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2015 年度 GROWTH プロジェクト事業報告

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2015 年度 GROWTH プロジェクト事業報告

Report of GROWTH Project for Fiscal Year 2015

佐藤 奈穂子

1

,森田 克己

1

,秋山 演亮

1

1和歌山大学宇宙教育研究所

九州大学が代表となるGROWTHプロジェクトにおいて,和歌山大学は和歌山局12mパ ラボラアンテナを用いたCYGNSS衛星の受信のための整備を進めている。CYGNSS衛 星は,2016年10月に打上予定のGNSS-R観測衛星である。GROWTHプロジェクトは,

GNSS-R観測手法の確立とともに,GNSS-Rコミュニティの創出を目指している。今年 度の和歌山局は,復調器の調達を行っている。2016年度にはCYGNSS衛星のEM(開発 モデル)との噛み合わせ試験を行い,和歌山局受信系の機能確認を行う予定である。

キーワード: 超小型衛星,地上局,GNSS-R

報 告

1. 背景

九州大学 市川香教授が代表を務める研究プロジェ クト「GNSS 反射信号を用いた全地球常時観測が拓く 新しい宇宙海洋科学」が,文部科学省が募集する平成 26年度宇宙航空科学技術推進委託費の宇宙科学研究 拠点形成プログラムに採択された。和歌山大学は,こ のプロジェクトの共同参画機関として,九州大学,㈱

IHIとともに共同研究を行っている。実施期間は,平 成26年度〜28年度の3年間である。

こ の プ ロ ジ ェ ク ト は,「GROWTH(GNSS Reflectometry for Ocean Waves, Tides and Height)」の 愛称で呼ばれている。本稿では,このプロジェクトの 概要と本年度の本学の取り組みを紹介する。

2. GROWTHプロジェクト 2.1 プロジェクト概要

GROWTHプロジェクトは,海洋科学と宇宙工学の 融合により新しく創出されたGNSS-Rという観測手法 を用いて,海洋観測に新たな分野の形成を目指してい る。具体的には,GNSS-R観測データの取得・配信シ ステムの整備や,データ解析手法の開発・検証・確立 を通じて,コミュニティの拠点形成を進める。

GNSS-Rとは,GPS等の測位衛星(GNSS衛星)か らの信号が,海面等で反射(Reflection)される事を

利用した,新しいリモートセンシング手法である。

GNSS-Rの観測イメージを図1に示す。既存のGNSS 衛星を用いることにより,観測者は,受信機能だけに 特化した省機能の小型衛星により観測データを取得で きる。小型衛星は,GNSS衛星からの直接波と海面か らの反射波を比較する事により,波高や潮位,風速な どの情報を得る。

この手法により,従来の船舶観測や沿岸の観測塔で はカバーしきれない海域のデータを取得可能となる。

また,従来の高精度大型衛星により得られるデータに 比べ精度が劣るが,小型衛星群によるコンステレー ションを用いることにより,観測可能な海域と頻度 を大幅に向上させることが可能である。将来的には,

図1 GNSS-R イメージ(GROWTH プロジェクトより)

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GNSS-Rを活用する事により,短時間で変化する現象 や移動速度の速い現象を捕えることが可能となり,台 風や爆弾低気圧,津波などへの理解が深まり,これら の状況把握や災害予測に役立てる事が期待される。

本プロジェクトでは,GNSS-Rデータ取得のための 小型衛星として,2016年秋に打上予定のCYGNSS衛 星を用いる。なお,衛星開発は本プロジェクトに含ま れないが,衛星受信局の整備については和歌山大学が 担当をしており,詳細を後述する。

事業期間3年間の年次計画においては,コミュニティ 立上げのため,毎年の研究会の開催を行い,また,平 成27年度には夏の学校を開催している。また,平成 28年度後半にはCYGNSS衛星が打ち上がるため,実 際の衛星データ受信を開始する。また,それと並行し て,比較のための海上での取得データの集積とデータ 利用環境の整備やデータベース構築を進めている。

2.2 CYGNSS衛星

CYGNSS衛星とは,ミシガン大学のChristopher Ruf教 授が代 表と な るCYGNSS(Cyclone Global Navigation Satellite System)プロジェクトの打上げ るGNSS-R観測のための超小型衛星群である1)。ミ シガン大学を筆頭とし,NASAやSwRI(Southwest Research Institute)などとの協力で進められている。

CYGNSS衛星のイメージを図2に示す。ソーラーパ ネルを広げた形が白鳥(キグナス:はくちょう座)に 見える事からその名が付けられた。重量25kgの超小 型衛星8機がコンステレーションを組み,位相角45°

で軌道上に展開する。このようなコンステレーション により,既存の大規模衛星よりも高頻度の地球観測を 実現する。打上予定日は2016年10月17日で,8機を一

度に打上げる。

CYGNSS衛星のターゲットは,その名前が示すよ うに,熱帯低気圧(Cyclone:サイクロン)である。

雲にかくれて可視光で見る事ができないサイクロンの 中心部の海上風速を,電波(GNSS信号)を用いる事 により高頻度で観測を行うことが可能となり,その風 の生成や風速の増強の物理(湿潤大気熱力学,放射や 対流力学等)の理解に迫る。この結果は,サイクロン の状況把握や予測に役立てる事ができる。この目的の ため,GNSS-Rという新しい技術を用いる。CYGNSS 衛星の運用を通して,GNSS-Rデータ解析手法の確立 をめざし,この観測手法の有用性を広げる。

日本のGROWTHプロジェクトは,このCYGNSS プロジェクトと共同研究を行う。CYGNSS衛星運用 のための地上局は,ハワイ・チリ・オーストラリアの 3局が準備されているが,4局目に,和歌山局がミッ ションデータダウンリンク専用局として,名乗りを上 げている。

2.3 和歌山大学の役割

CYGNSSプロジェクトでのアメリカ側のターゲッ トがサイクロンであるのに対し,GROWTHプロジェ クトでの日本側のターゲットは,日本近海で発生する 台風や爆弾低気圧である。これらの気象現象を高頻度 で観測することにより,短時間で状況が変化するこれ らの現象への理解が深まり,状況把握や予測に役立て る事が期待される。また,津波や潮の満ち引きによる 潮位の変化もターゲットとする。

これらの観測において,CYGNSS衛星8機それぞれ が,高頻度なGNSS-R観測を行い,それらの得られ る生データは膨大な量となる。そこで,衛星から地 上局へのデータのダウンリンクを効率的に行うため に,生データの多くは軌道上でのデータ処理を行って データ量の圧縮をし,一部の生データしかダウンリン クしない運用が想定される。また,その圧縮処理は,

CYGNSSプロジェクトのターゲットとなる風速情報 が優先されると考える。一方で,GROWTHプロジェ クトが目的とする情報を得るためには,処理された風 速情報だけではなく,潮汐や津波などと関連の深い海 面高度など他の情報を含む,生データを得る必要があ る。GROWTHプロジェクトは,和歌山局でミッショ ンデータ受信を行う事により,ダウンリンク可能なデー 図2 CYGNSS 衛星イメージ

(引用:CYGNSS プロジェクト1)

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タ容量が増え,日本近海でのGNSS-R生データを得ら れる機会が増えると考える。一方で,CYGNSSプロ ジェクトは,和歌山局の参加により,純粋に,より多 くのデータをダウンリンクする事が可能となる。

3. これまでの進捗

3.1 12mアンテナの改修計画

和歌山局の電波観測通信施設には,直径12mと3m のアンテナが設置されている。これらのアンテナは,

現在,週2回の頻度で,和歌山大学が打上げた超小型 衛星UNIFORM-1(2014年5月24日打上)の運用を行っ ている。このうち,12mアンテナでのCYGNSS衛星 受信をめざし,改修を進めている。12mアンテナは,

UNIFORM-1衛星からのミッションデータ(X-band)

の受信運用のために整備してきた。一方で,CYGNSS 衛星からのミッションデータはS-bandを用いる。

UNIFORM-1衛星の運用を続けつつ,CYGNSS衛星 の受信を行うためには,12mアンテナをS/X共用アン テナへ改修する必要がある。

現在の受信系ブロックダイヤグラムと,改修後の ブロックダイヤグラムを図3に示す。12mアンテナに 搭載されているフィードは,X-band専用のため,S/

X共用フィードへの置き換えを行う。また,現在の

X-band ダウンコンバータはフィードと一体型のもの を使用しているため,フィードの取り替えに伴い,新 たなX-band ダウンコンバータとS-band ダウンコン バータを新設する必要がある。

今年度は,CYGNSS用の復調器の調達を行う。

2016年3月にはCYGNSS衛星と和歌山局受信系の噛 合せ試験を予定している。これは,SwRIの技術者が,

衛星送信機EMを和歌山局に持ち込んでの機能確認試 験となる。

3.2 研究打合せ

2015年2月10日には,ミシガン大学にて和歌山局と CYGNSS衛星との仕様調整ミーティングを持ち,プ ロジェクト・マネージャーのRuf教授や技術担当Rose 氏などCYGNSSプロジェクトのメンバーとの顔合わ せと情報交換を行った。そして,今年度および来年度 へ向けてのスケジュールとマイルストーンの確認をし た。

また,2015年9月10日〜11日には,九州大学にて GNSS-R夏の学校が開催された2)。Ruf教授も招待講 演として来日しており,CYGNSSプロジェクトの進 捗確認と噛み合わせ試験のための情報交換の機会を得 た。

図3 12mアンテナ改修案のブロックダイヤグラム 上図が現在の受信系。下図が改修後の受信系。

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また,CYGNSS衛星はNASAのプロジェクトでも あるため,九州大学,IHI,和歌山大学とで,NASA へのサイエンスプロポーザルの提出を行い,共同研究 の契約を取り交わす必要がある。現在,プロポーザル は受理され,TAA(技術支援契約)へのサインを待っ ている状況である。

4. まとめと今後の計画

九州大学が代表となるGROWTHプロジェクトに おいて,和歌山大学は和歌山局12mパラボラアンテ ナを用いたCYGNSS衛星の受信のための整備を進め ている。CYGNSS衛星は,2016年10月に打上予定の GNSS-R観測衛星である。GROWTHプロジェクトは,

GNSS-R観測手法の確立とともに,GNSS-Rコミュニ ティの創出を目指している。

今年度の和歌山局は,復調器の調達を行っている。

2016年度にはCYGNSS衛星のEM(開発モデル)と の噛み合わせ試験を行い,和歌山局受信系の機能確認 を行う予定である。

来年度の和歌山局では,衛星打上までに,S/X共 用フィードの調達と12mアンテナへの搭載を行う。

2016年10月以降,CYGNSS衛星が打ち上がり,ミッ ションデータダウンリンクが始まれば,それに併せて データ受信運用を開始する。

謝辞

本研究は,文部科学省 宇宙航空科学技術推進委託 費宇宙科学研究拠点形成プログラム(平成26−28年 度 市川,他)の補助を受けて行われた。また,プロ ジェクト遂行にあたり,さまざまな助力を頂いた九州 大学市川教授と,北澤氏をはじめとするIHIのみなさ まに感謝の意を表す。

引用・参考文献

1) CYGNSSプロジェクトのHP。

  http://clasp-research.engin.umich.edu/missions/cygnss/ 

2) GNSS-R夏の学校のHP。九州大学にて開催。

http://www.riam.kyushu-u.ac.jp/research/2015/summer_

seminar/

Referensi

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