GROUND&天文同好会
うちゅうのがっこう
目次
• 第1章 生命とハビタブルゾーン
• 第2章 生命とスノウボールアース
• 第3章 生命と宇宙
第1章 生命とハビタブルゾーン
生命ってなに?
• 生命の4大特徴
1.境界をもち自己と非自己の区別ができること 2.複製して、自分に似た子孫をつくること
3.代謝すること 4.進化すること
TMV
(Wikimediaより)
生命の渦
• 地球型生命にとって有機物は必要不可欠
(画像資料1より)
例)タンパク質
酵素→遺伝子の複製 代謝系
タンパク質の修復 免疫系
炭素生命の原理
生命とは生命の渦(化学反応)を回して自らを維持している
復習:酸化・還元
• 酸化
→酸素を受け取る・水素を失う・電子を失う
• 還元
→酸素を失う・水素を受け取る・電子を受け取る 化学反応の前後でエネルギーが発生する 例)CH4+2O2=CO2+2H2O+891kJ
ハビタブルゾーン
「中心の恒星から一定の軌道幅で惑星の表面に水が存在できるとき、
そのような領域をハビタブルゾーン(Habitable Zone)と呼ぶ.」
(参考資料1 P100より)
恒星の光度に応じたハビタブルゾーンの位置 (Wikimediaより)
現在の太陽系では 0.95AU~1.37AU
ハビタブル・トリニティ
• 地球型生命の体の主成分は大気・海洋・岩石から供給される
→この3者の共存と元素の循環が必要
ヒトの乾燥重量当たりの元素組成
(参考資料1 P25より)
ハビタブル・トリニティの概念図
(参考資料1 P79より)
なぜ水なのか
• 地球型生命にとっての水の重要性
→極性溶媒としての機能(化学反応の場)、温度安定化効果 タンパク質と疎水性相互作用、密度変化が特殊
宇宙において豊富に材料がある
宇宙の元素組成
Siの含量を106とした相 対値を対数で示す。
(参考資料1 P25より)
表面に液体で存在しないとダメ?
生命の誕生は約40~37億年前
地球は過去に3回以上の全球凍結(uninhabitable)
現在の地球は生命にあふれている
ストロマトライト(北大博物館)
第2章
生命とスノーボールアース
全球凍結
• 地球が赤道域を含め全て凍り付くこと
• 大陸には3000m、海洋には1000mほどの氷河が形成
• 平均気温は約-40℃
見逃された論文
• 地球は最低3回は全球凍結していた
• 「A Neoproterozoic Snowball Earth」
→1992年
ジョセフ・カーシュビング提唱
地球史における氷河時代(参考資料3 P40より)
根拠は?
• かつての赤道域で発見された氷河堆積物
←ドロップストーン・擦痕 etc...
• 迷子石
カナダ・オンタリオ州の約22億年前の氷河堆積物
(画像資料2より)
氷河性ダイアミクタイトとキャップカーボネート
(参考資料3 P87より)
かつての赤道域?
• 岩石の記憶を利用する
→岩石中の磁性鉱物を見る(磁鉄鉱など)
その情報は形成時のもの?
地球の磁場(画像資料3より)
古地磁気学的な褶曲テスト(参考資料3 P49より)
どうやって凍結した?
• 気候状態に大きく影響を与える3大要素 1.太陽からのエネルギー
2.惑星アルベド
3.大気の温室効果
1.太陽からのエネルギー
• 太陽定数
「太陽光線に垂直な1㎡の面が1秒に受ける太陽エネルギ―の量」
地球では…
「太陽地球間の平均距離において、地球大気圏上端に到達する太 陽エネルギー」
=約1370W/㎡
(参考資料2 P222より)
太陽は成長している⁉
• 太陽は中心部の核融合反応によるエネルギ―で光る
→水素4個からヘリウム1個ができる
星の中心部の平均分子量は大きくなっていく
=反応が起こりやすくなり太陽は明るくなっていく
地球が取り得る気候状態(参考資料3 P59より)
+α
誕生当時の太陽の明るさは現在の 70%
→暗い太陽のパラドックス
2.惑星アルベド
• アルベド(反射率)
…氷河はアルベドが高い
→氷河が広がるほど地球は冷えやすくなっていく
(緯度30度が限界)
地球のエネルギーバランス
(参考資料3 P57より)
3.大気の温室効果
• CO2、CH4、H2Oなどによる温室効果
→温室効果がなければ地球の温度は約-29℃
地球が取り得る気候状態
(参考資料3 P94より)
どうやって凍結したか? ~まとめ~
1. 凍結していないor部分凍結の地球がなぜか寒冷化 2. 氷河が拡大する
3. 惑星アルベドが増加する
4. 全球凍結となり抜け出せなくなる
なぜ全球凍結が起こった?
• 明確な原因は分かっていない
• 現在最も可能性が高いと考えられているのは「温室効果」
←原生代後期の炭素同位体比は氷河時代前に増大する 光合成には軽い炭素が多く利用される
=海水中の炭素同位体比は大きくなる
(通常は0パーミルくらい)
全球凍結前には光合成が異常に盛んに行われた可能性
生物のマッチポンプ
1. かつての地球には火山やメタン生成菌から放出されたCO2や CH4が豊富に存在していた
2. シアノバクテリアが光合成でO2を発生させる
3. 光合成でCO2が消費され、生じたO2はCH4と反応する
超好熱メタン菌(画像資料4より) シアノバクテリア(Wikimediaより)
生物はどうやって生き延びるか
• 方法1 地球を食べて生き残った
…熱水噴出孔付近の生物
• 生物は光合成・好気呼吸だけではない 光合成: 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2 嫌気的硫黄酸化
: 6CO2+6H2S+6NO3-→C6H12O6+6SO42-+3N2 好気呼吸
: C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O+38ATP 炭酸塩呼吸: 4H2+CO2→CH4+2H2O
熱水噴出孔(Wikimediaより)
生物はどうやって生き延びるか
• 方法2 温泉に浸かって生き延びた
…温泉が湧いているところでは氷が融けるor薄くなる
→光合成ができる
全球凍結では水の循環も止まる=温泉も枯れるはず
→一部の温泉は深海から供給
水じゃなきゃダメなんです
• 氷が水に浮いたおかげで生命は生き残った
→氷の厚さが1000m程度になると…
(地殻熱流量)=(氷から大気に放出される熱量)
となる
海洋の凍結(参考資料1 P65より)
地球が氷を融かしてくれた
• 温室効果ガスの蓄積
…海洋が氷で覆われるとCO2は海洋に溶けられない
長期的な炭素循環の概念図(参考資料3 P71より)
ウォーカー・フィードバック
→惑星気候の長期的な安定 にはプレートテクトニクス も必要
全球凍結後の世界
• 氷河は融けるとともに大陸のミネラルを海洋に運んだ
• 熱水噴出孔からのミネラルも蓄積している
• 大気中は蓄積されたCO2で満たされている
シアノバクテリアの大繁殖
=酸素の大発生
→海洋中のFe2+とO2が反応して縞状鉄鉱層形成 キャップカーボネートの形成
…溶けたCO2と運ばれたCa2+などが反応
ナミビアのキャップカーボネート
(参考資料4 P33より)
Adversity makes a man wise.
• 原生代前期の全球凍結後
→真核生物の登場
…増えたO2から遺伝子を守るため?
• 原生代後期の全球凍結後
→多細胞生物の登場
…合成に多量のO2を必要とする コラーゲン
エディアカラ生物群(Wikimediaより)
終章 生命と宇宙
スノーボールプラネット
• エウロパ
楕円軌道による潮汐加熱
→熱水噴出孔
…地球では生命が誕生した 最有力候補地
太陽光に依存しない生物
• エンケラドゥス
金属核 岩質マントル 水層 氷殻
エウロパ(Wikimediaより)
エウロパの内部構造(Wikimediaより)
タイタン
• 表面にCH4の海、地下に水の海
→タイタン型生命の可能性 地球型生命も形成可能
タイタン(画像資料5より)
地球型生命の脂質二重膜(Wikimediaより)
話したくない火星
火星
• 生命探査の有力候補 1.水の痕跡・存在
約37億年前のエリダニア盆地の予想水深値(単位:m)
(画像資料6より)
火星の崖に存在する氷の層(画像資料7より)
火星
2.ALH84001
…火星で約36億年前に形成された隕石
隕石に含まれる鎖状構造(Wikimediaより) 磁性細菌とマグネトソーム(画像資料8より)
火星
3.土壌環境に関しては生育が可能
火星の模擬土でミミズとともにルッコラを栽培 している様子(画像資料9より)
嫌気呼吸と岩石栄養の連鎖
(参考資料4 P71)より
その他の有力候補
• イオ
…非常に強力な火山活動
=エネルギーが豊富
• スーパーアース
…惑星の質量が一定値を超えると水は凍結しない
• 系外惑星
…探査技術の発達
画像資料
1. JAXA|サイエンス・フロンティアつくば~
「宇宙と生命ー未知にいどむ研究のフロンティア」
http://www.jaxa.jp/article/interview/no12/p5_j.html 2. イメージバンク‐東京大学大学院理学系研究科・理学部
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/imagebank/?mode=show&id=ep0055 3. 国立科学博物館‐宇宙の質問箱‐地球編
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/e arth/earth06.html
4. 超好熱メタン菌|JAMSTEC画像ギャラリー
http://www.jamstec.go.jp/gallery/j/organism/micro/001.html
5. まるで地球、衛星タイタン
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/011600013/
6. 火星に生命のゆりかごの手がかり‐アストロアーツ https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9449_mars 7. ギャラリー:火星に水の証拠写真 9点|
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/gallery/011500105/
index.html
8. 磁性細菌オルガネラ「マグネトソーム」構造機能相関の解明 https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/54/1/54_
011/_pdf
9. 「火星の土」でミミズの繁殖に成功、NASAの模擬土|
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/113000466/
(サイト訪問日は1~4は2018/2/8、5~9は2018/2/9)
引用資料
1. 宇宙生命論 Life in the Universe 東京大学出版会 2015/7/30
2. 地球惑星科学入門
北海道大学出版会 2015/3/10
3. 凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語 田近英一 新潮社 2009/1/25
4. NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅2
全球凍結 NHK「地球大進化」プロジェクト©2004 NHK
日本放送出版協会 2004/5/25
5. 生命の星・エウロパ 長沼毅 日本放送出版協会 2004/3/25
6. 地球生物学 地球と生命の進化 池谷仙之・北里洋一[著]
東京大学出版会 2004/2/19
7. 極限環境の生命 生物のすみかのひろがり D.A. ワートン[著] 堀越弘毅・浜本哲郎[訳]