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なぜ組織論を学ぶのか
第1回 組織論の目的
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目的
組織が持つ能力を引き出す
• 組織能力を基盤とした企業競争
–
何が競争優位でできる組織なのか–
ギネスというブランドを維持できる能力–
小型のAV機器を開発でき能力–
高品質のクルマを作り続けられる能力• 組織能力をどう作るのか
–
個々人の持つ技能や知識、経験をベース–
組織が一つのプロセスやシステムとして動く–
新たなこと、違った視点を優位に学習できる• キーワード:組織能力
事例
組織能力を考える企業合併
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よりよい企業合併のために
•
企業合併はしばしば成功しない–
AT&カーニーの98-99年調査• 全世界の115事例のうちで、58%が設定した価値目標を未達成
• 問題の多く「は合併後の組織統合」の失敗
• ハゲタカ・ディーラーのもうけの種にされただけ
• 合併による変化を乗り越えて組織能力を高められることが重要
•
「合併後の統合」に半分以上が問題を抱える–
1+1=0.4 はしばしば起こる–
重要な人的資源の保有–
組織能力の向上※出所:マックス ・M ・ヘペック他『勝利する企業合併』ピアソン・エデュケー ション、第1章。
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合併に関するリスク(ATカーニー調査)
30 17
53
0 10 20 30 40 50 60 比率
戦略策定、候補選定、企業評価 交渉と契約 合併後の企業統合
項目
企業成長のための合併
•
合併の戦略–
規模拡大型–
垂直統合型–
関連多角化型–
水平型ו
ATカーニーの調査結果–
合併経験のある経営者–
本業中心–
コア・ビジネス重視–
豊富な財務資源–
対等合併を回避シスコシステムズのPMI戦略
•
買収による成長–
10年間で40のベンチャーを買収・急拡大–
知的資産と人材の獲得が目的の買収–
Our culture is acquisition•
PMI戦略とその展開–
合併後にどう統合するのかの戦略の存在• 類似組織文化の企業を対象
• 半年以内に組織統合
• 知的財産と人材の保有が最大目的
•
統合後の組織能力の成長への明確な戦略※出所:C.オライリー他『隠れた人材価値』翔泳社、第3章。
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Cisco Systems Inc.
• 本社:カリフォルニア州サンノゼ市
• 主要事業:通信機器事業 インターネットの インフラ及び そのソリューション
• ミッション
– 顧客満足、製品リーダーシップ、市場占 有率、収益性での成果、
– 顧客から指名されるサブライヤーへ
• 売上高:188億米ドル(2003)
• 証券市場:NASDAQ上場
• 創業年:1984年
• 従業員数:34307人(全世界:2004年4 月)
• 日本:シスコシステムズ株式会社
122 189
223 189 189
0 50 100 150 200 250
売 上 高︵ 億
$︶
1 9 9 9
2 0 0 0
2 0 0 1
2 0 0 2
2 0 0 3
年度 Ciscoの世界売上高
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買収の流れ
戦略
買収候補選定
統合マネジメント
•業界標準の製品技術戦略
•指名されるサプライヤーへ
•顧客が求める技術の買収
•6ヶ月以内に製品化できる技術
•統合しやすい企業の選択
•プロジェクトとして展開
•中間目標と変革促進者の投入
★M&Aチームに人的資源管理担当者も参加
シスコのM&Aの特徴(OʼReilly & Pfeffer)
1. 目的意識が明確
2. 相手先企業とシスコのビジョンや事業の適合度 3. 企業文化の相性の良さを評価
4. 統合後の明確なイメージ
5. M&Aに関わる変革の機動的な対処
買収候補の選定
• 短期に統合できる企業を対象に
–
5つの条件1. ビジョンを共有できる 2. 早い段階から双方にメリット 3. 長期的に利益
4. 企業文化の相性がよい 5. 地理的に離れすぎない
•
小規模企業の買収に徹する• 高い財務的成果
–
M&Aの利益が10%から400%まで13
統合
• 買収の最終合意後、すぐに統合にはいる
–
制度や情報インフラの統合–
部門組織の再編成–
企業文化の統合:Cisco Way•
インテグレーション・チーム•
パディ(相談係)の指名–
中間的な目標と期限の設定•
30,60,90,120日14
なぜ合併の際に組織を考えるのか
• 日本企業の合併に戦略はあるか
• 日本企業は対等合併が多いがこれは有効か
• シスコのような仕組みを入れると効率は高まるか
• 組織の能力は、保有資産よりも重要ではないか
考え方
組織能力の競争
• 2つの競争優位性の種類
–
ポジションを基盤とする優位性–
組織能力を基盤とする優位性• 組織論の貢献は組織能力構築のガイド
–
戦略論の動向:能力ベースの競争戦略論の展開–
定義:組織が、「経営資源を獲得、活用、蓄積、開発し、製品・サービスを生み出す能力」(藤田,2002,96)
–
成長させることで、持続的競争優位をもたらす=>組織の持つ独自な能力による競争
液晶を革新し続けられるシャープ
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組織能力とは何か
•
組織能力=知識+スキル(藤田、2003、105)–
資源よりもそれを活用する行為能力–
部分的な能力と全体的なシナジー–
知識生産に有効な組織デザイン、手続•
製品開発についての具体的な測定(楠木, 1996)1. 部門の能力
– 製品技術蓄積(財務資源や人的資源も)、データベース 2. アーキテクチャ能力
– 開発統合能力、プロジェクト管理能力、タスク専門化 3. プロセス能力
– 部門間コミュニケーション、リーダー関与、経験共有
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どう作るのか
• 組織が常に学習し、全体として能力を発展させる
–
学習する組織へ–
革新による競争:模倣と陳腐化への対抗–
全体が共有し、実践することの重要性• 変革管理の重要さ
–
学習を引き出すための組織の内外の条件整備と変革プ ロセスのコントロール–
具体例:動機づけ、情報共有の仕組み、有効な文化作り• 組織の構造と過程についての知識が必要
なぜ組織論を学ぶのか
• 我々は組織と協力して目標を達成する
–
組織の提供する製品・サービスを使う–
組織活動により目標を達成する–
私たちは、組織の中に生きている• 組織は個人と異なるメカニズムを持っている
–
組織論は、組織と個人との関係を研究している–
学際的:経済学、経営学、行政学、社会学、心理学、OR、情報科学などなど
個人では 達成でき ない活動 を組織が
提供
• 組織社会の時代
組織は非常に大規模で複雑な活動を行う
企業、大学、病院、政府、自治体、警察、宗教
技術の高度化
複雑性の増大
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組織
・財・サービスの提供
・治安・安全
・癒し・心の豊かさ
・平和・安全・自由 消費者として
学校: 学生・教員・事務 企業: 従業員、管理者 政府: 公務員、議員、
首長 組織の参加者として
•経営管理活動
•計画、評価、調整
•資源の貯蓄配分 の意思決定 経営者・管理者として
組織と私たち との関わり
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組織論の位置づけ
•経営学の範囲
–経営戦略論 –会計・ファイナンス –マーケティング –人的資源管理
–オペレーション・マネジメント –経営情報論
経営管理論
(資源ベースの視点)
↑ 組織論
Organizational Behavior / Organizational Theory
↓
企業経済学
(企業行動の経済学)
組織論のとらえようとしているメカニズム
• 組織環境の影響
• 組織ネットワークによる情報・資源動員
• 組織構造の影響
• 組織文化の意味
• 組織過程の統制
–
モティベーション、リーダーシップ、コミットメント• 組織変革のメカニズム
ステークホルダー(利害関係者)と 組織
企業組織 株主株主
管理者管理者
従業員 従業員
政府 自治体
消費者 顧客
関連子会社
メインバンク
納入業者 親会社
競争相手 地域住民
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集合的属性 1
方法論的個人主義の限界 2
市場メカニズムの限界と 組織による調整活動の効率性
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組織の研究方法
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