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データベースから発見されたガセリ菌のサブグループ - J-Stage

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化学と生物 Vol. 56, No. 7, 2018

データベースから発見されたガセリ菌のサブグループ

In silico 手法によるガセリ菌発見

微生物の分類は,ゲノムの読み取り技術とともに大き く変化してきた.化石が残る動物や植物と違い,微生物 の系統進化は推定が難しい.伝統的には,形態学(細胞 の形状など),生化学(糖の資化能や生育温度など),分 析化学(脂肪酸組成など),分子生物学(遺伝子配列に 基づく系統解析や,ゲノム全体の類似性を判別する DNA‒DNAハイブリダイゼーション;DDH)の結果を 総合的に判断する.特にDDHは重要な決め手であり,

DDH 70%という境界が種の指標とされてきた(1). ただ,DDHや生化学試験は手間がかかるうえに,結 果の判断も難しい.補足情報として16S rRNA遺伝子配 列もよく使われるが,配列の保存度が高すぎる.配列が 99%以上一致しても別種であることが少なくない.そこ で 最 近 脚 光 を 浴 び て い る の が,Average nucleotide  identity(ANI)と呼ばれる全ゲノム配列に基づく指標 である.この手法では,ゲノム全体を1,020 bpのフラグ メントに分断し,配列検索アルゴリズムで30%以上一 致するフラグメントの平均一致度を出す(2).全ゲノムを 使 う の で 結 果 が 偏 り に く く,Multilocus sequencing  analysis(MLSA)のように,利用する遺伝子配列を選 別する必要もない.ゲノム情報さえあれば計算機上で簡 単に実施できる点が画期的である.現在では公共データ ベースに多くのゲノム情報が蓄積されており,それらを 再利用できる点でも利便性が高い.一般には,DDH  70%の一致度がANI 95〜96%に相当するとされる.筆 者らは,ANI法を用いて乳酸菌やビフィズス菌ゲノム の再解析を実施してきた.その過程で,ガセリ菌の新種 を発見できたため,その経緯を紹介したい.

ヨーグルトにおけるプロバイオティクスとしてよく利

用されているガセリ菌( )は,特

に日本の乳業界が好む腸管由来乳酸菌である.DDBJ/

ENA/GenBankおよびSequence Read Archive(SRA)

には,精度の高いドラフトおよび全ゲノムデータが75 株も登録されている.これらの多くは,小児のう蝕(虫 歯)に関連する乳酸菌プロジェクトでアーカイブ化され たデータである.近頃はゲノムを決定するだけでは学術 論文として認められない(3).そのため,未解析・未発表 のままSRAなどに登録される配列データが相当量存在 する.

さて,登録された全株間のANIを計算してみたとこ ろ,同じガセリ菌でもANI 94%を境に2グループに分 かれることがわかった(4)(図1.ちなみに,ガセリ菌と 16S rRNA遺伝子配列が99%以上一致する近縁種に

と がある.分かれたガセリ菌 は,どの近縁種ともゲノムは大きく異なっていた.つま りガセリ菌の中に,別種に相当する2グループが混在す ることが示唆された.このような事例は珍しくない.生

化学的性状により当初 に分類

されていた菌株は,後にDDHにより

に再分類されている(5). ガセリ菌の各グループに特徴的な遺伝子クラスターを 調べたところ,プロバイオティクスで知られるK7株を 含むグループ48株のうち39株が,ガセリシンT(gas- sericin T)と呼ばれるバクテリオシン(抗菌性ペプチ ド)の生合成遺伝子クラスターをそろえていた.さら に,類縁菌との競合解消に役立つアシルホモセリンラク トン分解酵素のホモログも,42株がもっていた.これ に対し,ガセリ菌の基準株ATC C33323を含むグループ

図1ANI値によるガセリ菌の分類 文献4より再掲.

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27株では,上記の遺伝子をいずれももたず,共通して もつ遺伝子クラスターにも特徴が見られなかった(4)

上記の結果はゲノム情報のみに基づいている.そこで 従来の分類法でも同じ結果が得られるかを検証してみ た.種同定でしばしば利用される遺伝子,フェニルアラ ニルtRNA合成酵素の

α

-サブユニット( )やRNA ポリメラーゼ

α

サブユニット( )の配列を使って も,上記の2グループが確認できた.糖の資化能につい て調べたところ,ガセリシンをもつグループはメリビ オーズおよびラフィノース(いずれもオリゴ糖)を資化 できず,基準株のグループは資化できることがわかっ た.ただし,グループ間で細胞形態や膜脂質の組成に は,大きな違いが見られなかった.以上の知見から,ガ セリシンをもつグループは従来のガセリ菌とは異なる新

種 “ ” candid.に値すると筆者らは考えて

おり,論文を投稿中である.

この新種はデータベースの中から発見されたという点 で興味深い.これまでの新種は,ハンターとも呼べる研 究者たちが野外調査で見つけてくる事例がほとんどで あった.しかしゲノム時代が進み,データベース中から も新種が見つかるようになった.今後ゲノム配列による 種同定が当たり前になれば,DDHだけでなく,生化学 や分析化学的試験をも省略できる時代が来るだろう.生 物学における情報処理の重要性はとどまるところを知ら ない.もちろん,実際の菌株を観察することが重要であ ることは言うまでもない.しかし,情報学を駆使するこ とで多くの手作業を省略できる可能性があることは,多 くの生物学者に知っておいてもらいたい.

  1)  L.  G.  Wayne,  D.  J.  Brenner,  R.  R.  Colwell,  P.  A.  D.  Gri- mont, O. Kandler, M. I. Krichevsky, L. H. Moore, W. E. C. 

Moore,  R.  G.  E.  Murray,  E.  Stackebrandt  :  , 37, 463 (1987).

  2)  J. Goris, K. T. Konstantinidis, J. A. Klappenbach, T. Coe- nye, P. Vandamme & J. M. Tiedje: 

57, 81 (2007).

  3)  D. R. Smith:  , 16, 156 (2017).

  4)  I.  Tada,  Y.  Tanizawa,  A.  Endo,  M.  Tohno  &  M.  Arita: 

36, 155 (2017).

  5)  T. Fujisawa, Y. Benno, T. Yaeshima & T. Mitsuoka: 

42, 487 (1992).

(有田正規*1,2,遠藤明仁*3,多田一風太*4,谷沢靖洋*1, 遠野雅徳*5,*1 情報システム研究機構国立遺伝学研究 所,*2 理化学研究所環境資源科学研究センター,*3 東 京農業大学食香粧化学科,*4 総合研究大学院大学遺伝 学専攻,*5 農研機構畜産研究部門)

プロフィール

有田 正規(Masanori ARITA)

<略 歴>1994年 東 京 大 学 理 学 部 卒 業/

1999年同大学大学院理学系博士後期課程 満期退学,同年博士/2003年同大学院新 領域情報生命専攻助教授/2010年東京大 学理生物化学専攻准教授/2013年国立遺 伝学研究所教授,現在に至る<研究テーマ と抱負>メタボロミクス,ゲノミクス,微 生物発酵<趣味>微生物発酵,特にエタ ノール

遠藤 明仁(Akihito ENDO)

<略歴>2000年東京農業大学農学部農芸 化学科卒業/2005年同大学大学院農学研 究科醸造学専攻博士後期課程修了/2008 年ステレンボッシュ大学(南アフリカ)微 生物学科博士研究員/2010年トゥルク大 学機能性食品フォーラム上級研究員/2013 年東京農業大学生物産業学部准教授,現在 に至る<研究テーマと抱負>フルクトフィ リック乳酸菌の環境適応と産業利用,腸内 細菌と健康<趣味>サッカー,旅行 多田 一風太(Ipputa TADA)

<略歴>2016年沖縄高専専攻科卒業/同 年総合研究大学院大学入学,現在に至る

<研究テーマと抱負>バイオインフォマ ティクス,メタボロミクス,ゲノミクス

<趣味>プログラミング,読書

谷沢 靖洋(Yasuhiro TANIZAWA)

<略 歴>1999年 東 京 大 学 理 学 部 卒 業/

2001年同大学大学院理学系修士課程修 了/2016年同大学大学院新領域博士後期 課程修了/同年国立遺伝学研究所生命情報 研究センター特任研究員,現在に至る<研 究テーマと抱負>ゲノミクス,バイオイン フォマティクス<趣味>筋トレ,温泉

遠野 雅徳(Masanori TOHNO)

<略 歴>2003年 東 北 大 学 農 学 部 卒 業/

2008年同大学大学院農学研究科博士課程 満期退学,同年博士(農学)/2009年日本 学術振興会特別研究員PD/2010年農研機 構畜産草地研究所研究員/2016年農研機 構畜産研究部門主任研究員,現在に至る

<研究テーマと抱負>連携を大切に誰かの 役に立つ農学分野の研究・技術開発に取り 組みたいと思っています<趣味>読書,旅 行,山歩き,温泉巡り

Copyright © 2018 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.56.459

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