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ナノとタンパク質のいい関係 - J-Stage

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240 化学と生物 Vol. 54, No. 4, 2016

ナノとタンパク質のいい関係

利点を相補完するハイブリッドタンパク質設計

タンパク質工学が提唱されて30年以上過ぎた現在で は,大腸菌などの宿主細胞に目的遺伝子を導入すること によって組換えタンパク質を大量産生することができ,

一次構造レベルではあるが自分の好きなアミノ酸配列を もつタンパク質を合成することができるようになった.

現在では,年間1万件程度の新しいタンパク質の機能や 構造が報告されており,ほかの有機・無機材料と比較す ると構造安定性は劣るものの,機能の多様性と特異性の 面では他素材が真似のできない分子群(ライブラリー)

をもつ素材である.筆者は,タンパク質の機能を発現さ せる構造(ドメイン)が数ナノレベルであることに着目 し,このタンパク質のドメインとさまざまなナノ素材を

「単位」として積木細工的にボトムアップに集積させる ことによって,新たな機能タンパク質を創り出す研究を 行っている.

ナノ素材とタンパク質の融合は,筆者の研究だけでな くいくつか報告されている.粒子表面に抗体分子を集積 させると,細胞などの固体表面が標的となる場合は多価 効果によって結合力が増す(1).しかし,通常のIgG型の 抗体はサイズが15 nmと大きく,10 nmより小さい現在 のナノ粒子では1〜2分子結合させるのが限界である.

そこで,抗体中の標的分子と結合できるドメイン部分だ けで組換え抗体を設計するとサイズが3 nmまで小さく できることに着目し,その組換え抗体をナノ粒子へ集積 させることによって,抗体を効率よくマウス内のがん腫 瘍へ集積させた報告がある(2).また,ユニークな骨格構 造を設計できるDNAオリガミを用いて一連の酵素群を ナノ空間へ集積させ,反応中間体が自由拡散する前に逐 次反応を進行させ全体の反応効率を上げる酵素ナノ複合 体も提案されている(3)

その中で筆者は,水に不溶なセルロースを糖に分解す る酵素セルラーゼに着目している.非食物系バイオマス であるセルロースは化石燃料と補完的に働く次世代の環 境調和型エネルギー資源であり,セルラーゼを用いた糖 化処理は環境低負荷な手法として研究されている.セル ラーゼは,現在までに1,000種以上報告されており,そ のうち60%はセルロール中の

β

-1,4グルコシド結合を加 水分解する触媒ドメインのみからなる.しかし,ほかの

40%では,セルロースの分解をより効率的に行うため に,セルロース表面に吸着できる結合ドメインを触媒ド メインに融合したモジュール構造や,セルロース結合ド メインをもつ巨大な骨格タンパク質に複数の触媒ドメイ ンがタンパク質間相互作用で結合してセルロソームと呼 ばれる巨大複合体を形成することによって,効率的に触 媒ドメインをセルロース表面へ局在化させている.その ため,60%の標準構造セルラーゼにモジュール型やセル ロソーム型の構造を適用することによって酵素活性を向 上できることが予想される.筆者は,独立に発現調製し た触媒ドメインとセルロース結合ドメインをナノ粒子の 表面に3次元的にヘテロクラスター化してセルロソーム を模倣することによって,飛躍的に糖化効率を向上させ る研究を行っている.

このセルロソーム模倣体(ハイブリッドナノセルロ ソーム)では,触媒・結合ドメインのC末端にビオチン 化ペプチドを融合した組換えタンパク質を調製する.そ して,ストレプトアビジン単独やストレプトアビジンが 表面に修飾しているナノ粒子(粒子経20 nm)に両ドメ インを集積させる(図1.ハイブリッドナノセルロ ソームの利点は,各ドメインとナノ粒子の混合比を変え るだけで,触媒ドメインと結合ドメインの比率が異なる さまざまなナノセルロソームを作製することができるこ とである.セルロース結合ドメインをもたない

由来エンドグルカナーゼA(EglA)の場合,

ナノセルロソームは,可溶性セルロースであるカルボキ シメチルセルロース(CMC)に対してはほとんど糖化 活性に変化を示さないが,水に不溶な基質であるリン酸 膨潤セルロース(PSC)に対してはナノセルロソーム中 の結合ドメインの存在比が増加するにつれて還元糖生産 量が向上し,ナノセルロソーム中の触媒ドメインと結合 ド メ イ ン の 比 率 が7 : 23の と き,遊 離EglAと 比 較 し EglA 1分子換算で約10倍の還元糖を生産するようにな

(4, 5)(図2

この活性向上は,ナノ粒子を使ってドメインの集積量 を向上させることでより達成されている.ナノ粒子に固 定化されていないストレプトアビジンを使って,触媒ド メインと結合ドメインをビオチン‒アビジン相互作用で

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集積させても同様に酵素活性を向上させることはでき る.しかし,その還元糖生産量は5倍程度までにとど まってしまう.ナノ粒子のようにドメインの足場となる 構造体をある程度大きくし足場へ集積するドメイン数を 増加させることが,固体の基質に対する反応性を向上さ せている.この原因を探るために,反応経過時間に対す る還元糖生産量を追跡したところ,はじめはストレプト アビジンを核とした集積体がより多くの還元糖を生産し ていた.しかし,反応が5時間を過ぎるあたりから還元 糖の生産量は頭打ちになり,ナノ粒子を核としたナノセ ルロソームが逆転する.ドメインの集積度を向上させる ことによって反応初速度は低くなるが,固体の基質を継 続的に分解できるようになっている(6, 7)

ハイブリッドナノセルロソームフォーマットの利点 は,触媒ドメイン,結合ドメイン,骨格要素の組み合わ せと混合比率を変化させるだけで,簡便にさまざまな人 工セルロソームを作製できることにある.そこで筆者は 現在,CAZy, PDB, Pfamなどのタンパク質データベー

ス上のセルラーゼ情報を「ライブラリー」として捉え,

相同性の多様化,基質特異性,属性,大腸菌発現実績を 考慮して,有望なセルラーゼのモジュールライブラリー を作製し,それらをさまざまな比率でクラスター化させ 活性を網羅的に評価することによって最強のハイブリッ ドナノセルロソームの開発を始めている.そして,エン ドグルカナーゼとセロビオハイドラーゼの両者におい て,この構造フォーマットは活性向上に有効であること がわかりつつある.

組換えタンパク質技術は,変異導入やドメインスワッ ピングを可能にした一方,それらがもつ非天然性が構造 の不安定化や発現量の低下を招き,実験室レベルの研究 で終わってしまう例も多い.その中で,タンパク質ドメ インとナノ素材の融合は,足場構造などタンパク質が苦 手な構造をほかの素材で補完する分子設計法であると考 えている.今後,この設計法によってより多くの領域で タンパク質が活躍することを期待したい.

図1セルラーゼを分割調製しナノ粒子を 核として再編成させたハイブリッドナノセ ルロソーム

図2ハイブリッドナノセルロソームを用 いた還元糖生産

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242 化学と生物 Vol. 54, No. 4, 2016   1)  R. Leggett, E. E. L. Smith, S. M. Jickells & D. A. Russell: 

46, 4100 (2007).

  2)  L. Yang, H. Mao, Y. A. Wang, Z. Cao, X. Peng, X. Wang,  H. Duan, C. Ni, Q. Yuan, G. Adams  :  , 5, 235  (2009).

  3)  Y.  Liu,  J.  Du,  M.  Yan,  M.  Y.  Lau,  J.  Hu,  H.  Han,  O.  O. 

Yang, S. Liang, W. Wei, H. Wang  :  , 8, 187 (2013).

  4)  D.-M. Kim, M. Umetsu, K. Takai, T. Matsuyama, N. Ishi- da, H. Takahashi, R. Asano & I. Kumagai:  , 7, 656  (2011).

  5)  梅津光央,金 渡明,中澤 光: バイオマス分解関連酵

素研究の最前線 ,シーエムシー出版,2012, p. 208.

  6)  D.-M. Kim, H. Nakazawa, M. Umetsu, T. Matsuyama, N. 

Ishida, A. Ikeuchi, H. Takahashi, R. Asano & I. Kumagai: 

2, 499 (2012).

  7)  H.  Nakazawa,  D.-M.  Kim,  T.  Matsuyama,  N.  Ishida,  A. 

Ikeuchi, Y. Ishigaki, I. Kumagai & M. Umetsu: 

3, 1342 (2013).

(梅津光央,東北大学大学院工学研究科)

プロフィール

梅津 光央(Mitsuo UMETSU)

<略歴>1995年東北大学工学部生物化学 工学科卒業/2000年同大学大学院工学研 究科博士課程後期修了/同年日本学術振興 会海外特別研究員(ライデン大学)/2001 年東北大学大学院工学研究科助手/2002 年同大学多元物質科学研究所助手/2006 年同大学大学院工学研究科助教授/2007 年同准教授/2014年同教授,現在に至る

<研究テーマと抱負>タンパク質の新しい 使い道を開拓する<趣味>小物収集,古代 史の読書

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.240

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性を相補する遺伝子をスクリーニングしたところ, と を得た17, 18. は解糖系の酵素で あるピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子であり, ATPの生成にもかかわる. はE3ユビキチンリ ガーゼをコードする遺伝子である.細胞内で不要なタン パク質はポリユビキチン化された後,プロテアソームに よって分解されるが,Rsp5はタンパク質のユビキチン