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というのは決して京都議定書と別のアプローチを目指すこと

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1

はじめに

京都議定書を超える、というのは決して京都議定書と別のアプローチを目指すことでは ない。そもそも多国間合意の基本に立ち返れば、コンセンサスによって構築された合意や 制度を覆すことほどコストがかかり困難なことはない。京都議定書を超える道は、むしろ 京都議定書のアプローチに則ったうえで、さらに気候変動対策を強化すること以外にない と言ってよい。米国の京都議定書離脱を受け、気候変動対策将来枠組み論議のなかには

「京都議定書つぶし」を求める声も沸き上がっている。確かに日本の最大の輸出相手国であ る米国が日本と同様の法的拘束力のある目標をもたず、また、最大の輸入相手国である中 国も「共通だが差異ある責任」原則のもと法的拘束力のある目標をもたないという状況下 においては、主要な貿易相手国のなかで日本だけが削減義務を負う「損な役回り」を演じ ていると映る向きもあろう。しかし、京都議定書をゼロに戻し新たな国際枠組みを作ると いう「革命的アプローチ」の実現可能性をみても、またそれにかかる制度的、社会的、経 済的コストを鑑みても、「漸進的アプローチ」に分があるとみるのが妥当であろう。

そもそも、米国の京都議定書離脱以降問われているのは、米国の動向に振り回される日 和見的外交ではなく、日本が気候変動分野でどのような政策を携えながらどのような外交 を行なっていくのか、ひいては日本が環境外交をどう進めていくのか、日本の確固とした ポジション主張へ向けた「ソフトランディング」ではなかろうか。米国は今でこそ京都議 定書型のキャップ&トレードに反対をしているものの、中長期的にはその態度を翻す可能 性もある。現在の技術重視政策が成功して排出枠売却が可能となれば、むしろキャップ&

トレード型の制度に関心を示すであろうし、これに政権の変化や、気候変化の影響が社会 経済的ダメージを与えるレベルまで顕著になれば、ありえないシナリオではない。歴史的 にみても、多くの国際合意は大きな事件や事故の衝撃の後に思いがけない急展開をみせて きている。そのようなときになって日本があたふたするようでは、なんとも心もとない。

やはりその前に確固としたポジションを定めていてしかるべきであろう。1997年の京都会 議へ至る交渉において、日本は欧米諸国の多国間外交戦略に「してやられた」感がある、

という声も多方面から聞こえるが、そもそもその一因は、日本が来るべき脱温暖化社会へ 向けてどのような戦略をとっていくのかという、地に足を付けた議論に根ざした方針が脆 弱であったことに起因していると言ってよかろう。

(2)

欧州は京都議定書型のキャップ&トレードに則った制度を掲げながら、産業革命以前比 での気温上昇を2°

C

以内に抑えることを温暖化対策の究極目標として据える方針を明確化し ている(1)。米国は当面京都議定書の枠組みを離れ、第

2

次大戦後の覇権型レジーム形成の再 現を夢見るように、公共財提供にかかる一定のコスト負担を覚悟しながら技術開発を中心 とした独自の制度形成に乗り出し始めている(2)。他方で、温室効果ガス(GHG)排出量に歯 止めがかかる気配はなく、削減可能性があるとすれば、期せずして起こっている石油価格 の高騰の側面効果頼りの感は否めない(3)。ただし、両者は互いに排他的でないところに重要 な意味があると思われるが、そのようななかで日本はどのような道をとるべきなのか。

本号の巻頭エッセイで村瀬氏は、環境・経済産業両省の審議会を調整する外務省のイニ シャティブの重要性を唱えている。京都会議前はホスト国としての立場から、1997年にな って官邸プロセスが機能して内閣官房が中心となって日本の立場が明確となっていったこ とを鑑みれば、これに加え内閣府のイニシャティブも重要となろう(4)。しかしより重要なの は、審議会や中央官庁に限定されない広範な国民的議論を行なうことである。温暖化の影 響は社会の多様な領域にわたり、最も影響を受けるのはより脆弱な立場にある国民である。

特に今後温暖化への「適応」を考えていく際にはこの視点の重要性が増す。ビジネス・産 業界にしても、温暖化対策によって影響を受ける企業も出てくるし、またとりわけ温暖化 の「緩和」策に重要な役割を果たす。そのようななかでいかなる温暖化対策を行ない、そ のためにどのような国際制度を求めるのか。オランダやドイツ、北欧諸国といった欧州の 政策動向をリードする環境リーダー国には、そういった国内政策と環境外交という国内―

国際間の「タテのリンク」をつなぐ、コンセンサス形成や行為主体間ネットワークといっ た仕組みができている(5)。残念ながら、その点で日本は後手に回っていると言わざるをえな い。次期国際交渉で「してやられ」ないためには、真に持続可能な政策形成の仕組みを大 至急構築する必要がある。

もちろん、ここでは「官」の役割が低いと言っているのではない。最終的に政策の責任 を負う政府や「官」の役割が重要であることは論をまたない。しかしながら、求める国際 制度の方向性が多様化している国際情勢のなかで確固とした環境外交への姿勢が問われて いるときには、官・民・非政府組織(NGO)・研究者を巻き込んだ持続可能な政策形成によ り、地に足の着いた国際的論議を展開することがきわめて重要であるというのがここでの 主旨である(6)

国際制度に目を転じると、実は、このような官・民・NGO・研究者等を巻き込みながら の制度構築こそが、現在京都議定書を超える制度構築として生じつつある方向性なのであ る。そしてそれは、環境問題のように因果関係が複雑な、いわゆる「複雑系」の問題解決 には自律分散協調型の社会システムがよりよく機能するという「分散的ガバナンス」の制 度構築へ向けた方向性とも軌を一にする。最終的に制度を担保する機能が現代国際関係で は国家にある以上、そのような機能をもつ気候変動枠組条約と京都議定書は協調と規範形 成の核となる。一方で、多様なパートナーシップ・イニシャティブが、気候変動関連問題 領域における多様なガバナンスの機能を適宜最適な行為主体に向けていく仕組みとなるこ

(3)

とで、複雑系の管理のための制度が構築される。米国の京都議定書離脱が期せずしてもた らした最大の副次効果はここにあると言ってよい。

次節では上記の仕組みをより詳しく検討していく。

2

チャレンジの大きさと深刻さ―リスク管理の前提

議論を先に進める前に、まず気候変動問題の大きさと深刻さをあらためて簡単に振り返 っておきたい。きわめて長期的かつグローバルな問題と言われる気候変動対策の究極的な 目標としてしばしば引用されるのが、気候変動枠組条約の第2条である。そこでは条約の究 極目的は「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中 の温室効果ガスの濃度を安定化させること」であるとしている。米国も含めた189ヵ国が本 条約を批准していることに鑑みれば、これが現在最も広範に用いられている温暖化対策の 究極的な目標としてコンセンサスが得られていると考えてよい(7)。すなわち、人間や生態系 にとって「危険なレベル」の気候変動を防ぐということである。だとすれば、この「危険 なレベル」とはどのようなレベルなのか。これを特定するのが次のステップとなる。

すでに欧州では1996年に「危険なレベル」の定義づけをしている。産業革命以前と比べ て地球の平均気温上昇を2°

C以内に抑えること、これが欧州で設定されている究極の温暖化

対策目標である(8)。日本でも2005年に中央環境審議会の専門委員会で「2°

C以内」目標が議

論の出発点として妥当であることが確認されたが、これは次のような理由によると筆者は 理解している。すなわち、3°

Cを目標とした場合には農業などの分野において世界の多くの

地域において悪影響が頻出すると見込まれており、特に脆弱な地域においては無視できな い数の死亡増加まで見込まれる。さらには、いまだ科学的不確実性は非常に大きいものの、

不可逆的な地球システムの不安定化が起こる確率が高まるという知見も示されつつあり、

少なくともリスクを極力小さく抑えるということに重点を置く価値観に立って考えるなら、

受け入れがたいリスク量になる。他方、排出削減費用に関する専門家の意見を参考にする と、1°

C

目標を達成するような排出削減費用は甚大となり、到底受容可能な水準のものには ならないということも明白になっている。ところが、温暖化影響に関する知見の不確実性 を考えた場合には、現在の知見では

1

°

C

単位での影響を勘案するのがせいぜいであり、

1.5

°

C目標と 2

°

C

目標、2°

C

目標と2.5°

C目標とを差別化することは、現時点では困難である。

そこで2°

Cが議論の出発点になるというわけである。

もちろんこの議論は日本ではまだコンセンサスに至っているわけではなく、国内ではい まだ「危険なレベル」の定義づけはできていない状態であるが、科学的、政治的状況を鑑 みれば、「2°

C」が議論の出発点になると言ってよかろう。

それでは、この「2°

C」という目標を達成するためには、いつまでにどの程度の温室効果

ガスの排出削減をしなければならないのだろうか。現在長期シナリオ策定のために実施し ている研究プロジェクトのチームで、AIM/Impact[Policy]というエネルギー・経済モデル により行なった計算結果では、気温上昇が産業革命前と比べて

2

°

Cになるときの温室効果ガ

スの安定化濃度は475ppmとなる(第1図参照)(9)。そして、475ppmの排出パス(第1図・右)

(4)

を達成するときには、2050年には地球全体で現在からみても温室効果ガス排出量をおよそ 半分に減らさなければならないことがわかる。ただし、これは地球全体での話である。日 本にとってのチャレンジの大きさを検討するためには、さらにこれを国に割り振る必要が ある。そうして初めて、国家ごとの排出可能な量、すなわち「2°

C」目標達成に必要な排出

削減量が決まってくることになる。

発展途上国のなかには1日100円以下の経済レベルの生活を余儀なくされており、日常生 活に必要な電気などのエネルギーの供給さえ不足している国もある。そのような国に排出 削減を要請することは物理的に不可能である。このような格差を考慮しながら各国別排出 割り当てを考えると、日本の排出削減量は

2050

年で少なくとも60%から

80%が求められる

第 1 図 AIM/Impact[Policy]による分析結果 25

20 15 10 5 0

Gt

C

1 99 0

2 00 0

2 01 0

2 02 0

2 03 0

2 04 0

2 05 0

2 06 0

2 07 0

2 08 0

2 09 0

2 10 0 5.0

4.0 3.0 2.0 1.0 0.0

1 9 90

0 6

1 99 0

2 00 0

2 01 0

2 02 0

2 03 0

2 04 0

2 05 0

2 06 0

2 07 0

2 08 0

2 09 0

2 10 0

2 11 0

2 12 0

2 13 0

2 14 0

2 15 0

BaU(現状維持) GHG-475ppm GHG-500ppm GHG-550ppm GHG-650ppm

第1表 各国における主な中長期目標

国名・時期 目標設定機関・報告書 長期目標 中期目標

ドイツ

(2003年10月)

ドイツ連邦政府気候変動 諮問委員会(WBGU)

・産業革命前と比較して地表温 度の上昇を最大2°C、10年で 0.2°C以下に抑える。

・CO2濃度を450ppm以下に抑

2050年までにエネルギー起源 CO2を45―60%削減(1990年比)

英 国

(2003年2月)

エネルギー白書 大気中のCO2濃度を550ppm以 下に抑制

2050年までにCO2排出量を60%

削減 フランス

(2004年3月)

気候変動問題省庁間専門 委員会

CO2濃度を450ppm以下で安定 ・1人当たりCO2排出量を0.5tC までに制限(2050年)

・世界全体で年間30億tCの排出 量までの削減(2050年)

スウェーデン

(2002年11月)

スウェーデン環境保護庁 京都議定書で規定されたすべて の温室効果ガスの大気中濃度を 550ppmで安定化(CO2濃度を 500ppm以下)

2050年までに、世界の工業先 進国でのCO2および他の温室効 果 ガ ス の1人 当 た り 排 出 量 を 4.5tCとし、その後随時減少さ せていく(現在8.3tC)

欧州連合

(2005年3月)

欧州環境理事会 気温上昇を2°C以下に抑えると の目標を達成するため大気中の 温室効果ガス濃度を550ppm以 下で安定化

先進国について1990年に比べて 2020年までに15―30%、2050 年までに60―80%

* tC=炭素換算トン

(出所) 各報告書、政策文書をもとに筆者が作成.

(5)

ことになる(10)。実際、既存研究も同様の数値を導き出している(11)。さらには、すでに国家レ ベルで設定され始めている中長期目標の数値を眺めてみても(第

1

表参照)、押しなべて

60%

から80%という数値が目につくし、最近では米国内においてもカリフォルニア州が

2050年

に80%削減目標を設定している。

細かい数値の違いはここではおいておくとしても、いずれにせよ大事なことは、気候変 動問題の大きさと深刻さがこのようなレベルの話であるという現実である。もちろん、こ のような数値は一定の仮定に則って導き出されてきたものであり、実際の排出削減という ことになると科学的な不確実性もある。また、そもそも「2°

C」目標自体に関しても、まだ

まだ議論の余地もあろう。そのことを認識したうえで、それでもなお、国連環境開発会議

(地球サミット)以来地球環境問題を扱ううえで「リオ第

15原則」として国際的コンセンサ

スが得られている「予防的アプローチ」の存在を鑑みても、2050年までに

60%

80%

とい う大幅な排出削減が必要であり、そのような社会に現在われわれは身をおいているという ことが現状認識として必要となる。そしてより重要なことに、それでもなお、産業革命以 前と比べて

2

°

Cの気温上昇の世界に備えなければいけないのである。すなわち、今後の気候

変動対策を考える際には、緩和と同時に適応策も講じていく必要がある。

さて、このようなチャレンジに直面するなかで、どのようにして「京都超え」のための 制度構築を行なうべきなのであろうか。

3

ネットワーク型自律分散協調ガバナンス

前節で論じてきたように長期的に対策を講じることが避けられない気候変動問題におい て、国際制度の次期段階を考慮するうえでひとつの指針を与えてくれるのが制度研究の知 見である。近年の制度研究の成果によれば、地球環境問題に代表されるような複雑に因果 関係が絡み合い、相互連関性の高い「複雑な」問題を解決するためには、緩やかで分散的 でありながらも強固なネットワーク構造をもつ制度的枠組みが適しているという(12)。そのよ うな制度的枠組みのなかでは、国家やNGOや企業といった多様な行為主体が相互に情報の 授受を行ないながら、ガバナンスに必要な機能を実現していくことになる。すなわち、複 雑化した個別の問題解決のための制度枠組みおよび行為主体はそれ自体で一見完結してい るようにみえるが、問題自体が相互依存しており、また行為主体自体も横断的なネットワ ークを通じて相互連関(あるいは場合によってはオーバーラップ)していることから、関連する 諸問題を解決するための制度および関連行為主体のネットワークが構築されていく。この ようなネットワークの適切な構造化こそが問題解決に有効な制度を導くというのである(13)。 このような制度は、問題解決を保障することにも役立つことになる。すなわち、何らかの 原因で仮にひとつの制度が機能しなくなるような事態が生じたとしても、他の関連する制 度のバックアップによりそれがシステム全体の機能不全にはつながらないというのである。

気候変動ガバナンスもこのような文脈のなかで捉えていく必要があるだろう。もとより 気候変動問題は、多様な分野と関連をもつ複雑な課題である。気候変動の緩和は、風力や 太陽光やバイオマスといった再生可能エネルギー利用の問題でもあり、また、エネルギー

(6)

効率向上の問題でもある。エネルギー利活用ということになると技術革新や技術普及の問 題でもあり、技術移転の問題でもある。また、森林伐採や森林利用、そして砂漠化といっ た問題群も気候変動問題と関連し、同時に生物多様性問題とも関係をもつ。気候変動への 適応に至っては、上記のほかにも発展途上国の開発問題との絡みも出てくる。

このように複雑な問題においては多様な行為主体が問題解決に関与してくる。そのネッ トワーク化をより有効に実現させ、シナジー効果を高めていくためには、気候変動問題の ガバナンスに必要となる諸機能と、それら諸機能を実現していく行為主体との関係を的確 に把握し、最適化しうる構造とすることが重要となる。例えば、国際合意に対して最終的 に(合意)形成や合意内容履行の責任を負うのは国家であって、例えば産業界がその責を負 うことはないし、その必要もない。産業界のネットワークで形成された合意は国際合意の 補完的機能を果たすことはあれども、営利目的の産業界の合意が国際合意に代替して公共 財の確保を保障する仕組みとなることはない。他方で、気候変動対策を実現するような資 金メカニズムに目を向けると、国家や国際機関による資金フローがある一方で、ビジネ ス・産業界から供給される非公的資金投与の影響力にも多大なものがある。こういったイ ンフォーマルな資金フローを含めて、気候変動問題解決へ向けた諸機能と行為主体のネッ トワーク化を推進するような制度設計を行なうことが重要となってくる(14)

さらに、最近のコンストラクティビズムの展開に沿ってこの論考をいま一歩進めるので あれば、こういったフォーマル・インフォーマルにネットワーク化されたガバナンスの展 開とあいまって、いわば共通認識としての「共有知識(common knowledge)」や「合意的知識

(consensual knowledge)」といったものが構築されていくことになる(15)。これらは、行為主体 間の相互作用の連鎖によって、さらに気候変動対策にかかる知識や規範の拡大再生産へと つながり、結果として分散的ガバナンスをダイナミックなものへと進化させていく。逆に 言えば、分散的ガバナンスの構造は規範浸透にも重要な役割を果たすということができる。

これは特に、長期的課題としての気候変動対策にはきわめて重要な視点であると言えよう。

このような制度論的視点から将来制度枠組みをめぐる国際論議動向を俯瞰すると、英国 のブレア首相の発言を待つまでもなく、現在進みつつある方向は必ずしも悲観的なもので はないことがわかる(16)。むしろ、米国の京都議定書離脱と気候変動に関する規範浸透が同時 進行的に起こることにより、気候変動関連の多様なイニシャティブが蜘蛛の巣状の網へと 進化する過程と捉えることさえできよう。とすれば重要なのは、「京都か否か」、という選択 肢ではなく、「京都もその他も」、という選択肢である。合意形成や履行の最終責任や、国際 公共財の確保を最終的に保証する機能が国家に委ねられている現在の国際社会の基本構造 を考え、また、気候変動対策の歴史的視点を考慮すれば、これは当然の選択肢と言えよう。

法的拘束力をもつ目標設定以外の方法で国家が責任を担保し、確実に温室効果ガス排出削 減に向かう方法がみつかれば、京都議定書以外の方法も考えられようが、現在のところそ のような方法はみつかっていない。このような状況下においては、相互補完的性格を備え る京都議定書とその他のイニシャティブとを両立させてシナジーを創出することこそが、

脱温暖化へ向けて進むべき道であろう。

(7)

次節では、より具体的に、将来制度枠組みをめぐる国際論議状況を整理することとする。

4

条約・議定書プロセスとプロセス外イニシャティブ

1) 条約・議定書プロセス

気候変動問題を気候変動そのものとして扱う国際制度が気候変動枠組条約と京都議定書 であり、両者の枠組み内で行なわれる将来枠組み議論である。国家中心のルール形成機能 を鑑みれば、京都議定書交渉には参加しながら批准を達しえなかった米国およびオースト ラリアという国家の動向がひとつの鍵を握ることになる。彼らを将来枠組み論議に巻き込 む方策を模索しつついかに条約の目的を達成するか、これが大きな課題となる。

京都議定書3条

9

項は、第

1

約束期間の満了する少なくとも

7

年前にその後の期間に係る 約束の検討を開始すると規定している。2012年が第

1

約束期間満了の年に当たることから、

翻ってこれは

2005年を意味することになる。これをにらみ 2004

12月にアルゼンチンのブ

エノスアイレスで開催された

COP10から、気候変動枠組条約締約国会議

(COP)も、本格的 に将来の約束検討へ向けた論議を活発化させることになる。COP10では、将来枠組み交渉 の端緒とすべく、将来枠組みに関する「セミナー」を開始する提案がされた。まずは対話 によりポジション・マッピングを行なおうという試みである。約束検討開始の条項は京都 議定書に規定されているものの、より柔軟に京都議定書非批准国である米国やオーストラ リアも含めた対話を可能とすべく、議定書に限定せず枠組条約締約国が参加する方向で交 渉が行なわれた。しかし交渉を視野に入れた対話の開始に関しては米国やサウジアラビア が鋭く反発、結果として、いかなる交渉、約束、プロセス、枠組み、指令をも導くことの ない旨が明記された「政府専門家セミナー」が2005年5月に開催された(17)。そこでは日本を 含む26ヵ国の政府代表がプレゼンテーションを行ない、なかには将来枠組みに関する論点 を含めた国も多くみられた。

2005年 2

16

日に京都議定書が発効し、重層かつネットワーク構造を織り成す気候変動

ガバナンスの中心構造となるべきレジームが動き出した。より厳密に言えば、京都レジー ムが枠組条約の入れ子として動き出したわけである。より具体的に国際的対策を示す議定 書は、先進国に対しては排出削減目標によって究極目標達成への進捗を管理するほか、能 力構築(キャパシティ・ビルディング)や資金メカニズム、モニタリングといった気候変動ガ バナンスに係る諸機能を内包している。それらは、例えばクリーン開発メカニズム(CDM)

を通じた企業活動や

NGO

による啓蒙活動、締約国による報告や国際機関による審査等とい ったように、適宜適切な行為主体によって(理想的には適材適所で)遂行されていくことに なる。好むと好まざるとにかかわらず、京都議定書の国際制度が動き出したのである。

このような京都議定書の発効により、同年

11月から 12

月にかけての

COPは、京都議定書

締約国会議(MOP)を同時開催する

COP/MOPとして開かれることになった。2005

年末とい う検討開始のタイムリミットを前に、2週間の交渉では、いかにして将来枠組みの検討を行 なっていくかという「場」をめぐる交渉が最大の焦点となった。昼夜の別なく行なわれた 交渉とコンサルテーションの結果、2本立ての合意が形成されることになる。すなわち、一

(8)

方で京都議定書

3

9

項の下、先進国のさらなる約束を検討するプロセスとしてアドホッ ク・ワーキング・グループ(AWG)が開始されることとなった。他方、京都議定書非批准 国を含んだ将来枠組みの検討は、5月開催の「政府専門家セミナー」同様、交渉を導かない ことを条件に、枠組条約の下で「枠組条約履行強化による気候変動のための長期的協力行 動に関する対話」として

2006年から 2007年の間に合計 4回のワークショップを開催するこ

ととなった(18)

こうして、気候変動合意形成・政策履行の最終責任を負う国家という行為主体による合 意形成は、重層的に織り成される気候変動レジームの中心たる議定書と、そのメタ・レジ ームとして気候変動レジームのヒエラルキー構造の最上位に位置する枠組条約との両方の 枠組みで進められることとなった。言い換えれば、京都議定書の枠内でいかにして「京都 超え」を行なうかの検討は、議論枠組みとしては、米国やオーストラリアを巻き込んだよ り一般的な長期的気候変動対策議論と切り離して行なう構造が固まったわけである。

2) プロセス外イニシャティブ

条約・議定書プロセスが進展をみせる一方で、主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミ ット)の準備プロセスや「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第

4次評価報告書の準備

過程で気候変動に関する知見の進展が確認され、また気候変動に関する規範の力もあり、

京都議定書非批准国の米国やオーストラリアも気候変動に対してただ手をこまねいている わけにもいかない状況が醸成されてきた。また国際的にも、世界の約4分の

1

の二酸化炭素 排出量を排出する国を気候変動対策から切り離しておくわけにはいかないという国際世論 も根強い。こうしたことから、将来的にいかに米国やオーストラリア、そして発展途上国 を巻き込んだ気候変動対策を行なうべきかの検討も、米国の京都議定書離脱以来行なわれ ており、その結果、さまざまな気候変動関連イニシャティブが起こりつつある。これらは 国際連合の枠組みに則った多国間協調の形式をとらず、「持続可能な開発に関する世界首脳 会議(ヨハネスブルグ・サミット)」以来登録が行なわれている、いわゆる「タイプ

2」型の

パートナーシップ、すなわち、政府を含む多様な行為主体によるパートナーシップの形態 をとるものが多い。その多くは、国際交渉を経ない自主的合意を基調とした国際協力体制 である。

ヨハネスブルグ・サミットのフォローアップとして、持続可能な開発の実現状況をレビ ューしている国連「持続可能な開発委員会」(CSD)は、2006年からの2年間をエネルギーと 気候変動をテーマとしている。そのなかで行なわれたパートナーシップのレビューでは、

319のパートナーシップ中 25%

が気候変動をテーマとしている(19)。「クリーン開発と気候に 関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)をはじめ、「21世紀のための再生可能エネル ギー政策ネットワーク」(REN21)、「再生可能エネルギーとエネルギー効率のためのパート ナーシップ」(REEEP)、あるいはメタン排出削減を目指す

Methane to Markets

など、多くのイ ニシャティブがこの枠組みのなかで捉えうるものであり、実際、パートナーシップとして

CSDに登録されてもいる。

もちろんこれら以外のイニシャティブもある。例えば「炭素隔離リーダーシップ・フォ

(9)

ーラム」(CSLF)や「水素経済社会のための国際的パートナーシップ」などである。しかし、

枠組条約および京都議定書プロセス以外のイニシャティブは、その多くがパートナーシッ プ形式を採用しているのが現状である。

これらのイニシャティブは気候変動のみを直接的課題としているものではないが、いず れも気候変動対策をその主要テーマのひとつとしているところに共通点がある。すなわち、

気候変動に関連した別課題を扱いながらも、気候変動対策も同時に行なっているわけであ る。多くのイニシャティブはまだ本格的に稼動しておらず、先行きの不透明さは否定でき ない。しかしながら、これらのイニシャティブがそれぞれの目的に向かって本格稼動すれ ば、関連する多様な枠組みのもとで多様な行為主体の相互作用が促進されることになろう。

そして多様な枠組みや行為主体がそれぞれ互いにネットワーク化し、相互作用することに より、気候変動に関連した問題解決のための構造が蜘蛛の巣状に広がる分散的なガバナン スの仕組みが構築されることになるだろう。

そのためには、気候変動対策に必要なガバナンスの諸機能と行為主体との関係を整理し たうえで、その最適化を促す国際制度を構築することが必要となる。もちろん、その際適 度なオーバーラップは制度間の健全な競争を促進するが故に重要となることも忘れてはな らない。今後の政策研究も、このような領域での知見の充実が求められてこよう。

例えばAPPは、再生可能エネルギーの新規技術開発など8部門において、民間部門の情報 交換を促進し、技術開発阻害要因の特定、評価、解決などといった機能をもつことを目指 している(20)。これらの機能は条約・議定書のみでは果たすことの困難なものであるが、同時 に例えば議定書の枠内で

CDMプロジェクトを実施する行為主体がパートナーシップの行為

主体となることは十分にある。したがって、彼らが異なる枠組みで異なる他の行為主体と の相互作用を繰り返しながら、新たな情報や知識、認識が生じ、それらが再び相互作用や ネットワーク化によってさらに拡大していく。こういったことが、実は、長期的には、枠 組条約第2条に示されるところの究極「目標」への近道となっていくと考えられるのではな かろうか。

重要なことは、これらのパートナーシップが条約・議定書プロセスに代替的なものでは なく、条約・議定書プロセス、とりわけ京都議定書の国際制度が国家の気候変動に対する 責任を規定していることによってはじめて、分散的ガバナンス構造が成立するという点で ある。ヨハネスブルグ・サミットのパートナーシップ文書が、政治宣言や行動計画への補 完的なものであり、パートナーシップ文書のみでは決して包括的な合意とはならないのと 同じことである。いかに政府がパートナーとなっていても、自主的イニシャティブの集積 は、現代国際関係においては決してそれだけで目標達成を担保することはないのである。

5

京都議定書を超えて

気候変動をめぐる国際状況は、一方で京都議定書体制に則った対策と制度構築を図る欧 州を中心としたブロックと、他方で独自のイニシャティブを打ち出す米国を中心とするブ ロックとの2極化体制が当面続くという見方が大勢を占めている。しかし重要なのは、両者

(10)

が互いに排他的でないという点である。そもそも、気候変動問題という複雑系の問題解決 においては、枠組条約・議定書とそれ以外のイニシャティブとの共存体制が、後者の「パ ートナーシップ」を基調とした性格と相俟って、制度的イノベーション(あるいはシナジー 効果)を引き起こす可能性が大きい。制度を蜘蛛の巣状に張りめぐらせることによって、自 律分散協調の仕組みを構築し、制度的な保障を構築しておくことは、気候変動問題の長期 的性格からみても望ましい。

ただしその際重要なのは、気候変動問題を扱う中心としての枠組条約・議定書体制の存 在である(21)。前述したように、もちろんこれ以外の方法でも各国が温暖化対策に真剣に取り 組む方法がみつかれば、必ずしも議定書にこだわる必要もなかろう。しかしながら、少な くとも脱温暖化へ向けた行動が軌道に乗るまでは、明確な目標によって気候変動対策を担 保する議定書がとりわけ重要な役割を果たすと言わざるをえない。気候変動枠組条約の下 で、法的拘束力のない目標がまったく守られなかった歴史を鑑み、また京都議定書を離脱 した米国の温室効果ガス排出量が

2004年時点ですでに 1990

年比15.8%の増加をみせ、排出 に歯止めがかからなくなっている状況をみると、その言説はさらに説得力をもつ(22)。さらに は京都議定書が発効することにより京都レジームが動き始めたことは、それ自体意味をも ち始めている(23)。すなわち、現行メカニズムが仮に消滅することになれば、それは将来的な 対策の変更を迫られるだけでなく、現在の投資意欲の減少にもつながってくるからである。

すでに、例えばCDMプロジェクト登録数で全世界の15%弱を誇る「CDM大国」ブラジルで も、将来枠組み論議の先行き不透明さから、CDMへの投資を控える動きも出始めていると いう(24)

こう考えていくと、制度面からも、歴史面からも、インセンティブの面からも、第1約束 期間以降も京都議定書を継続していくことは、長期的温暖化対策の次期ステップとして重 要となる。本稿冒頭でも述べたとおり、京都議定書を振り出しに戻す革命的アプローチに かかるコストはいかにも多大である。そして、分散的ガバナンス構造のなかでの国家の役 割を鑑みれば、そのなかに米国をいかにして引き入れるかを考えることが重要である。例 えばそれは原単位当たり目標かもしれないし、条約・議定書プロセス以外のイニシャティ ブによる途上国、特に大途上国の対策強化かもしれない。米国が気候変動の影響による衝 撃を受ければ、大きな変化もありうるかもしれない。しかしそうなる前に、国家として米 国も気候変動への責任を担保できるような道筋を提示していくことが求められているので はなかろうか。そうしてはじめて、条約・議定書プロセス以外のイニシャティブによるも のに加えて、リオ第7原則「共通だが差異ある責任」のもとで、途上国の役割議論への道筋 も見えてこよう。先に挙げた長期シナリオ策定プロジェクトの計算では、先進国のみでは

2050年地球全体での温室効果ガス半減は不可能であることが明らかとなっている。そう遠

くない将来、途上国もまた対策を講じる必要があるのである。

実際、京都議定書のように米国を欠いた国際レジーム形成は、あらゆる分野で始まって いる。国際刑事裁判所(2002年)、「児童の権利に関する条約」(1989年)および「武力紛争 への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書」(2002年)、対人地雷全面禁止条

(11)

約(1999年)など、思いつくだけでも数多く見受けられる。いずれの分野も、「それでも」

合意は展開している。いかにして米国を引き入れるかという問いかけへの答えのひとつの 鍵は、分散的ガバナンス構造や規範の浸透に見出せようが、同時に外交に寄せる期待も大 きい。

戦後強固な日米関係外交史をもつ日本にとって、米国との関係は外交上非常に重要な役 割をもってきた。しかし、例えばヨハネスブルグ・サミットの実施計画交渉において、京 都議定書批准国が未批准国に対して批准を促し年内発効を目指すという文言を導き出した ように、強固な日米関係の基盤の上に立ち、京都レジームへの歩み寄りを米国に求めるこ とができるのもまた、日本外交の可能性であると言えよう。そしてそのためにも、まず本 課題についての国内での議論を、政官民学NGOを交え、科学的データをとりこみながら公 明正大に行ない、コンセンサスに根ざしたポジション策定を行なうことが必要となろう。

このような外交には、分散的ガバナンスの時代にあっては、開かれた外交が重要となる(25)。 交渉担当者の昼夜をいとわない献身的努力をより効果的に国際制度形成に反映させるため には、もはや「狭義」の外交交渉だけでなく、多様な行為主体を効果的に活用し、そのネ ットワークを活用する分散的でマルチ媒体を活用する外交交渉を行なうこと、これが制度 構築上も外交にも必要になっている(26)。そうすることではじめて、より大きなシナジー効果 も創出しうる。情報が価値をもつ時代のガバナンスにあってそのための基本となるのは、

情報の迅速な伝達である。欧州のNGO代表は、仮に政府と立場は違うときでも、政府から の情報量や政府代表とのコンタクトにも満足しているとの声が聞こえる(27)。対して日本の

NGO代表はと言えば、残念ながらこの点で不満を口にすることが多い。もちろんこれは、

政府の側の組織的・個人的努力のみで解決しうる問題ではなく、ビジネス・産業界・

NGO

・研究者といった非政府組織それぞれの側の努力も必要であり、いたずらに対決姿勢 をみせるのではなく、むしろ対話を通じた情報交換を行なう姿勢が必要であろう。大切な ことは、情報授受の仕組みを制度化して一定の保証を付与することで、ネットワーク化と 行為主体間相互作用によるガバナンス機能最適化への道筋を付けることであろう。

国際制度論議も、最終的には国レベルでのポジション形成から始まっていく。将来制度 についての交渉が本格化するいまこそ、科学に基づき地に足の着いた脱温暖化論議が必要 である。

1) 例えば、2005年3月23日欧州理事会決定(7619/1/05 REV1)

2) 米国国務省“USA Energy Needs, Clean Development and Climate Change”(COP11/MOP1にて配布)

3) 米国の2004年時点の温室効果ガス排出は1990年比15.8%増である。USEPA(U.S. Environment Protection Agency), “Inventory of U.S. Greenhouse Gas Emissions and Sinks: 1990-2004,” April 2006, USEPA

#430-R-06-002より。

4 Takashi Hattori, “The Road to the Kyoto Conference: An Assessment of the Japanese Two-Dimentional Negotiation,” International Negotiation, Vol. 4, No. 2, 1999, pp. 167―195.

5)「タテのリンク」について詳しくは、蟹江憲史「環境と持続可能な開発へ向けたガバナンスの制 度的枠組み」、香川敏幸・小島朋之編『総合政策学の最先端Ⅳ』、慶応義塾大学出版会、2003年、

235―255ページ、あるいはOran R. Young, The Institutional Dimensions of Environmental Change, MIT

(12)

Press, 2002を参照のこと。またオランダの状況については、蟹江憲史『地球環境外交と国内政策

―京都議定書をめぐるオランダの外交と政策』、慶應義塾大学出版会、2001年を参照のこと。

6) このような合意形成については、参加型統合評価(PIA)や参加型技術評価(PTA)といった研 究が進んでいる。久保はるか「科学技術をめぐる専門家と一般市民のフォーラム―デンマーク のコンセンサス会議を中心に」『季刊 行政管理研究』(財団法人行政管理研究センター)第96

(2001年)、40―55ページ;篠原一『市民の政治学―討議デモクラシーとは何か』、岩波新書、

2004年;原科幸彦編著『市民参加と合意形成』、学芸出版社、2005年。

7 5月10日時点の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)ホームページより。

8) 欧州の2°C目標について、より詳しくは以下を参照のこと。松本泰子・太田宏・蟹江憲史「欧州 における長期目標設定過程とその政治的背景―科学と政治のインタラクション」『季刊 環境研究』

第138号(2005年)、93―101ページ.

9) なお、本稿における知見は、地球環境総合研究推進費による研究「脱温暖化社会に向けた中長期 的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェ クト」(略称「2050年脱温暖化プロジェクト」)の研究成果を含んでいる。AIM Impact[policy]に ついて詳しくは、肱岡靖明「地球温暖化抑制のための温室効果ガス安定化レベルの検討」『季刊 環 境研究』第138号(2005年)、67―76ページを参照のこと。

(10) 計算結果について、詳しくは前述(注8)プロジェクト報告書を参照のこと。

(11) 蟹江憲史「中長期目標設定とその国際化に関する課題―グローバルな温室効果ガス排出削減と 日本の目標」『季刊 環境研究』第138号(2005年)、84―92ページ。

(12) Vinod K. Aggarwal, Institutional Designs for a Complex World, Cornell University Press, 1998; Elinor Ostrom, “Decentralization and Development: The New Panacea,” Keith Dowding, James Hughes and Helen Margetts, Challenges to Democracy: Ideas, Involvement and Institution, Palgrave Publishers, 2001, pp. 237―256;

Christopher K. Ansell and Steven Weber, “Organizing International Politics,” International Political Science Review, January 1999; Peter M. Haas, Norichika Kanie and Craig N. Murphy, “Conclusion: Institutional design and institutional reform for sustainable development,” N. Kanie and P. M. Haas eds., Emerging Forces in Environmental Governance, UNU Press, 2004.

(13) 実際、環境をめぐっては、実に200を超える多国間環境合意(MEA)が存在している。ただし、

これらの間の相互連関と調整の必要性が議論されていることも事実であり、これが環境をめぐる 国際制度改革論のひとつの要因でもある。Inter-linkages: Synergies and Co-ordination between MEAs, Tokyo: United Nations University, 1999, p. 31; Daniel C. Esty and Maria Ivanova eds., Global Environmental Governance: Options & Opportunities, Yale School of Forestry and Environmental Studies, 2002; N. Kanie and P. M. Haas, Emerging Forces in Environmental Governance; Andreas Rechkemmer ed., UNEO–Towards an International Environment Organization, Nomos, 2005; W. Bradnee Chambers and Jessica F. Green, Reforming International Environmental Governance: From Institutional Limits to Innovative Reforms, UNU Press, 2005.

(14) ガバナンスの機能と行為主体についての考察は、蟹江、前掲「環境と持続可能な開発に向けたガ バナンスの制度的枠組」、およびN. Kanie and P. M. Haas eds., Emerging Forces in Environmental

Governanceを参照のこと。

(15) ここで言う「共有知識」とは、ウェントの定義する「外的な世界の状態ならびに、アクター相互 の合理性、戦略、選好および信条に関するアクターの信念」を意味し、「合意的知識」とは、「因果 関係に関連する科学的知識のうち、①折々の重要な政治的議題に即応して利用されうるかたちに 再集成させ、かつ、②科学的研究者と政治家によって共有されるに至ったもの」のことを指す。

Alexander Wendt, Social Theory of International Relations, Cambridge University Press, 1999; Ernst B. Haas, When Knowledge Is Power: Three Models of Change in International Organization, University of California

Press, 1990; 山田高敬「『複合的なガバナンス』とグローバルな公共秩序の変容―進化論的コンス

(13)

トラクティビズムの視点から」『国際政治』第137号(2004年6月)、45―65ページ。

(16) ブレア首相2006年328日の発言(ABN-AMRO, Pacific Hydro, Australian Business Council for Sustainable Energy, Phillips Fox, “Show me the money,” May 2006, p. 8)より。

(17) 詳細は以下を参照のこと。http://unfccc.int/meetings/seminar/items/3410.phpおよびhttp://www.iisd.ca/

climate/sb22/。

(18) 詳細は以下を参照のこと。http://unfccc.int/meetings/cop_11/items/3394.phpおよびhttp://www.iisd.ca/

climate/cop11/。

(19) パートナーシップ数は2006年2月24日現在(E/CN.17/2006/6)

(20) 2006年1月12日「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ第一回閣僚会合

―概要と評価」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kiko/clean_gh.html)参照。

(21) ネットワーク論においても、本質的に垂直的な指揮命令系統をもたないネットワークにおいて、

ネットワークの中枢となるハブの重要性を指摘しており、これが他のアクターとの関係を調整す るという。W. Richard Scott, Organizations: rational, natural, and open systems, Prentice-Hall, Inc., 1997.

(22) USEPA, “Inventory of U.S. Greenhouse Gas Emissions and Sinks: 1990―2004”より。

(23) ポビ、スコビン、アンダーセンらは、一度制度が構築されると、そこに官僚的利害関係や市場に おける機会創出がなされ、よほど大きな政治変動のない限り制度変更はきわめて困難であると言 う。Jon Hovi, Tora Skodvin and Steinar Andersen, “The Persistence of the Kyoto Protocol: Why Other Annex I Countries Move on Without the United States,” Global Environmental Politics, Vol. 3, No. 4, November 2003, pp. 1―23.

(24) http://cdm.unfccc.int(2006年3月2日)

(25) そもそもガバナンスとは、政府がもつ命令や法律の執行のみでなく、合意や自発性に基づいて共 通目標へと向かう非公式かつ非政府なメカニズムを含むものであると定義される。例えば、James N. Rosenau and Ernst-Otto Czempiel eds., Governance without Government: Order and Change in World Politics, Cambridge University Press, 1992を参照のこと。

(26) ここで言う狭義の外交交渉とは、いわゆる古典的な外交のことを指し、「主として外交官もしく は政府機関による主権国家間の公的関係の調整を意味する」(弘文堂『政治学事典』より)。冷戦後 の現在は、外交のおかれている状況は、古典的なそれとはさまざまな点で異なるものであると考 えられている。

(27) このような声はCOP期間中に筆者が行なった聞き取り調査で聞かれたほか、例えば、蟹江、前 掲『地球環境外交と国内政策』;Dana R. Fisher, National Governance and the Global Climate Change Regime, Rowman & Littlefield Publishers, Inc., 2004; Norichika Kanie, “Participation of NGOs in the Global Climate Change Decision-Making Process : A Key for Facilitating Climate Talks,” Gunnar Sjostedt ed., Strategic Facilitation of the Climate Talks, IIASA(International Institute for Applied Systems Analysis), forthcoming どを参照のこと。

かにえ・のりちか 東京工業大学助教授 [email protected]

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