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本研究は,高齢者の「食物選択動機」の構造を明らかにし,男女高齢者の因子構造が同様 であるかを検討することを目的とした。先行研究をもとに多次元の食物選択動機因子を想定 しながら,探索的に因子の抽出を試みた。その結果,「気分/感覚」「品質の明示性」「体重コン トロール」「健康管理」「栄養バランス」「調理の手軽さ」「親和性」「関係性の折り合い」「経済性」

の9つの因子を抽出した。

また,各下位尺度において因子負荷量の高い3項目ずつを選定し,9因子27項目からなる モデルを構築し,確認的因子分析を用いて検討した結果,モデルの適合度は統計学的な許容 水準を満たす適合度を示していた。本質問票は項目数が少ないにもかかわらず各下位因子の α係数は0.83~0.89と高く,内的整合性は高いものであった。

また,食行動に関する生活特性には性別による差がみられ,男女は別集団とみなされたが,

多母集団同時分析の結果,男女の構造モデルは配置不変性,測定不変性,および構造モデル の共分散が同質であることが確認された。

9 因子間の相関は.20~.52 であった。「健康管理」因子と「栄養バランス」因子の相関が 0.52とやや高く,食物の「栄養」と身体の「健康管理」とは密接に関連した動機と考えられ る。

下位因子および項目をSteptoeら68)の調査票(FCQ)(9因子 38項目)と比較すると7項 目が一致した。特に,第7因子の「親和性」因子の 3項目はFCQ の「Familiarity」の 3 項

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目と同様であった。FCQを訳して用いた島井122)の結果(8因子36項目)とは7項目が一致 し,瀬戸山・今田72)の結果(3因子25項目)とは6項目が共通していた。第6因子の「調理 の手軽さ因子」は島井122)の「調理の簡素化」因子の 3項目中 2項目が一致した。したがって,

本研究で得られた質問票は FCQ の内容を一部反映するものと考えられる。一方,富田・上 里 71)の調査票(4因子 18 項目)とほぼ同内容のものは 2項目であった。また,因子数は 9 であり,FCQの9因子と同数であったが,FCQにはみられる「Ethical Concern」に当たる 因子は得られなかった。量的検討とは別に,食の専門家に依頼して171の動機項目を分類し てもらったところ,3人が共通して「倫理性・宗教性」に分類した項目は2 項目のみであっ た(表 5-10)。日本人の場合,宗教的な信心によって食物選択を左右されることが少ないと 推測されること,環境に対する配慮の動機は,「倫理性・宗教性」ではなく,「品質」に関する 動機としてまとまったことが因子として抽出されなかった原因と考えられる。また,動物愛 護の理由やベジタリアンなどの理由のために,特定の食物を排除するような傾向は日本人に おいて少ないのではないかと推察された。さらに,Lindeman & Väänänen69)が述べたよう に,「倫理的」な食物選択動機は,他の「健康」「感覚的魅力」「価格」よりも重要度が低く評 価されたことなどから,因子として抽出されなかったものと考えられる。

第1因子の「気分/感覚因子」は,FCQの「Sensory Appeal」因子に含まれる1項目,島 井 122)の「感覚的魅力」因子に含まれる 1 項目と一致した。しかし,感覚器を通して食物か ら得られる「感覚」的な事柄にとどまらず,FCQの「Mood」因子や島井122)の「気分」因子 を加味した項目から構成されたと考えられる。

第2因子の「品質の明示性」因子は銘柄,品種,製造者,製造日を確かめるという動機を 表していた。富田・上里 71)は,「食材の質と適切さ」という因子を分析過程で見出し,日本 人の食行動に対する関心や態度の特徴を示していると述べている。しかし,彼らは,この因 子 が 若 者 に お い て 見 い だ さ れ な か っ た た め に , 調 査 票 を 構 成 す る 際 に 採 用 し な か っ た 。 Steptoeら68)は「Natural Content」因子を,島井122)は「自然志向」因子を見出し,食物の 品質や添加物を含まない自然素材志向の動機を報告している。いずれも食物の「品質」に関 する食物選択動機であり,食物選択を左右する理由と考えられる。

日経 BP コンサルティング149)が,50歳以上シニア812名を含む合計 1679名の男女に,

食品の購入動機や今後の購入意向を複数回答で尋ねた結果によると,65歳以上の人では,「賞 味期限」「食物添加物」「原産地表示」「栄養成分」「健康増進に役立つ」などの回答割合はい ずれも5割を超え,若者と比較して高い比率であった。高齢者は「産地・加工地が明示され ている」「食品添加物の表示がある」といった自然志向の食物の購入意向があり,「栄養成分」

に対して気をつけている149)。さらに,60歳以上は,若年層に比べて有機農産物をよく買う など,高齢者層は健康に配慮した食物選択動機を持っている149)。したがって,「品質の明示 性因子」は,高齢消費者の食物選択動機として妥当な内容と考えられる。

次に,本研究の「健康管理」因子,「栄養バランス」因子の項目は,FCQの「Health」に含ま れる項目と類似していた。また,Falk et al.135)は高齢者の語りから「身体的ウェルビーイン

グ(physical well-being)」という動機を見出しており,「体調管理」因子はこれと類似した動

機であると考えられる。

わが国の平成23年度死亡原因は,第1位は悪性新生物(28.5%),第2位は心疾患(15.5%),

第3位は肺炎(9.9%),4位が脳血管疾患である150)。脳血管疾患が循環器疾患の危険因子と して,高血圧,脂質異常症および肥満などが指摘されている 151)。動脈硬化に対して脂質異

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常症が主要な危険因子とされ,欧米では,食事指導において脂質摂取の抑制が中心課題であ った 151)。現代では,脳血管疾患で死亡する人の割合は以前と比べて低下してきているもの の,23年度は4位であり依然として上位の死因である。したがって,「血液をサラサラにす る」ことを重視することは,適切な食物選択によって循環器疾患などを予防し,健康を維持 することと関連させて捉えられていると考えられる。また,食物制限などの医療的要因 82) も,食物選択の理由となっていると考えられる。

第3因子の「体重コントロール」因子は「低カロリー」「砂糖が少ない」「高カロリー」等 の項目から構成され,このうち「低カロリーである」「砂糖が少ない」の 2 項目は富田・上 里 71)の見出した「低カロリー」因子を構成する項目と同様であった。また,本研究の「高カ ロリーである」は「低カロリーである」と反対の意味でありながら,反転項目とはならなかった。

「高カロリーである」という認知的様相が,どのような食行動と結びつくかは今後検討を要す る。

第6因子の「調理の手軽さ」因子,第9因子の「経済性」因子は,簡便性や経済性を意味して いた。伊達ら 152)は,ファーストフードの利用理由として「簡便性」を報告しているが,大 学生 30 名と高齢者 30 名を比較したところ,「後片付けが簡単である」「手軽に利用できる」

「自分で料理する時間がない」等の簡便性の理由を挙げたのは大学生の割合のほうが高かっ た。高齢者はファーストフードの利用率も低く,簡便性の重要度は高齢者で低い 152)とされ ている。また,藤井ら153)は,中食の購入理由を 40歳代以下と50歳以上の消費者に尋ねた ところ,「便利」「調理時間の短縮」「調理が面倒・後片付けが不要」という理由を挙げた者の 割合は若い世代で高い 153)傾向にあることを報告し,これまでの研究報告では,高齢者が簡 便性を重視する傾向の低いことが報告されている。

しかし,壁谷沢ら 154)によると,レトルト食品や半調理のフライやハンバーグなど便利な 食材の利用頻度が高齢者で低いのは,高齢者自身が長年築き上げた生活の中に取り入れる必 然性が低いからであり,加工食品に多い油ものを好まない加齢に伴う食嗜好の変化からきて いると述べている。藤井ら 153)も,高齢者の一人暮らしの増加によって益々中食の需要が伸 びることを予測している。

さらに,河合 155)によると,要支援・要介護認定を受けた地域で一人暮らしをする在宅高 齢者のうち,「買い物をする商店を決めている」と答えた男性高齢者は,調理をほとんど行っ ておらず,総菜や弁当を購入している。女性高齢者は店が「近い」ことや,買いたい「総菜」

が売られている店を利用している 153)。さらに,食事の支度負担が外食を行う理由でもある

156)。このように高齢者においては,ファーストフードやレトルト食品など食べ馴れない,あ るいは使い慣れない簡便な食材を購入せず,それらの食物に対する簡便性の重要度は低いが,

総菜,弁当,調理の手間を省く食物を求める傾向があることは否めない。本研究の対象者の 約8割は,食物購入に便利な場所に住居を構え,生活機能の高い人たちであったが,調理や 食材確保の手軽さは,高齢者の食物選択の理由として重要であると考えられる。

日経 BP コンサルティング149)が,50歳以上シニア812人を含む合計 1679人の男女に,

食品の購入動機や今後の購入意向を複数回答で尋ねた結果によると,価格が安い食品を「積 極的に購入したい」と回答したのは,65歳以上男性は15.3%,女性は7.2%であった。20歳 代~40歳代と比較すると,高齢者は食品の価格の安さにはこだわらない149)傾向があること が報告されている。平成23年度版高齢社会白書157)では,世帯主の年齢が65歳以上の世帯 の貯蓄率は全世帯平均の約 1.4 倍であり,4000 万円以上の貯蓄を有する世帯は,全世帯の

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