クイーンズランド日本人補習校(ブリスベン校)
見学日 2006年3月11日
1.概要
クイーンズランドの日本人補習校はブリスベンとゴールドコーストにあり、校長先生は 両校を兼任されている。高校の校舎を借り、毎週土曜日の午前中に幼稚部(小学校就学前 一年間)、小学部・中学部がそれぞれの学年に別れて授業を行う。通っている子どもは、日 本にルーツを持つ子どもがほとんどで、親の仕事の関係でオーストラリアに一時的に来て いる家族の子ども、オーストラリアに移住してきた家族の子ども、片親が日本人などダブ ルの子どもたちのようだった。
また、幼稚部では教員のほかにボランティアで父兄が入ったり、たまたま訪問した日は 卒業式と重なったが、卒業式にオーストラリア日本商工会会長の祝辞があったりと、自分 たちの子どもが通っている日本人補習校を支える父兄の強い思いや、オーストラリアの日 本人社会が学校を大きくバックアップしている様子が見受けられた。
2.見学をして
先にも触れたように、当日は卒業式の日であったので、1・2時間目は卒業式で3・4時間 目が授業という特別時間割だった。卒業式は日本の学校の式次第を同じようにおこなって おり、送辞や答辞、卒業証書の授与などが厳粛に行われていた。日本の学校の卒業式など と比べると、多少簡略化されていたり綿密な卒業式の予行練習をしていない様子などは見 受けられたが、日本人補習校でこそ行えるあの卒業式に子どもたちが参加することは意味 のあることのように思った。
授業見学では、まず、3年生のクラスを見せていただいた。このクラスでは教科書「モ チモチの木」の読みをやっていた。一人一人音読していたが、同学年でもレベル差はかな り大きい様子だった。すらすらと読みあげる子がいる一方で、教科書の漢字に全て振り仮 名が振ってある子や平仮名を読むのがやっとの子もいる。この日の授業は教科書読みだけ で終わってしまったが、先生の苦労が伺えた。
次に行ったところは、幼稚部だった。この日、卒業した幼稚部の子どもたちは紙皿に手 形をつけて、卒業制作を作っているところだったので、少し作業のお手伝いをさせていた だいた。20 人弱の子どもたちは、英語が優勢の子も日本語が優勢の子もいて、中には日本 語はほとんど理解できていなく先生の話もわからず、ずっと塗り絵を続ける子もいた。幼 稚部の先生のお話によると、この幼稚部の子どもたちのほとんどは 4 月から日本人補習校 の一年生に上がるとのことだった。家庭使用言語が日本ではなく、オーストラリアにずっ と住んでいる子どもにとって、週に 1 回日本人補習校で学ぶことの難しさ大変さを強く感 じた。
3.感想と考察
一つ、とても心に残っている言葉がある。卒業式のときに、卒業生代表として答辞を読 んだ中学部の生徒の言葉だ。それは「仲のよかった友達が日本に帰ってしまったり、もう つらいからといって友達が補習校に来なくなってしまった時、何度もやめようと思いまし た。でも先生方や両親に励まされ、友達と励ましあい、今日この日を迎えられて良かった です。」というような内容のものだった。この補習校に通っている子どもたちは、平日現地 校に通い、土曜日を補習校で過ごしている。学年があがればそれだけそれぞれの学校での 学習内容も難しくなり、2つの学校に通うというのがどれだけ大変なことなのか、それを 如実にあらわしている言葉だと感じた。また、嬉しそうに日本語を使って思う存分に話を している子どもを見て、現地校での英語教育から受けるプレッシャーの中で、日本人補習 校はこの存在があるということ自体が意味のあることなのかもしれないと感じた。
(報告者 引地 麻里)