1
二
〇 一 九 年 度
豊 島 岡 女 子 学 園 中 学 校 入
学 試 験 問 題
( 一 回
)
国 語
一. 合図 があ るま で、 この 冊子 を開 いて はい けま せん
。 二. 問題 は一 から 三、 2ペ ージ から 18ペ
ージ まで あり ます
。 合図 があ った ら確 認し てく ださ い。 三. 解答 は、 すべ て指 示に 従っ て解 答ら んに 記入 して くだ さい
。
注 意
事 項
2
一 次の 文章 を読 んで
、後 の一 から 八の 各問 いに 答え なさ い。
(た だし
、字 数指 定の ある 問い はす べて 句読 点・ 記号 も一 字と する
。) 店で
商品 を購こう
入にゅう する とき
、金 銭と の交こう
換かん
が行 われ る。 でも
、バ レン タイ ンデ ーに チョ コレ ート を贈おく
ると きに は、 その 対価 が支し 払はら
われ るこ とは ない
。好 きな 人に 思い 切っ て、
「こ れ受 けと って くだ さい
」と チョ コレ ート を渡わた
した とき
、「 え?
いく らだ った の?
」 と財 布か らお 金を とり 出さ れた りし たら
、た いへ んな 屈くつ
辱じょく にな る。 贈おく
り物 をも らう 側も
、そ の場 では 対価 を払はら
わず に受 けと るこ とが 求め られ る。 この チョ コレ ート を「 渡わた
す/ 受け とる
」と いう 行こう
為い は贈ぞう 与よ であ って
、売 買の よう な商 品交こう
換かん
では ない
。だ から
「経 済」 とは 考え られ ない
。 では
、ホ ワイ トデ ーに クッ キー のお 返し があ ると き、 それ は「 交こう 換かん
」に なる のだ ろう か。 この 行こう
為い も、 ふつ うは
贈アぞう
与よ への
「返 礼」 とし て、 商品 交こう
換かん
から 区別 され る。 たと えほ とん ど等 価の もの がや りと りさ れて いて も、 それ は売 買と は違ちが
う。 そう 考え られ てい る。 商品 交こう 換かん
と贈ぞう
与よ を区 別し てい るも のは なに か? フラ ンス の社 会学 者ピ エー ル・ ブル デュ は、 その 区別 をつ くり だし てい るの は、 モノ のや りと りの あい だに 差し はさ まれ た「 時 間」 だと 指し 摘てき
した
。 たと えば
、チ ョコ レー トを もら って
、す ぐに 相手 にク ッキ ーを 返し たと した ら、 これ は等 価な もの を取 引す る経 済的 な「 交こう
換かん
」 とな る。 とこ ろが
、そ のチ ョコ レー トの 代金 に相 当す るク ッキ ーを 一カ 月後 に渡わた
した とし ても
、そ れは 商品 交こう
換かん
では ない
。返 礼と いう
「 贈イぞう
与よ
」の 一部 とみ なさ れる
。こ のと き、 やり とり され るモ ノの
「等 価性
」は 伏ふ せら れ、
「交こう
換かん
」ら しさ が消 える
。 商品 交こう 換かん
と贈ぞう
与よ を分 けて いる もの は時 間だ けで はな い。
①お 店で チョ コレ ート を購こう
入にゅう した あと
、そ のチ ョコ レー トに 値札 がつ い てい たら
、か なら ずそ の値 札を はず すだ ろう
。さ らに
、チ ョコ レー トの 箱に リボ ンを つけ たり
、そ れら しい 包装 をし たり して
、「 贈おく
3
り物 らし さ」 を演 出す るに ちが いな い。 店の 棚たな にあ る値 札の つい たチ ョコ レー トは
、そ れが 客へ の「 贈おく
り物
」で も、 店内 の「 装そう
飾しょく 品ひん
」で もな く、 お金 を払はら
って 購こう
入にゅう すべ き「 商品
」だ と、 誰だれ
も疑 わな い。 でも だか らこ そ、 その 商品 を購こう
入にゅう して
、贈おく り物 とし て人 に渡わた すと きに は、 その
「商 品ら しさ
」を きれ いに そぎ 落と して
、「 贈おく
り物
」に 仕立 てあ げな けれ ばな らな い。 なぜ
、そ んな こと が必 要に なる のか
? ひと つに は、 ぼく らが
「商 品/ 経済
」と
「贈おく り物
/非 経済
」を きち んと 区別 すべ きだ とい う「 きま り」 にと ても 忠実 だか らだ
。 この 区別 をと おし て、 世界 のリ アリ ティ の一いっ
端たん
がか たち づく られ てい ると さえ いえ る。 そし て、 それ はチ ョコ レー トを 購こう 入にゅう する こと と、 プレ ゼン トと して 贈おく
るこ とが
、な んら かの 外的 な表 示( 時間 差、 値札
、リ ボン
、 包装)
でし か区 別で きな いこ とを 示し ても いる
。 たと えば
、② バレ ンタ イン の日 にコ ンビ ニの 袋ふくろ に入 った 板チ ョコ をレ シー トと とも に渡わた
され たと した ら、 それ がな にを 意図 して いる のか
、戸と 惑まど
って しま うだ ろう
。で も同 じチ ョコ レー トが きれ いに 包装 され てリ ボン がつ けら れ、 メッ セー ジカ ード なん かが 添そ えら れて いた ら、 たと え中 身が 同じ 商品 でも
、ま った く意 味が 変わ って しま う。 ほん の表 面的 な「 印」 の違ちが いが
、歴 然と した 差異 を生 む。 ぼく らは 同じ チョ コレ ート が人 と人 との あい だで やり とり され るこ とが
、ど こか で区 別し がた い行こう
為い だと 感じ てい る。 だか ら、 わざ わざ
「商 品ら しさ
」や
「贈おく
り物 らし さ」 を演 出し てい るの だ。 ぼく らは 人と のモ ノの やり とり を、 その つど 経済 的な 行こう
為い にし たり
、経 済と は関 係の ない 行こう
為い にし たり して いる
。「 経済 化= 商品 らし くす るこ と」 は、
「脱だつ
経済 化= 贈おく り物 にす るこ と」 との 対比 のな かで 実現 する
。こ うや って 日々
、み んな が一いっ
緒しょ
にな って
「経 済
/非 経済
」を 区別 する とい う「 きま り」 を維い 持じ して いる のだ
。 でも
、い った いな ぜそ んな
「き まり
」が 必要 なの だろ うか
?
4
ぼく らは いろ んな モノ を人 とや りと りし てい る。 言葉 や表 情な ども 含ふく
める と、 つね にな にか を与あた
え、 受け とり なが ら生 きて いる
。 そう した モノ のや りと りに は、
「商 品交こう
換かん
」と
「 贈ウぞう
与よ
」と を区 別す る「 きま り」 があ ると 書い た。 ひと つ注 意す べき なの は、 その モノ のや りと りに お金 が介かい 在ざい
すれ ば、 つね に「 商品 交こう
換かん
」に なる わけ では ない
、と いう こと だ。 結けっ
婚こん
式の ご 祝しゅう 儀ぎ や葬そう
儀ぎ の香こう
典でん
、お 年玉 など を想 像す れば
、わ かる だろ う。 お金 でも
、特 別な 演えん
出( しゅつ 祝しゅう 儀ぎ 袋ぶくろ
/新 札/* 袱ふく
紗さ
/署 名) を 施ほどこ すこ とで 贈おく
り物 に仕 立て あげ られ る。 ふつ うは 結けっ
婚こん
式しき
の受 付で
、財 布か らお 金を 出し て渡わた
す人 なん てい ない
。 A なぜ
、わ ざわ ざそ んな
「き まり
」を 守っ てい るの か?
じつ は、 この
「き まり
」を とお して
、ぼ くら は二 種類 のモ ノの やり とり の 一方 には
「な にか
」を 付け 加え
、他 方か らは
「な にか
」を 差し 引い てい る。
B それ は、
「思 い」 ある いは
「感 情」 と言 って もい いか もし れな い。 贈おく
り物 であ る結けっ
婚こん のお 祝い は、 お金 をご 祝しゅう 儀ぎ 袋ぶくろ に入 れて はじ めて
、「 祝福
」と いう 思い を込こ める こと がで きる
。と
、み んな 信じ てい る。 経済 的な
「エ 贈ぞう
与よ
」の 場で は、 そう した 思い や感 情は ない もの とし て差 し引 かれ る。 マク ドナ ルド の店 員の
「ス マイ ル」 は、 けっ して あな たへ の好 意で はな い。 そう
、み んな わか って いる
。 経済 と非 経済 との 区別 は、 こう した 思い や感 情を モノ のや りと りに 付加 した り、 除去 した りす るた めの
③装 置な のだ
。 レジ でお 金を 払はら
って 商品 を受 けと る行こう 為い には
、な んの 思い も込こ めら れて いな い。 みん なで そう 考え るこ とで
、そ れと は異 なる 演 出が なさ れた 結けっ
婚こん
式しき での お金 のや りと りが
、特 定の 思い や感 情を 表現 する 行こう 為い とな る。 それ は、 光を 感じ るた めに 闇やみ
が必 要な よう に、 どち らが 欠け ても いけ ない
。経 済の
「交こう
換かん
」と いう 脱だつ
感かん
情じょう 化か され た領 域が あっ て はじ めて
、「 贈ぞう
与よ
」に 込こ めら れた 感情 を際 立た せる こと がで きる
。 C この 区別 は、
人と 人と の関 係を 意味 づけ る役 割を 果た して いる
。 たと えば
、「 家族
」と いう 領域 は、 まさ に「 非経 済/
贈オぞう
与よ
」の 関係 とし て維い 持じ され てい る。 家族 のあ いだ のモ ノの やり とり は、
5
店員 と客 との 経済 的な
「交こう 換かん
」と はま った く異 なる
。誰だれ
もが そう 信じ てい る。' レジ でお 金を 払はら
った あと
、店 員か ら商 品を 受け とっ て、 泣い て喜 ぶ人 など いな い。
でも 日ご ろの 感謝 の気 持ち を込こ めて
、夫 や子 ども から 不意 にプ レゼ ント を渡わた
され た女 性が 感激 の 涙なみだ を流 すこ とは
、な にも おか しく ない
。 D この とき 女性 の家 事や 育児 を経 済的 な「 労働
」と みな すこ とも
、贈おく
られ たプ レゼ ント をそ の労 働へ の「 対価
」と みな すこ とも 避さ けら れる
。そ うみ なす と、 レジ での モノ のや りと りと 変わ らな くな って しま う。 母親 が子 ども に料 理を つく った り、 子ど もが 母の 日に 花を 贈おく
った りす る行こう
為い は、 子ど もへ の愛 情や 親へ の感 謝と いっ た思 いに あ ふれ た営 みと され る。 母親 の料 理に 子ど もが お金 を払はら
うこ とな ど、 ふつ うは あり えな い。 そん な家 庭は
、そ れだ けで
「愛 がな い」 と非 難さ れて しま う。
E 子育 てと は無む 償しょう の愛 情で あり
、家 族か らの プレ ゼン トも 日ご ろの 労働 への 報ほう
酬しゅう では なく
、心 から の愛 情や 感謝 の印 であ る。 そ れは 店で モノ を買 うよ うな 行こう
為い とは まっ たく 違ちが
う。 ぼく らは その よう にし か考 える こと がで きな い。 たと えそ のモ ノが 数時 間前 ま で 商しょう 品ひん 棚だな
に並 んで いた とし ても
。 家族 のあ いだ のモ ノの やり とり が徹てっ
底てい 的てき
に「
④
」さ れる こと で、 愛情 によ って 結ば れた 関係 が強 調さ れ、 それ が「 家族
」と いう 現実 をつ くり だし てい る( なぜ
「母 親」 が
④ され た領 域に おか れる のか も、 ひと つの 問い だ)
。 家族 とい う 間あいだ 柄がら
であ れば
、誰だれ
もが 最初 から 愛に あふ れて いる わけ では ない
。⑤ それ は脱だつ 感かん
情じょう 化か され た「 経済
=交こう
換かん
」と の対 比に おい て( なん とか)
実現 して いる
。
「家 族」 にせ よ、
「恋こい
人びと
」に せよ
、「 友人
」に せよ
、人 と人 との 関係 の距きょ
離り や質 は、 モノ のや りと りを めぐ る経 済と 非経 済と いう 区別 をひ とつ の手 がか りと して
、 みん なで つく りだ して いる のだ
。
(
『う しろ めた さの 人類 学』 松まつ
村むら
圭けい
一いち 郎ろう
)
〔 注
〕
* 袱ふく
紗さ
=贈おく
り物 を包 む儀ぎ 礼れい
用の 布。
6
問一
︱線 ア~ オの
「贈ぞう
与よ
」の うち
、本 来は 別の 言葉 が充あ てら れて おり
、こ のま まで は意 味の 通ら ない 箇か 所しょ
が一 箇か 所しょ
あり ます
。そ の箇か 所しょ
を一 つ選 び、 ア~ オの 記号 で答 えな さい
。 問二
A
~ E
のう ち、 次の 一文 を入 れる べき 箇か 所しょ
とし て最 も適 当な もの を一 つ選 び、 A~ Eの 記号 で答 えな さい
。 だか
らバ レン タイ ンの チョ コで 思い を伝 える ため には
、「 商品
」と は異 なる
「贈おく
り物
」に する こと が不 可欠 なの だ。 問三
︱線
①「 お店 でチ ョコ レー トを
~値 札を はず すだ ろう
」と あり ます が、 それ はな ぜで すか
。そ の説 明と して 最も 適当 なも の を次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア 値札 があ ると 相手 への 思い が額 面で 数値 化さ れか ねな いか ら。 イ 手作 りで ない こと が値 札が ある とば れて しま うか ら。 ウ 値札 を外 し贈おく
り物 とし て意 味づ ける 慣習 があ るか ら。 エ お金 をど れく らい かけ たか が値 札で 周り に伝 わっ てし まう から
。 オ 値札 を外 さな いと 相手 に思 いや りが ない と思 われ てし まう から
。 問四
︱線
②「 バレ ンタ イン の日 に~ 戸と 惑まど
って しま うだ ろう
」と あり ます が、 それ はな ぜで すか
。そ の説 明と して 最も 適当 なも の を次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア 特別 な思 いを 伝え る場 で交こう
換かん
の論 理が 顔かお
を出 し、 贈おく
り物 の意 図が 宙づ りに され てし まう から
。 イ それ らし い包 装を しな いこ とに よっ て、 かえ って 相手 に敵 意や 嫌けん
悪お 感かん
を抱いだ
かせ てし まう から
。 ウ チョ コレ ート に特 定の 感情 は存 在せ ず、 贈おく るこ とが 自他 の感 情を つな ぐ架か け橋 とは なり 得な いか ら。 エ いか にも バレ ンタ イン らし い包 装を して しま うと
、相 手に 気き 恥は ずか しさ を与 えて しま うか ら。
7
オ 行事 の意 味は 社会 的に 認知 され てい るの に、 その 意味 を示 す「 印」 が包 装に は存 在し ない から
。 問五
︱線
③「 装置
」の ここ での 意味 とし て最 も適 当な もの を次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア 感情 があ るか 否か を見 極め るた めに 社会 的に 整え られ た、 経済 的な
「交こう
換かん
」を 示す ため の手 続き
。 イ 贈おく
り物 にこ めら れた 感情 を際 立た せる ため に作 られ た、 贈ぞう
与よ か否 かを 区別 する とい う仕 組み
。 ウ 家事 や育 児を 労働 とみ なさ ない ため に作 られ た、 愛情 で結 ばれ た「 家族
」と いう 枠組 み。 エ 交こう
換かん
か否 かを 見極 める ため に社 会的 に意 味づ けら れた
、値 札を 取り
、リ ボン
・包 装を 施ほどこ す手 続き
。 オ 贈おく
り物 を単 なる 商品 のや りと りと みな さな いた めに 存在 する
、脱だつ
感かん 情じょう 化か され た「 交換
こう かん
」の 仕組 み。 問六
二つ ある
④ には 同じ 言葉 が入 りま す。 最も 適当 な言 葉を 本文 中か ら四 文字 で抜ぬ き出 しな さい
。
8
問七
︱線
⑤「 それ は~
(な んと か) 実現 して いる
」と あり ます が、 なぜ です か。 その 理由 とし て最 も適 当な もの を次 のア
~オ の 中か ら一 つ選 び、 記号 で答 えな さい
。 ア 近年 では お金 を払 って 家事 を代 行し ても らう 動き もあ り、 家事 や育 児を 無む 償しょう の愛 情と して 女性 に押お しつ ける 考え 方は 世間 から の風 当た りが 強く
、こ れ以 上そ の考 え方 を用 いる こと はで きな いか ら。 イ 対人 関係 のあ り方 は交こう
換かん
され るモ ノや 当事 者に そな わる 何か によ りあ らか じめ 決ま るわ けで はな く、 区別 を行 う人 々の 具 体的 な営 みを 通し その つど 作ら れる もの にす ぎな いか ら。 ウ 人と 人と の関 係の 距きょ
離り や質 は贈おく
り物 の交こう
換かん
を通 して 維持いじ され るも ので あり
、思 いや りや 愛情 とい った 心の 働き は贈おく
り物 の 交こう
換かん
によ って 事後 的に 作ら れる もの にす ぎな いか ら。 エ 女性 の家 事や 育児 を経 済的 な労 働と みな すこ とを 避さ けよ うと する 背後 には
、女 性の そう した 仕事 が実 質的 に労 働で あり
、 その 対価 とし て金 銭が 発生 しう ると いう 議論 を導 いて しま うか ら。 オ 商品 と贈おく り物 の区 別は 時間 差や 贈おく
り物 にな され る包 装な どの 何ら かの 外的 な表 示に よっ ては じめ て区 別で きる よう にな り、 その 区別 を適 切に 行う こと で人 付き 合い を円えん
滑かつ
にす るこ とが でき るか ら。 問八
商品 交こう 換かん
と贈ぞう 与よ の区 別が ある こと で、 どの よう なこ とが 可能 にな って いる と筆 者は 考え てい ます か。 四十 字以 内で 答え なさ い。
9
二 次の 文章 を読 んで
、後 の一 から 八の 各問 いに 答え なさ い。
(た だし
、字 数指 定の ある 問い はす べて 句読 点・ 記号 も一 字と する
。) おっ
、ゆ うち ゃん だ。 俺おれ は上 の踊おど
り場 から 下の 踊おど り場 へつ ばを 飛ば す。 つば は、 ゆう ちゃ んの 右足 前方
10セ ンチ って いう とこ ろに 落下 して
、俺おれ
は「 ああ やっ ぱオ レっ て天 才的
」っ てこ ころ のな かで 喝采
か っ さ
をい
叫さけ ぶけ ど、 ゆう ちゃ んは それ を完 全無 視し てじ ぶん の家 の玄げん
関かん に消 えた
。気 がつ かな かっ たっ てこ と? そん なは ずは ない
。ゆ うち ゃん のこ れか ら出 そう って いう 左足 が、 一いっ
瞬しゅん
、わ ずか にた めら った のを
、俺おれ は見 逃のが さな かっ たか らね
。 どう かし たの か、 あい つ。 そう 言え ば、 顔色 悪か った かも
。俺おれ はち ょっ とマ ジで 心配 にな って
、だ けど
、ほ んと うを 言え ばあ い つの 顔色 なん て見 えな かっ たし なっ て思 い直 す。 俺おれ
が見 たの は、 染め てな い黒 い髪かみ
と鼻 のて っぺ ん、 それ から 黄色 いパ ーカ ーの 肩かた のあ たり
、ジ ーン ズと スニ ーカ ーの その 双方
そ う ほ
のう
先っ ぽ。 なん とも 鋭する いど
観察 眼。 これ じゃ あま るで
、好 きな 女の 子の こと を一 心に 見つ めて たみ たい じゃ ない か。 冗談
じょ うだ
じん
ゃな いな
。 でも
、ち らっ と見 えた あい つの 鼻の 頭、 赤く なか った か? あの さあ
、断 って おく けど
、ゆ うち ゃん はお ばさ んだ
。お ばさ んっ て言 って も俺おれ
のお ばさ んじ ゃな くて
、不 特定 多数 のお ばさ ん、 そこ らへ んの おば さん
、も すこ し詳くわ
しく 言う と、 俺おれ
のマ ンシ ョン の隣とな のり
隣とな のり
部屋 に住 んで いる 独身 のお ばさ んだ
。 だか らほ んと うに
、欲 望の 対象 でも 愛情 の対 象で もな いの よ。
(中 略
ち ゅう りゃ
)く
なん だか 腹が 減っ てき た。
①お ふく ろ、 晩飯
、作 って ある のか な?
そう 言え ば、 さっ きお 湯、 沸わ かし たと き、 レン ジの 上に 鍋なべ
、 載の って なか った よな
。て いう こと は、 また 弁当 か。 ほ* っか ほか 亭てい
。 金。 金。 おい
、お ふく ろ、 おま え、 金、 置い てお くの も忘 れた んじ ゃな いの
? いつ もの 場所 に晩 飯代 が置 いて なく て、 ほら
、
10
こう いう こと があ るか ら金
、ま とめ て渡わた して くれ って 言っ てる のに
。っ たく
、つ いて ねえ
。俺おれ
、ど うす んの よ。 文句 を言 うつ いで に、 飯、 マジ どう する のか
、お ふく ろに 電話 しよ うと した とき
、ド ア・ チャ イム が鳴 った
。だ れだ よ。
「は い」
「な んて 不ふ 機き 嫌げん
そう な声
。い い声 が台 無し だよ
」 イン ター フォ ン越ご しに ゆう ちゃ んが 言っ た。 さっ きの つば のこ と、 今ご ろに なっ て言 いに 来た のか よ。 るせ え、 おせ っか いば ば あ。
「な んす か?
」
「な んで すか って 言っ たの よね
、た ぶん
。あ のさ あ、 いっ しょ にお でん
、食 べな い?
」
「は あ?
」
「お でん よ、 おで ん。 とに かく 開け て」 おか あさ んか ら、 申し 訳な いけ どお 金、 立て 替か えと いて って 電話 があ って ね、 いい よっ て答 えて 電話 を切 って
、お 財布 持っ て玄 関
げ ん か ん
を出 よう とし たと き、 そう だ、 ゆう べ作 った おで んが いっ ぱい ある じゃ ない
、そ れ、 いっ しょ に食 べよ う、 片付 くし って 思い つい たの よ。 悪い けど
、お いし いわ よ。 そう 言い なが ら、 ゆう ちゃ んは 上が って きた
。俺おれ
んち に。 べつ に悪 かな いけ ど、 こう いう の
︱
湯気 のあ がる 土ど 鍋なべ を持 って ゆう ちゃ んは ドア の前 に立 って いた
︱
は さす がに はじ めて で、②そ れっ て、 おま えの 鼻の 頭が 赤か った こと とな んか 関係 があ るわ け?
って
、俺おれ は思 った けど
、も ちろ ん聞 かな い。 それ で俺おれ
たち は向 かい あっ て、 おで んを 食べ た。 ゆう ちゃ んは 土ど 鍋なべ のほ かに タッ パー に炊た きた ての ごは んを 詰つ めて 持っ てき て、 俺おれ のと お客 さん 用の ご飯 茶碗
ぢ ゃ わ
にん
それ もよ そっ た。 だけ ど、 どう して この 季節 にお でん なん だ? おで んは たし かに 結構 うま くて
、腹 も空す いて いた し、 俺おれ はす ごい 勢い で食 べ続 けて いた けど
、ゆ うち ゃん はあ んま り食 べな い。 食わ ない のっ て聞 いた ら、 なん だか 疲つか
れち ゃっ てっ て言 う。
11
ああ 疲つか れた
、女 がひ とり で生 きて いく のは 大変 なの よ。 って 言う のが おふ くろ の口 癖
く ち ぐ
だせ
。ひ とり じゃ ない じゃ ん、 俺おれ
がい るじ ゃ ん。 そう だっ た、 だか ら余 計疲つか
れる んだ
。つ ぎか らつ ぎに 問題 起こ して くれ る息 子
む す
がこ
いる から
。③ ああ わか って るよ
。ほ んと のこ と言 えば
、悪 いと 思っ てる
。言 った こと ない けど
。あ んた は我が 慢まん が足 りな くて
、我が 慢まん
が足 りな いば っか りに ちょ っと のと ころ で周 りか ら誤 解さ れる
。あ んた はほ んと はす ごく やさ しい 気の いい やつ だよ
、そ れは ママ
、よ くわ かっ てる
。だ から もす こし 我が 慢まん
すれ ばい いも のを
、し きれ ずに 切れ ちゃ って
、そ れで 最後 には あん たが 悪く なっ ちゃ うの よ。 途中 まで は相 手の ほう が悪 かっ たと して もね
。そ のた めに
、ど れだ け下 げな くて いい 頭を 下げ 続け てき たこ とか
。ま あ、 そん なふ うに おふ くろ が言 うと きは
、平 和な とき だな
、俺おれ もお ふく ろも おた がい に。 俺おれ
がい なか った ら、 おふ くろ は、 その 分、 楽に なっ たろ うか
? デザ イナ ーで もと もと 稼かせ
ぎの よか った おふ くろ が、 ほと んど 稼かせ
ぎの なか った 俺おれ のオ ヤジ をた たき 出す よう に離り 婚こん
して
、そ れで 俺おれ
がい なか った ら、 すげ え助 かっ たの か。 そう かも しれ ない
。 俺おれ
なん て、 産ま なき ゃな
。か あさ んさ あ、 俺おれ を産 んだ こと
、後 悔
こ う か
しい
てる んだ ろ?
ばか じゃ ない の、 そん なこ とあ るわ けな いで しょ
。じ ゃあ 産ん でよ かっ たわ け?
あた りま えで しょ う。 そう おふ くろ は言 う。 それ がほ んと のと きも ある けど
、嘘うそ
のと きも あ るの を俺おれ は知 って いる
。嘘うそ つく んじ ゃね えよ
、こ のく そば ばあ って 思う けど
、ほ んと
、産 まな きゃ よか った わ、 なん て死 んで も聞 きた かな い。
④な んで って
、な んで もだ
。
「な んで
?」 って
、俺おれ は聞 いた
。
「え っ」
「だ から
、な んで 疲つか
れて るの
?」 言い かた がや さし くて
、俺おれ
はあ せっ た。 なに
、や さし く話 しか けて んだ
、も っと 不ふ 機き 嫌げん
にし ゃべ ろよ
。と
、俺おれ は俺おれ
に言 う。 でも
、 ゆう ちゃ んは 気が つか なか った みた いに
、
12
「ま あ、 いろ いろ ある のよ
」 って
、言 った
。 やっ ぱ、 変だ
。つ ばに も、 俺おれ
の言 いか たに も気 づか ない なん て。 それ って
、鼻 の頭 が赤 かっ たこ とと 関係 があ るの か?
「仕 事と か?
」
「仕 事も そう だけ ど、 人間 関係 かな
。し ょう がな いん だけ どね
。で も、 ああ まで 通じ ない と、 ほん と情 けな くな る」 ゆう ちゃ んの 鼻の 頭が 見る まに 赤く なっ てい く。 やっ ぱな んか あっ たん だ。 だけ どこ んな とこ で泣 くな よな
。俺おれ
、知 らね えぞ
。 だか ら泣 くな って 言っ てん じゃ ねえ かよ
。お まえ が泣 くの が、 俺おれ
はい ちば ん嫌いや
なん だよ
。マ マだ って
、泣 きた くな ると きが ある わよ
。や って もや って も仕 事が 終わ らな くて
、だ けど
、あ んた を育 てて かな きゃ いけ なく て、 必死 で働 いて るの
。へ とへ とよ
、へ とへ と。 そこ へ持 って きて
、あ んた がま た学 校で 問題 を起 こす
。も うい い加 減に して よ。 なん でも かん でも 俺おれ のせ いか よ、 我が 慢まん が 足り ねえ って 言う のか よ。 そう
、我が 慢まん
が足 りな いわ ね、 はっ きり 言っ て。 なん ど約 束し たの よ、 もう 切れ ない って
。わ かっ たよ
、 俺おれ がい なき ゃい いん だろ
。出 てっ てや るよ
、こ んな 家。 出て くっ て、 こん な夜 遅おそ
くに どこ へ行 くの よ。 その 辺、 ふら ふら する の、 やめ なさ いよ
。マ ンシ ョン でな んて 言わ れて るか 知っ てる の?
もう これ 以上
、問 題、 起こ さな いで よ、 ここ にも いら れな くな る。 るせ えん だよ
。俺おれ
は拳げん
固こ で壁かべ
をた たい た。 はげ しく 一度
。も うや めて よ。 そう 言っ て、 おふ くろ はま た泣 きは じめ た。 から だを ま るめ て。 まる まっ てち いさ くな った おふ くろ のか らだ
。 泣い てい るお ふく ろを その まま にし て、 俺おれ
は部 屋に こも る。 確か にお まえ は働 いて るよ
、親 父
お や
がじ
いた ころ から ずっ と。 そう
、俺おれ
の記き 憶おく にあ る限 りず っと ずっ と働 いて たよ
。だ から 俺おれ
は我が 慢まん
して んだ よ。 ほん とは あん たに そば にい て欲 しく てし かた なか った
。 だけ ど我が 慢まん
して たよ
。い まだ って
、我が 慢まん
して るよ
。な のに まだ 我が 慢まん
しろ って 言う んだ
? この まえ おま え、 俺おれ
と晩 メシ 食っ たの
、 いつ だと 思っ てん の?
「泣 きた きゃ
、泣 けば いい じゃ ん」
13
俺おれ
がそ う言 うと
、ゆ うち ゃん はえ って いう 顔を して 俺おれ
を見 た。 俺おれ
もそ んな こと 言う つも りは 全然 なく て、 おい
、俺おれ
、ど うし ちゃ った のよ って
、思 った くら い。 でも
、俺おれ の言 葉は おか まい なし に俺おれ
の口 から 飛び 出し てい く。
「我が 慢まん しな くて いい じゃ ん。 うわ っと 泣い て、 また 元通 りに なれ ばい いじ ゃん
。お ふく ろな んて
、し ょっ ちゅ う泣 いて る」
「⑤ それ は、 きみ が泣 かせ るか らで しょ う?
おま けに おば ちゃ んま で泣 かせ ちゃ って
。悪 いけ ど、 ティ ッシ ュ、 くれ る?
」 俺おれ
が渡わた した ティ ッシ ュで ゆう ちゃ んは 目元 をお さえ
、お んな じそ れで 鼻を かん だ。
「き たね え。 だい いち カッ コわ りい
」 って
、俺おれ は言 った
。
「き たな くて カッ コ悪 くて 悪か った わね
」 と、 ゆう ちゃ んは 言っ た。 いつ もの 威い 勢せい
のい いお ばさ んに 戻もど
りつ つあ る。 案外
、回 復が 早い な。
「だ けど
、ひ とり で戦 って 生き てき たん でし ょ?
」
「え っ」
「い つか
、そ う言 って たじ ゃん
。俺おれ
とお ふく ろが
、ゆ うち ゃん の前 でや りあ って さあ
、ゆ うち ゃん がな んか 偉えら
そう なこ と言 って 仲 裁に はい って
、う るせ え、 ばば あ、 おま えな んか にな にが わか る
」
「あ あ、 言っ た言 った
。わ かる よ、 あた しだ って
、子 供の とき から ひと りで 戦っ て生 きて きた んだ から って
」
「そ うそ う。 あん とき は、 なに くせ えこ と言 って んだ
、こ のば ばあ って 思っ たけ ど」
「思 った けど
?」
「そ の戦せん 闘とう
的てき な性 格か らし て、 そう かな って 思わ ない でも ない
」 俺おれ
がそ う言 うと
、ゆ うち ゃん は口 を大 きく あけ て笑 った
。
「戦せん
闘とう 的てき
なと こは
、あ たし たち
、い っし ょか も」
14
「け っ」
「け って なに よ?
いや なわ け?
」
「べ つに いや なわ けじ ゃな いよ
」 ふふ って
、ゆ うち ゃん が笑 う。 なん か気 持ち わり い。
「な んだ かき みに
、⑥ 連帯 のエ ール を送 りた くな った な」
「な んだ よ、 連帯 のメ ール って
? メー ルな んて いら ねえ よ」 ほん と、 マジ でい らね え。 欲望 の対 象で も愛 情の 対象 でも ない から な。 隣とな のり
隣となり に住 んで るば ばあ のま まで いい よ。
「バ カだ ねえ
、メ ール じゃ なく て、 エー ル。 でも
、メ ール 送る のも
、悪 くな いか
?」
「い や、 いい す」 と、 俺おれ
は答 えた
。 ほん と、 いい す。 ちょ っと やさ しく した から って
、エ ール じゃ なく て、 メー ルな んて くれ なく て、 いい す。 そう いう の、 面めん
倒どう だ し、 面倒
め ん ど
なう
女は
、い まん とこ
、お ふく ろだ けで 充じゅ 分うぶん
なん だよ
。
(
『連 帯の メー ルを おく る』 石いし
井い 睦むつ
美み
)
〔 注
〕
* ほっ かほ か亭てい
=正 しく は「 ほっ かほ っか 亭てい
」。 持ち 帰り 弁当 のチ ェー ン店
。
15
問一
︱線
①「 おふ くろ
、~ また 弁当 か。 ほっ かほ か亭てい
」と あり ます が、 ここ から
「お ふく ろ」 のど のよ うな 状じょう 況きょう がう かが えま す か。 その 説明 とし て最 も適 当な もの を次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア 文句 を言 う息 子と 一緒
いっ しょ
にい るの が苦 痛で
、食 事を 一緒
いっ しょ
にと ろう とし てい ない
。 イ お金 を渡 して おけ ばど うに でも なる と考 え、 息子
む す
のこ
気持 ちを 考え てい ない
。 ウ 仕事 で少 しで も早 く実 績を 上げ よう と焦あせ
り、 食事 をお ろそ かに して いる
。 エ 一人 で子 供を 育て るた めに 必死 にな って 働き
、家 を空 けが ちに して いる
。 オ 息子
む す
なこ
ら自 分の 苦労 を理 解し てく れる にち がい ない と勘 違
かん ちが
いし てい る。 問二
︱線
②「 それ
」と はど うい うこ とで すか
。そ の説 明と して 最も 適当 なも のを 次の ア~ オの 中か ら一 つ選 び、 記号 で答 えな さ い。 ア ゆう ちゃ んが ゆう べ作 って あっ たお でん を持 って
「俺おれ
」と いっ しょ に食 べよ うと やっ て来 たこ と。 イ ゆう ちゃ んが
「俺おれ
」の 母親 の依 頼を 快く 引き 受け て夕 食代 を立 て替か えて あげ よう とし たこ と。 ウ ゆう ちゃ んが 食事 の世 話を しよ うと 相手 の 了りょ 解うかい
も得 ずに 勝手 に「 俺おれ
」の 家に 上が り込 んで 来た こと
。 エ ゆう ちゃ んが 人恋 しさ から 生意 気な
「俺おれ
」に もち ょっ と世 話を して あげ よう と思 い立 った こと
。 オ ゆう ちゃ んが
「俺おれ
」の 母親 から の頼たの みだ とい って 湯気 のあ がる 土ど 鍋なべ を持 って 来て くれ たこ と。
16
問三
︱線
③「 ああ わか って るよ
」と あり ます が、 どう いう こと が「 わか って る」 ので すか
。そ の説 明と して 最も 適当 なも のを 次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア
「俺おれ
」が 何度 も問 題を 引き 起こ し、 その たび に母 親が 本当 は下 げな くて もい い頭 を下 げ「 俺おれ
」を かば い続 けて きて くれ た とい うこ と。 イ 母親 が女 手一 つで 苦労 して
「俺おれ
」を 育て てく れて いる のに
、男 の自 分が 今ま で何 の手 助け もし てあ げら れて いな いと いう こと
。 ウ
「俺おれ
」は 我が 慢まん
が足 りな いば っか りに 度々 周囲 の誤 解を 招い てき たの で、 いい かげ ん辛しん 抱ぼう
強さ を身 につ けな けれ ばな らな い とい うこ と。 エ 母親 がし なく ても いい 大変 な苦 労を して いる のは
、も とは と言 えば
「俺おれ
」に 原因 があ り、 謝っ てす むよ うな もの では ない とい うこ と。 オ ただ でさ え仕 事が 多た 忙ぼう
で大 変な のに
「俺おれ
」が 次か ら次 へと 問題 を引 き起 こす もの だか ら母 親を 余計 に苦 しめ てし まっ てい ると いう こと
。 問四
︱線
④「 なん でっ て、 なん でも だ」 とあ りま すが
、こ こに は「 俺おれ
」の どの よう な本 音が 隠かく され てい ると 考え られ ます か。 そ の説 明と して 最も 適当 なも のを 次の ア~ オの 中か ら一 つ選 び、 記号 で答 えな さい
。 ア 母親 にま で自 分の 存在 を否 定さ れた らも う生 きて いけ ない ので はな いか とい う絶 望に 似た 思い
。 イ 自分 が問 題児 だと いう こと は充 分わ かっ てい るが
、せ めて 母親 だけ には 許し ても らい たい とい う思 い。 ウ 母親 にさ んざ ん迷めい 惑わく
をか け困 らせ てい ると 思う もの の、 心の 底で は強 く母 を恋こ い慕した
うと いう 思い
。 エ 周囲 の人 たち にど う思 われ よう と、 自分 の存 在に は意 味が ある にち がい ない とい う強 い自 負の 思い
。 オ すべ て「 俺おれ
」が 悪い よう に見 られ るが
、母 親に も責 任が ある とい うこ とを 理解 して ほし いと いう 思い
。
17
問五
意に 沿わ ない 息子
む す
をこ
前に して 悲し みに 打ち ひし がれ てい る母 親の 様子 を、 感情 を示 す言 葉を 一切 用い ず端たん
的てき に表 現し た二 十 字程 度の 一文 を本 文中 から 探し
、そ の最 初の 五字 を抜ぬ き出 しな さい
。 問六
︱線
⑤「 それ は、 きみ が泣 かせ るか らで しょ う?
おま けに おば ちゃ んま で泣 かせ ちゃ って
」と あり ます が、 ここ には 二つ の「 泣か せる
」動 作が あり ます
。そ れら の意 味の 違ちが いを 八十 字以 内で 説明 しな さい
。解 答に 際し ては
、「 泣か せる
」対 象の 状 況・ 背景 を明 確に する こと
。 問七
︱線
⑥「 連帯 のエ ール を送 りた くな った な」 とは どう いう こと です か。 ゆう ちゃ んの 心情 とし て最 も適 当な もの を次 のア
~ オの 中か ら一 つ選 び、 記号 で答 えな さい
。 ア 自分 につ ばを かけ よう とす るな ど恐おそ
れ知 らず な「 俺おれ
」に 対し てゆ うち ゃん は昔 の自 分を 見て いる よう で、 将来 に期 待し た くな った とい うこ と。 イ 子供 のと きか ら一 人で 戦っ て生 きて きた とい う点 でゆ うち ゃん は「 俺おれ
」と 感情 を共 有で き、
「俺おれ
」を 励はげ
まし たく なっ たと い うこ と。 ウ ゆう ちゃ んも
「俺おれ
」も きわ めて 戦せん
闘とう 的てき
な性 格で あり
、周 囲と ぶつ かる こと も多 々あ るが
、そ れだ けに
「俺おれ
」を 応おう 援えん
した く なっ たと いう こと
。 エ
「俺おれ
」が 孤こ 独どく
に耐た えて 一人 でが んば って 生き てい る姿 にゆ うち ゃん は共 感を 覚え
、な んと か「 俺おれ
」と 母親 の仲 が良 くな れ ばと 願い たく なっ たと いう こと
。 オ
「俺おれ
」が ゆう ちゃ んに 嫌いや がら せを した のは 実は 寂さび しさ の裏 返し だと わか り、 自分 なり に「 俺おれ
」を 支え てや りた くな った と いう こと
。
18
問八
本文 の解かい 釈しゃく とし て明 らか に間ま 違ちが
って いる もの を次 のア
~オ の中 から 一つ 選び
、記 号で 答え なさ い。 ア 本文 の最 後の 方で
「連 帯の エー ル」 とい う言 葉を 用い るこ とで
、ゆ うち ゃん と「 俺おれ
」が 心を 通わ せる 様子 を読 者に 感じ さ せて いる
。 イ 周囲 から 問題 児扱あつ いか
され てい ると いう 自己 の現 状を 半ば 投げ やり に語 る姿 勢を 通し て、 思春 期の 自己 を見 つめ る人 物像 を 印象 的に 描えが いて いる
。 ウ 意図 せず にゆ うち ゃん に優 しさ を示 して しま うと いう 描えが き方 で、 粗そ 暴ぼう
さと は異 なる
「俺おれ
」の 人ひと
柄がら
の一 面を さり げな く描えが い てい る。 エ 母と 息子
む す
のこ
会話 がカ ギか っこ で示 され ない こと で、 ゆう ちゃ んの 発言 をき っか けに 読者 をな だら かに 母と 息子
む す
のこ
人間 関係 の描びょ 写うしゃ
に誘いざ うな
こと に成 功し てい る。 オ メー ルを 送る とい うゆ うち ゃん の申 し出 を拒きょ 否ひ する 場面 を最 後に 置く こと で、 結局 この 作品 のテ ーマ は親 子の 和解 であ る と暗 に読 者に 示し てい る。 三
次の
︱線 のカ タカ ナを 漢字 に直 しな さい
。 A ニン イで 事情 の聞 き取 り調 査を 行う
。 B 卒業 文集 の制 作に ヨネ ンが ない
。 C 弱い 者ほ どト トウ を組 みた がる
。
19
20