6.6 時間座標の表現 (WCS Paper IV)
6.6.2 時間を表現する構成要素とキーワード
ここではこのセクション末尾の表
15
にまとめてある時間を規定するキーワードの説明 をする。表の5.a
には原則としてHDU
でグローバルに有効な値を持つものを挙げてい る。5.b
はHDU
のすべての時間値に対する時間参照フレームとオプショナルなオーバー ライドキーワードを挙げている。5.c
はイメージの時間軸に対しHDU
のグローバルキー ワード値をオーバーライドできるキーワードを挙げている。以降では日時の値はISO-8601
フォーマットで確認された文字列値として解釈されなければならない。6.6.2.1
時間座標フレームここでは時間座標を構成する様々な要素を定義する。
■タイムスケール タイムスケールは時間的な参照フレームを定義する。タイムスケール を記録するグローバルキーワードは、
TIMESYS (
文字列、デフォルトはUTC
)であり、キーワード値としては、
7.5
節に載せてあるタイムスケールが認識される(7.5
節 の説明中に出てくるGPS
とGMT
も含まれる)。また、7.5
節では世界時をUT
と載せている が、PaperIV
ではUT1
がそれにあたり、他にUT()
表記も認識される。7.5
節にない値と しては、シミュレーションデータなどを想定したLOCAL
も設定された。PaperIV
では付 録A
に各値についての詳細な記述がある。座標のタイムスケールと、その力学的等価物との関係は次のように定義できる。
T (TCG) = T (TT) + L
G× 86400 × (J D(TT) − J D
0) (34) T (TDB) = T (TCB) − L
B× 86400 × (J D(TCB) − J D
0) + T DB
0(35)
ここで
T
は秒、L
G= 6.969290134 × 10
−10、L
B= 1.550519768 × 10
−8、J D
0= 2443144.5003725
、T DB
0= − 6.55 × 10
−5s
。現代のほとんどのコンピュータ
OS
は時間については、POSIX
準拠で、Nework Time Protocol (NTP)
を通じてUTC
に同期しており、FITS
データのタイムスタンプに一般的 に使われるが、特にうるう秒近辺では、POSIX
やNTP
の精度の制限に注意する必要が ある。タイムスケール値の中ではUT1
は本質的には(地球の自転の)「角度」(‘a clock’
) であり、他はSI
秒の「カウンタ」(‘chronometer’
)であり、UTC
がうるう秒を通じて両者 の橋渡しをする。関連して、イメージ配列の時間軸や、テーブルカラム、ランダムグループでは、タイム スケールは
CTYPEia
やバイナリテーブルでそれに相当するPTYPEi
に記録されたタイムス ケールでオーバーライドされるかもしれない。これらのキーワード(TIMESYS, CTYPEia, TCTYPn, PTYPEi )
はタイムスケールとしてリストされた値を持つと仮定される。後方互換 性のため、TIMESYS
とPTYPEi
を除いては、値としてTIME(
大文字、小文字の区別なく)が仮定されるかもしれない。その場合は、タイムスケールとしては、
TIMESYS
か、それが なければデフォルト値のUTC
を仮定する。■時間の参照値 時間の参照点としては
3
つのシステムが定義される。ISO-8601, JD, MJD
である。これらの参照値は、前述の認識されるタイムスケールのどれかに付随する時間の 値に対してのみ適用される。その場合、そのタイムスケールは特定されている必要がある。HDU
のすべての時間が相対的に参照する時間の参照点は、次のどれかのキーワードで特 定されるべきである。MJDREF (
浮動小数、MJD
での参照時間)JDREF (
浮動小数、JD
での参照時間)DATEREF (
日時値、ISO-8601
での参照時間)MJDREF
とJDREF
は明快さまたは精度の理由で、整数部と小数部を別々に保持する2
つの キーワードに分割されるかもしれない。MJDREFI (
整数値、MJD
での参照時間の整数部)MJDREFF (
浮動小数値、MJD
での参照時間の小数部)JDREFI (
整数値、JD
での参照時間の整数部)JDREFF (
浮動小数値、JD
での参照時間の小数部)もし
[M]JDREF
と[M]JDREI, [M]JDREFF
の両方があった場合は整数部と小数部の値は単 一値に対し優先されるべきである。単一値が2
つのパートの片方のみとともにあった場合 は単一値が優先されるべきである。何らかの理由でヘッダがこれらのキーワードのうち複 数のものを含む場合はJDREF
がDATEREF
に優先し、MJDREF
は他の2
つに優先する。3
つ のキーワードのどれもない場合、HDU
の時間がISO-8601
で表現されているなら問題な いし、そうでない場合はMJDREF = 0.0
が仮定されなければならない。もし、TREFPOS =
’CUSTOM’
なら参照時間のキーワードがなくても合法であり、シミュレーションデータを扱っていると仮定するだろう
(
次セクション参照)。■時間の参照位置 観測は時空間の
1
つのイベントである。キーワードTREFPOS
で特定 される参照位置は、観測が行われた場所もしくは光-
時間の相関がある時空の場所であり、時間が有効に働く空間位置を特定する。これは
GEOCENTER
やTOPOCENTER
などの標準的 な位置かまたは特定の座標で指定された空間点である。TREFPOS (
文字列、デフォルトはTOPOCENTER
) 一般的に許容される標準値は次の通り。TOPOCENTER
観測が行われた場所(デフォルト)GEOCENTER
地球中心BARYCENTER
太陽系重心RELOCATABLE
シミュレーションデータにのみ使用CUSTOM
観測場所ではなく座標値によって特定された位置他により特殊だが許容された値として、
HELIOCENTER, GALACTIC, EMBARYCENTER,
各惑星 中心を指定する値 などがある。タイムスケールと参照位置は任意に組み合わせることは できない。例えばBARYCENTER
はタイムスケールTDB
とTCB
とのみ組み合わせるべき であり、これらと組み合わせるべき唯一の参照位置でもある。互換性のある組み合わせはPaperIV
の表4
参照。バイナリテーブルでは異なるカラムは完全に異なる時間座標フレームを表すかもしれな いが、各々のカラムは
1
つの時間参照位置しか持てないので、線形性を保証するため次の キーワードがTREFPOS
をオーバーライドするかもしれない。TRPOSn (
文字列)これらのキーワードのどれかの値が
TOPOCENTER
だったら観測所位置が特定される必要6.6.
時間座標の表現(WCS Paper IV)
がある。PaperIII
で定義された地球中心に対するITRS
20直交座標(OBSGEO-X, OBSGEO-Y, OBSGEO-Z)
が強く推奨されるが、同様に定義された測地的座標(OBSGEO-B(
度単位の緯度、北が正
), OBSGEO-L(
度単位の経度、東が正), OBSGEO-H(m
単位の高度))
も認識される。も う一つ許容されるのは軌道のephemeris
ファイルであり、OBSORBIT(
文字列、URI, URL
もしくは軌道ephemeris
ファイル名)
で表す。HDU
では1
セットの座標のみ許容される。直交
ITRS
座標(X, Y, Z )
は測地的座標(B, L, H)
から次のように導かれる。X = (N (B) + H) cos(L) cos(B) (36)
Y = (N (B) + H) sin(L) cos(B ) (37)
Z = (N (B)(1 − e
2) + H) sin(B ) (38)
ここで、N (B) = √
a1−e2sin2(B)
, e
2= 2f − f
2 、a
は長半径、f
は扁平率。■時間の参照方向 観測データに対して参照位置が
TOPOCENTER
でない場合、宇宙機など の軌道遅延の計算などには時間の参照方向が提供されるべきである。方向が必ずしも必要 でないケースでも空間的なメタデータで使われる空間座標フレームで提供される。例えば 天球位置に対する球形ICRS
座標21や宇宙機のephemeris
に対する直交FK5
のように。参照方向は特定のキーワードへの参照を通じて示される。
TREFDIR (
文字列、時間の参照方向へのポインタ)OGIP
規約の場合はTREFDIR = ’RA NOM, DEC NOM’
のように使われる。バイナリテーブ ルでは次のキーワードがTREFDIR
をオーバーライドするかもしれない。TRDIRn (
文字列)イベントリストなどでは、
TRDIR20 = ’EventRA, EventDEC’
など。■太陽系の
ephemeris
もし可能なら太陽系のephemeris
が指示されるべきである。これ はタイムスケールがTCB
かTDB
の時、特に適切である。現在最もよく使われるephemeris
はJPL
のものである。- DE200 (Standish 1990;
時代遅れだがまだ使われている) - DE405 (Standish 1998;
デフォルト)
- DE421 (Folkner 2009)
- DE430, DE431, DE432 (Folkner 2014)
これを指定するキーワードは次の通り。PLEPHEM (
文字列、デフォルトはDE405
)6.6.2.2
時間単位時間の単位には
PaperI
とFITS
スタンダードで定義された値に世紀を加えたものが許 容される。下左が推奨されるが下右も使える。- s:
秒(
デフォルト) - min:
分(= 60 s) - d:
日(= 86,400 s) - h:
時間(= 3600 s)
- a: (
ユリウス)
年(= 365.25 d) - yr: (
ユリウス)
年(= a = 365.25 d) - cy: (
ユリウス)
世紀(= 100 a) - ta:
回帰年(
太陽年)
- Ba:
ベッセル年20ITRS=International Terrestrial Reference System:国際地球基準座標系
21ICRS = International Celestial Reference System: 国際天文基準座標系、太陽系重心原点のIAU標準 の天球座標系。赤道座標系にほぼ同じ
ta
とBa
の使用は推奨されないがPaperIV
にはこれらの詳しい定義式も書いてある。時 間単位のキーワードは次の通り。TIMEUNIT (
文字列、デフォルトはs
)6.6.2.3
時間データに影響するアイテム:
訂正、エラーなど以下のキーワードの値はすべて
TIMEUNIT
またはローカルなオーバーライドで表現され る(
デフォルトはs)
。いずれも詳細はPaperIV
参照。【タイムオフセット】
TIMEOFFS (
浮動小数):
デフォルトは0.0
【絶対的時間エラー】
TIMSYER (
浮動小数)
(
これまでの論文で定義されたシステマティックエラーと等価)
【相対的エラー】
TIMRDER (
浮動小数)
【時間分解能】
TIMEDEL (
浮動小数)
【ピクセル内の時間位置】
TIMEPIXR (
浮動小数)
(
タイムスタンプのピクセル位置; 0.0
〜1.0,
デフォルトは0.5)
6.6.2.4
グローバルな時間値を表現するキーワード以下のキーワードの時間値はヘッダーにのみ現れデータ中のいかなる時間軸とも独立で ある。