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転換タイプによる開始表現の使い分け

4.1 平均使用頻度

3 つの転換タイプの話題数の間にかなりの差が存在するため,それぞれの開始表現の数を集計しても比較にはな らない.そこで,開始表現がどれぐらい使われたかを図る指標として,「平均使用頻度」を提示する.

た計算になる.これが認識の変化を示す表現が派生型における「平均使用頻度」である.

4.2~4.4は,6つの言語表現を調査した結果をもとに,転換タイプごとの日中の共通点と相違点を考察する.

4.2 派生型

の3点を果たす.話の流れを切らずに,躊躇しながら派生型を導入していく傾向は日中共通に見られたと言える.

様子が伺え,「考えていること」を示す言いよどみ表現を用いることで,発話権を維持しながら話題を展開していく.

1開始者の発話が相手により割り込まれたりする場合もあるが,開始者の発話が終わるまでを「一発話目」とする.

2 6つの表現の日本語の例を少しばかり挙げる.「認識の変化を示す表現」:え,あ,あれ,等.「言いよどみ表現」:あの,その,なんか,

等.「メタ言語表現」:言ったっけ,変なあれですけど,てか,等.「呼びかけ表現」:ねー,聞いて,相手の名前,等.「話題となる事柄 を際立たせる表現」:は(提題),って(引用),とか(列挙),倒置,くり返し,等.「接続表現」:だから,でも,なので,等.

例1では,認識の変化を示す表現(「え」)が1 回出現した.日本語200回の派生型において認 識の変化を示す表現が29回出現したため,平均 1回に0.15回の認識の変化を示す表現が出現し

(1)共通点:メタ言語表現と呼びかけ表現が少 なく,言いよどみ表現が多い.

派生型は関係のある話を導入するため,堅いイ メージを与えるメタ言語表現と,二人会話に不必 要と思われる呼びかけ表現の使用が控えている.

その代わり,言語表現や話題内容を考えているこ とを示す言いよどみの多用により,1)話題導入 に必要な時間的猶予を与える;2)考えている時 のつなぎ言葉;3)「会話の流れを変える際につき まとう強引さを緩和する働き」;(楊2009:48)

例2は,C9とC10がア メリカドラマについて話 し合っている中,C9は『ウ エストワールド』の設定 からそれと似た『ファイ ナル・デスティネーショ ン』を話題に持ち出した 例である.ドラマの名前 が一時思い出せなかった

(2)相違点:日本語は話題となる事柄を際立たせる表現が多い.

表現の「絶対」を用い,話題となる事柄を導入する際に伴う躊躇を見せ,相手の反応を見ながら導入していく.中 国語にこのような表現が少なく,その代わりに言いよどみが多用され,自分側の整理に専念する傾向が見られた.

4.3 新出型

(2)相違点:日本語は呼びかけ表現と話題となる事柄を際立たせる表現が多い.中国語は言いよどみ表現が多い.

日本語の呼びかけ表現と話題となる事柄を際立たせる表現は中国語より多いと言える.これは,中国語において 呼びかけるために名前を直接呼ぶことが少ないことと,引用表現や提題表現などが少ないことと関連していると考 えられる.その代わりに言いよどみ表現が多用されるのは,聞き手の会話理解よりも,話題内容をどういう表現で 導入すべきかという話し手側の事情によるものだと考えられる.日中の会話例について,例4と5を挙げる.

話題をさらに発展していかず,新しい話題を導入するのは,友人同士でもあまり好ましくないように思われる.

それを緩和するために,あたかも今思い出したかように「え」を発話した.そのうえで名前で呼びかけ相手の注意 を引き,話題を導入する.このように,日本語会話には新出話題を導入する際,相手を呼びかけることで話題の導 入を明示し,そのうえで何について話すかを提示するという傾向がある.

(1)共通点:認識の変化を示す表現が多く,接 続表現が少ない.

新出型は突然気づいたことを前触れなしに導 入するため,唐突さが伴われる.例えば,「あ、

そういえば」で始まる話題では,認識の変化を 示す表現の使用によりその唐突さが軽減できる と考えられる.また,日中共に接続表現の使用 が少ないのは前後話題につながりがないことと 関係していると考えられる.

例3でJ2は,戦争中に名乗る間に殺 される話から,「○○間に殺される」と いう派生関係から,仮面ライダーが変 身中に殺されるのはあり得ないという 話を導入した.接続表現の「だから」

で直前話題との関係を表示したうえ で,「やったら」「さ」「なんて」と倒置

例4は,J1が毎朝ラジオ体操をしていること を冗談のように話し,4秒の沈黙を経て,突然 思い出したかのようにJ2の実家であるH県の ことを聞き出そうとした例である.【H 県】は これまで一回も出たことがなく,直前の話題と 関係があるとは考えにくい新出話題である.

一方,中国語会話は,例5のよ うに,直前のスパゲッティと無関 係のドラマの話を導入するのに,

言いよどみが4回,認識の変化を 示す表現が1回用いられた.他に,

列挙表現の「とか」もあるが,中 国語に話題となる事柄を際立た せる表現がそもそも少なく,まず 自分側の考えを整理し,言語表現 と話題内容を考えながら話題を 導入していく傾向がある.

4.4 再出型

(2)相違点:日本語は認識の変化を示す表現と接続表現が多い.

表示するのに「で」が用いられたと考えられる.図3から分かるように,日本語会話の,1回の再出型に接続表現 が0.60回も使用されることから,この「関係性」の表示が必要のように思われ,前述の「記憶の呼び戻し」とも関 連している.一方,中国語会話に現場にある事柄から発展した再出型が多かった.言語外文脈を考慮に入れると,

直前話題と無関係でも,参加者の二人は,現場にある事柄だから特に多くの言語処理を行わずに済むため,関係性・

無関係性を表示する必要もなくなるのではないかと考えられる.

5. まとめと今後の課題

本発表を以下のようにまとめる.派生型はよく言いよどみが使用され,話の流れを切らずに躊躇しながら導入す る傾向がある.新出型は話題導入に伴う唐突さを軽減するために,よく認識の変化を示す表現が使用される.再出 型は呼びかけ表現の使用が少ないことに日中が共通している.これらは,転換タイプ本来の特徴ゆえにこういう使 用傾向があると考えられる.相違点について,日本人は話題となる事柄を際立たせる表現を愛用することから,何 について話すかを先に相手に提示し,相手の会話理解を助けることに重きを置いている.それに対し,中国人は言 いよどみ表現を愛用することから,自分側の整理に専念し,会話相手の理解に重きを置いていないように思える.

しかし,同じ開始表現でも,メタ言語表現と呼びかけ表現とは違い,言いよどみ表現や接続表現などは話題開始 部以外のところでも現れるため,話題転換への貢献・効果に関しては同じではないと考えられる.今後,話題転換 への貢献・効果の視点から開始表現を見直し,更なる考察と検討が必要だと考えられる.

参考文献

木暮律子(2002).日本語母語話者と日本語学習者の話題転換表現の使用について 第二言語としての日本語の習得 研究,5,pp.5-23.凡人社

南不二男(1981).日常会話の話題の推移―松江テクストを資料として― 藤原与一先生古稀記念論集方言学論叢Ⅰ

―方言研究の推進―,pp.87-112.三省堂

村上恵・熊取谷哲夫(1995).談話トピックの結束性と展開構造表現研究,62,pp.101-111.表現学会

楊虹(2005a).日本語母語場面の会話に見られる話題開始表現人間文化論叢,8,pp.327-336.お茶の水女子大学

楊虹(2005b).話題転換研究の概観―タイプと方略を中心に 言語文化と日本語教育.増刊特集号,第二言語習得・教

育の研究最前線,2005,pp.159-189日本言語文化学研究会

楊虹(2009).中日接触場面における話題転換の研究お茶の水女子大学博士論文,pp.1-167.

(1)共通点:呼びかけ表現が少ない.

再出型は前に出た話を再導入するので,前話題 との関係に言及したり,言いよどみ表現で時間を 稼いだりすることは想像できるが,相手の注意を 引きつける必要はなく,むしろ話題内容に関する 記憶を呼び戻すことのほうが重要だと考えられ る.

99-1からの【宿泊代】は前の【J4のY〈地名〉

の旅】の延長なので,「再出型」とした.ここ で,メタ言語表現の「さっき話した」以外に,

認識の変化を示す表現「あ」,「そうだ」と接続 表現「で」が用いられている.直前話題との「無 関係性」を表示するのに「あ、そうだ」が用い られ,さらに「旅行」の話題との「関係性」を

日本語の雑談における物語の後続文脈への展開方法

張未未・早稲田大学大学院生

1.はじめに

大小様々の話題から構成される雑談の談話には,過去の出来事や体験を語る「物語(narrative)」(Labov 19721, 李 20002)がよ く生じる.この物語3は,前後の文脈から区別されるが,同時に連続性も保っているという(野村2000:48).日本語の会話教育 には,日本語学習者の物語に関する実践報告(木田・小玉, 2001; 中井, 2005等)はあるが,物語からどのように次の話題に展開 するかについては扱われていない.本研究では,文章・談話論の立場から,雑談における物語と後続文脈との関係を解明し,

上級日本語学習者に対する雑談の話題展開の会話教育への応用を目的としている.

2.先行研究

日本語教育の分野における物語に関する研究は,従来,物語の内部の構造と表現に焦点が置かれ,インタビューやストー リーテリングなどのタスクによって導き出される物語が主な研究対象とされてきた.

日本語の雑談に自然に生じる物語を取り上げて,その終了する過程に言及した研究は,李(2000),鈴木(2006),佐々木(2010) 等がある.物語の終了にその評価が述べられることが多いが,接触場面における学習者の物語には,評価が聞き手の日本語 母語話者との協働によって形成される傾向があるという(鈴木, 2006).学習者が自分の物語に評価を加えられないところに,

日本語教育の一つの問題点があると思われる.佐々木(2010)も,日本語母語場面では物語に対する評価が積極的に言語化さ れ,共感の構築が導かれるのに対して,日中接触場面では会話を滞らせずに先へと進めることが重視されると述べている.

雑談における物語に対する評価は,物語に直接関連しない話題をするための布石になりうるとされている(李2000:158-159) が,物語の後続文脈への具体的な展開方法は明確にされていない.

雑談の談話の文脈展開を動態的に把握するために,佐久間(2002; 2009)の「接続表現」を主な形態的指標とする全3類14種 の「文脈展開機能(話題統括機能)」4の分析観点を導入する.本研究では,雑談における物語の話題から後続の話題がどのよ うに展開されるのかに着眼し,物語に後続する話題の「話題統括機能」(佐久間2009:112)を分析する.「最小の話題が一対の

『提題表現』と『叙述表現』からなる」(佐久間2002:167)ことから,物語の話題と後続の話題をそれぞれ「最小の話題」から なるまとまりとし,その話題のまとまりの統括機能に基づく「話段」(佐久間1987; 2003)という単位を用いる.

3.研究課題

本研究は,日本語の雑談における物語の後続文脈への展開方法について,日本語母語場面(以下,「母語場面」と称す)と日 中接触場面(以下,「接触場面」と称す)を比較し,日本語母語話者(以下,「NS」と称す)と中国人日本語学習者(以下,「CNS」

と称す)の相違を解明する3つの課題を設けた.

【課題1】母語場面の雑談におけるNSの物語の後続文脈への展開方法はどのようなものか.

【課題2】母語場面と接触場面の雑談におけるNSの物語の後続文脈への展開方法はどのように異なるのか.

【課題3】雑談におけるNSとCNSの物語の後続文脈への展開方法はどのように異なるのか.

     

1 Labov(1972) defines narrative as one method of recapitulating past experience by matching a verbal sequence of clauses to the sequence of events which (it is inferred) actually occurred.

2(2000:8)は,「物語」を「過去に発生した出来事を雑談の中で報告すること」と定義している.

3「会話物語」(メイナード,1993)とも呼ばれている.

4「接続表現だけではなく,指示・提題・叙述・反復・省略表現等による総合的な機能である」(佐久間2002:167).