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市町村・児童相談所における新しい子ども虐待対応システ ムのあり方

―日本におけるディファレンシャル・レスポンスの援用―

Ⅳ−1 千葉県中央児童相談所 渡邉 直

DR

の前提

子ども虐待の疑いを認知(通告受理)した支援者(市町村や児童相談所、以下、児相等 と表記する)が、子ども虐待が起きた家族(以下、当事者家族等と表記する)に関する 情報を収集し整理し統合し、対応について意思決定(振り分け)されていく過程の前提 として、児相等は何についての話しを当事者家族等としていくのか、以下に振り分けを 行う前提(前段階)について考えてみたい。

◆子どもの安全について話すということ

児相等が子ども虐待の早期発見・早期対応の局面において当事者家族等に関わるのは子 どもの安全が阻害されている疑いがある時である。児相等は子どもへの何らかの危害が ある際には子どもに起きた危害を特定し、危害発生のWH(時間 When、人 Who、

場所 Where、何 What、どのように How、なぜ Why を除く)を当事者家族等に聞く。

それを明らかにする過程で同じようなWH の状況下でも起きなかった例外等を当 事者家族等に思い出してもらう。それらを参考に起きた危害が繰り返されないことに向 けて、家族自らが社会的により望ましい非暴力な行動選択が可能となるようサポートを する。非暴力な行動選択が可能となるよう立てたプランを確実に遂行するために、これ から家族は誰によるどんな手助けを得ることになるのか、あわせて家族の「こうなりた い」という家族像を早い段階で明確にしていく。家族像実現のプロセスの非暴力化に向 けて、そうすることが子どもの権利利益にも適うのだということ、そして、家族自らが 子どもの安全につながる手法を用いていくことへのモチベーションをあげ、家族ととも に歩んでいくその旅路に同行する役割が児相等にあるのだと思う。つまり子どもの安全 についてのお話しをしていくというのが、児相等が当事者家族等と初動からしていく主 要なテーマとなる。

◆子どもの安全について話すのは誰か

さて、そのようなお話しを当事者家族等していくことは、権限を持っている児童相談所 だけができることだろうか。平成16年に児童福祉法、及び児童虐待の防止等に関する法 律の第一次改正がなされて以降は市町村も虐待の疑いがある際の通告受理機関となっ た。従って、子どもの安全に焦点を当てたお話しというのは、市町村もできるように

との確認と、危害がある際には家族が同じような状況でそうならないよう、当面の安全 確保のプランづくりを含めてしていかなければならない責務が生じた。しかし、子ども の安全に関してのお話しというのは、言ってしまうと当事者家族等との関係性がわるく なる、あるいは、反発されたらどうしよう等、指摘する人と当事者家族等との関係性つ ながりに、悪影響を及ぼしてしまうのではないかという漠然とした不安がつきまとう。

当事者家族等に「それは躾けのことだから他人にはああだこうだと言われたくない」と、

子どもの安全について話しをしようというモチベーションが低い場合には尚更である。

それらの状況から、非自主性が強い時にはできれば自分がトラブル、苦情的対応の矢面 に立ちたくない、当事者家族等に直面化させるのは他の誰かがしてくれたら、と思いた くなる気持ちは分かる。けれども、当事者家族等に子どもの安全についての話しをする かしないかのモチベーションがあるかとうかは、一声かけてみないと分からない。当事 者家族等に近い存在である市町村の実務者もひと声かけていくことの試みをしていかな くてはいけない状況において、そして、実際に子どもの安全が阻害されていて、更に身 近な市町村がその状況を把握しているのにもかかわらず、市町村により何も確認される ことなく、いきなり児童相談所が家庭訪問等のアクセスをしなくてはいけない状況にな ることもある。そのようなケースの場合は後に「何で地域が分かっていたのに一声もな かったの?分かっているなら、一声かけてもらえれば児童相談所が来る前に自分たちで 子どもへの対応を注意できたのに…」と語る当事者家族等も多く存在する。児童相談所 が直に接触することが当事者家族等の負担が高い場合もある。当事者家族等が全く市町 村の声かけに反応しない場合には児童相談所が話しをしなくてはいけないという状況は 止むを得ない。しかし、市町村が一声もかけずに児童相談所に送致というのは、あまり にもステレオタイプな役割分担思考ではないかと考える。

◆まとめ

初動の段階から子どもの安全について話せるか話せないかは大きな分岐点のひとつと考 える。児相等と当事者家族等との関係性を構築する際には、これから児相等が関わるこ とで何がどうなっていくかの道筋を透明性を持って伝えられた方が伝えられないよりも ましである。子どもの安全に問題がある疑いがある場合にはすべての当事者家族等に同 じように対応していくこと、そして、子どもの安全を高めるためにできることを一緒に 考えたいこと等を率直に伝えたい。それらのことが可能となるかならないかが、DR の 前提として、児相等が当事者家族等に関わる基準になると思われる。

Ⅳ−2 鎌倉三浦地域児童相談所 田代 充生

現在児童相談所では、警察からの虐待の通告が増加している。神奈川県所管の平成25年 度の虐待受理件数2,484件であるが、そのうち警察からの虐待通告件数は1,063件で、その 比率は全体の受理件数の42.8%にものぼる。ちなみに、平成24年度は虐待受理件数2,282 件で、そのうち警察からの虐待通告件数は798件で、その比率は全体の受理件数の35.0%

である。割合としては7.8%、件数としては265件増加している。鎌倉三浦地域児童相談所 においても、平成25年度受理件数211件のうち70件が警察からの虐待通告である。初期調 査を含め、児童福祉司は48時間以内に、子どもの安全を確認することが求められているた め、その対応に時間を割かれているのが現状である。なお、鎌倉三浦地域児童相談所にお いては、平成25年度中に通告を受けたケースの47件が、同年度中に閉止している状況であ る。警察からの通告のうち、重篤なケースもあり警察や地域からの通告は、児童の安全を 守るためには非常に重要な情報であるが、何割かは家庭訪問とともに、所属が確認されれ ば閉止されている状況にある。児童相談所として本来重要するべきケースについて、増加 している新規の通告ケースに対応をすることで、手が回らないこともあり、混乱が生じて いる印象を持っている。

その様な問題に加え、今後児童相談所へのホットラインが桁化されることで、児童相 談所への通告は更に増加することが考えられる。まだまだ、市町村と児童相談所で役割に ついて整理がされていない状況の中、ホットラインの電話番号の桁化によって児童相談 所の機能はこのままではパンクすることも危惧される。

これに対して DR によって、通告の内容を振り分けして、市町村と児童相談所の持つ機 能を使い、それぞれの役割を発揮するようにすることで、市町村と児童相談所の連携を再 構築することが出来るのではないだろうか。

しかも DR によって、現時点では虐待の深刻度はそれほど高くはないが、「未来にその 影響が深刻になるネグレクト」を予防させる仕組みも取り入れられるのではないかと期待 している。現在、児童相談所ではネグレクトの対応にあまり効果的な方法を持ちえていな いのではないか。ネグレクトは眼に見えにくい虐待で、子どもの自己肯定感を低下させる とともに、親にも気づかせ難い。DR を導入することで、これからは市町村と児童相談所 が連携してネグレクト家庭への細やかな支援と介入がバランスよく実践されることを期待 している。

子どもの安全・安心に対して課題を明確にして、市町村や児童相談所の機能を効果的に 発揮するために、DR とともに、サインズ・オブ・セーフティーアプローチがその共通言 語として機能していくことが、市町村と児童相談所が連携するために、大切な要素と考え ていることも付け加えておきたい。

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