6.4 天球座標 (Celestial Coordinates) の変換 (WCS Paper II)
6.4.1 天球座標 (α, δ) から射影平面座標 (x, y) への変換
まず、ある天域を観測した時、天球座標
(α, δ)
がどのようにピクセル座標(i, j)
に変換 されるかを順を追って考えると次のようになる。1)
天球座標(α, δ)
から 局所球面座標(native coordinate) (ϕ, θ)
への変換2)
局所球面座標から射影平面座標への変換(
射影) (ϕ, θ) ⇒ (R
θ, ϕ)
or
一般に(x, y) 3) (x, y)
から回転や歪みの変換等をへてピクセル座標(i, j)
へ(3)
については、前節のPC
行列(
またはCD
行列)
による補正になるのでここでは省略 し1)
と2)
について詳しく述べる)
。6.4.1.1 (α, δ) ⇒ (ϕ, θ)
天球座標から局所
(native)
球面座標への変換をまず行う。これをしておくと、後の平面 への射影が理解しやすくなる。天球面からこれに接する平面への射影を行うものとする。天球面と平面の接点の天球座 標を
(α
P, δ
P)
とし、天球上でこの点を極とする新たな座標系を設定する。天球上のある 点(α, δ)
が新しい座標系で(ϕ, θ) (ϕ
は経度, θ
は緯度)
になるとすると、次式が成り立つ。sin θ = sin δ sin δ
P+ cos δ cos δ
Pcos(α − α
P)
cos θ sin(ϕ − ϕ
P) = − cos δ sin(α − α
P) (19) cos θ cos(ϕ − ϕ
P) = sin δ cos δ
P− cos δ sin δ
Pcos(α − α
P)
ここで
ϕ
P は、元の座標系での極点の、新しい座標系における経度である。6.4.1.2 (ϕ, θ) ⇒ (R
θ, ϕ) or
一般に(x, y)
次に射影による局所
(native)
球面座標から平面上の座標への変換を行う。射影平面上に球面との接点を中心とする極座標
(R
θ, A
ϕ)
を設定する。A
ϕ は軸を適当に とることによりϕ = A
ϕとすることができるので、θ
とR
θ の関係として射影を記述でき ることになる。局所球面座標の
(x, y)
座標に対する位置関係を2
つの典型的なケース(
平面が極で接 する場合と赤道面(
の基準経度)
で接する場合)
について表示したのが次ページの図4
で ある。ここでは接平面への射影
(Zenithal projection)
の一般形およびそのうちの代表的なもの4
つについて述べる。図
4:
参照点を極とした局所(native)
球面座標(
左、(ϕ
0, θ
0) = (0, 90
◦))
と、参照点を赤 道と基準経度の交点とした局所球面座標(
右、(ϕ
0, θ
0) = (0, 0))
〔一般形
(AZP)
〕 射影の投影中心は球面と投影面の接点と球面の中心を通る直線上にあり、その球面中心からの距離を
µ
とすると、R
θとθ
の関係はR
θ= 180
◦π
(µ + 1) cos θ
µ + sin θ (20)
となる。投影中心の位置
(µ
の値)
により射影の性質が完全に決まる(
次の図)
。図
5: zenithal
投影のR
θ, θ, µ
の関係図(
左)
、と3
つの特別なケース(
右)
以下で、代表的な4
つの射影方法を示す。6.4.
天球座標(Celestial Coordinates)
の変換(WCS Paper II)
〔
AZP (µ = 0): TAN:gnomonic
〕µ = 0:
球面の中心が投影の中心になっている場合 で、可視光の撮像観測はこのケースにあたる(
以前の提案ではTAN
が機器のdistortion
を含む拡張した形になっていたが、機器のdistortion
はWCS Paper V
で扱うよう に分離された)
。〔
STG:stereographic
〕µ = 1:
球面の平面から反対の端点が投影の中心になっている 特別な場合。〔
AZP (µ = ∞): orthographic ⊂ SIN:slant orthographic
〕µ = ∞:
無限遠方か らの投影である。電波干渉計によるマッピング観測はこのケースになる(
以前はこの ケースはSIN
と呼ばれていたが、SIN
はGreisen
がAIPS Memo (1983)
でNCP
と 呼んだ東西方向の干渉計も扱えるように拡張された)
。〔
ARC: zenithal equidistance
〕 シュミット望遠鏡の場合、R
θとθ
の関係が特殊で、R
θ= (90
◦− θ)
となっている。(R
θ, ϕ)
から(x, y)
への変換は次式による。x = R
θsin ϕ (21)
y = − R
θcos ϕ (22)
(
逆はϕ = arg( − y, x), R
θ= √
x
2+ y
2)
。ここまでに出てきた変数を
(
関係するFITS
キーワードを含めて)
表にまとめておく。変数 意味 関係する
FITS
キーワードi
世界座標のインデックスj
ピクセル座標のインデックスa
代替記述コード(
空白かA - Z) p
j ピクセル座標r
j 参照ピクセル座標CRPIXja
m
ij 線形変換行列CDi ja or PCi ja
s
i 座標スケールCDELTia
x
i 中間世界座標(
一般形)
(x, y)
射影平面座標(ϕ, θ)
局所(native)
経度、緯度(α, δ)
天球経度、緯度(ϕ
0, θ
0)
接点の局所(native)
経度、緯度PVi 1a, PVi 2a (α
0, δ
0)
接点の天球経度、緯度CRVALia
(ϕ
P, θ
P)
天球の極の局所(native)
経度、緯度LONPOLEa (=PVi 3a), LATPOLEa (=PVi 4a) (α
P, δ
P)
局所(native)
極の天球経度、緯度(δ
p= θ
p)
arg()
正確な象限を返すtangent
の逆関数以上をふまえ、射影平面座標から天球座標を求めるための
FITS
パラメータとその使用 法を次項で述べる。
Dalam dokumen
FITS の手引き
(Halaman 85-88)