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Jakunen chūkensō no kyaria ishiki no kenkyū : kyaria orientēshon no kanten kara

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 若年・中堅層のキャリア意識の研究 : キャリアオリエンテーションの観点から 富澤, 良成(Tomizawa, Yoshishige) 林, 洋一郎 ( Hayashi, Yōichirō) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 2018. Thesis or Dissertation http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002018 -3461.

(2) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程. 学位論文(. 2018. 年度). 論文題名. 若年・中堅層のキャリア意識の研究 -キャリアオリエンテーションの観点から―. 主. 査. 林洋一郎准教授. 副. 査. 磯辺 剛彦教授. 副. 査. 大藪 毅専任講師. 氏. 名. 富澤良成. 1.

(3) 論 文 要 旨. 所属ゼミ. 林洋一郎研究会. 氏名. 富澤 良成. (論文題名). 若年・中堅層のキャリア意識の研究-キャリアオリエンテ ーションの観点から― (内容の要旨) 就業現場における人手不足が顕在化し、各企業は人材確保や定着化に向けた強化施策を実施して いる一方、ミレニアル世代と呼ばれる若年・中堅就業者の定着化は未だ課題がある。一方、当代世 代に対するステレオタイプなものの見方も喧伝されており、採用サイドでは定着化に向けた打ち手 を講じえないでいる。問題意識としては、彼等・彼女たちの職場に対する内的な意識や価値観は多 面的であり、そこを意識しない定着化策は実効性に欠けるのでは、ということである。 そこで、発達心理学の一連の学術理論(シャイン他)及び労働市場の流動化が整備された欧米で展 開される組織行動論の新潮流を踏まえ、更に日本固有の就業環境(新卒一括採用・終身雇用に代表 される日本的経営モデルの残存)を見据えたうえで、現代日本のキャリア意識の類型化を図りたい。. 2.

(4) 目次 第1章. 問題意識と研究の目的. 第2章. キャリア開発に関する先行研究. 第1節. 発達心理学分野の理論系譜. 第2節. 最近注目されるキャリア開発理論. 第3章. 仮説モデル. 第 1 節:モデル図 第 2 節:リサーチクエスチョン 第4章. 調査研究. 第 1 節:序論 第 2 節:方法(手続き、参加者、項目の説明) 第 3 節:調査結果 第5章. 結論と総合考察. 第 1 節:研究の要約 第 2 節:解釈 第 3 節:研究の限界 第 4 節:総括. 3.

(5) 第1章 問題意識と研究の目的 問題意識 我が国の労働市場を取り巻く社会の変容(①長期的な労働リソースの減少、②急速に進 む高齢化、③その帰結としての“働き手”の変容)を受け、各企業は変容する「働き手」を 如何にマネジメントし、ワークエンゲージメンを高める施策の検討が必要になっている (守島・大内,2013 など) 。 特にミレニアル世代と呼ばれる 1980 年以降に生まれた世代が、就業現場における中核 ポジションを占めるようになって来ており、彼ら自身のライフステージも多様化する中、 彼らをステレオタイプ的に把握してしまうことは、彼ら自身の所属企業に対するコミッ トメントの維持は勿論のこと長期的なキャリア開発の障害になるであろう。また、企業サ イドから見た場合、彼らのモチベーション管理を最適化できない可能性があることから、 「人手不足」という経営環境下での生産性向上という緊喫の課題対応をするうえでの問 題点になるであろう。 即ち、様々な施策(例:ジョブ型雇用、エリア限定総合職、テレワーク、等々)が企業 現場で導入されても、それら施策が組織目標(※)に対し如何に合目的的に作用させるう えで、就業者のキャリア意識を検証する作業が必要でないかと考える(もし、彼らのキャ リア意識が多様なものであるのであれば)。 ※組織目標の例 ・ (日本的経営が終焉しつつあるとしても)中核人材は長期的に維持したい ・ (新規事業の開発など) 「尖った」人材を育成したい(質の向上) ・組織維持のために必要な人材リソースは維持したい(量の確保) ダイバーシティを企業競争力強化の観点から推進する経済産業省のレポート「ダイバ ーシティ 2.0 一歩先の競争戦略」 (2018,経済産業省)でも、長時間残業・年功序列・新卒 一括採用・終身雇用・OJT 等を特徴とする日本型雇用システムの問題点や限界を指摘し たうえで、 「目指すべき方向性」として、①多様な働き手による労働供給力の確保、②企 業内・社会全体での人材の最適配置の実現、③働き手の能力向上の諸点を挙げている。 このように、多様な働き手の確保と彼ら・彼女たちの就業現場での活躍を願う声は企業 単体の施策を超えて、国を挙げたムーブメントとなっている感もあるが、そこに課題はな いのであろうか。 厚生労働省が 2018 年 10 月に発表した「新規学卒就職者の離職状況」では(厚生労働 1.

(6) 省,2018) 、直近(平成 27 年度)の統計値として、新規学卒就業者の就職後 3 年以内離職 率が公表されている(表1) 。 表1-1:新規学卒就職者の就職後3年以内離職率1 最終学歴. 3年以内離職率. 前年比. 高校. 39.3%. ▲1.5%. 大学. 31.8%. ▲0.4%. 高卒・大卒いずれも前年比で若干下がっているものの、高卒で約 4 割、大卒で約 3 割 の新卒就業者が 3 年以内で離職している。 ここから見られる課題としては、企業サイドは問題意識として働き手の確保に向けた 諸施策を打っているものの、主たる施策のターゲットである若手の就労者の意識とはズ レ(ミスマッチ)が生じているのではないか、ということである。これが本稿のテーマを 選択した契機である。. 研究の目的 本稿の研究目的は以下の通りである。 第一点は、組織で就業する若手・中堅の従業員たちのキャリア意識の実態を探ることで ある。若年層のキャリア意識に対する言及は多々あるが、その多くがステレオタイプな世 代論・感覚的な論評にすぎないことが多い。例えば、若手就労者の就業意識をワークモチ ベーションの観点から言及した「モチベーション革命」によると(参考:図 1-1)、若年層 とそれ以前の就労者の間には「幸福要素」という点で意識の断層があり、若年層(同書で は「乾けない世代」と命名)は(意味合い、良好な人間関係、没頭)を求めてアクティビ ティを決定する一方、それ以前の世代(同書では「乾いている世代」と命名)は(達成、 快楽)といった即物的な価値を重視するとのことである(尾原,2017)。こういった一面的 な論評に懐疑的な想いを頂いたこともあり、調査を通して実態の把握に挑戦してみたい と思ったこと。. 1. 厚生労働省プレスリリース(平成 30 年 10 月 23 日)より筆者作成 2.

(7) 図 1-1:「モチベーション革命」が描き出す就労意識の世代差(尾原,2017) 第二点は、当該世代のキャリア意識が多面的なものであったとした場合、タイプとして どのような分類が可能かを探求することである。日本的経営の終焉が指摘されてから久 しいものの(山川,2006) 、一方で新卒一括採用の仕組みは依然として残っているし、また、 人気業界も IT 業界などがランキングに入っている一方で「商社」 「銀行」に代表されるオ ーセンティックな業種も依然として人気業界として残っている。そこから考えられるこ とは長期雇用に代表される従来型のキャリア意識は依然として大きな群を形成している 一方、初期キャリア段階で転職活動を進めるグループ(上記統計調査の結果等)の存在な ど多層的な構造を形成していると考えられる彼らのキャリア意識の「分類」を試みてみた いと考える。 更には、上記作業で明らかにできたキャリア意識のタイプに対応する人事施策の方向 性を示唆してみようと思う。. 3.

(8) 第2章 キャリア開発に関する先行研究 若年・中堅層のキャリア開発に関する意識調査は多々あるものの、現代日本の都市部ホワ イトカラーのそれにフォーカスした実証的な研究は多くない(本稿第二節で紹介する法 政大学の坂爪准教授の研究は大学生の就業意識にフォーカス) 。そこで、ここでは発達心 理学で発展してきた代表的な理論(Edger H.Schein 他)を踏まえつつ、併せて昨今提唱さ れている視座を整理することで、次章以降で進める論考に繋げていきたい。. 第1節. 発達心理学で発展した理論系譜. キャリアアンカー理論(Edger H.Shein) Edger H.Shein は MIT(マサチューセッツ工科大学)経営大学院(スローン・スクー ル)教授を経て、現在は名誉教授である。組織開発論、キャリア・ダイナミクス、組織文 化など組織研究分野の世界的な権威である。彼が提唱した「キャリア・アンカー」理論は、 当初 MIT 経営大学院で、従業員に対して会社の価値がどのように教化(indoctrination) されていくのかを調べる組織社会化(organizational socialization)過程の研究として開始 された。教化と社会化という研究テーマに沿った成果を得られず、組織の価値に個人が染 まるという教化の視点から、個人が独自のキャリアを歩むという側面に視点を移して調 査を再開した結果、当該理論の提唱に繋がった。そして、その独自のキャリアがいくつか にパターン化されることを見出し、そのパターンを特徴づけるものとして、キャリア、職 業における自己概念/セルフイメージを「キャリア・アンカー」と命名した。 Shein はキャリア・アンカーのパターンとして当初以下の1~5のものを提唱したが、 現在では5~8のパターンまで拡張し、8つのキャリア・アンカーを提示している。. 4.

(9) 表 2-1:Shein のキャリア・アンカー(出所:Schein(1990)より) 1.特定専門分野/機能別の. ある特定の業界・業種・分野にこだわる。専門性の追求を. コンピテンス. 目指すが、いわゆる技術系に限らず、ずっと経理畑を歩 むなども含まれる。. 2.全般管理コンピテンス. 総合的な管理職位をめざす。1.と対照的に特定分野にと どまらず、組織全体にわたる様々な経験を求める。. 3.自律/独立(自由). 制限や規則に縛られず、自律的に職務が進められること を重要とする。内的な感覚として、自分の仕事のやり方 を自由に自分自身が決めることを望む。. 4.保障/安定. 生活の保障、安定を第一とする。. 5.起業家的創造性. 新規にみずからのアイデアで起業・創業することを望む。 現在起業していなくても、常に起業することを意識して いることも含まれる。. 6.純粋な挑戦. チャレンジングなこと、誰もしたことがないことに取り 組むことを求める。. 7.奉仕/社会献身. 仕事の上で人の役にたっているという感覚を大切にす る。. 8.生活様式. 仕事生活とその他の生活の調和/バランスを保つことを 重要視する。. 年齢を基礎に置いた発達論(Daniel J. Levinson) Daniel J. Levinson はイエール大学心理学教授であった(1994 没)。彼は、年齢に関連 付けられた6つの段階があることを提唱した。それぞれの段階ごとに達成すべき共通の 発達課題があるとした(金山,2010)。 第1段階は「最初の大人の転機、親離れの段階」とされ、該当年齢層としては 16―20 歳が想定されている。これは 青年期から成人前期への橋渡しの時期である 第2段階は、 「大人の仲間入りをする段階」とされ、該当年齢層としては 21―29 歳が 想定されている。この時期の主要課題 は、成人初期の主要課題をつくり上げることであ るとされる。 第3段階と「一家を構える段階」 (該当年齢層 30-34 歳)、それに続く第4段階「自分 を確立しはじめる段階」で、成人期第二の生活構造を築き、成人前期の最盛期 を迎える とされる。 第 5 段階の「中年期の過渡期」 (該当年齢層 40-42 歳)で、前期までで一旦確立した成 人期の安定が、自己の内面(若さと老いが混在)や取り巻く外界からの影響による葛藤に より揺らぎが生じるとされる。 第 6 段階が「再安定期」 (該当年齢層 43-50 歳)では、前期の過渡期を克服した後で 5.

(10) 訪れる安定期であるとされ、 、中年期最初の生活構造が築かれるとされる。 以上のように、成人期の生活構造の発達は安定期と過渡期が交互に現れて進んでいく とされる。安定期の主要な発達課題は生活構造を築くことであるが、それには生活の中心 的な要素になる職業、家庭などをどのように選択して、それを中心に生活構造を作りあげ て、自分の目標と価値観を追求するかにあるとしている。. 関係性アプローチ(Douglas T.Hall) Douglas T.Hall はボストン大学マネージメント・スクールにおいて組織行動の教授を 務める。アメリカ心理学会(APA)のギゼリ賞受賞など組織行動分野における多くの業績 を挙げている。彼のキャリアに関する理論は、キャリアは他者との関係のなかで互いに学 び合うことで形成されていくとする関係性アプローチ(relational approach)をとってい る。Shein の「キャリア・アンカー」理論が、個人の志向性がいわば独立かつ強固である ことを特徴としていることに対し、個人が相互依存的な人間関係の中で学び続けること によって「変幻自在なキャリア(protean career) 」を築いていくことが可能、と Hall は 主張する。即ち、プロティアン・キャリアとは、組織によってではなく個人によって形成 されるものでありキャリアを営むその人の欲求に見合うようにそのつど方向転換される ものである(Hall,1976) 。移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応してい くキャリアともいえる。プロティアン・キャリアの特徴を明らかにする目的で Hall 自身 が伝統的なキャリア理論との対比を整理した表を紹介する(表 2-2) 。 表 2-2:伝統的キャリアとプロティアン・キャリアの対比(Hall,2002) 項目. プロティアン・キャリア. 伝統的キャリア. 主体者. 個人. 組織. 核となる価値観. 自由、成長. 昇進、権力. 移動の程度. 高い. 低い. 重要なパフォーマンス側面. 心理的成功. 地位、給料. 重要な態度側面. 仕事満足感. 組織コミットメント. 専門的コミットメント 自分を尊敬できるか. 組織から自分は尊敬されるか. 重要なアイデンティティ側面. 自分は何がしたいのか. 私は何をすべきか. 重要なアダプタビリティ側面. 仕事関連の柔軟性. 組織関連の柔軟性. 現在のコンピテンシー. (測度:組織で生き残ること. (測度:市場価値). ができるのか). このように対比させてみると、伝統的キャリアが長期雇用を前提として日本的経営におけ るキャリア開発の特徴と合致しており、プロティアン・キャリアがジョブ型と呼ばれるそれ 6.

(11) と親和性があることが確認できる。実際、Hall がプロティアン・キャリア理論を定義した背 景には、1980 年代の米国における産業社会における変化(企業と個人との雇用関係が長期 の関係 契約から短期の取引契約に変化)を踏まえてのことである(渡辺,2018) 。冒頭で述 べたように、ダイバーシティ 2.0(経産省,2018)でも個人の能力開発に力点をおく方向性へ の変化を日本でも要請されていることから、今後の日本におけるキャリア開発においても 示唆に富む理論といえよう。. 第2節. 最近注目されるキャリア開発理論. キャリアオリエンテーション(Derr,C.B,坂爪洋美) 前節で紹介した Schein 等の研究をきっかけとして、キャリア意識に関する研究が活発 になった。Derr,C.B(1986)は、Driver,M.J.(1979)が提唱した「キャリアコンセプト」と いう概念(図 2-3)に着目し、Shein の「キャリアアンカー」理論も踏まえて「キャリア・ サクセスマップ」を構築した(図 2-4) 。この Derr の研究を基盤として、日本の就業風土 を踏まえて理論構築を図ったものが、坂爪洋美が提唱する「キャリアオリエンテーション」 理論である(2008:図 2-5) 。坂爪によると、キャリアオリエンテーションとは「仕事に 関連する個人の動機・価値観・ニーズのことであり、仕事に関連する意思決定に対して影 響を与えるものである」と定義する(坂爪,2008)。坂爪の研究は一連の発達心理学の理論 系譜を踏まえたうえで、日本の風土を踏まえたという意味でユニークなものであるので 注目に値する。よって、少し丁寧に紹介したい。 Driver(1979)は、複数の企業のビジネスエグゼクティブと専門職に対する調査を実施し て、個人が認識するキャリアパターンとして4つのキャリア・コンセプトを提唱した。 Driver のモデルは基本的に個人が自分のキャリアをどのように捉えているかに注目し、 モデル化したものである。Driver が提唱した 4 つの類型は、以下の通りである(表 2-3) 。 表 2-3:Driver の「キャリア・コンセプト」 (坂爪,2008)より作成 ①螺旋型. ある領域で一定期間キャリアを形成するが、一定期間を過ぎると新しい領域 へ移動。コンサルタントなどにみられる。. ②安定型. 早期に仕事やフィールドを選び、生涯においてその仕事に留まる。医者や熟 練労働者にみられる。. ③移行型. 個人は特定のパターンを持たずに職務から職務に移動。半熟練労働者によく みられる。. ④直線型. 早期にフィールドが選ばれ、そこでの出世が計画・実行。企業の管理職にみら れる。. 7.

(12) Derr(1986)は、 「キャリア・コンセプト」が、Shein の「キャリア・アンカー」が個 人の欲求・価値観・動機に注目するのに対し、キャリアの長期的な方向という新たな側面 を捉えていることに着目した。Derr は、Shein(1978)と Driver(1979)を参照しつつ、8 年間で 70 社以上の企業訪問を実施し、その従業員へのインタビューに基づいて、今日の 仕事環境下におけるキャリアサクセスに以下の 5 つが存在することを明らかにした(表 2-4) 。 表 2-4:Derr の「キャリアサクセスマップ」 (坂爪,2008)より作成 ①上昇(getting ahead) 組織内部での昇進、ならびにそれに伴う影響力・地位・金銭 的報酬の増大を指向 ②保障(getting secure) 長期的な安定性を指向(長期雇用を好む傾向) ③挑戦(getting high). 多少リスクを伴っても自分が夢中になることができるよう な仕事に従事できることを好む性向. ④自由(getting free). 規則や規範を好まず、自律性が尊重され、管理が厳しくない こと、結果に対する責任を負っていることを指向(昇進は主 目的としていない). ⑤バランス. 仕事は重要だが、仕事以外の生活領域の浸食は好まない. (getting balance). 坂爪は、Derr(1986)の研究を踏襲しつつ、日本の企業風土に合致するよう尺度開発を 行い、 「キャリア・オリエンテーション」として定義化を図った(2008) 。基本コンセプト は以下の通りである(図2-1) 。. 最も得点の高い特性. 上昇. 保障. 挑戦. 自由. バランス. 図 2-1:坂爪の「キャリア・オリエンテーション」 (坂爪 2008 より作成). 8.

(13) 女性のキャリア志向の分類-バリキャリ・フルキャリ・ゆりキャリ(武田佳奈) ここまでは、欧米の理論を中心に古典的な発達心理学や組織行動論における理論展開 を紹介してきたが(坂爪(2008)のモデルは理論ベースを Derr(2008)に置いているた め、系譜としては欧米発の理論の応用系として扱うのが妥当と考える) 、最後に日本の就 業風土のなかから提唱された考え方を紹介したい(武田,2016) 。 武田佳奈は、野村総合研究所のコンサルタント(ライフコンサルティング分野)であり、 共働きや子育て支援に関する政策提言や制度設計コンサルティングを実施している。武 田(2016)は、野村総研が実施した就業女性を対象としたアンケート調査(NRI,2015) を踏まえて、女性のキャリア志向の分類とそれを踏まえての支援策を提言している(武 田,2016) 。彼女の分類の特徴は、働く女性のキャリア志向をキャリア重視(武田の表現で は「バリキャリ」 )かライフイベント重視(同「ゆるキャリ」 )の二限論ではなく、キャリ ア・ライフイベント双方の充実を図る層(同「フルキャリ」 )を含めた 3 分類を提唱し(な お、上記のアンケート結果では全体の 20%強が「フルキャリ」に該当) 、夫々に対した就 業支援策を提言した点にある(図:2-2) 。. 図 2-2:女性のキャリア志向とその分類(武田 2016 より抜粋) 以上、キャリア志向に関する伝統的な理論的な発展と最近のビジネス社会に対応した新 しいフレームワークを紹介してきた。本稿では、坂爪・Derr の「キャリア・オリエンテー ション」と Gerber,et.al が提唱する「キャリア・オリエンテーション分類」を基軸に、現代 日本の若年・中堅層の分類を図ってみたい。2 つの理論を併用するのは、坂爪・Derr の提唱 モデルが(就業者が) 「どんな価値観を重視するのか」という視点を探る尺度設計という意 味で可用性が高いと判断したことと、Gerber,et.al らの視点が複数の価値観を就業者が優劣 をつけた際に、当該就業者がどのような価値グループに分類可能なのかを提供してくれる ように考えたからである。具体的にいえば、将来的に坂爪モデルでいう「自由」を志向する 就業者であっても目先の生活基盤の確保という意味での「保障」や「バランス」を求める「タ 9.

(14) イプ」の人は少なからずいるであろうし、また、古典的な「上昇」を志向する就業者であっ ても、現在の日本社会(シングルインカムでなくダブルインカムが主流)の就業環境を踏ま えれば「バランス」を一定範囲で確保したいとおもう「タイプ」もいるであろう。本稿の目 的が就業者の(内的な)キャリア意識の大きなグルーピングを図ろうとする点においた場合、 個々のパラメーターとしての坂爪・Derr の提供する価値基準と、パラメーターの謂わば組 み合わせをグルーピングする視点を提供してくれる Gerber,et.al の価値基準を併用すれば 興味深い分析ができるように考えた次第である。. 10.

(15) 第3章 仮説モデル 前章で概観したように、キャリア開発に関する理論の多くは若年・中堅層のキャリア開発 に関する意識調査は多々あるものの、その多くは外部労働市場が発達した欧米で開発され たものである。一方、日本の場合は大企業を中心に新卒一括採用システムによる長期雇用・ 内部労働市場を前提とした採用システムが残存しており( 「新卒一括採用はなぜなくならな いのか?」小野彰、PRESIDENT 2017 年 5 月 15 日号) 、若年層の就業環境が大きく異なる。 Hall の関係性アプローチ理論の箇所でもみたように、キャリア意識に対して就業環境の与 える影響は大きい。そこで、日本の現状の就業慣行を前提としたキャリア意識のモデルを描 いてみたい。. 第1節. モデル図の考察. 「日本」の「現代の若年・中堅」にフィットするモデルを考察する手がかりとして、若年層 の就業意識調査を取り上げたい。対象が新入社員に限定されているため、本稿が包含したい 中堅層の意識が抜けているところが難点ではあるが、経年的にデータが収集されているた めに全体傾向をみるには適していると考えたからである。. 「新入社員意識調査報告書. 2018(日本能率協会)」について. 同調査は一般社団法人日本能率協会が 1982 年から継続している新入社員向けの調査プロ ジェクトである。2018 年調査結果の特徴は以下の通りである(以下、同調査より抜粋)。 ① 人工知能(AI) ・ロボット技術の発展による「デジタル革命」時代の到来を背景に、 5 年後の日本のビジネス環境がどうなっているかを聞いたところ、全体では、「新し いビジネスが次々生まれ、日本の競争力が高まると思う」が 47.4%と、 「現在のビジ ネスが通用しなくなり、日本の競争力が低下すると思う」の 27.8%を 20 ポイント近 く上回り、日本の競争力についてポジティブに捉えられていることが分かった。 ② 実力・成果主義の職場を望むか、年功主義の職場を望むか聞いたところ、 「実力・成 果主義」(19.0%)「どちらかというと実力・成果主義 」(46.0%)となり、実力・成果 主義の職場を望む人が 6 割(65%)を超えた。 (問 5(1))。尚、2014 年は 56.4、2012 年は 59.7%であった。 ③ 働く目的について生活費を得ること以外で聞いたところ、 「仕事を通じてやりがいや 充実感を得ること」(40.9%)が最多で、4 割にのぼった。次いで「自分の能力を高め ること」(33.5%)、 「いろいろな人に出会うこと」(33.2%)となった。 (問 6) 11.

(16) ④ プライベートを優先したいか、仕事を優先したいかを聞いたところ、 「プライベート」 が 24.1%、 「どちらかというとプライベート 」が 51.7%となり、仕事よりプライベー トを優先したいとする新入社員が 8 割近く(75.8%)になった。 (問 4(4)) 。尚、同 数値は 2014 年が 65.1%、2012 年が 61.9%とプライベートを優先する志向が高まっ ている。 ⑤ 理想的だと思う上司や先輩について聞いたところ、全体では、「部下の意見・要望を 傾聴する上司・先輩」(33.5%)、 「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(33.2%)、 「部下の意見・要望に対し、動いてくれる上司・先輩」(29.0%)がトップ 3 にあげら れた(問 10) ⑥ 将来の育児と仕事についての自分自身の考えについて聞いたところ、全体では、 「仕 事を続けたい」(50.9%)、 「続けられる環境があれば続けたい」(38.9%)と、約 9 割が 仕事を続けたいと回答している(問 17(1)) 。 ⑦ 働いている会社が社会の役に立っているかどうかをどの程度重要と思うか聞いたと ころ、全体では、 「とても重要だと思う」(60.8%)と、6 割以上の新入社員が社会に役 に立っているかをとても重要だと考えていることが分かった。「やや重要だと思う」 をあわせると 9 割以上にのぼっている。 ⑧ 全体では、 「部長・課長など管理職になりたいと思う」(31.3%)が最も高く、 「専門職 として頑張りたいと思う」(23.0%)、 「役員になりたいと思う」(11.4%)と続く。将来 の退社につながる「独立して起業したい」 「将来は仕事をやめたい」はいずれも約 3% であった。. 「新入社員意識調査報告書. 2018(日本能率協会)」の結果からの示唆. 上記の結果を(やや強引ではあるが)、まとめると以下の通りとなる(過半数は網掛け)。 項目 ①デジタル革命進展後の日. 最も多い回答(構成比). 左記以外の構成比計. 日本の競争力維持を予想(47.4%). 52.6%. 本の競争優位 ②実力・成果主義 vs 年功主義. 実力・成果主義(65%). ③働く目的(生活費以外). やりがい・充実感(40.9%). 59.1%. ④プライベート vs 仕事. プライベートを優先(75.8%). 24.2%. ⑤理想的な上司・先輩. 部下の意見・要望を傾聴する上司・. 66.8%. 35%. 先輩(33.2%) ⑥育児と仕事についての考. 仕事を続けたい(89.8%). 10.2%. 重要だと思う(93.8%). 6.2%. 部長・課長など管理職(31.3%). 78.7%. え方 ⑦自分が働く会社の社会貢 献について ⑧将来つきたい職種・役職. 多数派の指向性について、一見すると、仕事よりプライベートを優先(④) 、実力主義の職 場(②)で、やりがいを重視(③)する若者が、サポーティブな職場環境(⑤、⑥)で、会 12.

(17) 社による社会貢献も志向(⑦)しながら、自身は管理職を目指し(⑧)、日本の競争力につ いてもポジティブな期待している(①) 、ということになり報告書の要約でもコメントされ ているとおり「いかがなものか」との印象(日本能率協会,2018)も生じるかもしれない。 但し、 ・最多数派の構成比は項目によってバラツキがあること ・項目によっては誘導(例えば⑦。 「社会貢献が大切か」と聞かれれれば、肯定的な解 等が多くなることは自明であろう)と思われるところもある ・最多数派が過半数を超えている項目は部分的(よって、項目間で回答者が重複する割 合も部分的) 。 という訳で、一律的にまとめてしまうことは難しい。但し、彼等・彼女の関心ポイントとし て上記の傾向を有することは否定できないため、次章で実施するインタビュー調査の質問 項目に取り入れていく。. モデル図 それでは、これまでの議論を受けて仮説モデルを設計する。 描出したいことは、坂爪・Derr モデルと Gerber,et.al モデルを併用することで、今日の日本 のビジネス社会における若年層・中堅層のキャリアの指向性を分類することである。 キャリアオリエンテーションに対して主な影響を与える要因としては、 ① 個人属性に関する要因(学歴、性別など) ② 個人要因(動機・価値観・ニーズなど) ③ 就業上の経験に関する要因(勤続経験が個人のキャリアオリエンテーションに与 える影響) があるとされる(坂爪,2008) 。 よって、これらの要因とキャリアオリエンテーションの関連と、そこからどのような類型化 が可能かを探ることを主眼として、以下モデル図(図3-1)を提示する。. 13.

(18) 個人属性. 年齢・性別 キャリアオリエンテ 個人要因. キャリアの指向性. ーション分類. ・達成動機. 上昇/保障/挑戦. 独立型/忠誠型/. ・刺激欲求. /自由/バランス. 上昇型/低関心/ ハイブリッド(フル. ・認知欲求. キャリ). 職務経験. 年数・職種など. 図 3-1:仮説モデル. 第2節. リサーチクエスチョン. 前説のモデル図に基づき分析したい課題は以下の通りである。 1.. 日本の若年・中堅層の(内的な)キャリア志向はどのような属性の個人属性を 有するものが、どのような価値観を重視しているのか。. 2.. 上記価値観の「持ち方」によって、どんな分類ができるのか。. 3.. 更に、描出できた分類パターンによって、どのような示唆が受けられるか(人 材活用の視点). 14.

(19) 第4章 調査研究 第1節. 序論. 前章で提示したリサーチクエスチョンを検証するため、首都圏在住の若年・中堅(22 歳 ~37 歳)の被雇用者(N=32)を対象に、構造化インタビュー調査を実施(2018 年 10 月~ 12 月)した。第 2 節では調査手続きについて解説し、第 3 節で結果を解説する。. 第2節. 調査方法. 対象者の選定 今回は所謂ミレニアム世代とよばれる 1980 年以降に誕生した首都圏在住の就業者(ホワ イトカラーに限定)を対象に調査を行った。首都圏在住者に限定したのは、様々な就業機会 のなかから現在の職場を選択している環境にある就業者の意識を探りたかったためである。 また、ホワイトカラーに限定したのは、第 1 章の問題意識にもあげた通り、日本的経営の雇 用モデルやそれにまつわる議論(例:ダイバーシティ 2.0 など)がホワイトカラーを想定し ているためである。 なお、雇用形態や職種・勤務先規模による回答偏りを避けるため、以下分類に該当する該 当者にインタビューを実施した(N=32 人)。 ⚫. 雇用形態(正規/非正規). ⚫. 職種(総合職/一般職/専門職). ⚫. 勤務先規模(超大手~零細企業). ⚫. 転職経験(有り/無し). <参考:調査依頼対象者の経路パス> 転職経験有り インタビュー経路. 人数. 転職経験無し. 平均年齢. KBS企業派遣. 人数. 計. 平均年齢. 人数. 平均年齢. 9. 33. 9. 33. 紹介. 7. 31. 5. 26. 12. 29. 知人. 7. 33. 1. 25. 8. 32. 同僚. 1. 36. 2. 36. 3. 36. 総計. 15. 32. 17. 31. 32. 32. 15.

(20) 対象者の内訳 調査対象者の内訳を属性別に説明する。 (ⅰ)性別/正規・非正規(表 4-1) 武田(2016)に代表されるように、当該世代のキャリア論は性差に基づく議論が多いた め、対象者選定にあたっては意識的に男性・女性を含めることを意図した。ただし、今回の 調査対象者は筆者(男性)の知己を頼る部分が多く、結果的には男性の対象者が多くなった。 また、神林(2017)で提起されるように、当該世代のキャリア開発を主に労働経済学の観点 から分析する潮流を踏まえると、正規・非正規の属性に対する考慮も必要であった。筆者の 知己に非正規雇用者が少ない為、結果的に正規雇用者が多くなった。この点は、ホワイトカ ラーでも IT 業界やコンサルティング業界を中心に「ノマド」と呼ばれるフリーランス的な 働き方(企業と正規雇用契約を締結せずに、あくまでも個別の業務委託契約を締結する働き 方)の広がりを考慮した場合、本研究における課題の一つといえるであろう。 表 4-1:調査対象者の内訳[性別/正規・非正規] 正規 項目. 人数. 男. 17. 女 総計. 非正規. 平均年齢. SD. 31.7. 人数. 4.5. 計. 平均年齢 4. SD. 35.8. 人数. 0.8. 平均年齢 21. 32.5. SD 4.3. 9. 29.9. 5.7. 2. 31.0. 6.0. 11. 30.1. 5.8. 26. 31.1. 5.0. 6. 34.2. 4.2. 32. 31.7. 5.0. (ⅱ)性別/職種(表 4-2) 次に職種別の内訳を説明する。都市部のホワイトカラー層を対象に調査協力者を募った 場合、総合職に極端に偏る懸念があったため、選定にあたっては一般職や専門職を含めるこ とを意識した。一般職については、その役割の終焉を指摘する説がある一方(滝川,2018) 、 女性被雇用者の中堅層のキャリア選択に焦点を充てた実証研究(坂巻,2009)を踏まえ、対 象者として含めたいと考えた。 専門職については、従来の特に大手企業の新卒採用が総合職を基軸に運用されており、実 際キャリア開発に関する調査事例も看護職者など医療従事者を対象者とするものが多かっ たが(関,2015 など) 、新卒採用市場における職種別採用の増加(リクルートキャリア,2018) を踏まえ調査対象者に含めたく思料した。 結果は以下の通りである。女性事務職の多数派ともいわれる(坂巻,2009)一般職の対象 者数が相対的に少ないことが調査対象者選定上の課題となった。 表 4-2:対象者の内訳[性別/職種] 一般職 項目. 人数. 平均年齢. 専門職 SD. 男. 人数. 平均年齢. 総合職 SD. 人数. 平均年齢. 計 SD. 人数. 平均年齢. 6. 32.2. 5.4. 15. 32.6. 3.8. 21. 32.5. SD 4.3. 女. 4. 33.5. 4.9. 1. 32.0. 0.0. 6. 27.5. 5.5. 11. 30.1. 5.8. 総計. 4. 33.5. 4.9. 7. 32.1. 5.0. 21. 31.1. 5.0. 32. 31.7. 5.0. 16.

(21) (ⅱ)性別/勤務先カテゴリー(表 4-3) 勤務先カテゴリーは規模に基づく伝統的な区分(大企業、中小企業、零細企業 etc)に 加えて、転職市場が活性化している業種や、非営利組織(学校・財団等)は意図的に含める ようにした。その理由は、前者はキャリアチェンジに関してそれ以外の業種と転職に関する 環境要因が大きく異なっていることから特徴的なキャリア意識を持っている可能性が高い と考えられたからである。その観点で、転職市場における有効求人倍率が高い IT 業界やコ ンサルティング業界(smatwith,2018)の調査対象者を含めた。また、非営利組織の就業者 については、当該業界における就労意識の特異性に関する調査(労働政策研究・研修機構, 2016)を踏まえ調査対象者に含めることを意図した。 結果は以下の通りである。 表 4-3:対象者の内訳:性別/勤務先 有名・大手企業 項目 男. 12. 女 総計. 中小零細. IT・コンサル. 他(学校・財団等). 計. 人数 平均年齢 SD 人数 平均年齢 SD 人数 平均年齢 SD 人数 平均年齢 SD 人数 平均年齢 SD 33.2 3.1. 5. 31.6 5.7. 2. 36.5 0.5. 2. 26.5 1.5. 21. 32.5 4.3. 5. 25.6 3.9. 2. 34.5 2.5. 2. 36.0 0.0. 2. 31.0 6.0. 11. 30.1 5.8. 17. 30.9 4.8. 7. 32.4 5.2. 4. 36.3 0.4. 4. 28.8 4.9. 32. 31.7 5.0. ここでの課題は、全体の 53%が有名・大手企業の就業者になっていることである。政府 統計によれば(中小企業白書,2017) 、我が国の就業者のうち大企業従事者は以下参考図(表 4-4)の通り、マイノリティーであり、その意味では当該調査結果を一般化するうえで制約 を加えるであろう。但し、第 1 章の問題意識項で述べたように、新卒採用の対象者の大手志 向は未だ強いことを考慮すると、当該カテゴリーの就労者のキャリア意識の特徴がより鮮 明に把握できる可能性もあると考える。 表 4-4:我が国の企業数と就業者:中小企業白書(2017)より抜粋. 17.

(22) 調査の手続き 調査は 2018 年 10 月 23 日から同年 12 月 26 日にかけて実施した。実施方法は、調査対 象候補者にインタビューの趣旨を予め説明し同意を得られた対象者に対し、個別のインタ ビューを実施し、その場で筆者が回答内容を記入する方式である。尚、インタビューに関し ては無記名かつ、本調査結果の目的外使用をしないことを説明し、率直に回答をしてもらえ るように設計した。. 分析手法 分析手法としては、意味内容による定性分析を採用した。上記手続きで聴取したインタビ ュー結果のテキストデータを一覧化したうえで、回答内容を意味内容で分類し、分類別に属 性に対する強弱を区分し(志向性があるか、無いかの二分法)、質問項目別に志向性の強弱 を判定するというやり方である。具体的には後述の結果分析の項で示す。. 質問項目について 質問内容の一貫性を保つため、構造化インタビューによる設計を実施した。個々の設問設 計に関しては(坂爪,2008)を参照しながら、筆者が独自に設計したものである。設問数は 計 18 であり、内2つの属性設問(生年、就業経験など)を含む。なお、インタビュー項目 は坂爪・Derr が提唱する「キャリア・オリエンテーション」分類によるラベリングを実施 した(表 4-5) 。. 18.

(23) 表 4-5:質問項目 NO. 設問概要. 設問意図. カテゴリー. 1. あなたの生年を教えて下さい. 若年・中堅(~38 歳)に該当. 属性. 2. 就業経験について. 転職経験の有無. 属性. 3. 働くうえで最も大事にすること. 重視する価値観. タイプ確認. 4. 志向するライフプラン(住居、子供の. ライフプランと仕事への取組みの関係性. 上昇. 教育他). を探る. 5. ライフプランへのこだわりの強さ. 収入への執着. 上昇. 6. 志向するキャリアプラン. 昇進に対する意欲. 上昇. 7. 転職への考え方. キャリアチェンジへの考え方. 挑戦. 8. 定年まで勤めたいか. 所属する「会社」の重要度. 保障. 9. 長時間勤務・休日出勤など旧世代. 個人より組織を重視する職場に対する. バランス. の働き方に対する違和感. 見方. 10. モチベーションがあがる時. (賞与他)交換志向性. バランス. 11. (同)下がる時. 同上. バランス. 12. 会社以外での自己実現機会の有無. 「会社」以外の社会とのかかわり. バランス. 13. 今の会社を辞めない理由. 所属先への思い入れ. 保障. 14. 評価されるが高負担なジョブオファー. チャレンジ志向の強さ. 挑戦. 時(所属組織からの)の感情 15. ワークライフバランスの重視. 仕事/プライベートの優先度合い. バランス. 16. 働き方改革のマネジメント手法(時. 時間で縛るマネジメント手法への共感性. バランス. 間で管理)への意見 17. フリーランス・企業への興味. 独立志向をどの程度持っているか. 自由. 18. AI 革命後の「会社」への期待度. 会社に対する就業保障への期待. 保障. 回答結果の要約方法 前述の通り、回答内容(設問 18、回答者 32 名)をテキスト化し、意味内容で分類し、設 問が意図するカテゴリーへの志向性の有無を判定する手法を採った。例として、[設問4. 志向するライフプラン(住居、子供の教育他) ]で実施した要約内容を提示する(表:4-6) 。 聴取コメントの原文は(回答内容)という項目に記載の通りである。例えば、当該コメント 中、 「住居」や「子供の教育」といった家計に影響を与えるライフイベントに対する積極性 (例: 「子供には糸目をつけず投資をしたい」)を確認できれば、当該調査対象者はカテゴリ ー「住宅/教育投資の充足志向性あり」に分類し、当該設問が意図する「上昇」に対する志 向性を「有する」と判断した。同様にコメント中、当該投資への積極性を認識できる言葉が 19.

(24) なかった場合は、当該設問における「上昇」志向性が「無い」と判断した。尚、下記例の(回 答原本)記載のコメント中、下線部分は(住宅/教育投資の充足志向性あり)と判断した発 言内容である。 表 4-6:要約の例 NO. 性別. 1男. 職種 総合職. 正規区分 転職経 正社員. 験 無し. Q4_志向するライフプラン(回答原本) -「上昇」についての意識 最低限の生活できる収入は欲しいし、多くて不便を感じるこ とはない。住居や教育などは、こちら側の収入によって制限 がかからないレベルではありたい. 2男. 総合職. 正社員. 無し. 子供が「やりたい」といったことに対して「お金がないから できない」ということがないようにはしたい。例えば、習い 事であったり、進学先であったり。. 6男. 総合職. 正社員. 無し. 志向するスタイルは中の上、上の下。東京都内にマンション を買いたい。子供(現在はいない)には糸目をつけずに投資 したい(収入を理由とした躊躇はないように)。. 11 女. 総合職. 正社員. 無し. 特にないが、日々そこそこ頑張って、そこそこプライベート. カテゴリー化. 上昇志 向性. 住宅/教育投資の充足. 有. 志向 住宅/教育投資の充足. 有. 志向 住宅/教育投資の充足. 有. 志向 充足志向性なし. 無. 充足志向性なし. 無. が充実すればよい。 20 男. 専門職. 非正規. 有り. 毎日家族が健康に暮らせればと思っているが、共働きでもあ り正直将来プランはあまり考えていない。子供は元気に育っ て、自活できる生活力を身につけてくれれば、あとは好きな ことをやって暮らしてくれればと思ってる。. このような手続きで実施した調査の結果要約を次節で提示する。. 20.

(25) 第3節. 調査結果. 本節では下記の4つに従って、調査結果を概観する。 ⅰ)性別(男女) ⅱ)雇用形態(正規/非正規) ⅲ)職種(総合/一般/専門) ⅳ)勤務先カテゴリー 各分類別に設問に対する回答内容を意味内容で分析し、設問内容に対する志向性の有無 で分類した結果をクロス集計の手法で整理した。. ⅰ)性別 男女別の回答者数は(男性:21、女性:11)であり、回答者数は男性が多くなっている。 個々の回答結果は下記の通りであるが、回答傾向に性別で大きな差があった。特に、 「上昇 (全3項目) 」と「挑戦(全 2 項目) 」では、全項目で相反する傾向が認められた。 以下、キャリアオリエンテーションの各項目(上昇、バランス、保障、挑戦、自由)の分類 別に結果を示す(性別以外の各分類も同様とする) 。 ■上昇に関する設問(全3問) <該当する設問> ・ [設問4]志向するライフプラン(家、子供の教育他) ・ [設問5]ライフプランへのこだわりの強さ ・ [設問6]志向するキャリアプラン(特に組織内での昇進の具体的なイメージ) <結果> ・ [設問 4]志向するライフプラン(家、子供の教育他)について 当該設問では、 「マイホームが欲しい」 「子供は高等教育を受けさせたい」 「留学をさせたい」 といった、多額の投資を厭わないと思われる発言があった場合は「志向性あり」と判定し、 その性向の有無で集計を実施した。結果は以下の通りであり(表 4-7) 、男女で大きな傾向 差があった。. 21.

(26) 表 4-7:設問 4 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 志向するライフプラン(上昇欲求). 女. 1. 10. 11. 男. 15. 6. 21. 総計. 16. 16. 32. 16 14 12 10 8 6 4 2 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問5]ライフプランへのこだわりの強さについて 当該設問の原文は「ライフプランの達成要求はどの程度強いか?例えば、自分が将来的に手 に入れたいライフプランと現在・近い将来の収入に GAP があるとき、 どう動くと思うか?」 である。設問設計の趣旨は、手に入れたい生活レベルと収入の GAP があった時に、ライフ プランの達成を目指して現状より高い収入を得る機会(転職など)を模索するか、ライフプ ランの達成を諦め、現状の収入レベルに家計を合わせる(従って転職はしない)行動を取る か、を聞いている。ここでは前者に近い回答(例: 「転職する」 「生活レベルは落とさない」) 回答者を「上昇志向性あり」と判定し、それ以外の回答者を「志向性無し」と分類している。 結果は(表 4-8)の通りであり、男性が志向性が強い回答者が多く、女性が逆の結果となっ た。 表 4-8:設問 5 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. ライフプランの達成要求の強さ. 女. 3. 8. 11. 男. 15. 6. 21. 総計. 18. 14. 32. 16. 14 12 10 8 6. 4 2 0 女. 男. 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 6]志向するキャリアプラン(特に組織内での昇進の具体的なイメージ) 当該設問の原文は「志向するキャリアプランのようなものはあるか?例えば、何歳までに どの程度のポジション(自社・他社含め)にいたいとか」である。言うまでもなく、自らの キャリアプランを所属組織における昇進・出世と照合しているかを尋ねている。ここでは、 回答結果に具体的な役職名(例えば「40 代で課長。50 代で部長になりたい」等)や目標感 22.

(27) (例「10 年以内に独立したい」等)を確認できる発言があった場合は「上昇志向あり」と 判定し、それ以外の場合は「志向性無し」として扱った。結果は以下の通りであり(表 49) 、 [設問4] [設問5]と同様の傾向が認められた。特に、女性は「志向性無し」が全員と いう結果であった。 表 4-9:設問 6 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計 女. 志向するキャリアプラン(組織内昇進欲求). 11. 11. 20. 男. 15. 6. 21. 15. 総計. 15. 17. 32. 10. 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ■バランスに関する設問(全 6 問) <該当する設問> ・ [設問 9]長時間勤務・休日出勤など旧世代の働き方に対する違和感 ・ [設問 10]モチベーションが上がるとき ・ [設問 11]モチベーションが下がるとき ・ [設問 12]会社以外での自己実現機会の有無 ・ [設問 15]ワークライフバランスの重視 ・ [設問 16]働き方改革のマネジメント手法(時間で管理)への意見 Derr(1986)の「キャリア・コンセプト」によれば「バランス」とは、 「仕事は重要だが、 仕事以外の生活領域の浸食は好まない」という定義であった。従って、当該設問では「仕事 以外の生活領域の重要性」や「侵食されることへのネガティブな気持ちの強さ」が回答結果 から志向性として探り出す観点での分析を実施した。 <結果> ・ [設問 9]長時間勤務・休日出勤など旧世代の働き方に対する違和感について 当該設問はメンバーシップを重視する日本的経営の特徴とされる(みずほ情報総研,2017) とされる長時間労働に代表される旧来型の労働慣行に対して違和感を有するか否かを質問 することによって、 「仕事以外の生活領域の重要性」や「侵食されることへのネガティブ感 情の強さ」という志向性を有するか否かを確認しようとしたものである。違和感を想起する 発言(例: 「時代遅れ」 「自分には出来ない」等)があった場合は「志向性あり」と判定し、 ない場合(例: 「仕事があるなら残業はあたり前」 )は志向性無しと分類した。結果は以下の 23.

(28) 通り(図 4-10)であり、男女ともに「志向性有り」が多数を占めた。但し、 「志向性無し」 の割合は、男性が 7 人(男性 21 人の 33%強)を占めるのに対し、女性は 2 人(女性 11 人 の 22%強)と「志向性無し」の発生頻度という観点では異なる傾向がある。 表 4-10:設問 9 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 長時間労働・休日出勤の常態化への違和感. 女. 9. 2. 11. 男. 14. 7. 21. 総計. 23. 9. 32. 15 10 5 0. 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 10]モチベーションが上がるとき 当該設問と設問 11 は、キャリアオリエンテーションにおける「バランス」概念から、モ チベーションへの影響要素が対価交換性を有するか否かを以って「バランス感覚」を有する か否かを図ろうとしている。モチベーションに影響を与える要因(表 4-11)は、仕事への 満足感や職場環境、給与等の対価水準等様々であるが(金井,2007)、ここでは給与・賞与等 の役務提供に対する交換価値やプライベート時間の侵食度合いなど、 「仕事以外」を犠牲に して組織に役務を提供したことへの納得感を謂わば即物的な価値観で担保する傾向を有す るか否か、を確認しようと意図して設計した設問である。 表 4-11:ワークモチベーションに影響を与える要因:金井(2007)より引用. 24.

(29) 当該設問では、回答中に上記志向性がある発言(例:直接的なものとして「ボーナスを もらったとき」など。間接的には「プライベートが楽しいとき」など仕事以外の充実が前提 となる発言がある場合など)がある場合には「志向性あり」と判定し、ない場合は「志向性 無し」として分類した(表 4-12) 。結果は以下の通り、男女で顕著な傾向差はなく、どちら も殆どの回答者が「志向性無し」に分類された。 図 4-12:設問 10 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. モチベーション向上の対価性志向(ボーナス等). 女. 2. 9. 11. 男. 1. 20. 21. 20. 総計. 3. 29. 32. 15. 25. 10 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 11]モチベーションが下がるとき 当該設問は設問 10 と同様の意図で設計した。即ち、役務提供に対する賞与・給与に代表さ れる対価交換への納得感や「仕事以外への侵食度合い」がモチベーション下降要因にどの程 度効いているかで、 「バランス」傾向の確認を採ろうとしたものである。結果は(表 4-13) の通りであり、設問 10 と同様の結果となった。即ち、男女傾向差はなく、どちらの性別の 回答者も「志向性無し」が殆どを占めた。 表 4-13:設問 11 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. モチベーション下降の対価性志向(処遇面). 女. 1. 10. 11. 30. 男. 1. 20. 21. 20. 総計. 2. 30. 32. 10. 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 12]会社以外での自己実現機会の有無 当該設問は回答者が仕事以外の自己実現機会の有無を確認することで、所属組織以外に おける居場所を確立(従って、 「仕事以外」の価値を重視する)しているか否かを判定する 25.

(30) 意図で設計した設問である。従って、「休日に子供と遊ぶこと」といった類の回答は、あく までも「勤務日」に対する「休暇の過ごし方」という意味内容であると解し、 「志向性無し」 と判断した。逆に「志向性あり」と判断した回答は「大学時代の研究内容の継続」や「自己 研鑽としての技術習得」など具体性のあるアクティビティを挙げているものである。回答結 果は以下の通りであり(表 4-14) 、男女とも同様の傾向(多数派が「志向性無し」)であっ た。 表 4-14:設問 12 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 仕事以外での自己実現ポイントの達成欲求. 女. 4. 7. 11. 男. 7. 14. 21. 11. 21. 32. 総計. 15 10. 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 15]ワークライフバランスの重視 当該設問は回答者が私生活の充実のために時間を割く意思があるか否かによって、「仕 事以外」の充実を重視する志向性を探る意図で設計した設問である。 「志向性あり」と判 定するケースは家庭生活への参画の意思を想起する場合(例:「家事分担をしているの で、あたり前」 )であったり、職場の選択に私生活の事情が強く影響していると思われる 場合(例: 「転勤を伴う正社員にはならない」 )である。よって、具体的な行動を伴わない 回答(例: 「家庭は大事」 「世間なみで十分」 )は「志向性なし」として分類した。結果は 以下の通りであり(表 4-15) 、男女ともに「志向性無し」が多数を占めた。ここで注目し たいのは、一般的には職業よりライフイベントを重視すると考えられる女性の方が「志向 性あり」の回答頻度が低かったことである(男性は 7 人(33%)女性は 2 人(18%)) 。 表 4-15:設問 15 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. ワークライフバランスの志向性. 女. 3. 8. 11. 男. 7. 14. 21. 10. 22. 32. 総計. 15 10 5. 0 女. 男. 志向性あり. 26. 志向性なし.

(31) ・ [設問 16]働き方改革のマネジメント手法(時間で管理)への意見 当該設問は、始業・就業のタイムマネジメントを実施することによる労働時間の減少を 目論む多くの企業で採用され始めている労務施策に対するポジティブな意見を有するか否 かで、 「仕事以外の時間」を確保できることを肯定する志向性を確認することを意図して 設計した設問である。結果は以下の通りであり(表 4-16) 、男性の場合は志向性無しが多 数派を占めたものの、女性の場合は同程度(志向性有り:5 人、同無し:6 人)であり、 傾向差が出た。 表 4-16:設問 16 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 働き方改革への共感性. 女. 5. 6. 11. 15. 男. 7. 14. 21. 10. 12. 20. 32. 総計. 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ■保障に関する設問(全 3 問) <該当する設問> ・ [設問 8]現在在籍する組織に定年まで勤めたいか ・ [設問 13]現在在籍する組織を辞めずに留まる理由 ・ [設問 18]AI 革命後の「会社」に対する雇用保障的な期待度 Derr(1986)の「キャリア・コンセプト」によれば「保障」とは、「長期的な安定性を 指向(長期雇用を好む傾向)」という定義であった。当該設問でも、その観点から志向性 の有無を確認した。 ・ [設問8]現在在籍する組織に定年まで勤めたいか(終身雇用への志向) 当該設問は、いわゆる日本的経営の特徴である「終身雇用」を志向性として有するか否 かを確認する趣旨で設計した。 「志向性有り」と判断する場合は、 「定年まで勤めたい」と いった定着の強い意思があるものに加え、「経営環境が変わらなければ長期的に勤めた い」といった条件付きの場合も含めた。逆に「志向性無し」としたものは、 「全くそうは 27.

(32) 思わない。会社にキャリアを預けたくない」といったものに加え、「わからない。イメー ジできない」といったものも(定着意思がない)という観点で分類した。結果は以下の通 りであり(表 4-17) 、男性の場合は「志向性有り」が多数を占めたのに対し、女性の場合 は逆の結果( 「志向性無し」が多数)となった。。 表 4-17:設問 8 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 終身雇用への志向性. 女. 3. 8. 11. 15. 男. 14. 7. 21. 10. 総計. 17. 15. 32. 5 0. 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 13]現在在籍する組織を辞めない理由 当該設問では、現在所属する企業に(辞めずに)在籍する理由として、現時点での雇用 条件や職場環境への満足感といった一時的な状況要因に加えて、長期的な在籍を前提とす る発言(例: 「 (条件云々だけでなく)所属組織の社会的なステータスも含めて気に入って いる」 「父親も定年まで同一組織にいたので自分もそうしたい」)がある場合は、(長期在 籍の) 「志向性あり」として分類した。結果は以下の通りであり(表 4-18) 、男性の場合は 志向性の有無が同程度であったのに対し、女性の場合は「志向性なし」が多数を占めた。 表 4-18:設問 13 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 現在の勤務先に長期的に在籍したい志向性. 女. 4. 7. 11. 15. 男. 10. 11. 21. 10. 総計. 14. 18. 32. 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 18]AI 革命後の「会社」に対する雇用保障的な期待度 AI を始めとする ICT の進展は単純労働の自動化のみならず、雇用形態の変化を提起す るとも言われている(みずほ情報総研,2016)。その場合の会社と個人の関係は終身雇用を 前提とした「雇用関係」ではなく、あくまでもジョブベースの「働き手」と「企業」のマ ッチングに移行する可能性も指摘される(図 4-1) 。 28.

(33) 図 4-1:雇用関係によらない働き方:みずほ情報総研(2016)より引用. 当該設問では、上記のような議論が提起する「会社と社員の関係性の変化」が予兆され る近未来のビジネス社会に置いても「長期雇用を前提とする関係性」を所属する組織に期 待するか否かを以って、 「長期的な雇用関係の継続を願う志向性」を確認する意図で設計 した設問である(志向性ありの回答例: 「会社は雇用を守ってほしい」等) 。結果は以下の 通りであり(表 4-19) 、男女ともに「志向性なし」が多数派であり、 「志向性あり」の発生 頻度も(男性 36%、女性 38%)も同程度であった。 表 4-19:設問 18 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 勤務先による雇用保障への欲求. 女. 4. 7. 11. 男. 8. 13. 21. 12. 20. 32. 総計. 15. 10 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ■挑戦に関する設問(全2問) <該当する設問> ・ [設問 7]転職への考え方(キャリアチェンジを肯定的に捉えているか) ・ [設問 14]高評価されるが高負荷なジョブオファーを積極的に受容するか. 29.

(34) Derr(1986)の「キャリア・コンセプト」によれば「挑戦」とは、「多少リスクを伴っ ても自分が夢中になることができるような仕事に従事できることを好む性向」という定義 であった。当該設問でも、リスクを伴ってでも自己のキャリア発達の機会を積極的に受け 入れる志向性があるか否かを確認する趣旨で分析した。 ・ [設問 7]転職への考え方(キャリアチェンジを肯定的に捉えているか) 当該設問は、同一組織内での長期雇用を前提としてた日本的経営モデル、それもホワイ トカラーのインセンティブシステムとして長年機能してきた「同一組織内における昇進」 が多様化しつつあると指摘されるなか(矢代,2011)、調査対象者の意識がどの程度「多様 化」しているのか(またはしていないのか)をストレートに確認する趣旨で設定した。 「志向性あり」を判定する基準としては、「積極的に転職を活用したい」「ネガティブに考 えていない」といった直接的な発言内容に加え、 「やりたいことが見つかり現在いる会社 で実現できないと思ったら転職する」といった前提付きのものも、キャリア開発の手段と して転職行動を肯定的に捉えているとして「志向性あり」に分類した。結果は以下の通り であり、男性と女性で傾向差が出た。即ち、男性は「志向性あり」が多数をしめた一方、 女性は傾向差が殆どないというものである(表 4-20) 。これは、日本の職場風土は男性優 位である(石塚,2017)といった解説もあることから、女性の方が転職行動については冷め た見方( 「どこに行っても同じようにキャリアアップの可能性は低い」 )をしている可能性 もあろう。 表 4-20:設問 7 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 転職を活用したキャリア開発の志向性. 女. 5. 6. 11. 男. 12. 9. 21. 総計. 17. 15. 32. 15 10 5 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 14]高評価されるが高負荷なジョブオファーを積極的に受容するか 当該設問は、高負荷(予見される事態としては長時間残業や、休日残業など「バラン ス」概念とコンフリクトがおきる働き方の発生)だが成功時には社内で大きく評価される であろうジョブオファー(例えば新製品の開発プロジェクト)を受け入れるか否かを聞い ている。家庭生活をはじめとしたプライベートを侵食される可能性はあるが、キャリア開 30.

(35) 発上プラスになる可能性が高い機会をどう考えているか、を確認することで「挑戦」に対 する志向性を確認しようとした。「志向性あり」の判定基準としては、 「ぜひやりたい」 「前のめりで参加したい」といった直接的表現のものに加え、「断る理由がない」といっ た表現、更には条件付きの参加意思(例「人間関係で疲弊するのは嫌だが、作業量的な負 荷があがるのは(収入が増える前提で)受け入れ可能」 )といったもの迄を含めた。結果 は以下の通りである。 (わゆる日本的経営の特徴である「終身雇用」を志向性として有す るか否かを確認する趣旨で設計した。結果は以下の通りである(表 4-21) 。男女で大きな 傾向差が出た。男性は圧倒的多数が「志向性あり」となったが、女性は「志向性あり」と 「無し」で大きな差が出なかった。前向きに考えられない理由としては、 「体力がない」 「家族との生活が第一だから」といったもので、キャリア開発上の好機に対しても積極的 になり切れない女性の声が垣間見れる。 表 4-21:設問 14 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 高負荷だが職場に評価されるジョブオファーへの積極性. 女. 6. 5. 11. 30. 男. 20. 1. 21. 20. 総計. 26. 6. 32. 10 0 女. 男 志向性あり. 志向性なし. ■自由に関する設問(全1問) <該当する設問> ・ [設問 17]フリーランス・企業への興味(独立志向をどの程度持っているか) Derr(1986)の「キャリア・コンセプト」によれば自由とは、 「規則や規範を好まず、 自律性が尊重され、管理が厳しくないこと、結果に対する責任を負っていることを指向 (昇進は主目的としていない) 」ということである。日本のホワイトカラー層は、他の先 進諸国と比較した場合に起業への志向性が低いと指摘(東洋経済 2016/10/26 号)される ことが多く、また、起業に関する国際比較調査結果を踏まえても(図 4-2) 、 「上昇」に代 表される組織内でのキャリア開発と比較した場合に異なる志向を持つことを想定した。. 31.

(36) 図 4-2:起業に無関心な人の割合:2017 年中小企業白書より引用) ・ [設問 17]フリーランス・企業への興味(独立志向をどの程度持っているか) 当該設問の質問原文は、 「将来的な展望(希望)について。例えば、起業したり、フリ ーランスになって自分のやりたいことを徹底的に追及してみたり、といった気持ち(ぼん やりとした展望でも結構)はありますか?」である。「将来的な展望について」と但し書 きを付けた理由は、現在の所属企業を辞めることを過度に意識することなく、気軽に答え てもらうことで、志向性を導き出せないかと考えた為である。 結果は以下の通り(表 4-22)である。 「志向性あり」の判断基準としては、 「ぜひやりた い」 「自分の会社を持ちたい」といった直接的な発言内容と、 「(収入リスクが心配なの で)副業でやってみたい」というような部分的な独立志向や「ワークライフバランスが保 たれるならば」といった前提条件付きのものまでを含めた。男女ともに「志向性なし」と の回答結果が大勢を占めたが、女性は圧倒的多数が「志向性なし」である一方、男性は 40%強(9 人/21 人(全体) )が「志向性あり」となっており、大きな傾向差が出た。 表 4-22:設問 17 に関する男女別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計. 起業やフリーランスへの志向性. 女. 1. 10. 11. 男. 9. 12. 21. 10. 22. 32. 総計. 15 10 5 0 女. 男 志向性あり. 32. 志向性なし.

(37) ■キャリアオリエンテーションの性別傾向(概観) 以上、性別で集計したキャリアオリエンテーションの志向性に関する集計結果を概観し てきた。上記結果をまとめると以下の通りである(表 4-23) 。 <表の見方> ・ 「強」は「傾向有り」が回答多数。 「弱」は「傾向無し」が多数。 ・白抜き(例:設問 16(女性) )は、「傾向有り」と「無し」の差が±1以内 表 4-23:キャリアオリエンテーションに関する調査概観(男女別) カテゴ リー 区分. バランス. 上昇 N. 保障. 設問4. 5. 6. 9. 10. 11. 12. 15. 16. 8. 弱. 強. 性別. 男. 21. 強. 強. 強. 強. 弱. 弱. 弱. 弱. 性別. 女. 11. 弱. 弱. 弱. 強. 弱. 弱. 弱. 弱. 弱. 13. 挑戦. 自由. 18. 7. 14. 17. 弱. 強. 強. 弱. 弱. 弱. 弱. 弱. 表 4-23 をみれば、男性と女性で大きな傾向差がでるキャリアオリエンテーション概念 は「上昇」と「挑戦」であり、 「保障」に関しても相対的に回答傾向が異なることが見て とれる。また、調査前の想定では女性の方が「バランス」を重視する結果が出ると考えて いたが、大きな傾向差は出ていない。第2章第二節で紹介した武田(2016)の説によれ ば、女性のキャリア意識の分類として「バリキャリ(キャリア重視の働き方を選択) 」と 「ゆるキャリ(ライフ重視) 」と「フルキャリ(キャリア/ライフの両立) 」があるとされ るが、今回の調査結果からは何れにも該当しない、いわばキャリアに関して低関心なディ スエンゲージな働き方を志向する集団としての女性像が浮かび上がる。. ⅱ)雇用形態(正規/非正規) 以下、男女別と同様にキャリアオリエンテーションカテゴリー別の回答結果を概観して いく。尚、回答結果の分類(志向性あり/無し)の分類基準は同じであるため、集計結果を 中心に記述を進める。. ■上昇に関する設問(全3問) ・ [設問 4]志向するライフプラン(家、子供の教育他)について 結果は以下の通りであり(表 4-24) 。正規/非正規で傾向差のある結果となっている。 即ち、正規は志向性がある回答が多数派(但し、志向性無しも一定数存在)であるのに対し、 非正規は殆どの回答者が[志向性無し]に分類される回答結果であった。. 33.

(38) 表 4-24:設問 4 に関する正規/非正規別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計 正規. 11. 26. 20. 1. 5. 6. 15. 16. 16. 32. 10. 非正規 総計. (上昇2)志向するライフプラン(上昇欲求). 15. 5 0 正規. 非正規 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問5]ライフプランへのこだわりの強さについて 結果は(表 4-25)の通りである。正規雇用者は[設問 4]と同様の回答傾向を示したのに対 し。非正規雇用者は(志向性あり)と(志向性無し)が同数となっている。. 表 4-25:設問 5 に関する正規/非正規別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計 正規 非正規 総計. 15. 11. ライフプランの達成要求の強さ. 26. 20. 3. 3. 6. 15. 18. 14. 32. 10 5 0. 正規. 非正規 志向性あり. 志向性なし. ・ [設問 6]志向するキャリアプラン(特に組織内での昇進の具体的なイメージ) 結果は以下の通りである(表 4-26)。正規に関しては[設問4] [設問5]と同様の傾向 が認められた一方、非正規は全員が(志向性無し)という結果となった。これは非正規雇用 者に関しては「組織の中での昇進」というキャリアアップに関して、先行例も含めてイメー ジが持ちにくい可能性もあろう。 表 4-26:設問 6 に関する正規/非正規別の傾向<表及びグラフ> 志向性あり志向性なし総計 正規. 15. 非正規 総計. 15. 志向するキャリアプラン(組織内昇進欲求). 11. 26. 20. 6. 6. 15. 17. 32. 10 5. 0 正規. 非正規 志向性あり. 34. 志向性なし.

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