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2 化学と生物 Vol. 54, No. 1, 2016

大村 智 先生のノーベル賞ご受賞を祝して イベルメクチンとMDR1

大村先生,ノーベル生理学・医学賞ご受賞おめでとう ございます.大村先生の素晴らしい業績の数々はもちろ んのこと,「微生物から多くのことを学びました」と,

記者会見でコメントされた飾らぬお人柄が,日本農芸化 学会の最高の誇りです.記念特集号の刊行にあたり,今 回のノーベル賞の対象となったイベルメクチンと私の接 点を書かせていただきます.

私は,大村先生の大先輩の秦 藤樹博士が北里研究所 で発見された抗がん剤マイトマイシンCの作用機構を研 究して学位を取得した後,がん細胞が複数の抗がん剤に 対して耐性を獲得してしまう「がんの多剤耐性」を研究 するため,米国の国立がん研究所に留学しました.そこ で1986年 に,多 剤 耐 性 が ん 細 胞 で 高 発 現 し て い る

という遺伝子を発見しました(1, 2)

MDR1タンパク質(P-糖タンパク質とも呼ばれる)

は,さまざまな構造の脂溶性化合物を細胞から排出する という興味ある活性をもつ膜タンパク質です.オランダ の研究者は,その生理的役割を解明するため,1994年 に世界で初めてその遺伝子を欠損させたマウスを樹立し ました(3).そのとき,ダニを除去するためマウスにイベ ル メ ク チ ン を 噴 霧 し た と こ ろ,苦 労 し て 樹 立 し た MDR1欠損マウスが死んでしまいました.

この事件によって,動物の脳をさまざまな有害物から 保護している「血液脳関門」が,血管の隙間から漏れな いという構造的なものだけでなく,有害物が血液から脳 内に侵入しないようにMDR1が働いていることが明ら かになりました.線虫には中枢神経を保護するための

「血液脳関門」が存在しないために,イベルメクチンを 用いて効果的に殺すことができるのです.

アフリカで多くの人々を寄生虫から救っているイベル メクチンの存在と,それが大村先生の発見であることを そのとき私は知り,日本の微生物研究のすばらしさを実 感しました.これからもお体を大切にしていただき,ま すます科学の発展と人々の幸福に貢献していただけます ようお祈りしております.

  1)  C.-J.Chen, J. E. Chin, K. Ueda, D. P. Clark, I. Pastan, M. 

M. Gottesman & I. B. Roninson:  , 47, 381 (1986).

  2)  K.  Ueda,  C.  Cardarelli,  M.  M.  Gottesman  &  I.  Pastan: 

84, 3004 (1987).

  3)  A. H. Schinkel, J. J. M. Smit, O. van Tellingen, J. H. Beij- nen, E. Wagenaar, L. van Deemter, C. A. A. M. Mol, M. 

A. van der Valk, E. C. Robanus-Maandag, H. P. J. te Riele  :  , 77, 491 (1994).

(植田和光,公益社団法人日本農芸化学会会長)

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.2

日本農芸化学会

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プロフィール

植田 和光(Kazumitsu UEDA)

<略 歴>1978年 京 都 大 学 農 学 部 卒 業/

1982年同大学大学院博士後期課程中退後,

同大学助手を経て,1999年同大学大学院 農学研究科応用生命科学専攻助教授/2003 年同教授/2007年同大学物質‒細胞統合シ ステム拠点教授(両任)<所属研究室ホー ムページ>http://www.biochemistry.kais.

kyoto-u.ac.jp

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