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ドメインスワッピング機構によるタンパク質超分子化 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 5, 2016

ドメインスワッピング機構によるタンパク質超分子化

タンパク質が構造領域の一部を分子間で交換することでパズルのようにつながる

タンパク質の多くは,生体内で多量体や複合体などの 超分子となって機能している.タンパク質超分子化には さまざまな機構があるが,本稿では近年注目されている ドメインスワッピングを取り上げる.ドメインスワッピ ングは,Eisenbergらによってジフテリアトキシンの2 量化機構として見いだされた(1).ジフテリアトキシン は,2分子間で構造領域の一部を交換することでまるで パズルのように2量体を形成した.このように,タンパ ク質が構造領域の一部を分子間で交換することで超分子 化する機構がドメインスワッピングである.Eisenberg らの報告以降,次々とドメインスワッピングにより超分 子化するタンパク質が明らかとなっている.

ドメインスワッピングによるタンパク質超分子化は,

生理学的観点からも注目されている.セルピン病に関連 する

α

1-antitrypsinがドメインスワッピングにより連続 的に多量化することがYamasakiらにより報告された(2). また,Liuらは透析アミロイド症にかかわる

β

2-micro- globulinがドメインスワッピングにより多量化し,アミ ロイド繊維となることを報告した(3).これらの報告など により,ドメインスワッピングによるタンパク質超分子

化が,タンパク質の構造変性がかかわる疾病とも関連す ることが示唆されている.

われわれは,生物エネルギー代謝系の電子伝達ヘムタ ンパク質であるシトクロム  (cyt  )がドメインスワッ ピングにより超分子化することを見いだした(4).ウマ cyt  の2量体および3量体のX線結晶構造解析から,

cyt  がC末端

α

-ヘリックスを分子間で交換することで 超分子化することが明らかとなった(図1.ドメイン スワッピングによる超分子ではメチオニン配位子がヘム 鉄から解離し,cyt  は電子伝達能を失った.さらに,

ヘムタンパク質であり酸素貯蔵機能をもつミオグロビン

(Mb)もドメインスワッピングにより超分子化すること を明らかにした(5).MbはF‒Hヘリックス領域を分子間 で交換し,EとFヘリックス間のループがつながって1 本の長い

α

-ヘリックスになり,2量体を形成した(図 1).これらの研究により,生体内で重要な機能を担うヘ ムタンパク質もドメインスワッピングにより超分子化す ることが明らかとなった.

現在,われわれはドメインスワッピングによるヘムタ ンパク質の超分子化をさまざまな角度から研究してい

図1Cyt  およびMbのドメインスワッピ ングによる超分子化

上段左からcyt  単量体,2量体,3量体,下 段左からMb単量体,2量体.それらの模式 図も構造の下に示した.

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る.その一部を紹介する.ウマcyt  と3次構造とヘム 配位構造は似ているが,分子量が小さい好熱性水素細菌  cyt  552(HT cyt  552) の超分子化を調べた.その結果,HT cyt  552もドメイ ンスワッピングにより超分子化するが,分子間での交換 領域はN末端

α

-ヘリックスとヘムを含む領域で,ウマ cyt  の場合と異なることがわかった(6).交換領域の違 いはタンパク質ごとの内部相互作用の違いに起因すると 考えられる.HT cyt  552は好熱菌由来でその単量体の 熱安定性は高いが,HT cyt  552 2量体もウマcyt   2量 体よりも熱に安定であった.これは,単量体の安定性が ドメインスワッピングにより形成される2量体の安定性 に関係することを示している.ドメインスワッピングで は構造領域の一部を交換することで超分子化するので,

単量体と2量体で多くの相互作用が保存され,単量体の 安定化因子が2量体の安定性にも寄与するのは当然とも 言える.

ドメインスワッピングによる超分子化をタンパク質工 学的な分子デザインへ応用する試みも行っている.上述 のようにMbのドメインスワッピング2量体では,2つ のサブユニットの各E‒Fループ部分が

α

-ヘリックスと なり逆平行に並んでいる.そこで,この部分に存在する 塩橋を改変した2種類の変異体を作ることで,異なる Mb変異体からなる2量体を構築することに成功した(7). 塩橋の改変と並行してヘム周辺環境も改変することで,

分子内に異なる2種類のヘム中心をもつ人工ヘムタンパ ク質を作製した.このように,ドメインスワッピング超

分子の構造を鋳型として新たな超分子の構築が可能であ ることが示された.また,HT cyt  552よりも熱安定な 超好熱菌  cyt  555(AA cyt  555)を材料 にドメインスワッピングによる2量体を作製すること で,幅広いpH領域や熱に対して安定なタンパク質超分 子の構築にも成功した(8).AA cyt  555単量体にはCOや CNなどの外因性リガンドは結合しないが,AA cyt 

555 2量体はこれらの外因性リガンドを結合する能力を 新たに発現していた.AA cyt  555 2量体のX線結晶構 造を見てみると,タンパク質表面からヘム中心へ通じる チャネルが形成されており(図2,ドメインスワッピ ングによるタンパク質超分子化によって,タンパク質の 機能も改変できる可能性が示された.

タンパク質が構造領域の一部を交換することでパズル のようにつながるドメインスワッピングは現象としてた いへん興味深い.ドメインスワッピングがどのようにし て起こるのかその詳細な機構はいまだ不明な部分も多い が,本稿で紹介したように,タンパク質内部の相互作用 が交換領域や多量体の安定性と関係していることなど,

最近の研究からドメインスワッピングについてわかって きた部分も多く,新たなタンパク質超分子をデザインす ることも可能になってきた.ドメインスワッピングによ るタンパク質超分子化は,タンパク質の構造や機能を自 由自在にデザインする手法としての可能性を秘めてお り,今後の展開が楽しみである.

  1)  M. J. Bennett, S. Choe & D. Eisenberg: 

91, 3127 (1994).

  2)  M.  Yamasaki,  W.  Li,  D.  J.  Johnson  &  J.  A.  Huntington: 

455, 1255 (2008).

  3)  C. Liu, M. R. Sawaya & D. Eisenberg: 

18, 49 (2011).

  4)  S. Hirota, Y. Hattori, S. Nagao, M. Taketa, H. Komori, H. 

Kamikubo, Z. Wang, I. Takahashi, S. Negi, Y. Sugiura 

:  , 107, 12854 (2010).

  5)  S. Nagao, H. Osuka, T. Yamada, T. Uni, Y. Shomura, K. 

Imai,  Y.  Higuchi  &  S.  Hirota:  , 41,  11378  (2012).

  6)  Y. Hayashi, S. Nagao, H. Osuka, H. Komori, Y. Higuchi & 

S. Hirota:  , 51, 8608 (2012).

  7)  Y. W. Lin, S. Nagao, M. Zhang, Y. Shomura, Y. Higuchi 

& S. Hirota:  , 54, 511 (2015).

  8)  M. Yamanaka, S. Nagao, H. Komori, Y. Higuchi & S. Hi- rota:  , 24, 366 (2015).

(山中 優,廣田 俊,奈良先端科学技術大学院大学物 質創成科学研究科)

図2AA cyt  555単量体と2量体の表面比較

2量体ではヘムに通じるチャネル(矢印)が形成されている.

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化学と生物 Vol. 54, No. 5, 2016 プロフィール

山 中  優(Masaru YAMANAKA)

<略歴>2010年広島大学大学院生物圏科 学研究科博士課程修了/同年自然科学研究 機構岡崎統合バイオサイエンスセンター博 士研究員を経て2012年奈良先端科学技術 大学院大学物質創成科学研究科助教,現在 に至る<研究テーマと抱負>人工タンパク 質を用いたナノマシンの創成<趣味>クラ フトビール

廣 田  俊(Shun HIROTA)

<略歴>1995年総合研究大学院大学数物 科学研究科博士後期課程修了/日本学術振 興会特別研究員,エモリー大学化学科博士 研究員,名古屋大学大学院理学研究科助 手,京都薬科大学助教授を経て2007年奈 良先端科学技術大学院大学物質創成科学研 究科教授,現在に至る<研究テーマと抱 負>タンパク質超分子の創成,金属タンパ ク質の分光学的研究<趣味>旅行,卓球

<研 究 室 ホ ー ム ペ ー ジ>http://mswebs.

naist.jp/LABs/hirota/index.html

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.315

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— —10 現在,このタンパク質複合体の解析を進めている.分離 がブロードであること,酵素活性に対応する明確なタンパ ク質バンドを見いだせていないことから,電気泳動法の最 適化,分析試料の改良(ミクロソームではなく酵素が局在 するゴルジ体を多く含む画分から分析試料を調製する)な どを行う.比較的シャープな分離が得られれば,SDS- PAGE

核膜 核膜は核の範囲を規定してすべての核構造を内包する 構造体であり,核を細胞質と隔てる脂質膜を基本として いる.細胞膜とは異なり,核膜は外膜と内膜の二重の脂 質膜によって構成されている.細胞のがん化に伴う核の 形状やサイズの変化が古くから知られており,病理学的 にもがん診断の一つの指標として用いられている(1).ま た,このような核形態と細胞機能との関連性は,エピ