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トランスシナプス標識法による神経回路の可視化と機能解析

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化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012

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れた.これは,FT-ALSVがリンゴの早期開花を誘導で きると同時に,通常5 〜12年かかるリンゴ1世代の時間 を1年未満に短縮する大幅な世代促進が可能であること を示している.また,リンゴでのALSVの種子伝染率

(花粉経由)は非常に低率で,早期開花リンゴの花粉か らできた次世代実生(47個体)のすべてがウイルスフ リーであった(5).ウイルスフリーの個体は外来遺伝子を 含まないので,直接の育種素材として利用することも可 能である.

FT-ALSV感染により,シロイヌナズナやタバコ,リ ンゴ以外にもダイズなどのマメ科作物(6),ウリ科植物,

トルコギキョウやリンドウなどの花卉類でも開花時期を 大幅に短縮することが可能であった.これはシロイヌナ ズナのFTタンパク質がかなり広範な植物種で開花促進 因子として働くことを示しているが,一方,リンゴの 遺伝子オルソログはALSVベクターを使って発現し てもリンゴの開花を誘導しなかった.このように植物種

によりFTタンパク質の活性や機能に差異が存在するら しい.現在,シロイヌナズナ 遺伝子以外の約20種類 の 遺伝子オルソログをALSVベクターに組み込み,

各種植物での開花促進効果を解析中である.今後,対象 植物それぞれに適した 遺伝子を選択することで,各 種の果樹,野菜,花卉で開花時期の制御や迅速な世代促 進が可能になるかもしれない.

  1)  J. A.  Crosby,  J.  Janick  &  P. C.  Pecknold : , 29,  827 (1994).

  2)  L. Corbesier  : , 316, 1030 (2007).

  3)  K. Hiraoka, Y. Daimon & T. Araki : ., 19, 3 

(2008).

  4)  C. Li, N. Sasaki, M. Isogai & N. Yoshikawa : .,  149, 1541 (2004).

  5)  N.  Yamagishi,  S.  Sasaki,  K.  Yamagata,  S.  Komori,  M. 

Nagase, M. Wada, T. Yamamoto & N. Yoshikawa : ., 75, 193 (2011).

  6)  N. Yamagishi & N. Yoshikawa : , 233, 561 (2011).

(吉川信幸,山岸紀子,岩手大学農学部)

トランスシナプス標識法による神経回路の可視化と機能解析

高解像度の神経接続マップがひらく新しい脳科学の世界

脳の機能は,相互に複雑にからみあったニューロンの ネットワークが生み出す活動電位のパターンに基礎づけ られている.ニューロンのつながり方を正確に記述する ことは,そこで行なわれる情報処理の原理を理解する第 一歩である.およそ120年前,近代脳科学の父ラモン・

イ・カハールはゴルジ染色法により神経回路の詳細な構 造を観察・記載する手法を開発した.以来,局所的な神 経回路はそれぞれの細胞の樹状突起や軸索を丹念に追跡 することで予測され,脳切片の電気生理学によって検証 されてきた.近年,光で活性化されるイオンチャネルや 活動電位/Ca2+シグナルを検出するタンパク質などが相 次いで開発・改良され,局所的な神経回路を記述する方 法は飛躍的に発展している(1, 2).また,電子顕微鏡によ る超高解像度の3次元像を自動的に作製する試みも進展 している.これに対し,長距離の軸索投射による神経接 続を正確に記述するのはきわめて困難である.トレー サーの局所注入などの古典的な手法は,低解像度で定性 的な軸索投射を記述することしかできない.

このような状況のもと,遺伝学的に制御できシナプス を越えて広がる トランスシナプス 標識法が注目され

ている(3).中でも標的の細胞から一段階だけ上流の前シ ナプス細胞を特異的に標識することのできる変異型の狂 犬病ウイルスはすぐれたツールである.この手法では,

狂犬病ウイルスのゲノムから必須の膜タンパク質 (G) 

をコードする遺伝子を取り除き,代わりに蛍光タンパク 質の遺伝子を挿入した変異型ウイルスを用いる(図1 この変異型ウイルスの外殻は,トリ白血病肉腫ウイルス に由来するEnvAというタンパク質で偽型されており,

野生型の哺乳類の細胞には感染しない.しかし,標的の 細胞にトリ由来のTVA(EnvA受容体)という膜タン パク質を導入すればウイルスを感染させることができ る.さらに,同じ細胞に狂犬病ウイルスの 遺伝子を 導入すれば狂犬病ウイルスの変異ゲノムが相補され,そ の細胞に限って機能的なウイルス粒子が再構成される.

再構成されたウイルス粒子は前シナプス細胞にシナプス をこえて感染し,その細胞を標識する.しかし,前シナ プス細胞は狂犬病ウイルス 遺伝子を発現していない のでウイルスはさらに広がることができず,はじめに感 染させた標識の出発点となる ʻstarterʼ  細胞から一段階 のシナプスを移動したところで止まる.このようにし

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て,狂犬病ウイルスの病原性を完全に取り除いた上で,

複雑にからみあった神経回路の中で標的の細胞から一段 階だけ上流に位置する細胞群を同定するためのツールと して利用できるのである(4)

過去数年の課題は,いかにして実験動物の脳の標的細 胞にTVA/Gを選択的に導入し ʻstarterʼ 細胞をつくり出 すかということであった.筆者らは,マウス遺伝学とウ イルスベクターとを組み合わせてTVA/Gを脳の任意の 領域の任意の細胞種に導入できるようにし,さらに導入 される細胞の概数も制御できるようにした(5).この手法 の応用例として,マウス嗅覚系をモデルに嗅球の情報が どのように高次の皮質領域に伝達されているのかを解析 することに成功した.

マウスの嗅球には嗅覚受容体の種類に対応した約 1,000対の糸球と呼ばれる構造が分布し,同じ受容体を 発現する嗅覚ニューロンはそのうち特定の一対に対し軸 索を投射する.匂い分子による嗅覚ニューロンの活性化 パターンは,嗅球の表面ではどの糸球が活性化されたか という位置情報,すなわち,匂い地図へと変換される.

この匂い地図が嗅覚皮質でどのように展開されているの かは未解明の重要な問題であった.筆者らは,嗅覚皮質

のそれぞれ局所的な領域に数個から数十個の ʻstarterʼ  細胞をつくり,その前シナプス細胞の分布を詳細に検討 した.その結果,嗅覚皮質の個々のニューロンは嗅球の 広い範囲に分布する複数の糸球から入力を受け取ってい ることが明らかになった.また,嗅覚皮質の領域により 嗅球からの入力様式には相違があり,たとえば,扁桃体 は嗅球の背側領域からの入力を優先的に受けるのに対 し,梨状皮質への入力には明白な偏りはみられなかっ た.これらの違いは,それぞれの皮質領域が先天的な匂 いの偏好性や匂いの連想記憶といった異なる機能を担う ことを反映するものと考えられる.

このトランスシナプス標識法は,嗅覚系に限らずマウ スの神経系において神経接続の地図を作製するための一 般的な手法となりうるものである.現に,筆者の所属す る研究室では,嗅覚皮質どうしの接続マップやフェロモ ン情報を担う副嗅覚系の解析に応用している.ʻstarterʼ  細胞の選択に必要な細胞種特異的にCreリコンビナーゼ を発現するマウス系統は,世界中の研究室で次々と作製 されている.このように広範な応用が期待される中で,

筆者は今後の展望として二点を強調しておきたい.

第一に,トランスシナプス標識法は,単に情報の伝達 経路を可視化するにとどまらず,神経回路の機能的な構 造を研究するためのツールになるという点である.すで に,電気生理学的手法を用いて単一ニューロンの刺激応 答性を記録した上で,そのニューロンを ʻstarterʼ  細胞 として前シナプス細胞を標識することが可能である(6). また,感染したニューロンのCa2+応答を記録したり,

光によって神経活動を制御したりといった遺伝学的操作 を可能とするウイルスも開発されている(7).これらを組 み合わせると,複雑にからみあったネットワークの中か ら特定の情報処理に特化した神経回路を抽出したり,そ のような回路を構成する個々のニューロンの受容野を調 査したり,ある回路の活動を自在に制御したときの動物 の行動を解析したり,様々な応用分野がひらかれるだろ う.

第二に,ʻstarterʼ  細胞を遺伝学的に変異させること で,遺伝子の回路形成に果たす役割を高解像度で調べる ことができるだろう.過去20年に多くの軸索ガイダン ス分子,細胞接着分子が同定され,その機能が詳しく調 べられたが,それら分子のシナプス接続レベルでの機能 はほとんど未解明である.また,ヒトの神経疾患に関連 するモデル変異も多数知られているが,神経回路の構造 図1狂犬病ウイルスを用いたトランスシナプス標識法

ʻstarterʼ 細胞はTVAを発現しているので,EnvAで偽型された狂 犬病ウイルス変異体が感染し標識される(コバルト色).同時に,

狂犬病ウイルスのGを発現しているので,機能的なウイルス粒子 がこの細胞に限って再構成され,前シナプス細胞へと広がる.し かし,前シナプス細胞はGを発現していないので,ウイルスが 前々シナプス細胞まで広がることはなく,一段階の神経接続を特 異的に検出できる.

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今日の話題

にどのような表現型があるのかは,迅速に回路をマップ する方法がなかったためにほとんど検討されていない.

このように,トランスシナプス標識法と遺伝学のさらな る組み合わせは,神経回路が形成され機能する分子・細 胞機構を研究するのに大いに役立つことになるだろう.

  1)  L.  Luo,  E. M.  Callaway  &  K.  Svoboda : , 57,  634 

(2008).

  2)  O.  Yizhar,  L. E.  Fenno,  T. J.  Davidson,  M.  Mogri  &  K. 

Deis seroth : , 71, 9 (2011).

  3)  G. Ugolini : , 194, 2 (2010).

  4)  I. R.  Wickersham,  D. C.  Lyon,  R. J.  Barnard,  T.  Mori,  S. 

Finke, K. K. Conzelmann, J. A. Young & E. M. Callaway :   , 53, 639 (2007).

  5)  K. Miyamichi  : , 472, 191 (2011).

  6)  E. A.  Rancz,  K. M.  Franks,  M. K.  Schwarz,  B.  Pichler,  A. T. Schaefer & T. W. Margrie : ., 14, 527 

(2011).

  7)  F. Osakada, T. Mori, A. H. Cetin, J. H. Marshel, B. Virgen 

& E. M. Callaway : , 71, 617 (2011).

(宮道和成,米国スタンフォード大学生物学部)

植物ホルモン ジャスモン酸の主要な不活性化経路

ジャスモン酸イソロイシン 12 位水酸化酵素 CYP94B3 の発見

植物は自ら移動することができないため,栄養飢餓,

乾燥,温度,病害,虫害などの周囲の環境変化に対応す る独特の仕組みを発達させてきた.これらのストレスに さらされた際,植物ホルモンは植物自身の生理機能を調 節するために中心的な役割を担う.それ自身が生物活性 を有するいわゆる活性型の植物ホルモン量は,植物の体 内において巧妙に制御されており,その生合成と代謝と のバランスによって決定される.

7-イソジャスモン酸 (JA) は重要な植物ホルモンの一 つであり,塊茎などの形態形成,虫害や病害に対する防 御応答に寄与するシグナル伝達物質である.これまでに 数種類のJA類縁体が植物より発見されているが,多く のJA応答において重要な役割を果たすのは,イソロイ シンとの結合体である7-イソジャスモノイルイソロイ シン (JA-Ile) であるとされている.JA非存在下におい ては,JA応答を担う転写因子MYC2にJAZタンパク質 が結合し,その転写活性を抑制している.各種のストレ ス刺激により生体内のJA-Ile濃度が上昇するとSCFCOI1 複合体がJAZタンパク質を認識し,JAZタンパク質の

ユビキチン化を経て26SプロテアソームによるJAZタン パク質分解が起こる.これによりMYC2の抑制が解除 されると,その転写活性が上昇し,下流にあるJA応答 遺伝子群の発現変化が起こる.

JAの生合成は葉緑体膜の 

α

-リノレン酸が切り出され ることにより開始され,環化による5員環の形成,数段 階の 

β

 酸化などを経て生成する.JAの主要な代謝経路 の一つとして12位の水酸化が知られており,それぞれ JAとJA-Ileが水酸化された12-ヒドロキシJA(ツベロ ン酸,TA)および12-ヒドロキシJA-Ile (12-OHJA-Ile) 

の植物体内における存在が確認されている.TAの12位 の水酸基が硫酸エステル化や配糖体化された代謝物も見 つけ出されており,これら化合物のジャスモン酸不活性 化機構への関与が示唆されている.またそれらの知見に 加えて,TAやその類縁体がJA-Ile応答遺伝子の発現を 抑制し,JAシグナル伝達を負に制御するという報告も ある(1)

近年,筆者らのグループとアメリカのKooらのグ ループは,シロイヌナズナにおけるシトクロームP450

図1植物において知られるジャス モン酸類の生合成・代謝機構

Referensi

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