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jido piano no kaihatsu ni kansuru kenkyu

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(2)

自動ピアノの開発に開する研究

1996年3月

(3)

- − ・ − − 1 1 ︵/一  一‘﹁﹂ 7 9 12 12 14 14 19 21 23 23 23 27 28 31 第1 ¥7一 肩・ 目  序  論 1.1 初期の自動ピアノ 1.2 最近の自動ピアノ 1.3 ピアノアクションの運動に関する従来の研究 1.4 本研究の位置付けおよび目的 1.5 本研究の概要 章 ピアノ打鍵装置・ペダル駆動装置の設計・開発  2.1 打能装置    2.1.1 打鍵装置の取付位置    2.1.2 機構設計    2.1.3 非接触位置計測機構    2.1.4 制御方法  2.2 打能装置の性能試験    2.2.1 打鍵装置の打能方法    2.2.2 ピアノアクションの計測および性能評価  2.3 同一能の反復打能  2.4 ペダル駆動装置  2.5 本章のまとめ 第3章 弱音の打鍵に関する最適な駆動波形の設計    一ハンマが弦に達するまでのピアノアクションの挙動の解析− 33    3.1 ピアノアクションの力学モデル       34     3よ1 基礎運動方程式       36    3.2 定速度駆動      39

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 3.2.1 領域 I  3.2.2 領域 n  3.2.3 領域 m  3.2.4 解析結果の考察 3.3 駆動速度を切り換える方法  3.3.1 領域 I  3.3.2 領域 nおよびⅢ  3.3.3 解析結果の考察 3.4 ステップ人力 3.5 定加速度駆動  3.5.1 領域 I  3.5.2 領域 n  3.5.3 解析結果の考察 3.6 本章のまとめ 第4章 同一鍵の反復打鍵に関する最適な駆動波形の設計     一打弦前・後のピアノアクションの挙動の解析−    4.1 ピアノアクションのハンマ打弦前・後の挙動     4.1.1 区間A     4.1.2 区間B     4.1.3 区間C     4.1.4 区間D     4.1.5 結果    4.2 打弦遅れ時間の短縮法     4.2.1 初期変位I     4.2.2 初期変位Ⅱ     4.2.3 初期変位Ⅲ     4.2.4 解析結果の考察 9  0 2  4 5 5  6 6 8 8  8 0 1  q︶ 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 5 5 5 4  5  6 6 7  9  0 0 2  4  5 g︶ 5 5  5 5 5 5  6 6 6  6  6  β○

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4.3 鍵復帰時間の短縮法 4.4 反復打鍵 4.5 高速反復打鍵 4.6 本章のまとめ 第5章 演奏システムの設計・開発       一楽譜情報処理−    5.1 コンピュータシステムおよび情報処理    5.2 音の表現法     5.2.1 音の発音時刻     5.2.2 音の強弱     5.2.3 音の長さ    5.3 データベース     5.3.1 データベースの構造       5.3.1.1 S1∼S3    5.3』.2 U    5.3.1.3 LI∼L3    5.3.1.4 RI∼R3    5.3.1.5 VO 5.4 駆動波形の作成方法 5.5 実験 5.6 本章のまとめ

第6章 結  論

参 考 文 献 謝     辞 本論文に関連した研究業績 Qり q︶ 0  1 Q  Q rx  rs。 3 3  6 6  6 只︶ 7  7  7  7  7 7 ︵X︶︵X:︶ O 0  1︲ r  r   N  LDZ︶ 7  7  8 8 8 8  8  8  8  只︾ 87 1 3 94

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96  99 100 104 108 付 付 付 付 付 録 録 録 録 録 A C D E

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第1章

Ξ心i洞  本研究では,高性能のピアノ自動演奏装置を開発するために行った研究:打鍵装置, ペダル駆動装置の設計・開発,制御対象であるピアノアクションの機構(以下,ピアノ アクション)の動的な特性の解析に基づく弱皆および同一鍵の反復打鍵に関する最適な 駆動波形の設計,コンピュータシステムとその情報処理について論じている.  本章では,自動ピアノの歴史,および,近年に製作された自動ピアノに関する問題点 について述べている.さらに,その問題を解決するために,ピアノアクションの動的性 質を知ることが重要となり,これまでに行われたピアノアクションの運動に関する研究 の報告について概観する.そして,本研究の位置付けおよび目的を明確にし,本論文の 概要について論じる.

1.1 初期の自動ピアノ

 ピアノは鍵盤を介して演奏される.鍵の動きを再現すれば,名演奏家の演奏が再現で き,名演奏家の演奏を後匪に残すことも可能となる.あるいは,もっと優れた演奏の可 能性も考えられる.  従来の自動ピアノ)3」は,19世紀中ごろに製作されだBarre1-opereated"方式のバレル ピアノに端を発し,19世紀終りごろにフランス人によって考案されだRo11- operated"方 式のロールピアノが製作された.  バレルピアノは,オルゴールのシリンダを大きくしたものを用いることからバレルと 呼ばれる.ほとんどのものが,ピアノアクションを介さずにシリンダの表面のピンでハ ンマを直接操作している.初期のバレルピアノは,ハンドルを用いてバレルを手で回転 させ,装置を駆動していた.  ロールピアノは,紙ロールを回転させ,孔を通る空気(負圧)でハンマを駆動し,打 弦させる.初期のロールピアノは,足でふいご式のペダルを踏んで,負託を発生させ,

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り よ スーパー 装置を駆勤していた 勤ピアノとなった. その後,負圧の発生を電動とし,それまでの半白動から完全な白 このロールピアノは大きく2つの形式に分ける ことができ,1つはピ アノプレイヤ(Piano Player)あるいはプレイヤーピアノ(Player Piano)と呼ばれ,

1つは, ピアノ らノ 心︶ リプ゜デューシングピアノ(Reproducing Piano)あるいはエクスプレッション (Expression Piano)と呼ばれる. ピアノプレイヤあるいはプレイヤーピアノの場合,ロールや負圧装置等の機器をピア ノ本体とは別にしているものをピアノプレイヤ,ピアノ本体内に組み込んでいるものを プレイヤーピアノと呼んでいる バレルピアノ,プレイヤーピアノとも,音の長さは楽 符通りで,音の強弱もなく,極めて機械的な演奏であった.その後,種々の曲のデータ の記録・再生方法が考案され,プレイヤーピアノに取り付けられたのが,リプロデュー シングピアノである.リプロデューシングピアノは をつけることが可能となり 1910年頃から製作され, ベダリングの性能が向上し,記録・再生の性 向上した.一方,録音・再生の音響機器14 j は,現在の技術レベルでも 音に強弱 能も飛躍的に 高級な音響機 器を用いたとしてもスピーカから再生される音は,実際のピアノの音には及ばない.ま して当時は,T.A.Edisonが1877年に発明したろう管式蓄音機あるいは1887年1 が考案した円盤式蓄音機の時代で,再生音は貧弱なもので,

の音には遠く及ばず,グリーク(Edvard Hargerup Grieg)

こE.Berliner  リプロデューシングピアノ ドビュッシー(Claud Achilly Debussy),ラフマニノフ(SergyvassilievichRakhmaninov)など当時の数多くの著名な 演奏家や作曲家たちが競って自らの演奏をリプロデデューシングピアノで記録した. 記 録された数多くのピアノロールが残されており,現在でも市販されている.  リプロデューシングピアノの代表的なものは,アメリカンピアノ社のAMPIC0,エオ リアン社のDuo-Art,ヅェルテーミニ 石 印 己録り写生方法を用いており,特に 界恐慌が起こり ョン社のWelte-Mignonがあり Welte-Mignonが優れていた. このどれもが独自の しかし,1930年代に世 高価であったこれらの自動ピアノは,その後,製作されなくなった

1.2 最近の自動ピアノ

半世紀経過した近年において コンピュータ 情報処理技術の向上に

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− . ' 』 一 一 ' 図1.1 ヤマハのピアノプレヤの構造概略 スコープ礼のピアノコーダ,ヤマハ行のピアノプレイヤ等の自動ピアノが数行によって 製作された.  ピアノコーダは,記録媒体にカセットテープ,打鍵装置には電磁ソレノイドを用い, 鍵の下に取り付けられたキースイッチによって,音の発音時刻や持続時間を記録する方 式のものである.音の人きさは,ピアノ内部に取り付けたマイクロフォンによって,デ ータを記録する.回礼のソフトを再生した場合はかなり良好な演奏が可能であったが, ピアニストの演奏を記録・再生してみると,良好とは言い難いものであり,現在では生 産されていない.  ヤマハのピアノプレイヤ(図1.1参照)は,打鍵装置は電磁ソレノイドを用いて鍵の 後端を上向きに駆動し,記録媒体にはプロッピィーディスクを用いている.演奏を記録 するために,フォトインタラプタ式の光センサを用い,光をシャッタで遮断することで 記録が行われる.鍵の場合,センサユニットが能の下側に取り付けてあり,センサのオ ンーオフから鍵の番号とその音の持続時間が検出される.ハンマの場合,センサユニッ トがハンマのシャンクの回転支点に近い所に取り付けてある.このセンサユニットは, 打弦する数ミリ手前と打弦直前に相当する位置に2個の素子が取り付けられ,シャッタ が2点の光を遮断する2つのパルスの時間間隔からハンマの速度を検出し,後者のパルス から打弦時刻を検出している.  ダンパペダルとシフティングペダルの場合,光電式の光センサを用い,ベダルの後端

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にある突き上げ棒に取り付けられているフィルム状のテンプレートが発光素子と光琳電 素子の間を移動することで記録が行われ,光量の変化からペダルの踏み込み深さとその ときの時刻が検出される.ソステヌートベダルの場合,フォトインタラプタ式の光セン サを用い,ペダルの後端にある突き上げ棒に取り付けられているシャッタで光を遮断す ることで,使用した時刻と持続時間を検出している.  検出されたデータは,最終的にMIDI(Musical lnstrumentDigitallnterface)規格に準じ たデータ形式として記録される.この記録装置は,ピアノニストの演奏を瞬時にMIDI データとして記録・保存することができ,極めて優れたものである.本研究でも,演奏 データの取得の際には,ヤマハのピアノプレイヤを用いて行っている.  再生はリプロデューシングピアノと比較してけるかに向上しているが,電磁ソレノイ ドを用い,オープンループによる駆動であるため,弱音の再生や同一能の反復打能の点 で短所が見られ¨≒ ピアニストの演奏と比べる**2と十分な能力とは言い難い.しかし, ピアノプレイヤは極めて優れた装置であると言える.  早稲田犬学機械工学科山根研究室では,1973年より自動ピアノための打鍵装置の開発 を行い,1983,1984年に,東らによって開発されたアクチュエータは,塚本,中里らに より打鍵装置として有効であることが示された15白6≒ さらに,飯田らによって,サー ボ系などの改良が行われた「7」.1984年に,中里らによって,メインとスレーブによる2 階層構造のコンピュータシステムの演奏システムが提案され,1987年に,五味らによっ て具体的なシステム「8」が開発され,打鍵装置12鍵と12鍵分の演奏システムにより演奏 を行った.1989年に,村瀬らは打鍵装置32鍵と32鍵分の演奏システムに拡張するために, それにともなう情報処理などの開発を行い,ショパンのワルヅGrande valseBrinante" にある繰り返し周期1/8 sec 程度で演奏が行われる8分音符の4達符の演奏を可能とし, 曲の演奏を行った. * * 2 市販のソフトでテンペストの冒頭部分(付録A参照)を再生すると,同一鍵の繰り返し周期が 6Hz程度でも,音をρにすると安定な再生が困難であるため,強い音で記録されている. ピアニストによると,再生した音は音のダイナミックレンジが狭くなってしまうと評価されて いる.

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Damper

Cushion cloth Backcheck Capslanscrew

図1.2 グランド型のピアノアクション 1.3 ピアノアクションの運動に関する従来の研究  ピアノアクション¨3は,1709年にピアノアクションの原型となるものがイタリアの クリストフォリ(Bartolomeo Cristofori)によって製作され,1900年頃に現在のような機 構となり,その後も改良が行われ,現在の機構に至っている.ピアノアクションは,図 1.2に示すような複雑な機構で,その機構部品の素材には,木材,皮,フェルトなどが 使用されている.  ピアノアクションに関するこれまでの研究の報告は極めて数少ないが,本節では幾つ かの研究報告を概説する.

 WiUiam Braid White l9」は,1930年に,熟練したピアニストに打鍵させたときに発生す る音の音色に関する研究の報告を行い,音の強さが一定であるならば音色を変えること ができないことを示した.

 Harry C.Hart。MelvUle W. Fullerand Walter S.Lusbyらいo」は,1934年に,ハンマの速度 に着目して,ピアノの音色に関する研究を行い,その報告を行っている.彼らは,一端 を支持した梁とバネの組み合わせによる機械式の打鍵装置で鍵を打撃し,その際のハン マの運動を計測し,ハンマの速度を求めている.この打鍵装置とピアニストの打鍵の比 較を行い,Whiteと同様な結果を得ている.また,彼らは,反復打鍵の実験を機械式の 打鍵装置とピアニストの両者で行い,両者の弦の振動波形を比較し,音の強さで音色が **3 アップライト型のピアノアクションは,グランド型と比べ性能がおとるので研究の対象とし     なかった.

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決るため,ピアニストは反復打鍵でも音色を制御できないことを示した.

Anders Askenfelt and Erik v.Janssonらに1 ̄1 2j は,1990年,1991年に ピアノアクショ

ンの運動について,極めて興味深い2つの研究の報告を行っている.  第1報[1 1j では,振り子(長さ0.8m)の先端をラバーで覆い,振り子に取り付けられ た重り(0,4kg)を回転中心からの任意の位置に設定し,鍵の上方から落下させる打鍵 装置を用いて打撃した際のピアノアクションの各部品同士の接触時刻,接触間隔の計測 を行っている.ピアノアクションの動作は,音の強弱,ピアノアクションのハンマと弦 の距離やエスケープメント**4時の弦までの距離の変化に影響することを示している. ハンマと弦の接触時刻と鍵が鍵底に到達する時刻の関係は,音の強弱で変化し,鍵底に 到達する時刻をゼロとして表すとハンマと弦の接触時刻は,音が強い程,鍵底に到達す る時刻より遅く 音が弱 い 程 鍵底に到達する時刻より速いことを示し,熟練したピア ニストはこのような状態を良く知っているとも述べている さらに,ハンマと弦の接触 時間は,低音では約4ms,高音では約0.5msであるが,低音と高音域の基本周期から比 較すると,低音域の接触時間は基本周期より短く,高音域の接触時間は基本周期より長 り な く これは弦の振動エネルギに影響することを示した. 第2報〔12〕では,音の強弱やタッチ(打鍵動作)を変えた場合の鍵およびハンマの運 動の計測を行っている.実験では,鍵の速度を0.1∼0.6m/sで与え,そのときに観測し たハンマの最終速度は1∼5m/sであった.打鍵は,レガートとスタッカートの2種類の場 合について観測し スタッカートよりレガートの方が鍵の速度の増加がスムースである としている.このような鍵およびハンマの計測で,ジャックテールがレギュレーティン グボタンに到達した瞬間に,ハンマは他の機構から離脱し,弦まで自走することを示し ている.また,ハンマローラ部分に強制振動を与えた場合のモーダル解析を行い, 50Hzの低い周波数では,ハンマは自出端に集中質量を供なう棒の振動のようにふるま い,200∼400Hzでは,シャンクのたわみやハンマヘッドの大きな動きによるモードと そのモードよりさらに高いモードの振動(ripple)がシャンク部分に起こっていること を観察している.”ripple”は,ハンマが打弦直前に自走しているとき影響しているこ とを観測したと述べられているが,この報告のハンマの変位や速度からは確認できない 向  へJ 烏卓白1は 1983年に ピアノ自動演奏装置の性能向上をはがるために ソレノイ ドの打鍵装置を用いて鍵の運動を計測し,鍵の動きから考察したハンマの運動について **4 エスケープメントとは,ハンマヘッドが弦の数ミリ手前に到達したとき,ジャックがハン7口     −ラから外れることを言う.

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報告を行っている.その結果として,打鍵では鍵の戻りをどのような位置で保持するか が重要であることを示し,打鍵装置は位置制御の機能が必要であることを思索している  佐伯,斎藤,桜井ら)jは,1985年に,円筒状に巻いたコイルをシャフトに取り付け シャフトの先端で鍵を駆動するリニアモータ方式の打鍵装置を用い,鍵の運動とシャフ トの先端に取り付けているセンサからの反力を計測し,タッチの定量化および考察につ いて報告を行っている.ただし,この研究ではピアノアクションの模型を用いて実験を 行っている.結果として,ピアノアクションの動的特性では,ハンマの動きが鍵からの 反力に大きく影響していることを示している.  以h,ピアノアクションの運動に関する研究について概観してきたが,これらの研究 で共通していることは,音の強弱はff, f, p, ppの各段階,打能は通常の打能,スタッ カート,レガートとしたときのピアノアクションの運動の観測を行い,主にある部分的 な評価の結果を報告しており,ピアノアクションの運動の定量的な動作解析はほとんど 示されていない.さらに,ピアノアクションの力学的な解析,弱音や回一能の反復打能 に関する検討は全く行われていない. 1.4 本研究の位置付けおよび目的  ピアノ演奏で重要となるのは,発生音圧の大きなダイナミックレンジ,音の強弱,発 音時刻,音の長さ,同一能の反復打能,また,ペダルの操作であり,これらの技法なく しては,芸術性の高い演奏は望めず,自動ピアノにも当然これらの技法は必要となる. 先に述べた自動ピアノでは,ダイナミックレンジ,音の強弱の解像度,特に,弱音の演 奏,回一能の反投打能は十分な性能はもっておらず,自動ピアノに関する重要な課題で あると考える.  このような問題を解決するために,ピアノアクションの動的性質を知ることが必要と なったが,従来のピアノアクションの運動に関する研究を総括すると,以下のようなこ とが言える. ・ピアノの研究のアプローチが/’ピアニストはタッチでピアノの音色を変えることが

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できる”という主張を否定することから始ま く 主にある り 研究報告の内容はその影響が極めて強 部分的な評価の結果やピアニストとの比較結果などを報告しており ノアクションの運動の定量的な評価の報告に乏しり ピア 研究に用いられている打鍵装置は,機械式のハンマやオープンループによる電磁式装 置で,打鍵強度の解像度が低く る. 削 機械式の打鍵装置では打鍵の再現性に問題があ ピアノアクションは多くの部品を使用した複雑な機構であり 材,皮,フェルトが用いられ,運動の解析を困難にしており ,機構部品の素材には木 ピアノアクションの運動 に関する解析は行われていない.  以上に示すような点でト分な報告であるとは言い難く,さらに,現在のピアノアクシ ョンの基となるものが製作されてから約300年の間(現在のような形式となってからは 約100年),ピアノアクションの動的性質が明らかにされなかったと言える.  このような点から,本研究では,まず,高性能な打建装置およびペダル駆動装置の設 計・開発を行う.打鍵装置の場合,可動線輪型のアクチュエータで設計し,ピアニスト よりも十分な速度および力が得られるアクチュエータの開発を行い,そのサーボ系は, 従来の自動ピアノあるいは研究で用いられているようなオープンループにより打鍵装置 を制御するのではなく,ロータの位置を変位計で計測し,その信号を位置・速度帰還に 用いてロータの指先(打建部)を入力波形に従わせる追従制御とした.一方,制御対象 であるピアノアクションの動的な性質を知るために,その打建装置を用いて打建した際 のピアノアクションの運動の計測を行い,ピアノアクションの運動について調べ,強音 から弱音までの打建強度に対する発生音圧やハンマの打弦速度(以下,打弦速度)など の関係を定量的あるいは定性的に評価を行い,さらに,ピアノアクションの挙動の解析 を行うことにより,ピアノアクションの挙動を明らかにし,ピアノアクションに最も適 した駆動波形を決定する.そして,安定な弱音の打建を可能として,幅広いダイナミッ クレンジを有し,また,同一能の反復打建を行うことができる演奏技法を確立して,ピ アノ演奏曲から最適な駆動波形を自動作成できる栗諸情報処理や装置の操作性を考慮し た演奏システムの開発を行い ︲眼︲ 祭広いダイナ ミッ クレンジ,解像度の高い 音の強弱, さ らに,安定な弱音の演奏や同一能の高速反復打能を行うことができる優れた演奏技法を

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n」‘能とする自動ピアノの開発を目的とした.  自動ピアノでは,装置の優れた性能は当然必要であるが,吋生したときの音のクオリ ティはピアノ自体の性能に大きく彩管するため,ピアノはグランド型(ヤマハ製C7) を用いている. 1.5 本研究の概要  本論文は6章より構成されている.  第1章は序論である.まず,従来の自動ピアノの現状について述べ,次に,制御対象 であるピアノアクションの運動に関する従来の研究を概説し,本研究の位置付けおよび 目的を明確にしている.  第2章では,自動ピアノのための打鍵装置,ペダル駆動装置の設計・開発および装置 の性能評価について論じている.打鍵装置は鍵の幅以下の厚さに製作した88合の打鍵装 置を鍵盤の上に並べる方式のもので,ロータの素材にガラスエポキシ積層板,線輪にア ルミリボン線を用いて軽量化を図り,磁気[出路に高い磁束の得られる希玉顔コバルト磁 石を用いた可動線輪型のアクチュエータを開発した.サーボ系は,ロータの位置を渦電 流式のセンサで計測して位置帰還を構成し,任意の入力波形に追従して指先(ロータの 打鍵する所)が動く追従制御としている.打鍵装置の性能はトルク定数1.33Nm/A,指 先の打鍵点で推力定数13.3N/A,周波数応答60Hzで,極めて高い制御剛性が得られ,ピ アニストが力一杯鍵を打ったときよりも十分に大きな力および速度を発生し,制御性の 高い駆動を可能とした.打鍵装置の性能試験では,打鍵装着の打鍵方法やピアノアクシ ョンの運動の計測方法について述べ,打鍵速度と打弦速度および発生背任に関する定量 的な評価を行い,打鍵装置の性能評価を行っている.  ペダル駆動装置は,慣性モーメントが小さく,トルク定数の大きいコアレス直流モー タを用い,負荷の大きいペダルを踏み込んだ状態でモータに電流を流さず,モータの負 荷を軽減できるように,ウォームギヤとウォームホイールによるセルフロック機根を川 いたアクチュエータを開発した.サーボ系は装置のペダル操作部の位置を計測し,打鍵 装置と同様に追従制御を行い,シフトティングベダルよりも高速な運動を必要とするダ

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ンパベダルを駆動した際,十分なら答速度が得られた.  第3章では,弱音の安定な演奏を行うための駆動波形を決定するために,ハンマが弦 に達するまでのピアノアクションの挙動の折折について論じている.弱音の演奏はピア ニストにとっても難しい技法で,自動ピアノの場合,重要な課題である.この課題を解 決するために,提案したピアノアクションの単純な力学モデルを用いた動作解析を行う とともに,開発した打鍵装置で鍵を駆動した際のハンマの運動の計測を行った.動作解 析は種々の駆動波形によるピアノアクションの運動について行い,実測値と解析値はど の駆動波形においても極めて良く一致し,提案した力学モデルが有用であることを示し さらに,各駆動波形に関するピアノアクションの運動を明かにしている.このような解 析の結果から,固有振動の乍周期経過した時点で駆動速度を切り換える方法が最も優れ ているという結論を得て,ダイナミックレンジが広く 解像度の高い打見を可能にし 安定な弱音の打鍵を可能とする最適な駆動波形を決定している 第4章では,間一髪の反復打髪の駆動波形を決定するため,ハンマの打弦前後のピア ノアクションの挙動の解析について論じている.│司一鍵の反復打鍵は,繰り返し周期の 犬きさによって,再打鍵 復打鍵ではピアニストに 再打鍵,反復打錠,高速反復打鍵に分けることができ,特Q 高遠反 とっても極めて困難な技法で,自動ピアノの場合,重要な課題 である.本章では,まず,打鍵したときのピアノアクションの運動を(1)ハンマが打弦 するまで,(2)ハンマが打弦後,弦と接触し放れるまで,(3)ハンマがバックチェックに 固定されるまで,(4)鍵を放して鍵およびハンマが静1ドするまでの4つに分けて調べ,定 性的あるいは定量的な動作解析を行い,(1)∼(4)の時間間隔は,反復打鍵に大きく影響 していることを示した.そこで,(1)と(4)についての時間短縮法について検討し,鍵を 沈ませた位置から打鍵を行えば,(1)と(4)の時間間隔を短くでき,特に の解像度が高くなり,弱音の再生に有効であることがわかった.また (1)では, 音 9g 巾の場合のピ アノアクションの挙動は,的章で提案した力学モデルを用いて行った解析値と極めて良 く一致した.このような結果を基に,反投打鎚および高速反復打鍵の実験によってピア ノアクションの運動を調べ,ピアノアクションの性能の限界までの高速反復打鍵を可能 とする同一鍵の反復打鍵のための最適な駆動波形を決定することができている.  第5章では,開発した自動ピアノの演奏システムについて論じている.打鍵装置88合, ペダル駆動装置2台の合計90台のアクチュエータの各!台ごとのサーボ系を制御するため,

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開発した演奏システムは,情報処理の開発の効率を考慮し,3階層のコンピュータシス テムで構成した.情報処理は上位,中位,下位のコンピュータに分けて開発を行った 上位CPUは装置および2台の中位CPUを含めた統括 管理,曲データの編集や曲データ からの駆動波形の作成を行う.中位CPUは,2合から構成され,中位CPUkは駆動波形の パラメータを下位CPUへの転送を行い,もう一方の中位CPULは,打鍵装置で打鍵した 際の打鍵装置の駆動波形,打鍵装置の変位,鍵およびハンマの変位を取得し,駆動波形 の作成に必要なデータ(データベース)を作成する.データベースは,第3章,第4章で 得られたピアノアクションの挙動の解析結果を基にデータを構成し,上位CPUで曲デー タから駆動波形へ変換する際に用い,最適な駆動波形の自動作成ができるようにした. 下位CPUは,90合のCPU群で構成され,1合ごとにサーボ系1台を接続し,中位CPUdヽ ら転送される駆動波形のパラメータから駆動波形の信号をサーボ系に出力する.このよ うな装置の構成により,開発した自動ピアノは,向データから最適な駆動波形を白動作 成し ︱︲M広いダイナミックレンジ,解像度の高い音の強 鍵の安定な再生を行うことができ ﹁9 り り 号音および同一能の反復打 ピアニストにとっても演奏が困難である高速反復打 鍵を必要する曲,例えば,リストの鐘,ラヴェルの道化師の朝の歌などの曲を希望通り に安定に再生することのできる優れた演奏技法を実現した.  第6章では,結論として,各章で行った研究で得られた成果を総括している.

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第2章 ピアノ打鍵装置・ペダル駆動装置の設計

 ピアニストよりも優れた演奏技法を可能とする自動ピアノを開発するため,優れた性 能を持つ打鍵装置・ペダル駆動装置の開発を行った.  本章では,開発した打鍵装置,ペダル駆動装置およびその性能を試験した結果につい て論じる. 2.1 打鍵装置  第1章の1.3で述べたように,ピアノの音は,単鍵の場合,ハンマが弦を打つ速度によ って,音の強さが決定され,音の強さが等しければ,音色を変えることはできない.し たがって,自動ピアノの再生のためには打弦速度を制御すればよいことになる.ピアノ の打鍵装置は,十分に強い力と高速な打鍵,安定な弱音のため低速度での打鍵も可能で, 微妙な強弱を表現できる解像度の高いものであることが必要である.  これらの要求を満たし,また,鍵盤の上に打鍵装着を並べるため,機構の厚さを自鍵 の幅以下とした可動線輪型の打鍵装置を開発した.開発した装置の諸性能を表2.1に示 し,図2.1に打鍵装置とグランドピアノの機構概略を示す.以下に,その詳細を述べる.        表2.1 打鍵装置の性能諸元

ltem Unit value

Armature impedance

Armature inductance

Torque

Trust at swin9-stroke point

Rated current

Rated Torque

Frequency response

lnertia of rotor

Magnetic fluxof mag netic circuit

 n  mH N,m/A  N/A  A  N,m  Hz k9・m2   T   4.91   11,2   1.33   13.3   2.50   3.36   60.0 L33×10`3   0.45

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S4Q/’zy15j K︵4R191U = oo =〇一〇 ﹂osueS

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2.1 1 ヽ へ    / `ミlΞ`ミ三子

Direclion onhe load M.P.:Middle point

       / :Motion range on key

       Aw : ROlational center of actualor        ow : Rotational center of White key        AB : Rotatjonal center of actualor        O日:Rotational center of Black key

図2.2 打鍵装置の配置

打鍵装置の取付位置

B  打鍵装置は,回転型であり,鍵の初期の静止位置から鍵底まで運動させると,鍵上で 前後方向のすべりを生じる.図2.2に示すように,打鍵点における鍵可動範囲の中点 M.P.と鍵の回転中心とを結ぶ直線上に打鍵装置の回転中心を設け,M.P.における運動 の接線方向を一致させ,鎚上での打鍵装置の前後方向のすべりを最小限となるようにし た.さらに,打鍵点から鍵の回転中心までの距離と鍵の回転中心からキャプスタンスク リューまでの距離の比が,白鍵と黒鍵とで等しくなるように打鍵点を定め,打鍵装置が 白鍵,黒鍵ともに等しい条件で打鍵できるようにした. 2.1.2 機構設計  図2.2に示しすように,ロータの回転中心が白鍵,黒鍵の回転中心とM,Pの延長線L となるようにし,指先(ロータの打鍵点)が鍵の静止状態で鍵表面に触れる位置を基準 点として設計を行い,指先から回転中心までの半径は白鍵,黒鍵ともに100mmとした. 図2.3に示すのは,開発したロータであり,コイル部分は全く同一の形状とし,白鍵, 黒鍵の形状は指部のみを変えている.  ロータは高速な応答を可能とするため,軽量化を図る必要がある.ロータの材質には

(21)

-

-0 50 100mm

図2.3 ロータの形状

Rotational center of rotor /

ツド__

j

∩ ば1 に  −   Magnet 言

○/▽丁丁

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1 l o ド'゛ |       | 図2.4 コイルの形状 ガラスエポキシ樹脂積層板を使用し,ロータのモータ部に埋め込むコイルは,線材にア ルミニウム・リボン線(1.4×0.25mm)を用いて軽量化を図り,鍵の打鍵点で,ピアノ アクションの換算質量と指先の換算質量がほぽ等しくなるようにコイルの体積を定めて いる.このコイルは図2.4に示すような形状で,可動角士0.1radでコイル芯の端辺が磁石

(22)

23  一擲・・・  一 / net べ 乙J ・・崎-トー ,Q − -/ / ゝ ゝ

 j o !;こ  1 k l Magnet

‘‘'4-t Magnelic flux reduced scale : 50%

I − ・ Q/ Yoke /r,

.イ汐

r夕゛ y / / / 図2.5 磁気回路 / / /哨−。 .−ノ クヽ / / /

 \

/ / / / Omm 内側の辺と一致するようにした.│司じ形状のコイルを2枚用い,2つのコイルを絶縁する ために中間に0.1mmの厚さのマイラシートを入れて張り合わせ,コイル有助長ができる だけ大きくなるようにした.コイルの各端は,一端はコイル内側で結合し,もう一方は ロータの両側にロータの回転中心に向かって引き出した.このコイルは,1980年に早稲 [口大学機械工学科山根研究室で開発されたコイル巻き線機を用い,製作した.また,コ イルの耐熱温度を増加させるために,焼き入れを行っている.コイルのロータヘの埋め 込みは,エポキシ樹脂の接着剤を用いて行った.コイル表面に付くエポキシ樹脂をでき るだけ薄くし,コイルの放熱やロータの厚さ(ロータ厚さ3mm)の増加を防ぐために, 埋め込みはコイル埋め込み用の型を製作し,コイルを挟む所の素材はテフロン樹脂を用 い,コイル接着前に剥離村を塗布し,コイル面上のエポキシ樹脂と型が接着されないよ うにして,できるだけ取り外しを容易にできるようにした.  図2.5に示す磁気回路は,高い磁束密度を確保するために,置土類コバルト磁石を用 い,5mmのギャップに0.45Tの磁束を得ることができている.

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Terminal Cojl Rotor Flexjble lead         A-A断面 図2.6.1 コイルヘの電力供給路(ロータ)  磁気回路は白総幅以下となるように厚さを23mmにした.鍵盤ヒに全て並べると隣り 合う打総装置との間にはわずかな隙間(約0.66mm)しかなく,また,ロータを組み込 んだ状態の磁気図洛内の空間も狭い.そのため,増幅器からコイルに流す電流の供給路 が問題となった.そこで,図2.6.1∼2.6.2に示すように設計した.ロータには(図2.6.1), ロータの回転中心にできるだけ近い2箇所に円弧状の孔を開け,ヨーク上に立てたポス トに,きんし線を用いてコイルの端子と接続した.ヨークの上に(図2.6.2),絶縁材 としてガラスエポキシ積層板を張り付け,その上に銅板で作った引出線を張り付けて, コイルの端子とした.  ロータの回転軸はヨークの軸受け枠と軸受け(NSK製F699ZZ)によって支持し,図

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− ♂ 9 ㎜ ■ ・ − ■ 一 四 ■  ̄  ̄ Flexible cord Post Rotor YOrk Terminal Screw Washer         A−A断面 図2.6.2 コイルヘの電力供給路(ヨーク) 2ご7に示すように,片側の軸受けに波形座がねを用い,軸方向に与圧し,軸受けの剛性 を高めた.この方法により,ロータの滑らかな運動を行わせることができた.  以上のようなロータと磁気回路を開発・設計することにより,トルク定数1.33Nm/A, 指先換算の推力定数13.3N/Aの打鍵装置を開発することができ,また,打鍵装置を取り

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Wave washer Ball bearing YOrk 図2.7 ロータ軸の軸受け Rotorshaft 付ける白髪・黒髪用の鋳鉄製のビームと溝形鋼を用いて取り付け台を製作し,打鍵装置 を髪盤上に配置している.

2.1.3 非接触位置計測機構

 ロータの位置の計測は,本研究の初期には,差動トランスを使用していた.しかし, ロータの指先士10mmの動きに対してコイル後端は士18mm程度動き,その位置で変位の 計測を行っていたため,回転運動から直線運動に変換する機構の精度やセンサしゆう動 部の摩擦音に問題があり,制御特性を劣化させていた.そこで,非接触で変位を計測で きる渦電流式のセンサを用いて位置の検出lを行った.図2.8に,非接触位置計測法を示 す.  ロータの士0.1radの回転運動に対して士0.8mm変化するカム(以下,ターゲット)を3 点A’−C−B´を通る近似円弧で設計し,そのターゲットをAwが回転中心となるよう にロータのコイル後端に取り付け,土lmmの変位で土1Vの出力が得られる非接触型の

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− - ・ − 四 ' - ' ・  ̄  ̄ (jトヽ−、、−、、 。一一一'  │一一一/ ゴご゛"゛'‘`j゛ ̄`‘゛ぺ。

Aj心こ'てニニ ̄こ ̄2゛

     `べべへ B

A’−.C ’B’ : Targel plate Aw

AI I−

ヽ :Rotational center of acluator

1 >0.5    0    5          0 Q四S一〇ンち910. −1 Q. 10

Ot   : Rotational center of target 図2.8 非接触位置計測の原理 0. Φづ ○’ 5 I l l l l l F I ・ 一 ○ ○ ○。 a d ■ ● ● 1 ● ● j ● 一 画 j l ● I I I I s t l l s t ○ ○ -へ ・;Tエ○ i J I I I 1 1 I j ・ ● ■ ・ ■ ・ − ■ − ■ ■ ■ ・ 10 0.1⋮⋮ Tひ ・ ・・ ……1Q (:匹 d 一 一 I I I I I I I I 1 1 d

      0

displacement mm

5 図2.9 ロータの指先変位とセンサ出力電圧の関係 渦電流式のギャップセンサ(電子応用複製)を用いてロータの回転角度を読み取ってい る.センサの検出面が,中点Cでターゲットの円弧の接線方向と平行となるように,タ ーゲットの回転中心Otに向けて取り付けた.図2.9にロータの指先変位とセンサ出力電 圧値の関係を示す.  このターゲットは,数値制御の工作機械による製作も考えたが,製作コストをできる だけ押さえるために,旋盤でターゲットの外周に相当するリングを作り,ワイヤ放電カ ッタで円弧を切り出した.しかし,この方法で切り出されたターゲットは素材の残留応 力などの影響で設計通りの円弧が得られていないものが存在した.そのため,ターゲッ

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トの外周の曲宰と等しいゲージを製作し,砥粒を用いてターゲットを研磨し,所定の曲 率半径となるようにした.さらに,ロータのコイル後端にターゲットを張り付けるため の冶具,ロータ指先の士10mmの変位で所定の変化を得られているか検査するための冶 具を製作して,この機構を製作した.  打鍵装置は88鎚の金鎚に並べて使用する.隣接したセンサの相互干渉を避けるため, 隣合うセンサのキャリア周波数(1.8MHz,1.6MHz)を変えることで対処した.そして また,ロータの位置計測をギャップセンサにすることにより,差勤トランスを用いた方 法に比べ,慣性モーメントを約20%軽減する 題を解決することができた. 2.1.4 制御方法 ことができ 摺動部分の摩擦や摺勤音の問  ピアノの音の強弱はハンマが打弦する速度により決まり,希望通りの音を得るために 打鍵装置が鍵を駆動する駆動波形を定め,追従制御させる方法とした.図2.10に示すよ うに,サーボ系は,ロータ後端に取り付けられているギャップセンサからの変位信号に よる位置帰還とその変位信号の微分値を用いた速度帰還により,入力波形に従って指先 が動く追従制御を構成した.このサーボ系の周波数応答は,図2.11に示すように,60Hz 程度までほぽフラットな特性を確保することができ,高速な応答速度と大きな制御剛性 を得ることができている. サーボ増幅器(サーボランド礼装)には,PWM式,最大電流出力9Aのものを用いる ことで,打総装置の打総点での推力は100N程度得られ,開発した打総装置で十分な最 弦音を可能としている 大きく, が流れる また このサーボ増幅器は電源を入れた際の突入電流が極めて 88鍵とペダル2つの言十90合のサーボ増幅器の電源を同時に入れると巨大な電流 ことになる.それを解決するために,電力用リレーのタイムラグ 1台ずつ徐々に電源が入る装置を製作した また 器 幅 増 各 制御回路, を利用して, センサ用の増 幅器,90合のワンチップマイコン,各電気回路の直流安定化電源などをキャビネットラ ックに納め,各信号線,電源線などコードの製作および配線を行い,特に,信号のグラ ンド線の配線に注意し,実験室での使用を可能とした.

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CX] て3

ugE︶

石ら

Gi :Contro‖er gain     Am: Amplifier

Gp : Position feedback gain Kt : Torque conslanl Gm: Manipulalion gain    Ja: Actuator inertia

GV:velocity gain       Hk: Position voltage constanl

図2.10 打鍵装置のサーボ系ブロック線図 o  Gain 1 Phase 5 0 -5 -10 15 -20 -25 180 90 -90 -180 -270 eeJDep esBqd ‥...‥‥‥‥;....j....1., … 今 . ● .●●●, な ; 一 l141一・ 一 ● − − 』 ・ − − ・ − ふ ・ ・ − ・ ● 』 ● d ● ● ● ● d ・ ・ − − ・ − − ・ - S . 八 ・ ● ・ . も . 品 ■ ■ ● d ● ・ ■●−- ・ ・ - - ・ ● - ・ - ・¥・ -・= ・■・ ■■■ − ・ ●■■ ● ■ ・ ■ ・●■ − ■■・ ○・ .4 s や ■ ■ ・ ■ ? ■ ■ ■ ・ i " ・ ! ' ・ ? ・ ` │ ヤ ヤ ・ ・ H ・ G ) ・ i ● ■ ● ● I ■ ■ ● W ■ ■ ■ ■ ㎜ ■ 一 ㎜ ■ ・ ● W ■ ● ● ● ● ● - ● I - - - ● − ・ ■ ■ ■ ● ・ ■ ■ ・ . − . j t ・ ・ ・ ? ” ゛ : ●・ ・ ・ − ・ 〒 - ゜ ・ 7 ・ − ` i ● | ● ■ ・ ● ● ■ A ■ 遅 a ・ 遅 遅 t ■ 遅 a ●       ●   ● ネ●1 べ ・ − か ー│ − ゜ ・ ・ - S ● - ・ 1 1 ● ・ ■ I ・ ・ ・ ・ - ・ ・ − W ・ ・ - ・ ・ - S ● ● ● ● ● ● ■ ● ● ● ● や ● を ー ÷ y ■ y λ ㎜ ■ ■ ■ ● ………e 100 ● Frequency Hz

打鍵装置の周波数応答図

○・・・……i………… ●●●11 …--む    10 図2.11

(29)

I ・ ● -2.2 打鍵装置の性能試験  本節では,開発した打鍵装置の性能を評価するために,まず,打鍵装置の打鍵方法, 鍵,ハンマの変位,速度および発生音圧などのピアノアクションの計測法について述べ, さらに,開発した打鍵装置の性能評価を行う. 2.2.1 打鍵装置の打鍵方法  ピアニストは,強い音の場合,腕を高い位置から振り下ろして打見を行い,最高 0.6m/s程度の見の速度を得ている.打見装置は見のL10mmから打ち下ろすことも可能 で,大きな音を得るには有効な方法であるが,見との衝突音や接触後の離脱などの問題 が多い.そのため,打見は打見装置の運動の開始位置を見の表面と接触した状態とし, 見底まで押し下げることとしている.この状態からハンマの質量が大きく,鍵の打見点 で機械インピーダンス(見,ハンマ,および,その途中に介在する機構要素を含む)が 大きい低音域のアクションでも,見先端に50Nの力を与えれば最大2m/s程度の打見速度 を得ることができた. 2.2.2 ピアノアクションの計測および性能評価  鍵およびハンマの運動は,ピアノに光学式のレーザー変位計(Keyence製)を取り付け て,計測を行う.ハンマの計測場合,ハンマヘッドの上端の打弦点では,弦の直ぐ上に はダンパがある.そのため,ハンマヘッドを直接計測することが望ましいのだが,ハン マヘッドにできるだけ近い位置のハンマシャンクにレーザー光を照射し,その変位の計 測を行う.さらに,ピアノの構造上,弦や弦を張るフレームなどがありレーザのハンマ シャンクヘの照射は弦と弦の間から行っている.  ハンマは回転運動を行い,初期の静止位置からハンマヘッドが弦に達するまでの可動

(30)

− ' │ ' ・  ̄ ・ I 』 ' 図2.12 ハンマの計測法 角は約18degである.使用するレーザ変位計は,対象物に光を照射して,その照射する 方向と同方向の変位を計測し,ハンマの回転運動を直線近似で計測するため,可動角の 大きいハンマの場合,回転角と計測には誤差が生じる.  図2j2に示すように,ハンマの可動角の中点の折線方向(図2j2中A)からレーザー 光を照射する.ハンマの初期の静止位置から可動角の半分で変位,速度とも最大の誤差 を生じ,その後,変位,速度の誤差は減少する.この際の変位,速度の最大誤差は,変 位は約1%,速度は約2.5%となり,精度の良い計測が可能となる.  以上のように計測して変位の信号を得て,総の場合,打総点における静止位置から総 底までの打総距離,ハンマの場合,ハンマヘッドの打弦点の静止位置から弦までの打弦 距離に換算し,速度に関しては,変位の信号を微分して求めている.また,音圧の測定 は,ダンパの後端で,弦上15cmにコンデンサマイクロフォン型の音圧計を設置して行 い,さらに,音圧計の読取り値と出力波形により音圧と音の立上がり状態を同時に観測 できるようにした.  図2.13は,第40番総(C4)¨5を中程度の打総強度で打総した際の総およびハンマの運 **5 本論文では,鍵は,一番左の最低音の鍵を1番とし,白鍵および黒鍵を区別することなく順     番に数えた番号を用いて表す.通常のグランド型のピアノは,全88鍵あり,最高音部の鍵番     号は88番となる.また,括弧内のアルファベットは音名を,数字は,最低音部のオクタープ     をゼロとして表している.

(31)

EE1uauJaoelds!p xa︶l uJu﹂1uaEaoelds!pJQEEeH s/uJ 4!c)o一ま﹂QEE浬・一一 Cxj O Cxj g g︶ Q︶O ク﹄0 0 0  0 0 0 0 3 2 1 0 1    y“ 7“ gMMfMxjr   y“““““ ’ =  | 2 一 一 一 一 一 一

-\

一The commencin9 of the tone  The dLJration of the tone

       ON        Damper        OFF 1    1 |    |    | 1    1    1 一 一 一 一 一 一

べ]strin9-strikin9  The state of convergence 一一・       −

一‥-,

ド`  / ゛ \

,/ l    j    j    l 二 |, , -一 一 一 一

   /

 The hammer is held by the backcheck へString-strikingvelocily    Rebound velocity  l    l    l    l    l    l    l    l    l 50 0 50  100  150  200  250  300  350  400  450       Time ms

図2.13 中程度の打鍵強度で打鍵した際の鍵およびハンマの運動

動を示しており,打能間始からハンマが打弦する時間,打弦速度,打弦後のハンマの跳 ね返り速度とハンマがバックチェックに固定されている状態,指を能から放し,鍵およ びハンマが元に戻る運動,能およびハンマの静止するまでの状態などが良く見てとれる.  図2,14に,第11能(GI),第42能(D4),第78能(Dフ)を定速度で打能したときの打能速度 と打弦速度の関係,図2,15に,打能速度と音圧の関係を示す.この図から音圧は能によ って異なるがどの能も打能速度1.0m/s付近より飽和し,また,打能速度0.1m/s以下では 打能速度に対する音圧の勾配が大きく,打速度0.09m/s程度でハンマは弦に到達せず発 音されなかった.図2.14の打能速度と打弦速度の関係についても同様な形態が見られ, 打能速度lm/s付近からの飽和はピアノアクションの機根によるものであると考えられる. このようなことから,ピアノの発生音圧ダイナミックレンジは,打弦速度の飽和,つま

(32)

り 1 0        1  のぺEきoo一eA Du!)l!」ls. bU!j1S ﹂ΦEE「’工 CI] 1⊃ ejnsseJd puコ○の とがわかった. 力を発生でき, 0.1 105 100 5 0 5 0 5 0 5 0 Lr︶ 9 9 8 8 7 7 6 6 5 .ロ旧 i︲ ㎜ ■ ・ ■ 晶 ふ 晶 な , ■ ■ ■ ・ 還 晶 ■ 「 ; 一 一 一 一 4 ・ I ● ● ● ● ● ● . . . ふ . a . ajII ふ III甲■一 − − ・ ・ ■ M ζ −I一一 φ ■&aas& a&1\ ・ ゛ − 甲 ・ − ・ │ t l Φ 一 i y d I I I I I I I r 図2.14 ● ・ − I 5 − ・ 1 □ r ?;5 r ! I I I I I I F ・ 今 ・ { ・ a l ■ − a l ■ ● ・ ● ● │ a ・ ・ − − │ I I . を ● ● . . . − ○ □ × { - … { 一 一 今 j - ・ ■ 晶 _ I 、 . . こ . Keyvelocity m/s ・ト ゙ ・ 1 Key Key Key 11 42 78 0.1       1     Keyvelocity m/s 打鍵速度と打弦速度の関係 0.1

図2.15 打鍵速度と発生音圧の関係

ハンマの運動エネルギが飽和していることより,単鍵のみでは40dB程度であるこ さらに,開発した打鍵装置はピアノアクションの動作飽和域まで十分な 広い打弦速度を制御することを可能としていることを示した.

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JQEE司工 EEluaLueoelds!p Ae)│.UuLu ltJeEeoelds!p S/Uj 40CgA﹂ΦEE哨工 0 2 4 6 8 0       1 2 0 0 0 0 0 1 5 4 3 2 1 0 3 2 1 0 1 9﹄ 0 200 2.3 同一鍵の反復打鍵 400        600 Time ms 図2.16 15Hzでの反復打鍵 800 1000  同一一鍵の反復打鍵については,第4章で詳しく述べているため,本節では,開発した 打鍵装置の反投打鍵がどのくらいまで可能であるかについてのみ述べる.  一般に,ピアニストが高速な反復打鍵を行うとき,鍵の鍵ヒから鍵底までの打鍵は行 っておらず,鍵を少し沈み込ませた位置より鍵底の手前までの打鍵を行っている.そこ で,開発した打鍵装置により│司一鍵の反復打鍵を試みた.図2.16に同一鍵の反復打鍵の 応答状態を示す.この図は15Hzの反復打鍵であり,10∼15Hzでどの鍵も安定した反復 打鍵を行うことが可能で,鍵によって,あるいは,ピアノアクションの整調状態により 異なるが,最高18Hzまでの反復打鍵を実現している.

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m - I ● 2.4 ペダル駆動装置  ペダルは,ペダルを踏み込むことで,ダンパを持ち上げるダンパベダル,鍵盤をハン マの幅の約1/3右方向に動かすシフティングペダル,必要な音のみを残すために,押さ れている鍵のみのダンパを持ち上げたまま保持するソステヌートペダルがある.しかし, ソステヌートペダルは,自動演奏では打鍵装置で鍵を押さえ続けるという方法がとれる ため不要で,ペダルを駆動する装置の開発はダンパペダルおよびシフティングペダルに ついて行った.開発した装置の諸性能を表2.2に示す.  ペダル駆動装置はペダルを踏み込む力150N程度が要求される.そこで,図2.17に示 すように,ペダル駆動装置は/匿性モーメントが小さく,トルク定数が大きい,直流コ アレスモータ(多摩川精機打製)を駆動源に用い,ペダルを踏み込み,その位置で静止 させた場合,モータに電流を流さず,モータの負荷を軽減できるように,ウォームギア とウォームホイールのセルフロック機構を用いたアクチュエータを開発した.サーボ系 は,打鍵装置と同様にペダルの操作部の回転軸の外周に士0.18radで士lmm変化するカ ムを設け,その回転角をギャップセンサで位置を計測し,その信号を微分した信号を速 度帰還の信号として用い,追従制御を構成した. 表2.2 ペダル駆動装置の性lil 元 諸 ヒヒ

ltem unit value Armature impedance

Armature inductance Torque of motor shaU Toruqe of actuating shaft

Ratedvoltage Rated cUrrent

Rated rotation frequency Rated torque of motor shaft Rated torque of operating unit lnertia of motor shaft

lnertia of actuatjng shaft

  n  mH N・m/A N,m/A  V  A  r・p.m N・m/A N,m/A kg・m2 kg・m2  0.300  0.700  0.201  2.04  50.0  7.50  60.0  1.51  15.3  7.59 7.59×10'3

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r r マ ー ゝ ・ - -Sensor 目 Couplin9 WOrm wheel Worm gearヽ、、、     Bearing        \      / ̄\ プレ Be; / m

∩プ

0 | 1 |ブ | 肺     I 二 WOrm wheel Pedal Bearin9 図2.17 ペダル駆動装置の概略

Damper P卵al Sostenqto pedal 印ifting pedal

Rolation axis of pedal

図2,18 ペダル駆動装置の配置法

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一 一 CI] 1コ U!BE︶ uB!pe﹂ el6ue 6u!A0一ヽ一‘ 5 0 5 -10 15 -20 -25 0.3 0.2 0.1 0 ● I l d ・ I Φ i ・ t i l 二言●ゴT・ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ S … … … ! … … ■ ■ ● ● ● ■ ● ■ 1 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ふ ● ■ ■ ■ ■ 100 I ; I I I I I I I ● I I S I I ÷ 一 ぺ ・ { 4 -{ ・ ○ 0 Gain dE ●  Phase  degree ・φ 1 ̄ ̄m ̄1”・ ・1・’ ●…… 1 ● ’ 石 ・ ︲ ↑ ︲ り ・ y 4 1 曾 I ゆ F ” 一 pl I I 1 1 1 一 I ’ ● J ■ ■ ■ a j . . , .Q ○

言今

E

4

一 − I l l I ∼ 〃 ・ ● ・ ● ・ ● ● ・ - ・ ● │ 10 300 90 0 90 180 270 400 す eeJDep Φの宍一n一 ●.  200 mS Frequency Hz

図2.19 ペダル駆動装置の周波数応答

  nputwavefo■ ■  | .   :/: | : m ●   I   I   I - -・ ・ ・ /・ ・  ./ 1 ・ ・/・ J: ●   ● r, /・ ・ `‘ へ 〃 4 a 、 . _ A j    I  I r     ■   I   F  ● ●   ●   1   ・ ・/ ‘ ・ ` ・/ ・ ,・ Z ・ 1 1 /・ : : ;fJ pL |  ● 1 ● ・ ・ ・ノ- ͡ 4tajハ1jハぷ͡。。v、・ /: WU t VvQyQIVIIII 1     ●   I   I   I 丿・ ・ 1   1 ・ ・/・ ‘‘/・‘ ● ●/  ● ● I   I   4   1 ’/! ・/・・ よに ・ ノ 100   Time

図2.20 ダンパペダルを駆動した場合のステップ応答

ペダルを駆動する位置はペダルの後端とし,装置を設置する際には,ペダルの回転軸 は真上から見ると図2.18のようにハの字になっているため,ベダルの回転軸の中心と装 置のウォームホイールの中心が一直線上に並ぶようにした.ペダル駆動装置の周波数応 答を図2.19,ダンパペダルを駆勤したときのステップ応答を図2.20に示

(37)

2.5 本章のまとめ  以上のように,ピアノの打追装置,ペダル駆動装置を開発し,その性能を試験した結 果について論じた.  開発した打追装置は可動線輪型で,トルク定数1.33Nm/A,指先換算の推力定数 13.3N/Aを得ることができ,ロータの位置を非接触で計測できる方法を用いて位置の計 測粘度の向上を図り,機械的なノイズをなくした.サーボ系は位置・速度帰還による追 従制御を用い,60Hz程度までのフラットな特性,大きな制御剛性を得た.さらに,希 望する駆動波形通りに打追装置を駆動することを可能とした.  打追装置の性能は,打追速度と打弦速度あるいは音圧の定量的な評価の結果,ピアノ アクションの動作飽和誠に速するまでの十分な力を発生し,最強音から最弱音までの幅 広い打弦速度が得られ,弱い音までの安定な音の再現や音の微妙な強弱の制御を可能と し,40dBのダイナミックレンジが得られた.さらにパ司一追の高速反復打追の実験を 行い,打追装置は最高で1/18sec(18Hz)の綴り返し周期の打追加可能で,15Hz程度の高速 反復打追であれば金鎚で行えることがわかった.  ペダル駆動装置は,位置の計測方法やサーボ系を打追装置と同様な構成とし,装置の ウォームホイールの回転中心をペダルの回転軸の中心に揃えることで,ペダルの円滑な 運動を行えるようにした.ダンパペダルはシフティングペダルよりも高速運動を必要と するが,ダンパベダルを駆動した場合のステップ応答の実験から,ペダル駆動装置は十 分な応答性を有することがわかった.  図2.21に開発した打追装置および図2.22にペダル駆動装置の写真を示す.

(38)

-図2.21 ! 1 打鍵装置 i l j J I l j l 』 │ ・ l l l j i l l ! I I I ・ r l ¶ │ ・ │ , ・ 1 ‘ F II 口 図2.22 ペダル駆動装置

(39)

第3章 弱音の打鍵に関する最適な駆動波形の設計

一ハンマが弦に達するまでの

 ピアノアクションの挙動の解析−

 第2章で述べた打鍵装置は,応答性に優れ,指先換算の推力は十分に大きく,ピアニ ストが力一杯打鍵した時よりも大きな力および速度を出すことができる.サーボ系は位 置信号を負帰還し,追従制御によって任意の駆動波形信号で鍵を駆動することができる ようになった.  弱い音の演奏はピアニストにとっても演奏困難な技法の一つで,解像度が高く,安定 な弱音打鍵のための駆動波形の決定は,本研究の重要な課題であり,制御対象であるピ アノアクションの動作の解析が必要となった.  ピアノアクションの運動に関する従来の研究は,第1章の1.3で述べたように,定性的 評価にとどまり,運動の解析に関する報告は行われていない.これはピアノアクション の機構が極めて複雑で解析には高次の力学モデルが必要と考えられることや動作の計測 のため,鍵を駆動する優れた装置がなかったこと等に起因するものと考えられる.本章 は,ピアノアクションの単純な力学モデルを提案し,その動作解析を行うとともに,ピ アノの鍵を開発した打鍵装置で駆動したときのハンマの運動を計測し,力学モデルの有 肝吐を実証して,ピアノアクションの動的な挙動を明かにした.その解析結果より,望 ましい駆動波形を決定し,解像度が高く,安定な弱音の打鍵を可能とた.  本章では,ハンマが弦を打つまでの挙動について論じ,計測は,低,中,高音誠にわ たって多くのデータを取得したが,動作挙動は極めて類似しており,ここではその一例 として,第11番鍵(GI)について扱う.

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Damper

Cushion cloth  Backcheck Capstan screw

図3.1 グランド型のピアノアクション

3,1 ピアノアクションの力学モデル

 図3.1のピアノアクションは鍵からハンマヘッドまで数多くの構造部材によって組み 立てられた複雑な機構で,素材も本村,フェルトなどが用いられ,正確な動作解析のた めには高次の力学モデルが必要となり,それは極めて困難である.そこで,図3.2に示 す単純な力学モデルを提案し,過渡応答の解析を試みた.  ピアノアクションは白J(図3.3参照),鍵が押されると,ウィッペンは上向きに移 勤し,初期はレペティションレバー,後期はジャックがシャンク支点の近くに取り付け られたハンマローラを押し上げ,ハンマヘッドは弦に向かって移動する.さらに,鍵を 押し下げ,ハンマヘッドが弦の数mm手前に到達した時,ジャックテールがレギュレー ティングボタンに到達し(以下,エスケープメント点),ジャックの先端がハンマロー ラを押し上げる(以下,エスケープメント機構の作動).その後,ジャックの先端はハ ンマローラから前方にはずれて,この点が押し上げ動作の終了点になり,極めて鍵をゆ っくり押した場合には,ハンマはレベティションレバ上に落下する.通常の打鍵では, ハンマはエスケープメント点で初速度を持っているため,離脱し,ハンマは自走して弦 を打つ.

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Escapme nt poi nt-         DE     XK (lnput displacement) String Key Bottom

M : Mass of Hammer head K  :Spring Constanl

DK : Moving Distance of Key DH : Moving Distance of Hammer     head

DE : Distance of Escapment point xK : Displacement of Key xn

    (lnputdisplacement )

XH : Displacement of Hammer head DE<DK<DH

図3.2 ピアノアクションの力学モデル

 図3.2の力学モデルにおいて,Mはハンマヘッドの質量,Kは鍵,ウイッベン,ハンマ ローラ,シャンク等全体の弾性をハンマヘッドの位置に換算したバネ定数,DHはハン マヘッドの静止点から弦までの距離,DEはバネ上端のエスケープメント点までの距離で, Mの重力による初期たわみおよび減衰は無視している.DKは鍵の静止点から鍵底までの 距離にレバー比n(打鍵点からハンマヘッドまでの)を乗じた値で,バネKの下端の移 動量の最大値である.さらに,MとKの上端は結合されていないので,バネはMの慣性 力によってその自由長以ヒに伸ばされることはないものとし,また,バネKの七端の移 動量がDEに制限されるので,Kの上端の変位がDEに達したとき以降,Kからの力はゼロ となりMは慣性力によって自走すると仮定した.  解析において,M,K,nの値は実測によって求めた.nは,図3.3に示すように,鍵 をゆっくりと駆動したときの打鍵点での鍵の変位とハンマヘッドの変位は良い比例関係 が得られ,その勾配とした.Kの値は非線形な挙動を示し,変形の大きい場合のバネ定 数は変形の小さい場合よりも大きな値を示した.ハンマの動きを固定して,圧縮試験機 によるバネこわさの計測を試みたが,再現性に乏しく正確な値が得られなかったので, 固有振動数として実際のハンマの運動から求めた.この際,バネの特性を断片線形とし て扱い,後述の変形の小さい励振域の場合の固有振動数をω1,変形の大きい自由振動

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EE lueuJeoBlds!p jeLuLue工   工 × 0   0 6   5 40 30 0   0 ︵/︶  1 0 0   2 図3.3 XK   4     6 Key displacement mm

鍵とハンマの変位関係

表3.1 解析C 8 こおけるパラメータの各値 10

Parameter Unit value Reference

DH m 0.048 Moving distance of Hammer head DK m 0.045 Moving distance of Key xn

DE m 0.042 Distance of Escapment point

ω1 rad/s 81.7 Natural Frequency of excitation ω2 rad/s 113 Natural Frequency of free vibration

- 5.20

Moving distance of Hammer head    Moving distance of Key

域の場合の固有振動数をω2として計算を行った.表3.1に,解析で用いたパラメータと その値を示す.

3.1.1 基礎運動方程式

図3.4に示す基礎励振を受ける系について考える.このモデルは,励振をxk(t),応答

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図3.4 基礎励振を受ける系

    M・4=−K{(xll-xx(t))} さらに,無次元のパラメータを用いると     IH十ω2'xll'ω2・XK(t) が得られる.ここで,   2 ω 二 K 一 (3j) (3.2) (3.3)  以上に示す式(3.2)のxi((t)に,以下に述べる定速度,定加速度,ステップの場合の入 力変位を時間に関する変位関数で与え,初期条件は,質点Mに,t=Oからxi((t)の変位が 作用したとすれば,以下のように与えられる.1  t x ・X      H  H  = =  = 0 0 0 (3.4)  この初期条件を基に,ラプラス変換・逆変換を行うと,励振xl((t)に対する変位応答 XH(t),速度応答VH(t)が求まる.  回3.5.1∼3.5.3に変位応答XH(t)を示す.  人力速度Vを与えた図3.5.1の場合,0<t<0.5Tまで,質点Mは遅れを生じ,固有周期T の半周期の時点で,バネのたわみが自然長に戻る.このとき,質点Mは人力速度Vの2倍 の速度となるため,その後,バネは自然長以上に伸び,質点Mはxx(t)の変位を超え, 固有周期Tの時点で,バネは自然長に戻り,周期運動を繰り返す.  入力加速度αを与えた図3.5.2の場合,0<t<Tまで,質点Mは遅れを生じ,固有周期T の時点で,バネは自然長に戻る.このとき,質点Mの速度はxl((t)の速度と等しいため, バネは自然長以上に伸びることはなく,質点Mはxx(t)の変位を超えず,周期運動を繰 り返す.

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