品名: )
③買い置き(商品名: )
④その他
( )
質問④
質問①の(④ )で回答した商品をあなたがよく買う理由、および好きな理由を可能な範囲で結構 ですので、詳しくお聞かせください。複数回答をした場合は、よろしければ各回答ごとに理由をお聞かせください。( )
質問⑤
質問①の(④ )で回答した商品を買わないときに、代わりとしてどのような商品を購入することが あるかをお聞かせください。詳細な商品名がある場合には、よろしければそちらもお聞かせください。( )
質問⑥
質問①の(④ )で回答した商品を知ったきっかけがあれば、お聞かせください。複数回答をした場合は、よろしければ各回答ごとに理由をお聞かせください。
( )
~質問は以上です、ご協力誠にありがとうございました!~ 2/2
アンケートを作成する際には、アンケートの冒頭の文章で「普段のあなた自身のことを教えてほ しい」ということを話し口調で説明したり、文章空欄補充タイプの設問を作ったりと、出来るだ け被験者が気軽に、自然に回答できるように考慮した。自由記述設問が主体となったアンケート であったため、少しでも被験者に楽しんで回答をしてもらえるための配慮が必要ではないかと考 えたからである。(そのような工夫の甲斐もあってか、非常に詳しい回答をしてくださった被験 者も多かった。)
②一次アンケートの実施
一次アンケートの実施内容は以下のとおりである。
・実施概要
■被験者:50名
■有効回答人数:50名
■実施期間:11月25日~12月22日にかけて
・被験者について
被験者を5つのグループに分けてアンケートを実施した
グループ1:上智大学フォークソング愛好会の部員
人数:11名(うち男性6名、女性5名)
グループ2:私自身と面識があり、同年代(20歳~24歳)のバンドマンかつフリーター
人数:11名(うち男性7名、女性4名)
グループ3:千葉県柏駅前の雑貨屋スタッフ(20歳~25歳)
人数:8名(うち男性3名、女性5名)
グループ4:東京都台東区の高校生向け塾の正社員スタッフ(23歳~26歳)
人数:10名(うち男性5名、女性5名)
グループ5:上記予備校の生徒(高校2年生と3年生に限定)
人数:10名(うち男性5名、女性5名)
③一次アンケートの結果
一次アンケートから私が読み取れた傾向を、このアンケートによって明らかにしようと考えてい た点についての記述を、改めて交えながら説明してゆく。
■商品購入の傾向
まず、質問①のカッコ④(お気に入りのメニュー)と、質問③(パンを買う際のシチュエーショ ン)の2点に着目していただきたい。ここでは、グループ別、男女別に
■質問③の4つの選択肢をカテゴリーとし(選択肢番号順に、C1、C2、C3、C4と表記する)
■質問①のカッコ④において回答頻度が高かったパンとその回答人数をそれぞれのカテゴリー に分類してゆく
●グループ1 男性 C1-ランチパック(山崎製パン)-3人
コロッケサンドイッチ(本学ラウンジ)-3人 C2-ちぎりパン(セブンイレブン)-3人
C3-食パン(メーカー不問)―2人
C4-スゥイートブール(山崎製パン)-1人 理由:とても大きいパンだから興味本位で
●グループ1 女性
C1-ランチパック(山崎製パン)-2人 C2―ローズガーネットクッキー(同上)-3人 C3―回答なし
C4―回答なし
グループ1は本学学生で構成されており、なおかつサークルの部室が本学ラウンジに隣接されて いるため、ラウンジで購入可能な商品がメインの回答となった(かつ、買い物をする場所につい ての質問も、「ラウンジ」という回答がトップであった)。ラウンジにおいては、オリジナルの手 作りサンドイッチや、さまざまな製パンメーカーの商品が取り扱われているために、多種多様な 購買パターンが現れた結果となった
●グループ2 女性
C1-各自回答が異なっていたため、トップ商品はなし C2―各自回答が異なっていたため、トップ商品はなし
C3-食パン(メーカー不問)―4人
C4-回答なし
●グループ2 男性
C1―大きなコロッケパン(山崎製パン)-5人
C2―ナイススティック(山崎製パン)―2人
C3―食パン(SHOP99レーベル)―2人
C4-回答なし
グループ2での結果は「グループ1よりもやや単価が低い商品(マイナス10~20円程度)を買 う傾向がある」というものであった。ただ、特に女性陣においてグループ 1 よりもばらつきの
多い回答結果になったので、あまり信頼性をおけるデータであるとはいえない。女性陣のお気に 入り商品の中には、グループ 1 の女性陣が回答した商品の名前も挙げられていた。両グループ は年齢もほぼ同じということから、購入する商品のタイプに大きな差は無いと思われるが、グル ープ 2 には一人暮らしをしている被験者の比率が多かったため、少しでも食費を抑えるために 安価な商品をセレクトしているという可能性も考えられる。
●グループ3 男性
C1-サンドイッチ(ドトールコーヒー)-3人
C2-回答なし
C3―食パン(メーカー不問)-
C4-マドレーヌ(個人店舗オリジナル)-1人
理由:差し入れとして購入する
●グループ3 女性
C1―サンドイッチ(セブンイレブン)-3人
C2―各自回答が異なっていたため、トップ商品はなし C3―超熟(PASCO)
C4-回答なし
上の 2 グループと比較して、購入する商品の単価は上昇した。また、コンビニエンスストア以 外での商品の購入というパターンもみられた。
●グループ4 男性
C1-サンドイッチ(ドトールコーヒー)-3人
C2-回答なし C3-回答なし C4-回答なし
●グループ4 女性
C1-デニッシュ(アンデルセン)-5人
C2-フィナンシェ(アンデルセン)―2人
C3―ベーグル(西友オリジナル)-2人
食パン(メーカー不問)-2人 C4-回答なし
職場の近隣にドトールコーヒーのようなコーヒーショップ、また最寄駅の中にアンデルセンがあ るといったことから、比較的固まった回答を得られた。女性陣の中でアンデルセンのデニッシュ が断トツの人気を誇っていた事から、このアンケートを予備構内の職員へ配布する際にご協力い ただいた知人(女性)に「職場の女性陣にアンデルセンのデニッシュが人気の理由」を伺ったと ころ
「近くのカフェでのランチ→アンデルセンでパンを買ってきて職場でランチ→レストランでラ ンチ→コンビニエンスストア・・・・といったように、日替わりで食事を取る(調達する)場所 を変えているので、パンを食事として購入するのはだいたい週に2、3回ほど。パンのほうが店
舗で食事をとるよりも比較的安価なので、よほど経済的な余裕が無い場合はアンデルセンのよう な少し値段は高くとも、美味しく、かつ商品を選ぶのが楽しい店舗に行きたい。」
という回答をいただいた。グループ 3、4の結果からは、長時間の仕事をしている人達の方が、
購買の際の単価は高いという傾向が読み取れた。
●グループ5 男性
C1-あらびきソーセージ(セブンイレブン)-3人
C2-チョコメロンパン(同上)-2人
C3-回答なし C4-回答なし
●グループ5 女性
C1-薄皮ミニパンシリーズ(山崎製パン)-4人
C2-ケーキドーナツ(セブンイレブン)-2人
C3-回答なし C4-回答なし
高校生という事もあり、商品の単価は一番低かった。
「おやつ・デザート」の範疇のものが、比較的ボリュームのある商品なのは、若さゆえのもので はないかと考えられる。
購入する場所
コンビニエンスストアが最も購入場所としては多かった(全回答の80%)。質問⑤で「カップラ ーメン」「おにぎり」などの代替商品を回答した被験者の9割がたは、コンビニエンスストアで 同様に商品を購入していた。またそれに続くものとして、「ドトール」「アンデルセン」などのオ リジナル商品のみを販売している店舗という回答があった。
金額
それぞれのグループ間での購買の際に費やす金額においては グループ3・4>グループ1・2>グループ5
の順に、それぞれの間で100円ほどであり。さほど大きくは無い。
これは、年齢層が上がってゆくほど食べる量が少なくなり、同じくらいの値段でより高級感のあ るものを購入するパターンが多いからではないかと思われる。
購入頻度
グループ5が週に3回で一番多かった。
その次にグループ1、グループ2、グループ3がほぼ同率、平均して週に2回であった。
10代後半~20台の序盤にかけての層が、パンを頻繁に購入する層だと思われる。
質問②-店舗の選択
① に〇をつけた被験者・・・43名
② 〃 ・・・34名
③ 〃 ・・・3名
④ 〃 ・・・5名(いきつけでサービスがもらえるから、など)
調査をしたエリアには、比較的パンを売っている店舗が多いため、「近いから」という理由と同 時に「好きな商品があるから」という理由で店舗を選択する被験者も多かった。
質問④-商品の「好きなところ」
グループ1・2・5の中での主たる理由は「ボリュームがあるから」であった。
グループ3・4の中では「味」に関わる記述が多かった(ドトールのサンドイッチは野菜が多め で好き、焼き立てがおいしい など)。
また、「ランチパック」や「薄皮ミニパンシリーズ」が好きな被験者の多くは「様々な味が あって違う味や新商品を試すのが楽しい」という回答をしていた。
質問⑤-代替商品 おにぎり・・・26名 カップラーメン・・・38名 弁当・・・20人
この 3 本柱が、とても多かった。コンビニをはじめとした、店舗ですぐに、気軽に購入できる 商品のひとつとして、パンも認知されているという印象を受けた。
質問⑥-きっかけ
単価が100円から150円程度の、コンビニエンスストアで購入できる商品を中心に挙げた被験 者の中では
「知人が食べていたから」・・・・・37人
「店頭で目に付いたから」・・・・・30人 という理由が多くを占めた。
そこから100円から200円ほど値段が上がった商品を良く食べると回答した層のなかでも「店 頭で目に付いたから」と第一印象で商品を知った被験者が多かった。
④アンケートから読み取れるもの
このアンケートから私自身が重要だと感じた事柄を簡潔にまとめると
① 年齢が若く、また財政的にもあまり余裕がない層は「安さとボリュームを求める」
② 年齢に関係なく、財政に比較的余裕がある層は「質」を最優先する
③ 活動場所に近い店舗ほど、買い物の際に優先順位が高い
④ 「買う楽しさ」「選ぶ楽しさ」「インパクト」も人気商品と化すためには重要なファクター?
の四点である。
アンケートの回答結果自体は、そこまで統一されたものではない、そのため、当初目標としてい た各カテゴリー間でのサンプル商品の抽出が出来なくなってしまったが、この 4 点は比較的全 被験者に共通していることは、アンケートの結果から読み取る事が出来た。
そして、この 4 つのポイントに少しでも多くかぶさっている商品を次回の調査のサンプルとし てゆくこととした。
検証③:サンプル抽出~実地調査その2
サンプルの抽出
上記の4点から私は、山崎製パン「ランチパック」をサンプルとして抽出することにした。
ランチパックは、1984年に発売され、今日においても小売店の棚を確保しているロングセラー 商品である。昨年 4 月からの売り上げの拡大を目指し、品質改良、店頭でのフレーバーライン ナップの拡大、CMなどによるプロモーションで精力的に販売促進をおこなった結果、7月には シリーズ全体の売り上げが24億円に達しており、今春には一日100万個体制の製造ラインを整 える予定となっている。(以上2006年8月26日の日経新聞より)
ラインナップが多く、また新フレーバーも定期的に投入していること、価格はおおよそ 130 円
~150円のお手ごろな価格帯であり、パンも一袋に2つ入りということから、「選んで&ためし て楽しい」「おてごろ感」「ボリュームもある」と、上に挙げた要素をふんだんに含んでいる商品 だと考えた。
また、この商品がどれくらい売れているのかという事を確認するために、簡単な店頭調査もおこ なった。
該当店舗の従業員である友人にご協力いただき、1月4日と5日の9時、13時、18時、22時 の時間帯にかけ、新宿駅西口近辺のコンビニエンスストア(ファミリーマート)での、ランチパ ックの売り上げを観察した。その店舗でのランチパック取り扱いラインナップは、ピーナッツ、
いちご&ホイップ、カスタード&ホイップ、たまごサラダ、ツナマヨネーズ、たまご&チーズ、
北海道コーン入りコロッケの7つであった。
細かな売れ行きの動きは省略するが、9時から18時の間で7割がたの店頭在庫が売れ、19時ご ろの配送後(売り切れたフレーバーを各2個ずつ配送)から22時の間で、9割がたの在庫がな くなるという売れ行きをみせていた。よってこの商品は「売れている」商品であるという確証を 得る事が出来た。
検証④:パンにおける「ヒット」をなす為には
これらの事を踏まえ、この章ではランチパック及び他の商品を例に取りながら、アンケートから 読み取れることに照らし合わせつつパンにおける「ヒット」の最終的な考察と、製パンメーカー をはじめとした、「パン」を製造・販売する企業がどのような戦略を展開してゆくべきかについ ての展望について述べてゆきたいと思う。
① 商品・シリーズそのものの「オンリーワン」な要素をもつこと
「ランチパック」の特徴としては「ボリューム感」と「携帯性」がある。
一袋に具がギッシリと詰まったパンが二つ入っており、充分に一食分の機能を果たす。また特殊 な製法によって作られた袋状のサンドイッチは、何かをしながらでも手を汚さずに食べられる事、
カバンの中に入れておくことも出来る事という 2 つの特徴で、女性にもアプローチできる特製 を持っていると言えよう。
また、別の商品を例に挙げるならば、この卒論の冒頭でサンプルとして挙げた「大きなコロッケ パン」を有する「大きな~」シリーズがある。(大きなメンチカツドーナツ、大きなハム&タマ ゴ、大きなチョコチップメロン)
「大きな~」シリーズは何といっても価格に見合わないボリュームが魅力である。食べ盛りの若 者や、できるだけ安く一食分を済ませたいと考える消費者にはうってつけであろう。
これらのような、消費者を「おっ!」と思わせるインパクトを持つことで、消費者をそのシリー ズの「輪」の中に取り込むことが、「ヒット」の第一段階としてはとても重要だと私は調査を通 じて考えた。
そして、そのようなインパクトを持たせることは店頭で消費者の目をひきつける際に大きな力を 発揮し、コミュニテイ間で商品が広がってゆく際にも強い印象を与えることが予想される。
② シリーズ感を出し、かつバラエティを持たせること
チロルチョコのロングセラーの秘密として「お手軽さ」と並び「全て把握できないくらいのバラ エティ」があるように、パンにおいてもバラエティの充実を図ってゆくことで「選ぶ&試す楽し さ」を持たせることは「ヒット」への鍵となるのではないかと私は考える。
これを実現し「選ぶ&試す楽しさ」を持たせることで、そのシリーズに消費者をガッチリと結び 付けておく事ができるという長所が産まれることが予想でき、人気のフレーバー同士の掛け合わ せ+αによる新たな顧客の獲得にもつながる。ランチパックは、既存のツナマヨネーズ味とたま ごサラダ味をかけあわせ、さらにその商品をトーストして食べるという新しいスタイルを提案し、
昨年のヒットを生み出した。
また、私の経験談から考える消費者にシリーズに対する「なんだこれは!」という感情を持たせ ることも容易となる。
例えばラインナップの中に、ときおり「キワモノ」製品を混ぜる事によって、消費者の「食べて みようかな」という感情をくすぐる。その製品を消費者が試すことによって、そのシリーズから 一時は離れてしまい、他の商品に「浮気」する事も充分にありえる(そこで離れない消費者は『熱 狂的ファン』といっても申し分ないであろう)。しかし、そのシリーズの王道的ラインナップを いつでも店頭に並べて置けるくらいの人気度を①の段階で築いておけば、「浮気」がある程度済 んだあとには、昔懐かしいもとのシリーズに以前よりも深い愛着をもって戻ってくる可能性があ る。むしろ、その方が徹底的な「飽き」を消費者に生み出さないための「息継ぎ」となるのでは ないだろうか。
③ あくまで「値ごろ感」を忘れない
アンケートの結果から、日常生活において「パン」を食べる際にあまりにも多額な買い物をする 人はほとんど見受けられなかった。購入する商品の数は違えど「高いものを一個」もしくは「安 いものを二個」といった買い物をする人が大半を占めており、どんなに高くても600円を超え る買い物をする被験者は今回の調査では見受けられなかった。
コンビニエンスストアで売られているパンであれば100円から150円の価格帯を、ドトール コーヒーやベーカリーのような手作り感を重視した店舗で売られているパンであれば300円
~400円を目安とするのが吉といえよう。特に、コンビニエンスストアなどで売られているパ ンの主たる購買層は経済的にあまり余裕の無い学生やフリーターが中心であるとアンケートの 結果から予測する事が出来る。お手ごろ感を持たせることでそれらの客層に商品を浸透させ、コ ミュニティ内で広げる事はヒットへの道筋となると私は考える。
これらのような要素を踏まえた上で、パンを作り、売る企業はどのように立ち振る舞ってゆくの が望ましいのだろうか?私は一言で言えば「堅実に美味しい商品を作り、そしてインパクトを加 えてゆく」という立ち振る舞い方がとても重要だと考える。
サンプルとして挙げた製品は、それほど派手なプロモーションやタイアップを行ったわけではな い。しかし変わらずに長いものでは20年近く店頭での棚を保持しているということは、まず基
盤となっている「質」がガッチリと固められている事に帰依していると考えられる。そしてその ような堅実なスタンスの中でも、山崎製パンがモットーとしている「社員全員がアイディアの種 である」といったような、あらゆるところから湧き出てくるアイディアを形にしてゆく「チャレ ンジングマインド」と「遊び心」をもって製品開発・販売に臨んでゆく事が必要であろう。
終わりに
正直な観想を言えば、あまり業界に通じた情報もなく、自分自身の足を使っての調査に頼らざる を得ない状況の中卒論を書き進めてゆくのは少しつらいところもあった。その上、集めた情報も やはり期待通りの結果とは少し違う方向に進んでしまい、最後がいわゆる「普通の結論」に近い ものになってしまったのにはやや悔いが残る。
しかし、論文を書く際に、分権や資料に頼りがちな自分にとっては、リアルな情報を得ながらそ れを客観的な情報に照らし合わせつつ試行錯誤するのはとても楽しいものであった。自分にとっ て非常に身近なテーマであっただけに、色々なアイディアを盛り込んでは削ってという作業もと てもエキサィティングであったと思っている。
また、業績においてはあまり調子の良くない製パン業界ではあるが、眼の先の蜜に流されるより も、より「食べたい!」と思える商品を耐え忍んで世に排出して言って欲しい、と改めてこの調 査を通じて思った。老若男女が身近に楽しめる良質な業界を守っていって欲しいと切に願う。
参考文献・資料
山崎製パンホームページ http://www.yamazakipan.co.jp 日本パン菓新聞ホームページ http://www.panka-shinbun.co.jp コンビニウォーカー
http://cvs.main.jp
これまでのランチパック商品ラインナップ http://www.haide.net/~takaha/lunch_pack.html 日経テレコン21
http://telecom21.nikkei.co.jp