• Tidak ada hasil yang ditemukan

細胞の酸化ストレス耐性に関わるシグナル伝達系 - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "細胞の酸化ストレス耐性に関わるシグナル伝達系 - J-Stage"

Copied!
7
0
0

Teks penuh

(1)

【解説】

抗酸化剤応答配列は親電子性物質による生体防御タンパク質 の 誘 導 を 担 う 遺 伝 子 制 御 配 列 で あ る.転 写 因 子Nrf2が こ の 配列に結合して親電子性物質応答を仲介することが発見され てからおよそ15年が経過するが,今やNrf2は細胞の酸化ス トレス応答を担う主要な転写因子として認識されるに至り,

これを標的にした治療薬開発も臨床試験の段階にまできてい る.ここでは,最近のトピックスも含めNrf2/Keap1応答経 路について概説する.

親電子性物質に対する誘導性の防御機構

誘導性の親電子性物質応答機構は,いくつかの独立し た研究から見いだされたが,その中で最もよく知られて いるのが合成抗酸化剤の研究によるものである.この発 見は,げっ歯類における化学発がんの研究において,

種々の合成抗酸化剤〔特にブチル化ヒドロキシアニソー ル (BHA) に代表されるフェノール系の抗酸化剤〕がベ ンゾピレンやジメチルベンゾアントラセンなどの種々の

発がん物質に対して抗腫瘍作用を発揮したことに端を発 する(1) (図

1

-A)

.BHAは生体内で親電子性物質(キノ

ン)に代謝されて親電子性物質解毒化酵素を誘導するこ とがわかり,これが発がん物質の解毒を活性化して腫瘍 形成を抑制していることが示唆された(図1-B)

親電子性物質とは,

π

 電子が一方に偏り電子分布の不 均一を生じた分子で,有機化合物であれば一般的に電子 の不足した炭素原子を有する(図1-C)

.親電子性物質

が多量に生体内に蓄積すると,比較的電子を豊富に有す る核酸やタンパク質の求核性部位を求電子的に攻撃して アダクトを形成し,核酸と反応する場合にはがんをひき 起こしたり,タンパク質と反応する場合には急性毒性を 発 揮 し た り す る.一 方,グ ル タ チ オ ン- -転 移 酵 素 

(GST) が触媒する親電子性物質のグルタチオン抱合反 応は親電子性物質の解毒化に最も重要なものである(図 1-D)

.グルタチオンはシステイン,

グルタミン酸,およ びグリシンから2個のATPを消費して合成され,通常 細胞内に数mmの濃度で存在する.グルタチオン抱合さ れて中和された親電子性物質はMRP (multidrug resis- tance protein) などの細胞膜トランスポーターによって 細胞外に放出され尿中に排泄される(2)

.植物の二次代謝

細胞の酸化ストレス耐性に関わるシグナル伝達系

Nrf2/Keap1シグナリングと自己防衛機能

伊東 健,蝦名真行

Intracellular Signaling Cascade for the Protection Against Oxida- tive Stress : Nrf2/Keap1 System

Ken ITOH, Masayuki EBINA, 弘前大学大学院附属高度先進医学 研究センター

(2)

産物中には,様々な親電子性物質あるいはその前駆体が 多数発見されている(3)

.ブロッコリースプラウトに含ま

れるスルフォラフェンやウコンに含まれるクルクミンな どの親電子性物質はその代表的なものであるが,今日こ れらの親電子性物質は解毒化酵素を誘導して発がんを抑 制する物質として研究の対象となっている.

Nrf2/AREを介した誘導性防御系

親電子性物質により誘導される解毒化酵素の遺伝子上 流域には,抗酸化剤応答配列(Antioxidant Responsive  Element ; ARE : コンセンサス配列,GCnnnG/CTCA)

が存在していてmRNAレベルで誘導される(1)

.Nrf2 

(NF-E2-related factor 2) は,塩基性領域/ロイシンジッ パー構造(b-Zip構造)を有する転写因子であり,CNC 転写因子群に属する(4)

.このファミリーのプロトタイプ

であるCap'n'Collar (CNC) はショウジョウバエの転写 因子で,塩基性領域のN末端側にCNCドメインと呼ば れる特徴的なドメインを有する(図

2

-A)

.この転写因

子群は同じb-Zip因子である小Maf群因子とヘテロ二量 体を形成してAREに結合する.ヒトでは  , 

,  ,  ,  ,    の6遺伝子が報告され ており,前4因子(以下,これらを総称してNrf因子と 呼ぶ)は転写活性化因子として,またBach1および Bach2は転写の抑制因子として働く.CNC転写因子群 の中で,親電子性物質に応答することがわかっているの はNrf1(5)およびNrf2であるが,親電子性物質による酵 素誘導においてはNrf2が中心的な役割を果たす.実際 に,Nrf2ノックアウトマウスでは,小腸や肝臓におけ る親電子性物質による解毒化酵素の誘導が消失する(6)

親電子性物質によるNrf2の活性化機構

マウス胎児期個体での   ハイブリダイゼーショ ン解析によると,Nrf2の発現は小腸や肺,脳脈絡叢な どの異物代謝臓器に高いが,程度の違いはあれ,あらゆ る細胞に発現している(7)

.親電子性物質によるNrf2の

活性化は主に翻訳後修飾によることが明らかになってい 図1親電子性物質に対する防御機構

(A) BHAやBHTおよびエトキシキンなどの合成抗酸化剤をマウスに投与すると,マウスでは親電子性物質に対する解毒化機構が誘導され 化学発がんを抑制する.(B) BHAは肝臓で -ブチルヒドロキノン,さらに親電子性物質である -ブチルキノンに代謝される.*は親電 子性部位を表わす.(C) 親電子性物質の模式図.1,3-ブタジエンのような共役ジエンでは分子のまわりを π 電子が均等に分布するが,αβ- 不飽和カルボニル化合物などのように二重結合のとなりにカルボニルなどの電子吸引基が結合すると,π電子はそちら側に引き寄せられ,

π電子を欠乏した炭素原子が生じる.(D) アクロレインはGSTの触媒によりグルタチオン抱合を受けることにより親電子性部位を失って解 毒化される.*は親電子性部位を表わす.

(3)

る.制御において最も注目すべきは,N末端のNeh2ド メインと呼ばれる領域であり,種間でも保存性が高く,

Nrf2の機能制御ドメインであると考えられる(6) (図2-A,  B)

.Keap1はNeh2ドメインに結合する因子として発見

されたNrf2の抑制因子であるが,E3ユビキチンリガー ゼであるCul3と結合してユビキチン‒プロテアソーム経 路によりNrf2を分解する(6) (図2-C)

.親電子性物質は,

Keap1によるNrf2のタンパク質分解(ユビキチン化)

を阻害してNrf2を蓄積させ活性化する.この反応が多 くの親電子性物質応答にとって鍵反応であることが,

様々な証拠により支持されている.

親電子性物質のセンサーに必要とされる条件は,①数 mmも存在するグルタチオンおよびGSTの存在下で親電 子性物質を感知できること,②化学構造の異なる親電子 性物質を感知できることである.この条件を満たすセン サーは,親電子性物質との反応性に富むp aの小さいシ ステイン(反応性システイン)を有した分子であること が予想される.マウスKeap1は624アミノ酸残基よりな

るが,そのうち26個がシステインであり,いくつかは 反応性システインである(特にCys151, Cys273および Cys278)

.実際に,試験管内および細胞で過剰発現した

Keap1において,これらのシステインは親電子性物質と よく結合する(8)

.さらに,Cys273およびCys278に変異

を導入すると,Nrf2をユビキチン化する機能が失われ ることから,これらのシステインは親電子性物質の標的 である可能性がある(9)

Cys151に変異を導入すると酸化ストレス下において もNrf2のユビキチン化が減弱しないことから,Keap1 の酸化修飾によって起こるコンフォメーション変化に Cys151が重要であるか,またはこのシステインが実際 にセンサーすなわち標的となるシステインであることが 考えられる(10)

.一方で,Nrf2のリン酸化が親電子性物

質によるNrf2の活性化に重要であるという報告がある.

少なくとも一部の細胞種においては,酸化ストレスによ るNrf2の活性化にはCys151依存性の反応に加えて,さ らにPKC (protein kinase C) 

δ

によるリン酸化も必要で 図2Nrf2関連因子およびKeap1のドメイン構造

(A) ニワトリNrf2(ECHと呼ばれる)とヒトNrf2の間で高度に保存された領域が6個所存在し,これらの領域を Neh (Nrf2-ECH homolo- gy) 領域と呼ぶ.Neh2は,Nrf2活性の抑制的な制御領域であり,Keap1と結合する.DLGモチーフとETGEモチーフはKeap1との結合に 必須のモチーフである.DIDLIDモチーフの機能はまだよくわかっていない.SKN1およびCnc-Cはそれぞれ,線虫およびショウジョウバ エの転写因子である.(B) Neh2ドメインの保存性.(C) Keap1のホモ二量体はNeh2のETGEモチーフとDLGモチーフの両モチーフを認 識し (Two-site substrate recognition model), それによって最適に配置されたリジン残基をCullin 3ユビキチン複合体がユビキチン化する.

ETGEモチーフとDC(DGRとCTRを含む領域)との結合親和性はDLGとDCとの親和性よりほぼ2桁高い.親電子性物質はKeap1システ インの酸化を介してコンフォメーションを変化させDC-DLG(閂)の相互作用を阻害するが,DC-ETGE(蝶番)の相互作用には影響しない.

このモデルは酸化ストレスによるNrf2のユビキチン化の低下を説明し, 閂と蝶番モデル として知られている.p21Cip1/WAF1はDLGに競 合的に結合し,閂を外すことによりNrf2を活性化する.

(4)

あることがわかっている(11)

.おそらく,Keap1機能の

抑制だけでNrf2の活性化に十分な細胞と,Keap1機能 の抑制とNrf2リン酸化の両方が必要である場合が存在 すると考えられる.また,親電子性物質に限らずチオー ル基に反応性を有する化学種(活性酸素種や一酸化窒素 を含む)のほとんどはいずれもNrf2を活性化すること が報告されている.

Nrf2の標的遺伝子

Nrf2は,親電子性物質の解毒化酵素であるGSTや NAD(P)Hキノン還元酵素 (NQO1) などの異物代謝酵 素,グルタチオン合成酵素,さらにはMRPの遺伝子発 現を増強して,親電子性物質を解毒化する(6) (図

3

また,種々の還元酵素への電子供与体であるNADPHの 産生を増強する.親電子性物質の解毒化反応において は,グルタチオンやNADPHが多量に消費され,二次性 の酸化ストレスが生じることに注意するべきである.

Nrf2は,ペルオキシレドキシンやグルタチオンペルオ キシダーゼ,さらにはペルオキシレドキシンと共役して 働くチオレドキシンなどの活性酸素解毒化酵素の発現も 増強する.また,PSMB5などのプロテアソームのサブ ユニットの発現を増強して,親電子性物質や酸化ストレ スによってダメージを受けたタンパク質を除去する.

このように,Nrf2の活性化は親電子性物質に対して 統合された解毒化応答を誘導するが,活性酸素による細 胞毒性に対しても細胞防御的な役割を発揮する.Nrf2 を活性化すると多様なストレスに対して生体防御効果を 発揮するが,これは,多かれ少なかれ,色々なストレス が副次的に酸化ストレスを惹起することと関連している のかもしれない.また,マクロファージではCD36や  SLPI (secretory leukocyte protease inhibitor) などの 細胞種特異的な標的遺伝子も制御していて,酸化ストレ スに加えて抗炎症効果などに特異的な役割をしているも のと考えられる(12)

図3解毒代謝および酸化ストレス防御におけるNrf2制御分子群のネットワーク

Nrf2は小Maf因子とヘテロ二量体を形成してAREに結合し,種々の生体防御タンパク質遺伝子の発現を誘導する.白抜き四角で囲った因 子は,Nrf2標的遺伝子として知られている因子である.活性酸素種をコバルト色で,その他の反応性の親電子性物質を太字で表わした.

xCT : cystine/glutamate transporter, MRP1 : multidrug resistance-associated protein1, GCL : glutamate-cysteine ligase, GR : glutathione  reductase, GPX : glutathione peroxidase, PRX : peroxiredoxin, SOD : superoxide dismutase, TRX : thioredoxin, TXNRD : thioredoxin re- ductase,  HO-1 : heme  oxygenase-1,  G6PD : glucose-6-phosphate  dehydrogenase,  NQO1 : NAD(P)H  quinone  oxidoreductase  1,  PGD : phosphogluconate dehydrogenase

(5)

他の生物種における保存性と進化的意義

植物が光合成によりデンプンをつくり,動物がそれを 食物として摂取したとき,そこには捕食者‒被食者の関 係が生まれた.植物は種々の二次代謝産物を毒として産 生して動物からの捕食に抵抗したことが知られている.

筆者らは,その毒の1つが親電子性物質であり,これに 対抗する形で動物に特有の誘導性の親電子性物質解毒化 機構が進化したと考えている(13)

.スルフォラフェンや

クルクミンなどの親電子性物質がヒトにおいて健康食品 として機能しうるのは,動物がこれらの物質に対する強 力な(そしてそれらが内因性にもつ毒性をはるかに凌駕 する)誘導性防御機構を獲得したからであると考えられ る.このような文脈から動物におけるNrf2経路の動物 種間における保存性を次に考察してみたい.

ショウジョウバエの転写因子であるCnc-Cおよび線虫 のSKN-1は誘導性の親電子性物質防御機構として機能 することが示されていることから,Nrf2の機能的ホモ ローグである(図2-A)(14, 15)

.SKN-1はCNC様ドメイン

を有するが,ロイシンジッパー領域がなく単量体として 標的配列に結合する.Cnc-CにはKeap1結合配列である ETGEおよびDLGモチーフが存在し,ショウジョウバ エにはKeap1ホモローグも存在することから,ショウ ジョウバエの親電子性物質応答機構は高等動物のものと 類似している可能性が強い.一方,線虫SKN-1には ETGEモチーフおよびDLGモチーフが存在せず,線虫 では特有の親電子性物質応答機構が進化したようであ る.興味深いことに,SKN-1にはCnc-Cには保存性が低

いDIDLIDモチーフが保存されている.このモチーフは 転写活性化ドメインとして働くことが知られている が(16)

,親電子性物質応答にも何らかの役割を果たして

いる可能性がある.線虫では,哺乳類のp38MAPKに相 当するリン酸化酵素が親電子性物質に応答したSKN-1 の活性化に関与している(15)

哺乳動物で現在4種類存在するNrf因子は,脊椎動物 と無脊椎動物が分岐した後にこれらの祖先となるCNC 因子から遺伝子重複して進化したと考えられ,魚類より 高等な脊椎動物には4つのNrf因子がすべて存在してい る(魚類ではNrf1およびNrf2様因子が重複して存在す るので6つのNrf因子が存在する(18)

.Bjorkらは,ショ

ウジョウバエのCnc-Cは脊椎動物における遺伝子重複が 起こる前のNrf祖先因子から分岐して進化したものであ ることを報告している(17)

.一方で,SKN1やCnc-Cはそ

れぞれの生物種の腸管発生において鍵となる役割を果た していることが報告されている(19, 20)

.このことは,Nrf

応答経路が主に動物における外来物質(特に食餌性の外 来物質)の摂取に進化の起源を有することを示してい る.おそらく,腸管において発現したNrf因子は,外来 性親電子性物質の解毒化機構の役割をも担うようになっ たのであろう.CNC相同性の転写因子が酵母などの単 細胞真核生物や植物には見いだされないこともこの推測 と一致する.

臨床応用が期待されている低濃度で効果を発揮する バルドキソロンメチル

植物の二次代謝産物に見いだされる代表的なNrf2活

図4種々の親電子性物質の構造

(A) 植物の二次代謝産物中に見いだ される代表的なNrf2活性化物質の化 学構造.(B) オレアノール酸とバル ドキソロンメチルの化学構造

(6)

性化物質の構造を図

4

-Aに示した.生薬の有効成分とし て知られるオレアノール酸の誘導体である一群のテルペ ノイドは,通常のNrf2活性化物質とは約3桁活性が高 く,数十nmの濃度でNrf2を活性化することが報告され 注目されている(図4-B)(21)

.この活性の高さは,これ

らのテルペノイドの親電子性の強さと相関する.このう ちの1つであるバルドキソロンメチルははじめその抗腫 瘍活性に対して臨床試験が行なわれたが,そのときに eGFR(推算糸球体濾過量)を有意に改善することが報 告された.さらに糖尿病性腎症を対象にして行なわれた 第II相臨床試験においてもeGFRを改善することが報告 され,現在進行中の大規模試験の結果が期待されてい る(22)

酸化ストレス経路を介さないNrf2の活性化 これまで,親電子性物質に対する応答機構における Nrf2の役割を述べてきたが,Nrf2の活性化には親電子 性物質以外の細胞内シグナルも関与する.たとえば,

,  お よ び な ど の が ん 遺 伝 子 はNrf2の mRNA発現量を増大しNrf2を活性化して腫瘍形成を促 進する(23)

.また,小胞体ストレスは PERK (PKR-like 

endoplasmic reticulum eIF2

α

 kinase) による直接的な Nrf2のリン酸化(80番目のトレオニン)(24)によりNrf2 を活性化する.これらの活性化経路は,Nrf2活性化の 結果もたらされる抗酸化力を腫瘍形成や小胞体ストレス 応答の局面で利用しているものと思われる.

他のシグナル伝達系とのクロストーク

Nrf2以外にも,Keap1との高親和性結合配列ETGE モ チ ー フ を 有 す る タ ン パ ク 質 と し てIKK

β

, PGAM5,  Prothymosin 

α

, p62(p62においてはETGEがSTGEで あり,親和性が2桁低い)などが見いだされ,このうち p62は オ ー ト フ ァ ジ ー 欠 損 マ ウ ス に お い て 蓄 積 し,

Keap1と結合してNrf2の活性化に関与する(25) (図

5

Keap1はBcl-2, PGAM5およびヒトIKK

β

をユビキチン・

プロテアソーム経路により分解する.Bcl-2の分解は Nrf2と同様に親電子性物質投与により抑制され蓄積し て,抗アポトーシス効果を発揮することが報告されてい る.Bcl-xLもBcl-2と同様にKeap1により分解を受ける が,この場合PGAM5がアダプター因子として働く.

Prothymosin 

α

 はアポトーシス抑制因子であるが,Nrf2 のETGEを介したKeap1への結合に競合してNrf2を活 性化する.FAC1はアポトーシス誘導性因子であるが,

Keap1と相互作用する意義はまだよくわかっていない.

p53の標的遺伝子として知られCDK (cyclin-dependent  kinase) 阻害因子であるp21Cip1/WAF1はNrf2と直接結合 することによってKeap1との結合と競合して,Nrf2の 活性化に関与することが報告されている.このように,

Keap1と相互作用する因子の広がりがアポトーシス制御 因子に見いだされることは,Keap1が生体防御応答とア ポトーシス制御のクロストークの鍵となる因子であるこ とを示唆している.

近年,Nrf2に関する研究は爆発的に進んでおり,紙 図5Keap1を中心とした細胞内シ グナルのクロストーク

Keap1と相互作用する因子を列挙し たが,その多くはアポトーシスに関 与する因子であることは注目に値す る.ETGEモ チ ー フ を も つ 因 子 は,

Nrf2と 競 合 的 にKeap1に 結 合 し て Nrf2を活性化する可能性がある.抑 制や活性化の意義がはっきりと報告 されていない相互作用については,

破 線 を 引 い た.*ヒ トIKKβに は ETGEモチーフが存在するが,げっ 歯類には存在しない.詳細は本文を 参照

(7)

幅の都合上すべてを概観することはできなかったので,

親電子性物質防御応答を中心に紹介させていただいた.

詳細に関しては他の優れた総説(8)に当たっていただけれ ば幸いである.

文献

  1)  T. Primiano, T. R. Sutter & T. W. Kensler : , 38, 293 (1997).

  2)  N.  Ballatori,  S. M.  Krance,  R.  Marchan  &  C. L.  Ham-

mond : , 30, 13 (2009).

  3)  H.  Motohashi  &  M.  Yamamoto : , 10,  549 (2004).

  4)  T. G.  Son,  S.  Camandola  &  M. P.  Mattson : , 10, 236 (2008).

  5)  Y.  Zhang,  J. M.  Lucocq  &  J. D.  Hayes : , 418,  293 (2009).

  6)  K.  Itoh,  J.  Mimura  &  M.  Yamamoto : , 13, 1665 (2010).

  7)  K.  Chan,  R.  Lu,  J. C.  Chang  &  Y. W.  Kan : , 93, 13943 (1996).

  8)  R. Holland & J. C. Fishbein : , 13,  1749 (2010).

  9)  N. Wakabayashi, A. T. Dinkova-Kostova, W. D. Holtzclaw,  M. I.  Kang,  A.  Kobayashi,  M.  Yamamoto,  T. W.  Kensler 

&  P.  Talalay : , 107,  2040 

(2004).

  10)  T. Yamamoto, T. Suzuki, A. Kobayashi, J. Wakabayashi,  J.  Maher,  H.  Motohashi  &  M.  Yamamoto :

28, 2758 (2008).

  11)  S. K. Niture, A. K. Jain & A. K. Jaiswal : , 122,  4452 (2009).

  12)  T. Iizuka  : , 10, 1113 (2005).

  13)  伊東 健,山本雅行:生化学,76, 339 (2004).

  14)  G. P. Sykiotis & D. Bohmann : , 14, 76 (2008).

  15)  H. Inoue, N. Hisamoto, J. H. An, R. P. Oliveira, E. Nishida,  T. K.  Blackwell  &  K.  Matsumoto : , 19,  2278 

(2005).

  16)  A. K. Walker, R. See, C. Batchelder, T. Kophengnavong,  J. T. Gronniger, Y. Shi & T. K. Blackwell : ,  275, 22166 (2000).

  17)  K. B. Grimberg, A. Beskow, D. Lundin, M. M. Davis & P. 

Young : , 31, 897 (2011).

  18)  A. R.  Timme-Laragy,  S. I.  Karchner,  D. G.  Franks,  M. J. 

Jenny, R. C. Harbeitner, J. V. Goldstone, A. G. McArthur 

& M. E. Hahn : , 287, 4609 (2012).

  19)  J. H. An & T. K. Blackwell : , 17, 1882 (2003).

  20)  C. E. Hochmuth, B. Biteau, D. Bohmann & H. Jasper : , 8, 188 (2011).

  21)  A. T.  Dinkova-Kostova  : , 102, 4584 (2005).

  22)  P. E. Pergola  : , 365, 327 (2011).

  23)  G. M. DeNicola  : , 475, 106 (2011).

  24)  E.  Bobrovnikova-Marjon,  C.  Grigoriadou,  D.  Pytel,  F. 

Zhang,  J.  Ye,  C.  Koumenis,  D.  Cavener  &  J.  A.  Diehl :   , 29, 3881 (2010).

  25)  T. M. Stępkowski & M. K. Kruszewski : , 50, 1186 (2011).

尾 島  孝 男(Takao Ojima) <略 歴> 1979年北海道大学水産学部水産化学科卒 業/ 1981年同大学大学院水産学研究科修 士課程修了/ 1983年同大学院博士課程中 退/同年同大学水産学部助手/ 1987年同 講師/ 1993年同助教授/ 2000年同大学大 学院水産科学研究院助教授/ 2004年同研 究院教授,現在にいたる.この間,1992 年英国MRC分子生物学研究所客員研究員

<研究テーマと抱負>海藻を栄養源として いる無脊椎動物や微生物のもつ海藻多糖分 解酵素の性状解析と,それを利用した海藻 糖質の高付加価値化<趣味>野外散策 笠 原  博 幸(Hiroyuki Kasahara) <略 歴>1992年近畿大学理工学部応用化学科 卒業/ 1997年同大学大学院工学研究科応 用化学専攻博士後期課程修了(工博),米 国ワシントン州立大学生物科学研究所博士 研究員/ 2000年理化学研究所植物科学研

究センター研究員/ 2005年同センター上 級研究員,現在にいたる.2011年〜科学 技術振興機構さきがけ研究者兼任<研究 テーマと抱負>植物ホルモンの生合成,

MEP経路,化学遺伝学に関する研究<趣 味>テニス

加藤 暢夫(Nobuo Kato) <略歴>1969 年京都大学大学院農学研究科農芸化学専攻 博士課程中退╱1989年鳥取大学工学部教 授╱1993年京都大学農学部教授╱2005年 同大学定年退職╱2006年京都学園大学教 授╱2011年同大学退職<研究テーマと抱 負>高校生に応用微生物学の面白さを知っ てもらうこと<趣味>料理

鹿取みゆき(Miyuki Katori) <略歴>

1984年東京大学教育学部教育心理学科卒 業後,(株)ソニーを経て,フリー記者,現 在にいたる<研究テーマと抱負>ワイン用

ブドウ畑の日本における分布,ワインテイ スティングにおける嗅覚,味覚の役割な ど,共感覚<趣味>音楽鑑賞

神 谷  勇 治(Yuji Kamiya) <略 歴> 1970年東京大学農学部農芸化学科卒業/

1975年同大学大学院農学研究科博士課程 修了(農博)/同年理化学研究所農薬合成 第三研究室研究員/ 1980年西ドイツゲッ チンゲン大学植物生理学研究所フンボルト 財団奨学研究員/ 1986年理化学研究所植 物生活環制御研究室研究員/ 1990年同研 究所副主任研究員/ 1991年同研究所国際 フロンティア研究システムチームリー ダー/ 2000年同研究所植物科学研究セン ターグループディレクター,現在にいたる

<研究テーマと抱負>植物ホルモン生合成 の統合制御<趣味>水泳と山歩き

プロフィル

Referensi

Dokumen terkait

5, 2013 コムギの種子休眠性を制御する遺伝子 MFT 遺伝子の発芽抑制機能 コムギは,うどんやパンなど私たちが食べるさまざま な食品の原材料として世界中で広く利用されている作物 である.この作物の生産上の大きな問題点として,穂発 芽による大規模な被害が発生しやすいということが知ら れている(図1).この被害は,収穫時期が梅雨などの