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gendai songai baishoho ni okeru kohei sekinin : waseda daigaku shinsa gakui ronbun hakushi

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現代損害賠償法における公平責任 序 一 問題の設定 二 公平責任の概況 三 公平責任に関する研究意義 四 本稿の構成 第一章 ドイツ不法行為法における公平責任 第一節 ドイツ民法829条から見るドイツの公平責任 一 公平責任の内容 二 公平に基づく事情の考量 三 公平責任と保険の関係 第二節 ドイツ公平責任の歴史 一 プロイセン一般ラント法における公平責任 二 ドイツ民法829条の成立と趣旨 三 ヘーデマンの唱える「具体的公平責任」 第三節 ドイツ公平責任の不法行為法における意義 一 違法性の存在から見る公平責任 二 公平責任の中心にある経済状況の考量 三 ドイツ公平責任の本質とその限界 第二章 オーストリア・オランダ不法行為法における公平責任 第一節 公平には拠らない公平責任 一 オーストリア一般民法典1310条及び改正1306条aの規定 二 オーストリア公平責任の内容 三 単なる「公平」ではない具体的な公平責任 第二節 実質的な公平を追求する裁量権 一 新オランダ民法における公平責任 二 新民法ドラフトと立法の趣旨 三 責任決定における実質的な公平の実現 第三節 公平責任の構造に対する認識の段差 第三章 中国不法行為法における公平責任 第一節 中華人民共和国侵権責任法における公平責任 一 中国侵権責任法における公平責任の規定 二 立法の趣旨と近時の理解 三 新法規定からの問題提起 第二節 公平責任の歴史と発展

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一 公平責任の歴史 二 判例の整理 三 学説の発展と賛否両論 第三節 中国公平責任の本質についての再確認 一 立法・司法・学説からの帰納 二 特殊な場面に適用する公平責任の実質 三 中国公平責任の内容と新たな問題提起 第四章 公平に基づく損害賠償責任の軽減 第一節 ロシア及び東欧諸国民法における規定 一 各国公平責任の規定 二 責任軽減の理由と本質 第二節 スイス債務法上の加害者の窮迫に基づく賠償責任の軽減 一 賠償責任の軽減事由を規定するスイス債務法44条2項 二 加害者の窮迫に対する判断の実質 第三節 賠償責任の軽減の本質に対する再確認 一 加害者救済の段差 二 免責と帰責のアンバランス 第五章 帰責原理としての公平責任 第一節 公平な損失分担に対する法技術的な分類とその限界 一 損害賠償範囲の画定における公平な損失分担 二 公平な損失分担の可能性を創出する具体的な衡平 三 帰責に機能する公平責任 第二節 公平責任に基づく帰責原理 一 公平責任に基づく帰責の本質 二 経済状況と公平責任の関係 三 扶助義務から生じる公平責任 むすび 序 一 問題の設定 「被害者のもとに生じた損害を特定の者に賠償させるための法的根拠(帰責原理)とし て日本民法典によって採用されたのが、七〇九条の文言によれば、過失責任主義である。 過失責任主義は、原因主義に替って近代不法行為法の根幹を形成するものとして、大陸法、 英米法をとわず、一九世紀に至って支配的な潮流となったものである。」1過失責任主義に基 1 藤岡康宏「私法上の責任―不法行為責任を中心として」芦部信喜()『基本法学5―責任』 (岩波書店、1984年)212頁。

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づき、過失責任原理は現在の不法行為法の基本的な帰責原理となっている。過失責任の確 立には、ローマ法以来の長い歴史があり、その発展に大きな理論的変遷が見られる2。そし て今日に至るまで、過失責任原理は依然として、二つの基本的な機能を持っている。つま り「第一に、過失責任主義は、有責性ある場合、すなわち、故意や過失がある場合には常 に責任を負うという点で、責任を肯定する積極的機能をもっている。また、第二に、有責 性ある場合にだけ責任を負わされ、結果が悪いというだけでは、あるいは、違法であると いうだけでは責任を負わないという点では、責任を否定する消極的機能を有しているので ある。」3過失責任はこの二つの機能を根底にして、与えられた法的理想を実現している。周 知のように、過失責任を原則とした不法行為法は個人の自由活動・取引の発達を保障して いる4。しかし一方、このような法的理想を宣言した過失責任は自ずから相互に対立しあう 二つの命題に直面することになる。「一つは…人は自己の『落度によって』他人に損害を与 えてはならぬ、もし損害を与えたときは賠償の責任がある、という命題であり、他の一つ は、人(被害者)は自ら落度がないにもかかわらず他人によって与えられた損害を自ら甘 2 過失責任の歴史的発展について、潮見佳男『民事過失の帰責構造』(信山社、1995年)に おいて紹介されている。 3 E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)『ドイツ不法行為法』(日本評論社、2008)。4頁。 4 日本民法(1896 年)の制定過程において、穂積起草委員は不法行為法が原因主義ではな く過失主義を採用する理由を以下のように説明している。つまり「若シ人ガ充分ニ注意ヲ シ叉正営ノ方法ヲ用ヰテ行為ヲ為シマシテモ夫レデモ或場合ニ於テハ此不法ノ制裁トモ称 スベキ一ツノ賠償ノ義務ガ生ズル斯ウ云フコトニナリマシテハ各ノ働キ、自由ノ範園卜云 フモノガ甚ダ不確カナモノニナリマス各人ノ生活ノ範園卜云フモノヲ互ヒニ制限シテ之フ 調和シ各人ノ権利ノ行使卜云フモノハ互ヒニ制限調和スルト云フノハ法ノ目的デアリマス ルナラバドウシテモ充分ナル注意ヲ以チ充分ナル精密ノ方法ニ依ツテヤルモノ迄法律ガ或 不利盆ナ結果ヲ負ハセルト云フコトハ出来ヌモノデアリマス荀モ人ノ行為卜云フモノガ原 因トナツテ其原因ヨリシテ一ツノ損害ガ生ズル其損害ヲ賠償セシムルト云フノガ若シ一ツ ノ法ノ規定ニナリマシタ時ニ於テハ取引ノ發達モ害シマセウシだん々々各人ガ共同生活ヲ 致シテ居リマスルニ就イテハ種々ノ六ケ敷イコトガ生ジテ参リマシテ人々ガ安心シテ詰リ 生活ヲ営ムト云フコトガ出来ヌ位ノコトニナルデアリマセウ尤モ反封ノ諸國ニ於キマシテ ハ損害卜云フモノガ出来レバ其損害ヲ元ノ通リニ直スヤウニ、其損害ノ原因ノ正卜不正ト ヲ問ハズ必ズ元ノ通リニ直ス其結果ヲ元ノ通リニ直スト云フ方丈ケヲ見テ居ツタノデアリ マスケレドモ夫レデハ近頃ノ生活ノ有様ニハドウシテモ適ヒマセヌノデアリマスカラシテ 夫レ故ニ若シ各人ガ充分ニ注意ヲシ充分ナル方法ヲ以テヤツテモ或事ガ起ツタ時ニハ是ガ 為メニ損害ヲ受ケマシタ者ハ矢張天災卜同ジコトデ一ツノ偶然ノ出来事卜見ルヨリ仕方ナ イ社會ニ住ンデ居レバソレ丈ケノコトハ我モ人モ覺悟シテ居ラナケレバ人卜交際ヲスルコ トガ出来ヌ社會ニ立ツテ生活ヲスルコトガ出来ヌト云フ覺悟ガドウシテモナケラネバ往ケ ナイト思フ」『法典調査会民法議事速記録五』(商事法務研究会、1984年)297、298頁。

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んじて堪え忍ぶ理由はなく、故なく犯された平和は回復されねばならぬ、従って加害者に 対して賠償の責を追求することができるという命題である。」5ここから、過失責任は過失が あれば賠償責任を負う理由を説明しなければならないと同時に、過失がなければ損害は被 害者の負担となることについても、その正当性を論証しなければならないことになる。し かし、過失の不存在を理由とする行為者の絶対的な免責については、無過失責任理論の発 展によって事実上否定され、過失責任主義の不法行為法における単一主導の地位が修正さ れている。ここで、問題をより本質的に把握しようとすると、不法行為法における賠償責 任について、「責任」とは何かを改めて問うことになる。責任の意味は、一般的に「みずか ら引き受けてしなければならない義務」とか、「事を担任してその結果の責めを負うこと」 などと説明される。6不法行為の帰責原理というものは特定の人にその者の行為の結果から 生じる損害に対して賠償「責任」を負わせる根拠となる原理ないし理由のことである。そ の意味において、過失責任とは即ち「過失」を帰責原理とした発生する損害賠償義務のこ とである。これに対して、無過失責任とは、過失がなくても生じる損害賠償義務であり、 過失以外の帰責原理に基づく賠償責任のことである。 これまで、不法行為法の帰責原理としては、一般的に過失責任と無過失責任があるとい われ、後者の無過失責任としては、危険責任や報償責任が挙げられている。しかし比較法 的に見れば、過失以外の帰責原理として、すなわち「無過失」の損害賠償責任にあたって、 もう一つの帰責アプローチは存在してきたし、また現に存在している。それは公平責任と 一般的に呼ばれるものである。本稿は、公平責任について調査を加え、公平責任の内容を 明らかにしたうえで、その帰責原理になる可能性を考察していくものである。この調査研 究によって、今日の不法行為法帰責理論の発展に幾らかの貢献ができれば、筆者にとって 幸いである。 二 公平責任の概況 公平責任という用語は日本民法典の不法行為法規定の中には存在しない。しかしながら、 公平責任に対する研究は、日本においても古くから行われている。筆者は、まずここで、 岡松参太郎博士と我妻栄博士の研究成果を借りて、公平責任とは何かについて概観してお く。 岡松博士は『無過失損害賠償責任論』の中で公平責任について、まず「徒来ノ法制ニハ 過失ナクシテ生シタル損害ニ對シ法規ヲ以テ直接ニ其賠償責任ノ有無叉ハ其範囲ヲ定メス 之ヲ裁判官ノ裁量ニ委シ、裁判官ハ各場合ノ事情ヲ斟酌シ公平ナル判断ニ依リ賠償責任ノ 有無又ハ賠償ノ範囲ヲ決定スヘキ旨ヲ規定スル場合少カラス」7と述べ、公平責任は裁判官 5 石本雅男『無過失損害賠償責任原因論(第三巻)』(法律文化社、1989年)551頁。 6 平井宜雄教授は国語辞典を引用し、責任という言葉の一般的な意味を確認している。平井 宜雄「責任の沿革的・比較法的考察―不法行為責任を中心として」『不法行為法理論の諸相 ―平井宜雄著作集Ⅱ』(有斐閣、2011年)1頁。 7 岡松参太郎『無過失損害賠償責任論』(有斐閣、1953年)338頁。

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の「公平ナル判断」に基づく責任だと考えている。また、博士は損害賠償法全体を通して 「裁判官ノ斟酌スヘキ事情」について、「三種ノ区別」に分類し、即ち「(イ) 因果関係ノ ミヲ斟酌スルモノ(口) 因果関係ノ外過失ヲ斟酌スルモノ(ハ) 以上ノ外尚他ノ事情ヲ 斟酌スルモノ」という三種類であり8、公平責任は「以上ノ外尚他ノ事情ヲ斟酌スルモノ」 に属すとも述べている。さらに、著書の中において、岡松博士は公平責任の適用・根拠に ついて検討を加えたが、概して「…裁判官ノ裁量ニ委シ、裁判官ハ各場合ノ事情ヲ斟酌シ 公平ナル判断ニ依リ賠償責任ノ有無又ハ賠償ノ範囲ヲ決定スヘキ」ことを公平責任に対す る認識の基本としている。 これに対して、我妻博士は岡松博士の研究に基づき、公平責任理論を一歩進ませようと 試みた。博士はイェナ大学教授ユステゥス・ウィルヘルム・ヘーデマン(Justus Wilhelm Hedemann)の「具体的衡平(公平責任)主義」理論を引用し、「損害は――何人に生ずる も、また過失の有無に関せず――ことごとく社会生活における一箇の災害である。この災 害は結局何人かが――加害者か、被害者か、或いは社会全般にか――負担せしめられねば ならない」9と述べた上で、「何人に負担せしむべきやを決する標準に付て近時二つの要件が 明らかにせられている。一はこの標準は各時代の社会の状態とこれに伴う社会思想によっ て制約せられることであり、二は裁判と法律学との発達に伴って、いわゆる一回的な社会 現象に対して、それぞれ具体的場合に異なる『衡平なる解決』を発見せんがために、ます ますあらゆる要素を考慮に入れることである」10と説明を加え、岡松博士が公平責任に与え た「各場合ノ事情ヲ斟酌シ公平ナル判断」を「あらゆる要素を考慮に入れること」に拡大 している。 ここで、公平責任に対する岡松博士の研究と我妻博士の見解を振り返って見れば、当時 の不法行為法帰責理論の発展状況に鑑みて、両者は共に帰責体系の全体構成に着眼し、全 理論を統一する最後の理想の発見に挑み、公平責任を不法行為法体系に取り込んでいる。 しかし、今日の不法行為法理論の立場からは、公平責任に対する従来の注目は失せ、不 法行為法の帰責体系の全体像にせまる研究は傍流となり、公平責任にまったくと言ってい いほど関心が寄せられていない。 だが、現状はともかく、岡松博士と我妻博士の研究はすでに公平責任理論の存在を明ら かにし、その重要性を指摘しており、この成果に基づきまたこれを切っ掛けとして、公平 責任に対する再検討をする必要性は否定できない。本稿は、公平責任理論を今日の不法行 為法に取り込む可能性を考え、その不法行為法に対する原理原則性について改めて検討す るものである。 比較法的に見れば、公平責任を帰責原理として認める立法例は存在し、今日においても 諸外国の民法・不法行為法の中に散在している。これらの法規定によって公平責任研究の 8 岡松参太郎「前掲書」(注7)、339340頁。 9 我妻栄『民法研究Ⅵ債権各論』(有斐閣、1969年)225頁。 10 我妻栄「前掲書」(注9225頁。

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端緒は提供されている。各国の公平責任に関する規定から、公平責任のあるべき姿につい て探っていくことは十分に可能である。以下、公平責任の存在の実証という意味で、公平 責任に関連する法規定を紹介しておこう。 ドイツ民法(BGB)829条は「第823条から第826条までに掲げる場合の一つにおいて 自己が加えた損害について第827条又は第828条に基づいて責任を負わない者は、損害の 賠償が監督義務のある第三者から得られない限り、事情により、特に当事者の関係によっ て損害補填が公平に適い、相応な生計並びに法定扶養義務の履行のために必要な資力を失 わせない限度で、損害を賠償しなければならない」と規定している11。公平責任は過失責任・ 「危険責任」・「犠牲」・「自己犠牲」と並んで損害に対する責任の根拠として挙げられてい る12。またドイツ民法制定の前に、プロイセン一般ラント法(ARL)も公平責任の考え方を 表す条文を規定していた。プロイセン一般ラント法第一部第六章の 43 条には、「損害賠償 責任はその者(精神状態異常者・知的障害者・七歳未満の未成年者である加害者)の必要 な生計費に及ばず、また子供の場合、その者の市民教育を受けるための資力を奪うことが できない」13という内容の規定が置かれていた。 これに対して、オーストリア一般民法典(ABGB)の1310条は「責任無能力者ノ惹起セ ル損害ニ封シ被害者力監督義務者ヨリ賠償ヲ受クル能ハサル場合ニハ、(一)裁判官ハ其者 力通常理性ナキニ拘ラス尚其場合ニ過失アリタルコトナキヤ、(二)又ハ被害者力加害者ヲ 庇護シテ防衛ヲ敢テセサリシコトナキヤ、(三)又ハ当事者ノ財産状態ニ鑑ミテ全部又ハ公 平卜認ムヘキ一部ノ賠償ヲ命スヘキモノトス」14と規定している15。また同法改正1306a 11 E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)「前掲書」(注3)、338頁。

BGB§ 829 Ersatzpflicht aus Billigkeitsgründen

Wer in einem der in den §§ 823 bis 826 bezeichneten Fälle für einen von ihm verursachten Schaden auf Grund der §§ 827, 828 nicht verantwortlich ist, hat

gleichwohl, sofern der Ersatz des Schadens nicht von einem aufsichtspflichtigen Dritten erlangt werden kann, den Schaden insoweit zu ersetzen, als die Billigkeit nach den Umständen, insbesondere nach den Verhältnissen der Beteiligten, eine

Schadloshaltung erfordert und ihm nicht die Mittel entzogen werden, deren er zum angemessenen Unterhalt sowie zur Erfüllung seiner gesetzlichen Unterhaltspflichten bedarf.

12 E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)「前掲書」(注3)、57頁。

13 ARL, Erster Theil, Sechster Titel

§43.Auch haftet dasselbe nur so weit, als dadurch dem Beschädiger der nöthige Unterhalt, und wenn er ein Kind ist, die Mittel zu einer standesmäßigen Erziehung nicht entzogen werden.

14 岡松参太郎「前掲書」(注7)、617頁。

15 ABGB§ 1310. Kann der Beschädigte auf solche Art den Ersatz nicht erhalten; so soll der Richter mit Erwägung des Umstandes, ob dem Beschädiger, ungeachtet er

gewöhnlich seines Verstandes nicht mächtig ist, in dem bestimmten Falle nicht dennoch ein Verschulden zur Last liege; oder, ob der Beschädigte aus Schonung des Beschädigers die Verteidigung unterlassen habe; oder endlich, mit Rücksicht auf das Vermögen des Beschädigers und des Beschädigten; auf den ganzen Ersatz, oder doch einen billigen Teil desselben erkennen.

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は「緊急避難によって他人の財産を損傷したるときは、裁判官は、被害者が避難者の災害 を顧慮したるために損害の発生を容認したるものなりや、災害と損害の大小の比、避難者 と被害者の財産状態等を考慮して賠償責任の有無及び範囲を決定すべし」16と規定している 17 さらにその後のオランダ民法(BW)の草案稿においても、「公平」に基づき、損失の分 担を図るという趣旨を示す規定をしている。草案第六部第三章の5条から 8条は「事情に 対する公平が要求される場合」に、公平に関わる考量を定めていた18。その後、新オランダ 民法が制定され、公平責任に関する規定は二箇所において存続されている19。その一つは、 不法行為の集団責任内部における公平に基づく責任分担についての規定である。同規定(第 六部第三章の166条2項)は「不法行為の集団責任の責任者たちは均等に賠償責任を負わ なければならない。但し、事情によって、公平がそれと異なる要求をする場合は例外を認 16 我妻栄「前掲書」(注9232233頁。

17 ABGB§ 1306a. Wenn jemand im Notstand einen Schaden verursacht, um eine

unmittelbar drohende Gefahr von sich oder anderen abzuwenden, hat der Richter unter Erwägung, ob der Beschädigte die Abwehr aus Rücksicht auf die dem anderen drohende Gefahr unterlassen hat, sowie des Verhältnisses der Größe der Beschädigung zu dieser Gefahr oder endlich des Vermögens des Beschädigers und des Beschädigten zu

erkennen, ob und in welchem Umfange der Schaden zu ersetzen ist. 18 The Civil Code of the Netherlands Book 6.(draft text) Chapter 3.

Article.5 Para.2. Among themselves they must contribute towards the damage in equal parts, unless in the circumstances of the casc equity requires a different apportionment. Article.6 Para.1. If an act cannot be attributed as a tort to the doer on account of his tender age or on account of a mental or bodily shortcoming, then he is none the less under a duty,within the limits indicated in article 2, to make compensation in so far as equity rcquires,regard being had to all the circumstances.

Article.7 Para.3. If parent and child are both liable,thc one who makes good the loss has recoursc against the other in so far as equity cntails it, regard being had to all the circumstanccs.

Article.8 Para.3. The servant must, in so far as hc is liablc to thc third party, bear the loss as against the cmployer,unlcss, by virtuc of their legal relationship or according to cquity, it falls on thc cmploycr cither wholly or in part.

THE NETHERLANDS CIVIL CODE―BOOK6 THE LOW OF OBLIGATIONS―

DRAFT TEXT AND COMMENTARY, edited by THE NETHERLANDS MINISTRY OF JUSTICE, A.W.Sijthoff (1977), pp.45-46.

19 The Civil Code of the Netherlands Book 6. Title 3. Section1. Article 166

2. As amongst themselves, they must contribute in equal shares to the damages unless, in the circumstances of the case, fairness requires a different apportionment.

Section2. Article 170

3. If the subordinate and the person by whom he was employed are both liable for the damage, the subordinate need not contribute to the damages in their mutual

relationship unless the damage results from his intent or deliberate recklessness. The circumstances of the case and the nature of their relationship may produce a result different from that provided in the preceding sentence.

Hans Warendorf & Richard Thomas & Ian Curry-Sumner, The Civil Code of the Netherlands, Wolters Kluwer 2009, pp.678-680.

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める」と規定している。もう一つは使用者と被用者との間の損害賠償責任についての規定 (内容変更による新設)である。同規定(第六部第三章の170条3項後段)は「事件の事 情と(使用者と被用者)双方の関係上の性質によって、前記規定と違うような結論を導く ことができる」として、公平に基づく裁判官の裁量を認めている。 一方、旧ロシア民法はより一般的な公平責任を定めていた。ロシヤ共和国民法典(1922 年)の 406 条は「第四百三條乃至第四百五條の規定によっては加害者が損害賠償の義務を 負はぬ場合に於ても、裁判所は加害者の財産状態と被害者の財産状態とを斟酌して加害者 に賠償の義務を負はしめ得る。(衡平責任)」と規定しており、同法 410 条は「損害賠償の 範囲の決定に当たっては、裁判所は常に被害者及び加害者の財産状態を衡量しなければな らぬ。(賠償額の決定に於ける衡平)」と規定していた20。その後のロシア共和国民法典(1964 年)においても、458条2項(被害者の過責および加害者の財産状態の考慮)は「裁判所は、 市民により惹起せじめられた損害の賠償の限度を当該市民の財産状態を考慮して縮減する ことができる。」と規定していた21。なお最新のロシア連邦民法典はこの条文の表現に修正 を加え、引き継ぐことにしたので、ロシアの現行法としての地位を獲得したことに至る22 ロシア旧民法における公平責任は「財産状況」という考量要素をより一般的に拡大し、財 産の多寡によって、賠償責任を決定するようにもみえる。 また1964年のポーランド民法典、1959年のハンガリー民法典、(旧)チェコスロバキア 民法典、(旧)ドイツ民主共和国民法典、(旧)ユーゴスラビア債務法もそれぞれ公平責 任的な要素に基づく損失分担の調整を規定している。 これに対して、同じく公平責任の見地から「財産の考慮」に関する規定をしているが、 スイス債務法(OR)は、また違った内容の規定をしている。スイス債務法44条2項は「故 意又ハ重大ナル過失ナクシテ損害ヲ惹起シタル賠償義務者ガ賠償ノ給付二因リテ窮迫二陥 ルベキトキハ、判事ハ此ノ理由ヨリシテモ亦賠償義務を軽減スルコトヲ得。」という内容で ある23 最後に、公平責任について、中国不法行為法においても、それを規定する法条がある。 中華人民共和国侵権責任法(2010年)24条は「被害者及び行為者いずれにも損害の発生に 20 末川博『ソブィエトロシヤの民法と労働法』(改造社、1926年)376377頁。 21 五十嵐清ほか「『ロシア共和国民法典』邦訳(9)」北大法学論集234号(1973年)、 88頁。また同条についての翻訳として「(後段)裁判所は、市民によって加えられた損害の 賠償額を、彼の財産的状態のいかんによって、減額することができる。」というものもある。 宮崎昇(訳)『法務資料392-ロシヤ共和国民法典』(法務大臣官房司法法制調査部調査統計 課,、1965年)223頁。 22 「ロシア連邦民法典」10833項「裁判所は公民の財産状況を斟酌し、損害賠償の金額 を軽減することができる。但し、損害は故意の行為によるものの場合は除外される。」 黄道秀『俄罗斯連邦民法典(全訳本)』(北京大学出版社、2007年)372頁。 23 オーゼルほか(佐藤荘一郎訳)『スイス債務法』(司法省調査部、 1939年)30頁。

OR Art.44 Abs.2. würde ein Ersatzpflichtiger, der den Schaden weder absichtlich noch grobfahrlässig verursacht hat, durch Leistung des Ersatzes in eine Notlage versetzt, so kann der Richter auch aus diesem Grunde die Ersatzptticht ermässigen.

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ついて故意及び過失がないときは、実際の状況に基づき、双方に損失を分担させることが できる。」と定めている24。なお同法第23条(受益者の補償責任)、31条(緊急避難)、32 条(監督義務者責任)、33条(一時的な責任無能力者の損害賠償責任)は、それぞれ「適当 補償」、「軽減責任」、「経済状況に基づく適当補償」という言葉を使って損害の公平な分担 を図ることにしている。25 公平責任に関する規定については、上記各国の立法例で示される通りである。これらの 法規定を確認したところ、規定の内容から二つの事実を確認することが出来る。一つは、 西ヨーロッパ諸国の民法では、公平責任の適用場面がそれほど多く上げられていないこと、 つまりドイツ・オーストリアのように、公平責任の適用は責任無能力者の損害賠償責任あ るいは緊急避難に限定され、またオランダの現行法における適用の例をふくめたとしても、 その適用はわずかな場面にしかない。他方で、公平責任の立法例を全体的に見れば、「財産」 というファクタが前面に出され、「財産」あるいは「経済状況」に対する考量が公平責任の 基礎となっているのではないかと思われる(少なくとも、法文上具体的には「財産状況」 ないし「経済状況」という文言しか書かれていない)。したがって、公平責任の実態に対し て、以下本文で詳しく考察していくが、岡松参太郎博士と我妻栄博士の指摘したように、 公平責任の中核が「各場合ノ事情ヲ斟酌シ公平ナル判断」あるいは「あらゆる要素を考慮 に入れること」だと考えることは、各国の立法例からは見てとることができない。そこで、 公平責任に関しては、前に述べたように、既存の不法行為法帰責体系を補完するものとし ての有用性の見地から一度離れて、比較法的に公平責任に関する各国の法規定を客観的に 考察した上で、その帰責原理ないし損失分担原理としての真の有用性を改めて検討すべき 24 加藤雅信ほか「中国不法行為法(侵権責任法)の制定と中国民法の動向」法律時報82 2号(2010年)66頁。 中華人民共和国侵権責任法(2010) 第二十四条(公平分担损失)受害人和行为人对损害的发生都没有过错的,可以根据实际情 况,由双方分担损失。 25 「中華人民共和国侵権責任法」第20条「他人の人身権益を侵害し財産の損失を与えた場 合、被侵権人の受けた損失に基づき賠償を行う。被侵権人の損失は確定できない場合、侵 権人はこれによって利益を得た限り、得た利益に基づき賠償を行う。侵権人の侵権行為に よって得た利益が確定できない場合、被侵権人と侵権人が賠償金額に和解できなく人民法 院に訴訟を提起した時、人民法院は実際状況に基づき賠償金額を確定する。」同法第23条 「他人の民事権益に対する侵害を防止或は制止することによって自身が損害を受けた場合、 侵権人が責任を負う。侵権人が逃走或は責任の負担に無能力の場合、被侵権人が補償を請 求する時、受益者は適当な補償を与える。」同法第31条前段「緊急避難から生じる損害に ついて、危険の発生を惹起した人によって責任を負担する。もし危険は自然原因によって 惹起された場合、緊急避難者は賠償責任を負わない或は適当な補償を与える。」同法第32 条1項「民事行為無能力者、民事行為能力の制限者によって他人に損害を生じさせた場合、 その監護人が侵権責任を負う。監護人は監護の責任を果たした限り、その侵権責任を軽減 することができる。」同法第33条1項「完全民事行為能力者は自分の行為に一時的に意識 がない或はそれのコントロールができない状態で他人に対して損害を起こした場合、過失 があれば侵権責任を負う。過失がなければ、行為者の経済状況に基づき被害者に対して適 当な補償をする。」

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ことになる。 三 公平責任に関する研究意義 公平責任は過失責任と無過失責任以外の第三の帰責アプローチだと考えられている。こ れは既存の帰責原理、即ち過失責任と無過失責任の理論展開及びその到達点に照らして、 一種の相対的な位置づけである。 過失責任について、日本民法典の制定期に遡ってみると、ボアソナード民法は財産編第 二部第三章「不正ノ損害即チ犯罪及ヒ準犯罪」のタイトルを用いていた。現行民法(平成 16年改正前の民法)の制定の際に「不正ノ損害即チ犯罪及ヒ準犯罪」というタイトルは「不 法行為」に訂正された。また、第 119 回法典調査会議事速記録を見れば「不正の損害」と いう言葉は何度も現れた。26そこで、当時の過失責任は、行為に対する非難の性格を持つも のと考えられる。 現行民法制定後、過失責任とは何かを解明することは、民法学者の関心から離れること はなかった。我妻栄博士は「社会共同生活の一員として要求される程度の注意を払えば認 識しえたのに、その程度の注意を欠いたという場合は過失となる」27と示唆している。また、 加藤一郎教授は「過失とは、一定の結果の発生すべきことを知るべきでありながら、不注 意のためそれを知りえないで、ある行為をするという心理状態である」28と述べ、「注意義 務に違反すれば、過失があるというのは、法論理的にいっただけであって、まず、注意義 務の範囲が抽象的に定められ、具体的事例で行為者がそれに反しているから過失があると されるわけではない。実際には、具体的事例において、全体としての非難すべき行為があ るかどうかが問題になり、そこに注意義務と過失が同時的に認定されることになる」と説 明している29。平井宜雄教授は「過失とは

果回避ないし防止義務に違反した行為であり、 かつその前提として行為者に結果発生の予見可能性の存在ないし予見義務が要求されてい る行為として、規定される」30と言明している。また、過失責任に対する理論研究の累積に 基づき研究者グループによって作られた日本不法行為法リステイトメントは、709 条(過失 一般)の文案を「行為をする者が、その種類の行為をする者に通常期待される予見の義務ま たは結果回避の義務に違反したことにより、法律上保護されるべき他人の利益を侵害した 場合には、その損害を賠償する責任を負う」というようにまとめている31 過失責任に対する理解について、理論は広範かつ多様に展開しており、以上のように代 表的な見解をいくつか例挙するだけでも、その全貌をうかがうことができない。ただし、「不 26 『法典調査会民法議事速記録五』(商事法務研究会、1984年)294~296頁参照。 27 我妻栄『事務管理・不当利得・不法行為』(日本評論社、1937年)105頁。 28 加藤一郎『不法行為法(増補版)』(有斐閣、197464頁。 29 加藤一郎「前掲書」(注28)、7374頁。 30 平井宜雄『損害賠償法の理論』(東京大学出版会、1983年)400頁。 31 淡路剛久「過失一般」淡路剛久ほか『日本不法行為法リステイトメント』(有斐閣、1988 年)8頁。

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正の損害」と言っても、「不法行為」と言っても、また「注意義務(違反)」と言っても、「行 為義務(違反)」ないし「結果回避義務(違反)」と言っても、過失責任の根拠は、当該(不 法)行為者の行為に対する否定的な評価(非難までいかなくても)に間違いないだろう。 したがって、専ら損害賠償責任の成立という段階で、その帰責原理である過失責任を考え ると、損害を惹起した行為者とその行為に対する評価によってのみ損害賠償責任の有無が 左右されることになる。 では、不法行為法における帰責原理の他の一翼を担う、いわゆる無過失責任は如何であ ろうか。無過失責任については、現行民法の制定時から、すでに特殊不法行為に関する帰 責原理の性格が色濃く表れている32。そして、この位置づけについて、学説は一般的に支持 している。例えば、石坂音四郎博士は、過失主義が今日の社会生活に適せず、過失がなく ても損害賠償責任を認める場合があると述べながら、無過失責任に関する一般原則を立て ることは、根拠の多様性のゆえに、不可能であるという認識を示している33。末弘厳太郎博 士は、大工業の発達と伴い、過失主義の墨守は許されざることに至り、過失を俟って初め て賠償責任を生ずることは公平を失う34と指摘している。また我妻栄博士は、包括的な実定 法規に欠けている無過失責任について、危険責任(危険なる施設はこれにより生ずる損害 について絶対的に責任を負うべしとする責任原理)と報償責任(異常なる利益の帰する所 に損失をも帰せしむべしとする責任原理)をその主要なる根拠に挙げている35。このように、 不法行為法における無過失責任は特殊な場面に機能する例外的な帰責原理として、その中 心的根拠は危険責任・報償責任であると一般的に理解され、定着化されている36 過失責任と無過失責任について確認したところ、上記のように、過失責任は行為者及び 32 穂積陳重起草委員は「だん々々近頃ニ至リマスルト種々様々ノ営業又ハ種々様々ノ団体 或ハ機械トカ學問上ノ思想ヤ何カノ發逹トカ云フヤウナ風ノコト或営業ヲ為シ或生活ヲ為 シマスルニ就イテ他人ニ特別ナル危険ヲ及ボシマスル場合ガ幾ラモアリマス夫レハ鐵道デ アルトカ或ハ其他ノ運送業デアリマスルトカ製造業デアリマスルトカソンナモノニ就イテ ハ並ニ生活ヲ致シテ居ル者ヨリハ別段ノ有様ニ居ル者デアリマスカラ或場合ニ於テハ故意 叉ハ過失卜云フモノガ無クテモ荀モ其事業ヨリシテ損害ガ生ジマシタナラバ必ズ賠償ヲシ ナケレバ往カヌト云フヤウニ特別法ヲ以テ義務ヲ負ハセルト云フコトハ吾々ニ於テモ少シ モ反封デハナイ…場合ニ於キマシテハ特別ナル法律ヲ以テ特別ナル生活ヲ営ミマスル者ニ 就イテ故意叉ハ過失ガナクテモ荀モ其生活ノ仕方ヨリシテ損害ガ生ジマシタナラバ之ヲ償 ハナケレバイカヌト云フ特別法ガ出来テ来マスルノハ敢テ此案ガアリマシテモ妨ゲル所デ ハナイ叉或場合ニ於テハ必要デアラウト思ヒマス」と述べている。『民法議事速記録五』(商 事法務研究会、1984)301頁。 33 石坂音四郎『(改纂)民法研究(下巻)』(有斐閣、1920年)96116頁。 34 厳太郎「過失無き不法行為」法学協会雑誌307号(1912年)11741175頁。 35 我妻栄「前掲書」(注27)、97頁。 36 この点について、窪田充見『不法行為法』(有斐閣、2007年)9頁以下、吉村良一『不 法行為法(第4版)』(有斐閣、2010年)13頁以下、円谷峻『不法行為法・事物管理・不当 利得(第2版)』(成文堂、2010年)6頁以下、平野裕之『民法総合6不法行為法(第2版)』 (信山社、2009年)212頁以下などにおいて、法の常識として紹介されている。なお無過 失責任の詳細について、浦川道太郎「無過失損害賠償責任」星野英一(編)『民法講座6― 事物管理・不当利得・不法行為』(有斐閣、1985年)191頁以下参照。

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その行為に対する否定的評価であり、無過失責任は狭い意味で危険責任・報償責任である ことが明らかとなっている。したがって、公平責任はこの二つの帰責原理に対するそれ以 外の第三の原理だと強調しようとするならば、まず公平責任と既存の帰責原理との関係に ついて説明しなければならない。 過失責任は行為者及びその行為に対する否定的評価であることに対して、公平責任は、 行為者以外に被害者とその他の事情をも考量するものである。これは帰責原理の段階での 過失責任と公平責任の区別である。本来的に、過失責任は、過失責任主義に基づき、損害 賠償責任の成立に独占的な地位を主張していた。しかし、無過失責任の出現によって、過 失責任主義がすでに動揺されている。過失責任原則の強調は、①市民の生存を確保するこ とを目的とする社会国家的視点、②パターナリズムの観点から出た国家による後見的支 援・福祉国家の視点、そして、③一定の経済政策的意図に出た国家による市場への積極的 介入の視点から37、批判を浴びているのである。また過失責任主義が維持されるとしても、 損害填補を目的とする社会政策的考慮とそれを契機とする多様な公的関心の介入の必要性 があると指摘されている38。そこで、私的自治・自己決定権および資本主義競争経済の観点 に支えられた過失責任主義はどうなって行くかについて、「不法行為制度は如何なる理想に よって導かれるか。私法理論の推移に応じて重要な変遷が認められる」39との問題提起がさ れている。そして、この点において、我妻栄博士は「法律の指導原理が個人の自由の保障 をもって最高の理想となさず、社会協同生活の全体的向上をもって理想となすに及んでは、 不法行為は社会に生ずる損害の公平妥当なる負担分配を図る制度と考へられるやうになる。 ……然し、不法行為制度をこの社会生活における損失の公平妥当なる分担を定むる一制度 と考へることに、不法行為法制度の新らしい指導原理が求められつつあるのである」40と述 べ、不法行為法制度の指導思想が「個人の自由活動の最小限度の制限たる思想から、人類 社会に於ける損失の公平妥当なる分配の思想へ」向かうと唱えている41。したがって、今日 の過失責任は過失責任主義の当初の基本思想を依然として抱いているとしても、不法行為 法における帰責原理の絶対的あるいは排他的な地位はすでに失っていると言えよう。新し い原理・原則の発見が「損害の公平妥当な分配」という目的に適うようのであれば、過失 責任と矛盾なく補い合う関係のはずである。このように考えると、帰責原理の新生のため の土壌は一応作り上げたと考えられる。 そこで、公平責任と過失責任の関係について今一度戻るならば、過失責任が行為者及び その行為に対する否定的評価とは対照的に、公平責任は被害者の立場を含む「その他の要 素」に基づき「帰責」の可能性を考えるものであり、不法行為法が「損害の公平妥当な分 配」を理想とするならば、公平責任はそれを実現するための一つの選択肢であるといえよ 37 潮見佳男『不法行為法(第2版)』(信山社、2005年)148頁。 38 藤岡康宏『損害賠償法の構造』(成文堂、2002年)79頁。 39 我妻栄「前掲書」(注27)、94頁。 40 我妻栄「前掲書」(注27)、95頁。 41 我妻栄「前掲書」(注27)、95頁。

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う。公平責任に対する研究は、損害賠償ないし損失分担に関する新しい方法を探る過程で あり、新たな帰責原理、帰責事由の抽出・発見の一つの試みなのである。 一方、無過失責任と公平責任の関係については、狭い意味での無過失責任を危険責任と 報償責任と捉えるならば、公平責任がそれ以外の理論的根拠に基づくもう一つの帰責原理 である。過失責任以外の帰責原理を如何なる理論的根拠に基づき認めるかについては、以 下の考え方が存在している42。①原因責任説、即ち、損害はその原因を作りだした者が責任 を負うべきであるとしている。これに対しては、原因について帰責事由がないのに何故責 任を負うのか、また、原因とは何か、について充分な説明がなされていないとの批判があ る。②公平説、即ち、公平を基準として当事者の損害の負担を決定すべきであるとしてい る。これに対しては、確かに帰責事由がない者に損害賠償を負担させることが公平に適す るという場合は存在しうるが、実は、公平かどうかの基準が問われているときに、公平と いう基準を持ち出したにすぎないとの批判がある。③危険責任説及び④報償責任説ないし 利益責任説という四つの理論的根拠がある。しかし、原因責任説と公平説は批判の通りで あり、理論的根拠が十分ではない。したがって、実際には、危険責任と報償責任だけが過 失責任以外の無過失責任の帰責原理と考えられてきた。これに対して、公平責任もまた帰 責原理とされるためには、的確な理論的根拠を示さなければならない。つまり上記の公平 説に対する批判の中における公平かどうかの基準について、具体的な内容を示し、無過失 責任のもう一つの帰責原理として公平責任の確立を目指さねばならない。この目的を達成 することで、公平責任という帰責原理の成立は、現在の過失責任によっても無過失責任に よっても救済されない被害者に対して、新しい損害賠償の根拠を提供し、被害者救済の可 能性を帰責原理のレベルで拡張することに資するであろう。 四 本稿の構成 本稿は公平責任について比較法的に研究を行うものである。研究対象は、上に紹介した ように(上記二参照)、ドイツ、オーストリア、オランダ、ロシア及び東欧諸国、スイス、 そして中国の法規定である。これらの国における公平責任の内容を検討した上で、公平責 任理論を整理することが基本的な研究の方法である。結論を先取りするならば、このよう なアプローチによって、各国の公平責任に関する法規定の内容に基づき、まず大きく三つ のカテゴリーを作ることができる。一つはドイツ・オーストリア・オランダ民法上におけ る公平責任の存在である。これらの国では、公平責任の適用は具体的な場面に限定され、 責任の内容は同様ではないが、責任の範囲はそれぞれ責任無能力者の損害賠償責任、緊急 避難者の損害賠償責任、共同不法行為における共同不法行為者の損害賠償責任分担及び使 用者と被用者(共に責任がある場合)の損害賠償責任分担という具体的な場面に限られて いる。もう一つはロシア及び東欧諸国・スイス民法における公平責任的な要素に基づく損 42 田山輝明『事物管理・不当利得・不法行為(第2版)』(成分堂、2011年)959697 頁参照。

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害賠償責任の軽減の存在である。これらの国では、公平責任は具体的な場面に限定される ことなく、一般原則として不法行為の行為者に対し、損害賠償責任の軽減を図ることとな っている。そしてこの二つのカテゴリー以外に、中国の公平責任が存在している。中国で は、公平責任は、一般原則として、共に無過失である被害者と加害者との間に損失を分担 させようとしている。つまり中国不法行為法上の公平責任は、ドイツ・オーストリア・オ ランダのように具体的な場面に限定されるものでもなく、またロシア及び東欧諸国・スイ スのように損害賠償責任の軽減を図るものでもなく、無過失の加害者に損害賠償責任を帰 するものである。 このように、以上の三つのカテゴリーに合わせ、本稿はドイツ・オーストリア・オラン ダ、ロシア及び東欧諸国・スイス、そして中国という三つに分節して、各国の公平責任及 び公平責任的な要素に基づく損害賠償責任の軽減について研究を行っていく。 章立てについては、各カテゴリーの内容に照らし、まず具体的な場面に限定される公平 責任から研究を始めることにする。つまり、第一部として、ドイツ・オーストリア・オラ ンダの公平責任に対する研究に充てる。そして同じく一般原則ではあるが、賠償責任の帰 責または軽減という観点から、第二部として、中国の公平責任を、第三部として、ロシア 及び東欧諸国・スイスの公平責任的な要素に基づく損害賠償責任の軽減をそれぞれ充てる ことにする。第一部では、ドイツの公平責任の原初形態が早くもプロイセン一般ラント法 には現れており、またドイツ民法の影響力に鑑みて、第一章としてドイツ不法行為法にお ける公平責任を検討する。そして、第二章として、オーストリア・オランダの公平責任を 対象にし、最後に具体的な場面に限定される公平責任について、第一章のドイツ公平責任 の内容を含めて、その性質と理論問題を検討する。第二部では、中国不法行為法における 公平責任に対する研究成果を第三章に記す。本章においては、中国公平責任の理論発展か ら、その本質について探っていく。第三部では、同じく賠償責任の軽減に働く公平責任的 な要素に基づく損害賠償責任の軽減として、ロシア及び東欧諸国民法におけるものとスイ ス債務法におけるものを第四章において検討する。これら第一部から第三部の研究によっ て、公平責任の損害賠償に対する機能ないし役割の実態が明らかになるはずである。 各国の公平責任に対する研究は、公平責任の実態究明とともに理論問題の発見にもつな がる。すなわち、具体的な場面に限定される公平責任、または責任軽減に作用するもの、 あるいは一般的な帰責に働く公平責任等々、何れにせよそれぞれ独自の理論構成が存在す るはずである。第一章から第四章までにおいては、各国公平責任の理論構成を解明し、そ の問題を検討することである。そして以上の研究結果に基づき、公平責任について纏めを 行う。この部分は、本稿の第五章として、あるべき公平責任は上記三つの類型のどれに属 するものか、またどのような理論構成によれば今日そして未来の不法行為法において公平 責任が独自の存在たりうるかを検討する。 以上のように、本稿の研究は、比較法的アプローチを採ることにより、公平責任という 日本不法行為法上存在しない損害賠償責任分担理論を確かめた上で、不法行為法帰責理論

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の中における公平責任の発展について一つの提言を試みるものである。 第一章 ドイツ不法行為法における公平責任 第一節 ドイツ民法829条から見るドイツの公平責任 一 公平責任の内容 ドイツ民法における公平責任は、ドイツ民法 829 条によって規定されている。同法 829条は現行法としての地位を有するので、ドイツ公平責任については、まずこの法条 を確認しなければならない。 未成年者がドイツ民法828条43によって、惹起した損害に対して責任を負わない場合、 即ち7歳未満の者、7歳から10 歳の者、あるいは18歳未満で責任を弁識するのに理 解力のない者の場合であっても、被害者が監督義務者である第三者から損害の填補を 得られない限り、同法 829 条の公平責任に基づき、損害賠償責任が発生することとな り、公平責任は、単に意識を喪失した、あるいは病的な精神障害の状態の下で損害を 惹起したという理由で責任が免除された者の損害賠償(同法827条44)にも妥当する。 43 BGB§ 828 Minderjährige

(1) Wer nicht das siebente Lebensjahr vollendet hat, ist für einen Schaden, den er einem anderen zufügt, nicht verantwortlich.

(2) Wer das siebente, aber nicht das zehnte Lebensjahr vollendet hat, ist für den Schaden, den er bei einem Unfall mit einem Kraftfahrzeug, einer Schienenbahn oder einer Schwebebahn einem anderen zufügt, nicht verantwortlich. Dies gilt nicht, wenn er die Verletzung vorsätzlich herbeigeführt hat.

(3) Wer das 18. Lebensjahr noch nicht vollendet hat, ist, sofern seine Verantwortlichkeit nicht nach Absatz 1 oder 2 ausgeschlossen ist, für den Schaden, den er einem anderen zufügt, nicht verantwortlich, wenn er bei der Begehung der schädigenden Handlung nicht die zur Erkenntnis der Verantwortlichkeit erforderliche Einsicht hat.

邦訳第828条(未成年者)「(1) 7歳未満の者は、他人に加えた損害について責任を負わない。 (2) 7歳以上10歳未満の者は、自動車、軌道鉄道又は懸垂鉄道に関わる事故で他人に加え た損害について責任を負わない。その者が故意により侵害を惹起したときは、この限りで はない。(3)第1項又は第2項により責任を免除されない限り、18歳未満の者は、加害行為 の当時、責任を弁識するのに必要な判断力を有しないときは、他人に加えた損害について 責任を負わない。」E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)「前掲書」(注3)、337頁。

44 BGB§827 Ausschluss und Minderung der Verantwortlichkeit

Wer im Zustand der Bewusstlosigkeit oder in einem die freie Willensbestimmung ausschließenden Zustand krankhafter Störung der Geistestätigkeit einem anderen Schaden zufügt, ist für den Schaden nicht verantwortlich. Hat er sich durch geistige Getränke oder ähnliche Mittel in einen vorübergehenden Zustand dieser Art versetzt, so ist er für einen Schaden, den er in diesem Zustand widerrechtlich verursacht, in gleicher Weise verantwortlich, wie wenn ihm Fahrlässigkeit zur Last fiele; die Verantwortlichkeit tritt nicht ein, wenn er ohne Verschulden in den Zustand geraten ist.

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45 公平責任の適用について、一般的に以下の条件を満たさなければならない46 まず不法行為成立の客観的な要件が該当事実に存在することが要求される。つまり ドイツ民法 829 条の公平責任は、未成年者の行為が帰責能力を除き、823 条から 826 条のいずれかの要件に満たして帰責可能な場面にしか適用がない。したがって、責任 能力のない未成年者の不法行為のすべてのケースに829条が援用されるわけではない。 47この点に関して、823条から826条の帰責の性質を考えると、同様な帰責原理に基づ く830条、831条、833条後段、834条、836~838条にも(公平責任の)適用がある 48とする見解も存在している。 次に、公平責任はドイツ民法 827 条、828 条に基づき、責任の無能力がその適用の 前提である。ここで、同法 827 条に基づく責任の無能力の判断基準に関して、一つの 判例を挙げることにしよう49。判例から見ると、ドイツ民法829条公平責任の適用が完 全な無意識状態にまで及ぶことが分かる。 事件の大筋は、自動車交通事故において、運転者である被告が脳動脈瘤の破裂で脳 出血となり、呼吸システムの麻痺が起こされ、それによって自発的な無意識の状態に おいて、路上の歩行者である原告に車でぶつけたというものである。(実際には、被告 が事故において死亡し、原告はその単独相続人である被告の妻に対して訴訟を起こし た)。第一審では、被告の予見可能性及び結果回避の可能性が否定され、道路交通法 7 条2 項50の責任が存在しないとして、損害賠償の請求が棄却されている。控訴審では、 道路交通法の趣旨を全体的に考え、また民法 829 条の立場から考えると、損失の填補 は被告の保険の範囲内で行われるべきであるというように判示されている。これに対 して、連邦通常裁判所は、ドイツ民法 829 条公平責任の適用について、以下のように 説明している。即ち同法 829 条規定の意義と目的に照らし、法条の適用は一時的な意 識の喪失を含む。意識の喪失によって、加害者の責任能力を排除するか、故意・過失 まで排除するか、または自分の意思に支配されない身体の行動を排除するかについて 活動の病的な障害状態のもこで、他人に損害を加えた者は、その損害について責任を負わ ない。アルコール飲料又はこれと類似のものによって自ら一時的にこの種の状態に陥った 者は、この状態で違法に惹起した損害について、過失がある場合と同じ責任を負う;有責性 なくこの状態に陥ったときは、責任は生じない。」E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)「前掲 書」(注3)、337頁。

45 Hein Kötz und Gerhard Wagner, Deliktsrecht, 10.Aufl, Luchterhand 2005, S.135f. 46 Maximilian Fuchs, Deliktsrecht, 6.Aufl, Springer 2006, S.181.

47 Hein Kötz und Gerhard Wagner, a.a.O.(Fn.45), S.136.

48 Othmar Jauernig, Bürgerliches Gesetzbuch, 10.Aufl, C.H. Beck 2003, S.1059. 49 Hrsg. von den Mitgliedern des BGH und der Bundesanwaltschaft, Entscheidungen des Bundesgerichtshofes in Zivilsachen23, C. Heymann. Köln 1957, S90ff.

50 道路交通法(StVG)72項「事故が不可抗力により生じた場合には、賠償義務が免除さ

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は問わない。なお、道路交通法の違反がないという理由でドイツ民法 829 条の適用を 除外するという結論は、本件の事情から見れば、損害が明らかに違法の運転から生じ たものである以上、たとえ運転手の運転について非難ができないとしても、導かれな い。ドイツ民法 829 条の規定は単独で、道路交通法の規定と平行して存在している。 道路交通法に基づく免責はドイツ民法829条の適用を排除することができない。 判例を見れば、ドイツ民法 829 条の適用範囲は条文上の通りであることが確認され ている。一方、この判例から一つの問題点を抽出することができる。つまり、同法829 条の公平責任の適用について、違法性の存在は必要であろうか。この点について、以 下第3節でさらなる検討を加えることにする。 公平責任は、ドイツ民法827条、828条に基づき、責任無能力が適用の前提である。 しかしこれに対して、ドイツの判例は一つの場面において例外を認めている。 未成年者は、同法828条3項(旧828条2項)にいう責任を弁識するのに必要な判 断力を持つ、つまり責任無能力でない場合においても、未成年者の過失が否定される ときには、なお同法829条公平責任の類推適用が認められる。事件51は騎士団ゲーム(二 つの組に分け、木の剣或はただの木の枝を武器として互いに攻撃をする、武器に触ら れたらアウト)をする際に12歳の被告が8歳の原告に対して木の剣を投げ、それが原 告の左の目に当たり、結果としてその目が失明となったという事案である。原告は本 件被告と被告の親に対して訴訟を起こした。第一審はドイツ民法829条の適用を認め、 5000ドイツマルクの賠償を被告に命じたが、原告がそれを拒否した。控訴審において、 裁判所は被告の同法823条に基づく賠償責任も同法829条に基づく賠償責任も全面的 に否定している。控訴審判決によれば、被告は確かに(旧)ドイツ民法828条2項の いう判断能力があると認定できるとしても、過失の認定については、本件の事情(被 告当時の発育状況によって、その年齢の未成年者は一般的にこのゲームから生じる典 型的な行為に対して注意を払うことに期待ができない)から考えると、被告に過失が あるとは言えないと述べ、過失責任に基づく損害賠償が認められないと判断されてい る。その上、責任能力のあるとの前提で過失責任の有無に対する判断が行われている ため、829条の適用は考えられないと判示されている。これに対して、連邦通常裁判所 判決は、未成年者の損害賠償に関して、責任能力があるという前提で過失責任の存在 が否定される場合においても、ドイツ民法 829 条公平責任の類推適用が可能であると 宣言している。具体的には、連邦通常裁判所は、損害賠償責任の成立について、主観 的な要件と客観的な要件があると述べ、本件については客観的に違法な行為が存在す ると同時に、正常な成年者なら有責性も肯定されることを指摘した上で、不法行為法 における賠償責任の免除に関する規定はそれぞれの立法趣旨があり、(旧)ドイツ民法 828条2項の場合、未成年者は責任に対して弁識できないとする趣旨であり、本件にお

51 Hrsg. von den Mitgliedern des BGH und der Bundesanwaltschaft, Entscheidungen des Bundesgerichtshofes in Zivilsachen39, C. Heymann. Köln 1963, S281ff.

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ける損害賠償責任の免除は過失責任に基づくとはいえ、過失有無の判断につき未成年 者の責任弁識能力が考量される点に関して本質的には(旧)ドイツ民法828条2項の 趣旨と一致し、未成年者にとって(精神的な)発達状況によって責任弁識のための必 要な判断力がないことと、その判断力があるのにその年齢の未成年者の一般的な(精 神的な)発達状況によって過失に認定できるのに不十分であることとの間に相違がな いと判断し、ドイツ民法829条公平責任の類推適用を肯定している。 また、公平責任の適用は、監督義務者である第三者から損害賠償を得られない場合 に限られる。ドイツ民法 829 条に基づく責任は単に補充的であり、即ち監督義務者で ある第三者から損害賠償の獲得が実現できないときにだけ、その代わりに発生する責 任である。そのような第三者が存在しない場合、あるいは同法83252条と関連して第三 者の責任が成立しない場合、または、その第三者に対する訴訟が実現できない若しく は一部実現できない場合に、公平責任発生の要件が備わるのである。53 ドイツ民法 829 条公平責任の適用については、基本的に条文の通りであるが、一つ の例外として、同法254条の共働過失54との関連事件55で、公平責任は被害者にも影響 が及ぶこととなっている。つまり同法254条の中における同法829条の類推適用であ る。被害者が同法 827 条、828 条に基づき、損害に対して責任を負わない場合に、そ の者の(損害発生)原因に対する共働は、同法254条の中において、同法829条の適

52 BGB§ 832 Haftung des Aufsichtspflichtigen

(1) Wer kraft Gesetzes zur Führung der Aufsicht über eine Person verpflichtet ist, die wegen Minderjährigkeit oder wegen ihres geistigen oder körperlichen Zustands der Beaufsichtigung bedarf, ist zum Ersatz des Schadens verpflichtet, den diese Person einem Dritten widerrechtlich zufügt. Die Ersatzpflicht tritt nicht ein, wenn er seiner Aufsichtspflicht genügt oder wenn der Schaden auch bei gehöriger Aufsichtsführung entstanden sein würde.

(2) Die gleiche Verantwortlichkeit trifft denjenigen, welcher die Führung der Aufsicht durch Vertrag übernimmt.

53 Walter Erman, Handkommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, 7.Aufl, Aschendorff, 1981, §829 Rn4. 54 BGB254 (共働過失) (1) 損害の発生に際して被害者の有責性が共働した場合には、賠償の義務及び給付すべき賠 償の範聞は、事情特に損害が如何なる範囲において主として何れの当事者によって惹起さ れたかどうかによりこれを定める。 (2)債務者が知らず、また知ることを要しない異常に高い損害の危険を被害者が債権者に注 意しなかったこと、又は被害者が損害を防止若しくは軽減することを怠ったことに被害者 の有責性が限定される場合も同様である。この場合においては、第 278 条の規定を準用す る。 E.ドイチュほか(浦川道太郎訳)「前掲書」(注3)、332頁。

55 Hrsg. von den Mitgliedern des BGH und der Bundesanwaltschaft, Entscheidungen des Bundesgerichtshofes in Zivilsachen37, C. Heymann. Köln 1962, S102ff.

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用によって責任を生じさせる。(つまり、責任無能力者の行為も同法829条を類推する ことで共働過失[過失相殺]の対象になるのである)。次の判例がそれを示している。 本事例は、もうすぐ20歳になる少女が友達とボールで遊んでいた3歳の子供に自転 車をぶつけた事件である。被告である少女が自転車で道を走っていた時、原告である 子供がボールを拾うために道路に入り、少女は気づかず、その子供と衝突した。被告 は原告の損害賠償請求に対してドイツ民法 829 条の類推適用を主張している。原審は その主張を否定した。これに対して、連邦通常裁判所は、原告である未成年者が原因 として働くことによって、同法 829 条の公平責任の適用が可能であるとしている。な ぜなら、一方で、同法 828 条に基づき責任を負わない人が特定な条件の下で自分の惹 起した損害に対して賠償責任を負うのに、他方で、そのような人が自身の損害を惹起 した原因の共働について同様な条件下で考量されずに責任を分担しないことは、論理 的に一貫していないからである。裁判所の見解は、つまり、ある人は過失責任がなく ても公平責任があるとすれば、同法 254 条の中においても同様な人について、同様な 理由で過失責任が否定されても公平責任を適用することは当然な帰結であるというも のである。ドイツ民法 829 条は、過失責任の例外を示し、条項の根底に公平な損失填 補という原則がある。この原則は特例ではなく同様な状況あるいは関連する状況に適 用できる指導原理である。したがって、同法254条の中での同法829条の同様な適用 については、なんら疑問の余地がないのである。 ドイツ民法 829 条の規定を見る限り、公平責任は概観的には責任無能力者に対して 公平の見地から生ずる損害賠償責任である。すなわち、「不法行為責任は、原則として、 損害を惹起した者自身の責任能力がその前提となっている。だが、同法827条或は828 条の要件に満たされる場合には、損害を惹起した者の損害賠償責任は否定される。し かし、これによって、被害者は損害の賠償を完全に受けられないとすると、場合によ っては、不公平な結果が生じることになる。したがって、829条の規定は、厳格的な前 提条件に基づき、第三者が損失の負担を負わないときにおいて、損害を惹起した者に 損害賠償の義務を負わせるものである」56という理解は、ドイツ民法829条における公 平責任の実態に対するもっとも素直な把握である。ドイツ民法 829 条の公平責任は、 過失責任原則に対する一つの大きな例外なのである。57 二 公平に基づく事情の考量 ドイツ民法 829 条に基づく損失填補の提供は、事情に対する公平の見地から決める としか規定していない。、しかし、公平という法の概念が曖昧であるゆえに、損失填補 の理由・範囲・弁済方法については裁判官の判断に委ねる58としている一方で、公平に 基づく事情の考量は、主として当事者の経済状況に対する考量であると考えられてい

56 Maximilian Fuchs, a.a.O.(Fn.46), S.181.

57 Hs. Th. Soergel, Bürgerliches Gesetzbuch, 12.Aufl, W. Kohlhammer 1987, §829 Rn2. 58 Hrsg. von Franz Jürgen Säcker, Roland Rixecker, Münchener Kommentar zum Bürgerlichen Gesetzbuch, 5.Aufl, C.H. Beck 2006, §829 Rn13.

Referensi

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