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3 本稿の目的

3. 調査結果と分析

3.1 依頼のパターン

トーク画面をみていると,対面や LINE 上のおしゃべりのときと異なり,依頼を一気に行っている例が目につく(図 1 参照).そこでここでは情報を吹出内にどのように配置して依頼を行っているかをみる.相手が承諾するまでの吹出と内 容の配置のパターンをみると、以下のように,大きく「単発一気型」、「多発一気型」、「混合型」、「往還型」の4種に分か

れる1

①単発一気型:一つの吹出で切り出し(挨拶/呼びかけなど)から依頼までを行い,相手から了承を得ているもの(図1)

②多発一気型:切り出し(挨拶/呼びかけなど)から依頼まで吹出を2つ以上分けて,相手からの反応を待たずに依頼を 行い,相手から了承を得ているもの(図2)

③混合型(2種類).③-1.混合単発一気型:最初に(挨拶や依頼の前置きなどの)相手との往還があるが,依頼部分は 一

つの吹出で行っているもの(図3) ③-2.混合多発一気型:(挨拶や依頼の前置きなどの)相手との往還があるが,

頼部分は複数の吹出に分けて相手からの反応を待たずに一気に依頼しているもの ④往還型:相手と複数回のやりとりや交渉を往還させて了承を得ているもの(図4)

200件のトークの内訳を表1に示す.①と②は一気型とまとめることができ,③も最初の挨拶や呼びかけなどのやりとり が終わると一気に依頼を行う型であるため,状況説明,依頼説明,補償,依頼などの要素が一気に一つの吹出内に詰め込 まれるという意味で一気型に近い.①と②を合わせて全体の60.5%,③を加えると81.0%が一気型あるいはそれに近い形 で依頼をしているということである.すなわち,LINEでは対面とは大きく異なり,相手の反応を待たずに一気に依頼する パターンが圧倒的に多いのである.その理由をフォローアップインタビューで聞いてみたところ,情報を小出しにして相 手の反応を待つというやり方では話が終わらないところで相手が反応してきて,やりとりに時間がかかり煩雑になる上,

無駄な憶測や心配を抱かせてしまう.一気に用事を述べるほうが効率的で相手にも配慮しているという回答が多かった.

目前に相手がいる場合は様子や反応を踏まえて次を決めるがLINEの場合は異なる配慮と留意が必要であることが分かる.

図1.単発一気型 図2.多発一気型

1 三宅(2019)でも類似の考察を行っているが、今回は相手の承諾を得るまでにどのような吹出と内容配置のパターンをみたものである.

図3.混合型(往還+単発一気) 図4.往還型 表 1.相手が承諾するまでの依頼パターン(件)

1 単独一気型 46

2 多発一気型 75

3 混合型 41

4 往還型 38

合計 200

3.2 トークの長さ

1トークの平均吹出数と平均発話数を表 1~2 にまとめた.M は男性,F は女性を表す.1 トーク中の吹出数(表 1)は 最小で 3~4 個,多いものは 33 個である.女性(特に女性同士)のほうが、男性よりも吹出数に個人差が大きい.また女 性,男性ともに異性に対しては吹出数が少なくなる傾向がある.男性から女性へのトークで吹出数の個人差が最も少ない.

1 トーク中の発話数(表 2)は最小で 6~7 発話,最大で 36 発話である.女性同士の平均発話数が最も多いことが分かる と共に,女性は相手の性の如何によらず男性よりも発話数に個人差が大きいことも分かる.女性,男性ともに異性に対し ては発話数が少なくなる傾向がある.ここでも,男性から女性へのトークで発話数の個人差が最も少ない.

表 1 と表 2 を比較すると、男性は吹出数が女性とさほど変わらないのに発話数は少なめである.これは吹出に入ってい る発話が少ないということである.なお,今回は語数をカウントしていないために顕著に差が見えないが,男性の発話は 感動詞「うん?」や「なに」など非常に短いものが多く,これらも 1 発話と数えているため,実際に画面で見ると,文字 量の男女差はさらに大きい.

3.3 被依頼者の負担感

この調査では,「WEB アンケート調査に答える」というタスクを「選択式で所要 2~3 分程度」と「自由記述で所要 10 分程度」として軽い負担,重い負担に分けて相手の負担の感じ方をみている.負担度の男女差をまとめたのが表 4 である (%).

表 4.協力者が感じた負担度:性差(%) 関 係

負担度

F-F F-M M-F M-M

1 72.41 60.00 75.00 36.11 2 20.68 28.33 22.22 50.00 3 5.17 10.00 2.77 13.88 4 1.72 1.66 0.00 0.00 合計 99.99 99.99 99.99 99.99

表 4 では,例えば F-M の場合,女性から依頼された場合に男性が感じた負担度という見方をすることになる.女性は依 頼主の性別によらずまったく負担に感じなかった人が大半であるが,非常に負担に感じた人も含まれており,負担度の感 じ方に振れ幅が大きい.これに対し男性は,負担に感じる度合いが女性より高い傾向がある.特に男性からの依頼に対し

表 1.トーク中の平均吹出数

関係 吹出数 吹出数の個人差 M-M 8.50 4~23

M-F 8.31 3~16 F-M 8.22 3~27 F-F 8.73 3~33

表 2.1 トーク中の平均発話数 関係 発話数 発話数の個人差 M-M 11.31 6~25

M-F 10.87 6~19 F-M 11.73 6~33 F-F 12.35 7~36

表 3.吹出中の発話数平均 関係 発話平均/吹出平均 M-M 1.33

M-F 1.31 F-M 1.43 F-F 1.41

負担感

1=まったく負担を感じなかった 2=あまり負担を感じなかった 3=少し負担を感じた 4=非常に負担を感じた

てはこの傾向が強い.この結果の判断は難しいところだが,男性同士のざっくばらんさから負担を感じやすいのかもしれ ない.

3.4 ヴィジュアル要素の使われ方

ヴィジュアル要素である絵記号(絵文字,顔文字,記号)とスタンプの使われ方を表 5 にみる.データの全体構造を開 始部,主要部,収束部,終了部(詳細は三宅,2019 参照)に分けて分析すると,絵記号とスタンプの使用のされ方に異な りがみられることが分かる(表中,「開始:絵」は「開始部で使用された絵記号数」,「開始:ス」は「開始部で使用され たスタンプ数」を表す.以下同様).開始部では絵記号に比べてスタンプの使用は少ない.一方主要部では絵記号が頻繁 に,配慮が必要な箇所で使われている(三宅,2019).スタンプが最も多く使われているのは収束部である.絵文字を凌 駕する数で使われているが,スタンプがサイズや表現性,動きの幅などにおいて絵文字を遙かに超えるインパクトをもつ ことを考えると,収束部におけるスタンプの使われ方は注目に値する.ここでは依頼者の感謝や相手が今後の予定を了解 したときなどの後に非常に多く使われており,収束部におけるやりとりの終結を示す役割を担っているということができ よう。

ここでも男女差をみておきたい.女性が圧倒的な数でヴィジュアル要素を使っている.男女の数が異なることを差 し引いてもこれは変わらない.表5の右端に使用の平均を出しているが,女性は女性に対して最も多くヴィジュア ル要素を使用しており,男性に対してはヴィジュアル要素使用が少なく抑えられている.一方男性のヴィジュアル 要素使用は非常に少なく,特に男同士のトークには最も少なくなる.しかし女性に対してはヴィジュアル要素の使 用が増加しており,この結果はケータイメール隆盛時のヴィジュアル要素使用と類似しており(三宅2005参照), 興味深い.

表 5.ヴィジュアル要素使用(件)

開始:絵 開始:ス 主要:絵 主要:ス 収束:絵 収束:ス 終了:絵 終了:ス 計 平均

F-F 31 7 81 33 34 38 0 0 244 3.50

F-M 24 4 75 17 30 25 0 1 176 2.75

M-F 3 0 17 4 3 10 0 1 38 1.06

M-M 2 0 12 6 4 4 0 0 28 0.78

計 60 11 185 60 71 77 0 2 466 2.33

F-F64件,F-M64名,M-F36件,M-M36件

4. まとめ

以上概観したように,LINE におけるコミュニケーションは対面のコミュニケーションとは様々に異なる側面がある.対 面との最も顕著な違いは①イントネーション,リズム,ポーズ,声質といったパラ言語情報がない,②非言語情報がない,

③タイムラグがあるといったことであろう.①と②の要素を補完するために絵記号やスタンプなどのヴィジュアル要素が 利用されるとはよくいわれることだが,モバイル・メディアのヴィジュアル要素は対面要素欠落の補強以上のものをもっ ている(三宅,2005).また,タイムラグは不都合さのみではなく,推敲する時間の確保や自己表現の自由さやときには 情報操作も可能にする.このような特性を考慮に入れながらモバイル・メディアの研究は進めていく必要があるだろう.

参考文献

総務省情報通信政策研究所 (2019). 平成 30 年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書, http://www.soumu.go.jp/main_content/000644166.pdf(2019.09.20)

三宅和子 (2005). 携帯メールの話しことばと書きことば-電子メディア時代のヴィジュアル・コミュニケーション- 三 宅和子他(編著). メディアとことば, 2, 234-261.

三宅和子 (2019). モバイル・メディアにおける配慮-LINE の依頼談話の特徴- 山岡政紀(編) 日本語配慮表現の原理と 諸相 くろしお出版 pp.163-180.

メディアの機能は言語使用をどのように変えるか?

-LINE チャット・携帯メール・対面会話における終助詞の使用と不使用を例に-

落合哉人(筑波大学大学院生)