2021
1 . 主系列星の内部構造
Ⅸ . 恒星の構造と進化
・恒星の内部は直接観測できない
→
外層の物理状態や理論モデルから推定1.1 . 主系列星の自己重力と圧力平衡
※恒星の内部
の想像図2021
・星の構造にはガスの自己重力を考慮して解く必要
→
一般には難しい。まずは球対称の自己重力ガス球で概算する・平均密度は 𝜌𝑚 = 𝑀
4𝜋/3 𝑅3 ⇒ 太陽で 𝜌𝑚 = 1.4 𝑔𝑐𝑚−3
・中心圧力は 𝑑𝑃 = 𝑃0 − 𝑃𝑐 中心・表面の差 , 𝑑𝑟 = 𝑅, 𝑟 = 𝑅
2 , 𝜌 = 𝜌𝑚, 𝑀𝑟 = 𝑀/2, で近似すると: 𝑃𝑐 = 2𝐺𝑀𝜌𝑚
𝑅 = 3𝐺𝑀2
2𝜋𝑅4 ⇒ 太陽で 𝑃𝑐 = 6 × 1015 𝑑𝑦𝑛 𝑐𝑚−2
・中心温度は状態方程式 𝑃 = (𝑅_𝑔 𝜌𝑇)/𝜇 と𝑃𝑐の式から 𝑇𝑐 = 1
𝑅𝑔/𝜇 𝑃𝑐
𝜌𝑚 = 𝜇 𝑅𝑔
2𝐺𝑀
𝑅 ⇒ 太陽で 𝑇𝑐~107 𝐾
正確な計算は方程式を立てて数値的に解く
⇒ 補足参照
※上記は太陽全体の質量・半径などの観測可能量
を元にした概算計算の例。計算式等を覚える必要 はない。2021
1.2 . 星内部のエネルギーの発生と輸送
・自己重力だけでなく核融合によるエネルギー発生も考慮の必要
→
エネルギーの発生と輸送/放射の釣合いを含む星の構造・力の釣合い
・連続の式
・輻射平衡
・エネルギー発生
これらを(微分)連立方程式として解く必要
(補足参照)
⇒普通は数値的にしか解けない
※左:星内部のある面からの輻射を示す模式図
右:星内部のある部分(黄四角)の力の釣合い2021
・問題を簡略化する仮定をして解く場合も多い
・例:エネルギー源が一様に分布と考える場合
(任意の半径
r
で光度(L
r)と内側質量(M
r)比が一定)⇒エディントン・モデルという(エディントンはモデル提唱者の名前)
・エディントン・モデルでは質量(
M
)と吸収係数(κ
)だけで決まる 上限光度(エディントン光度)が存在する(重力<輻射圧、となると星が吹き飛んでしまうので限界がある)
※エディントン光度での
重力と輻射圧の釣合い の図Ⅸ . 恒星の構造と進化
20211 . 主系列星の内部構造
自己重力ガス球
・恒星の内部は直接観測できない
→
外層の物理状態や理論モデルから推定・ で概算、核融合エネルギー考慮
→
エネルギーの発生と輸送/放射の釣合い・上限光度が存在(エディントン光度)
・力の釣合い
・連続の式
・輻射平衡
・エネルギー発生
【太陽の例】
・平均密度:
1.4𝑔𝑐𝑚
−3・中心圧力:
6 × 10
1515𝑑𝑦𝑛𝑐𝑚
−2・中心温度:
10
77𝐾
まとめ9-1
2 . 主系列星の質量光度関係
2021・主系列星では輻射圧と重力が平衡(水素の安定燃焼)
・質量大
→
中心温度高→
核融合反応高→
光度大⇒質量と光度に一定の関係(質量光度関係)
観測的には、
光度∝質量4 (
L ∝ M
4)(質量によって
M
3~M
5 の 幅がある)※グラフは質量と絶対等級にして
あるが、絶対等級は「等級」単位で 表した星の本来の明るさなので、星の本質的な明るさである「光度」
と1対1に対応する
(左図は質量×光度グラフと同等)
2021
・主系列星の寿命=燃料/消費率=質量/光度
→
M-3→
大質量星ほど短命※星はほとんど H
の塊なので「燃料」=
「質量」、「消費率」=
放射エネルギー=
「光度」2021
【主系列星のまとめ】
・質量
M,
表面温度T,
半径R,
光度L ←
このうち独立なのは質量M
だけ(ステファン・ボルツマンの法則、
HR
図、質量光度関係、等が関係)[
中心温度T
c]
:T
c=1
~4
×10
7K
(ほとんど差がない:一定)[
半径R]
:R ∝ M
(力学的平衡からGM/R
~(Rg/μ
)T
c )[
平均密度ρ
m]
:ρ
m∝ M
-2 (ρ
m=M/
(4πR
3/3
))[
光度L]
:L ∝ M
4 (質量光度関係)[
表面温度T]
:T ∝ M
1/2 (ステファン・ボルツマン則L=4πR
2σT
4)[
寿命T]
:T=E/L ∝ M
-3大質量星ほど明るく短命
2 . 主系列星の質量光度関係
2021・主系列星では輻射圧と重力が平衡(水素の安定燃焼)
・質量と光度に一定の関係(質量光度関係、光度∝質量4)
・主系列星の寿命=燃料/消費率=質量/光度
→
M-3・種々の関係から主系列星の性質は(ほぼ)質量で決まる
⇒ 大質量星ほど明るく短命
まとめ9-2
天文地球物理学Ⅰ 2021年度
3 . 星の進化
3.1 . 赤色巨星
・核融合の結果、中心で
He
が蓄積すると星の構造が変わる→
核融合が星中心からHe
コアを囲む殻燃焼へ・
He
コア:重力収縮。コア外層(=
殻燃焼内側)の密度減少・水素燃焼殻:不動。核融合が温度に敏感なため
・水素外層:水素燃焼殻の内側との密度を均すため外へ膨張
※左端:主系列星(星中心で核融合)、右端:中心の He
コアの周囲の殻で核融合2021
・赤色巨星の密度構造と赤色巨星化による半径変化(下左図)
左グラフで赤色巨星ではコア
-
外層の2層構造になっている 右グラフでは時間(横軸)と共に外層が膨らむ(~数百倍)・赤色巨星化に伴い
HR
図上では右上に移動(下右図)2021
※上図:赤色巨星の例
右図:上図のベテルギウスを太陽の位置に 置いた場合の想像図(木星軌道近くまである)
3 . 星の進化
20213.1 . 赤色巨星
・主系列星が寿命に
→
核融合が星中心からコアを囲む に変化
⇒外層が膨張して赤色巨星に
(太陽の数百倍の半径になるものも)
殻燃焼
まとめ9-3
3.2.その後の進化
2021・質量の大きい星は核融合した元素がさらに融合していく
・
H→He→C,O→Mg,Si→Fe
(元の核燃焼も続くためタマネギ構造に)(すべての元素が核融合反応で安定して残れるわけではないので、
星の中では上のような順で核融合が進んでいく)
・
Fe
は光分解(吸熱反応)するので、Fe
がさらに核融合しようとすると それ以上の反応が続かず中心が崩壊して超新星爆発が起こる※重い星が核融合が進んでタマネギ構造になっていく様子
2021
・ある程度重い星は
He
核融合が起こる過程でHR
図で水平に移動(漸近巨星分岐星:
AGB
星=Asymptotic Giant Branch
と呼ぶ)・質量別の具体的な進化は以下のとおり:
[M<0.08M
◎]
:中心温度が10
7K
に達しないので核融合が起きず褐色矮星に[0.08M
◎<M<0.46M
◎]
:H
核融合まで。赤色巨星を経てヘリウム白色矮星に[0.46M
◎<M<8M
◎]
:He→C,O核融合まで。赤色巨星を経てCO白色矮星に [8M
◎<M<30M
◎]
:Fe
コアの崩壊で重力崩壊型超新星爆発。後に中性子星[30M
◎<M]
:重力崩壊型超新星。後にブラックホール※左図では太
陽質量の40
倍 以上でブラック ホールとあるが 理論モデルによ るので30
倍とす るのが一般的天文地球物理学Ⅰ 2021年度
3.2.その後の進化
・質量の小さい星は質量放出後のコアが白色矮星に
・質量の大きい星は核融合した元素がさらに融合していく
(重い星は途中
HR
図で水平に移動し漸近巨星分岐星(AGB
星)に)・
H→He→C,O→Mg,Si→Fe
(元の核燃焼も続くため )・
Fe
は光分解(吸熱反応)するので、その段階で超新星爆発が起こる タマネギ構造まとめ9-4
4 . 星の最期
20214.1 . 小質量星の最期
・
M<8M
◎の星の最期:主系列星
→
赤色巨星(途中質量放出(惑星状星雲))→
白色矮星※小質量星が
赤色巨星から 白色矮星に至 る途中で質量 放出したガス が星の回りに 拡がってでき たのが惑星状 星雲左図は惑星状 星雲の様々な バリエーション
【白色矮星】 2021
・核融合後の中心部コア(
He,C,O
)が残った高密度星・大きさは地球程度(太陽の
1/100
)だが、質量は太陽程度・白色矮星は電子が縮退した縮退圧で重力を支えている
(密度
ρ
~数トン/cm
3)・縮退ガスでは圧力(電子圧)は密度
ρ
のみによる→
質量が大きくなると圧力で支えるため半径が小 さくなって密度を大きくするが限界がある⇒チャンドラセカール限界(~ 1.4
太陽質量)(この限界を超えるとⅠ
a
型超新星になる)※白色矮星の質量と半径(左)、密度(右)グラフ、 Mch
がチャンドラセカール限界※上:白色矮星の大きさ比較
下:白色矮星の例(シリウスの伴星)
4 . 星の最期
20214.1 . 小質量星の最期
・
M<8M
◎の星の最期:主系列星
→
赤色巨星( (惑星状星雲))→
白色矮星【白色矮星】
・核融合後の中心部コア
・大きさは地球程度(
1/100
太陽)・質量は太陽程度
・電子の縮退圧で重力を支える
(密度ρ~数トン
/cm
3)・限界質量(チャンドラセカール質量)
質量放出
まとめ9-5
4.2 . 中大質量星の最期
2021・
8M
◎<M
の星の最期:中心核の重力崩壊
→
(Ⅱ型)超新星爆発(重力崩壊型超新星)→
吹き飛ばされた外層は超新星残骸となり、跡に、中性子星(元の星が
M<30M
◎)、又はブラックホール2021
※カニ星雲(超新星残骸)を様々な波長で観測したもの。右下の中心には中性子星
【中性子星】 2021
・超新星爆発の中心部コア(
Fe
)が重力崩壊で残った高密度星・大きさは数十km、質量は太陽程度~太陽の3倍程度以下
・中性子の縮退圧で重力を支えている
(原子核が詰まっているようなもの:密度
ρ
~数億トン/cm
3)・中性子の縮退圧にも限界があるので中性子星質量にも限界
・電波を放射する中性子星はパルサーと呼ばれる
※左図:中性子星の内部構造(理論モデル)、右図:電波を出す中性子星(パルサー)
【ブラックホール】 2021
・光さえも脱出できなくなった天体(時空間の穴)
・超新星爆発後、重力崩壊が中性子星の限界を超えるとできる
(銀河中心等には超大質量ブラックホールもあると考えられる)
・質量・自転・電荷の性質しか残らない
・一番単純な、静止球対称ブラックホールが シュバルツシルト・ブラックホール
(他に回転のあるカー・ブラックホールなど)
・シュバルツシルトBHの表面
=
事象の地平線(その内側からは光さえ出てこれない)
→シュバルツシルト半径: r
s=2GM/c
2(~数
km
程度しかない)・カーBHではエルゴ領域という特異領域も
・単独BHは見えないが周囲に降着円盤が
あるとそれでBHの存在が推定できる(右下図)
※ブラックホールそのものは光も吸い込
み見えないが、隣に別の星があってそこ から物質流入があるとそれが見えること も(降着円盤と呼ぶ:右図の例)4.2 . 中大質量星の最期
2021・
8M
◎<M
の星の最期:中心核の重力崩壊
→
(Ⅱ型)超新星爆発(重力崩壊型超新星)→
外層は 、跡に、中性子星又はブラックホール【中性子星】
・大きさは数十km、質量は太陽数倍
・中性子の縮退圧で重力を支える
・中性子星質量にも限界
・電波を放射するものはパルサーに
【ブラックホール】
・光さえも脱出できなくなった天体
・重力崩壊で中性子星限界超で
(銀河中心等には超大質量ブラック ホールもあると考えられる)
・質量・自転・電荷の性質だけ残る
超新星残骸
まとめ9-6
2021
・補足1:自己重力ガス球の構造(E発生なし) 補足9-1
−𝐺𝑀𝑟 𝑟2 − 1
𝜌 𝑑𝑃
𝑑𝑟 = 0 ∶ 静水圧平衡(重力と圧力の釣合い)
𝑑𝑀𝑟
𝑑𝑟 = 4𝜋𝑟2𝜌 ∶ 連続の式(ガス分布と重力の関係)
𝑃 = 𝐾𝜌𝛾 ∶ ポリトロピック関係を仮定(𝐾と𝛾は定数)
1 𝜉2
𝑑
𝑑𝜉 𝜉2 𝑑𝐷
𝑑𝜉 = −𝐷𝑁 ∶ 𝛾 = 1 + 1
𝑁, 𝑟 = 𝑁 + 1 𝐾𝜌𝑐1+1/𝑁
4𝜋𝐺𝜌𝑐2 𝜉, 𝜌 = 𝜌𝑐𝐷𝑁 𝑑
𝑑𝑟 𝑟2
𝜌 𝑑
𝑑𝑟 𝐾𝜌𝛾 = −4𝜋𝐺𝑟2𝜌
境界条件: 𝜉 = 0で𝐷 = 1 𝑟 = 0で𝜌 = 𝜌𝑐 , 𝜉 = 0で𝑑𝐷
𝑑𝜉 = 0 𝑟 = 0で𝑑𝑃
𝑑𝑟 = 0
𝑁 または𝛾 をパラメータとして解いて構造を求める ガス球が水素原子の場合:𝛾 = 5/3 𝑁 = 3/2 に相当
レーン・エムデン方程式
・補足2:力学平衡と輻射輸送を考慮した星の構造 補足9-22021
・力の釣合い:𝑑𝑃
𝑑𝑟 = −𝐺𝑀𝑟𝜌 𝑟2
・連続の関係:𝑑𝑀𝑟
𝑑𝑟 = 4𝜋𝑟2𝜌
・輻射平衡:𝑑𝑇
𝑑𝑟 = − 3𝜅𝜌 4𝑎𝑐𝑇3
𝐿𝑟 4𝜋𝑟2
・エネルギー発生:𝑑𝐿𝑟
𝑑𝑟 = 4𝜋𝑟2𝜌𝜀
・状態方程式:𝑃 = 𝑃 𝜌, 𝑇
・吸収係数:𝜅 = 𝜅 𝜌, 𝑇
・エネルギー発生率:𝜀 = 𝜀 𝜌, 𝑇 加えて補助方程式と境界条件を設定
・星の中心:𝑟 = 0で𝑀𝑟 = 0, 𝐿𝑟 = 0
・星の表面:𝑟 = 𝑅で𝜌 = 0, 𝑇 = 0
・吸収係数は「束縛・束縛遷移」「束縛・自由遷移」「自由・自由遷移」「電子散乱」を考慮
・エネルギー発生率は核融合 𝑝𝑝チェインと𝐶𝑁𝑂サイクル を考慮