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メタゲノムからの産業用酵素の探索技術 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 53, No. 10, 2015

メタゲノムからの産業用酵素の探索技術

S-GAM 法による酵素遺伝子の効率的単離とその応用

メタゲノミクスは,土壌などの環境サンプルから直接 的に分離されたゲノムDNA(メタゲノム)を扱う研究 分野である.現在,地球上に生息する微生物の99%以 上は単独では培養できない菌種であると推定されてお り,メタゲノム解析は環境中に存在する膨大な数の未知 の遺伝子や微生物を解明する手段として期待されてい

(1, 2).したがって,メタゲノミクスは,主に腸内細菌

叢や海水中の微生物群などの調査を行うために用いられ ることが多いが,産業利用の点からは未知の酵素遺伝子 や新しい抗生物質などを合成する遺伝子群が注目されて

いる(3, 4).特に,新規酵素遺伝子や既知酵素のホモログ

遺伝子を取得する技術としては極めて有力な探索技術と 言えよう.

一般的にメタゲノムからターゲット遺伝子を分離する 方法には大まかに2種類が知られている.第一の手法は 土壌などの試料からメタゲノムを分離し,これをコスミ ド系またはBACなどのベクターに比較的長鎖のDNA としてランダムにクローニングし,分離されたDNA配 列を網羅的に解析するものである.こうして得られた DNAデータベースに対して,目的遺伝子配列を改めて 探索し,その後,目的酵素遺伝子の発現解析を行う方法 である.近年のDNA配列分析技術の進歩と相まって,

手間はかかるものの確実な方法である.現在,ターゲッ ト遺伝子を取得する方法としてのデータベース探索(ゲ ノムマイニング)は酵素遺伝子探索の定法となっている が,本法はインハウスのデータベースをメタゲノムから 作成する過程が必要となり,相当の負担となる.また,

そこまで行わないとして,作成したBACライブラリー などをターゲット遺伝子に対して作成したプライマーや プローブを用いて,それぞれコロニー PCRやハイブリ ダイゼーション法でスクリーニングする方法も行われて

いる(2, 5).これらは遺伝子の配列に依存した探索方法

(sequence-based screening)と言える.第二の手法は,

酵素の活性など機能をもとにした探索法(function/ac- tivity-based screening)であり,制限酵素処理したメタ ゲノムを何らかの発現ベクターに連結し,プレート上で 活性などを検出して目的酵素を探す方法である.ただ し,機能をもとにした探索法の場合, などにお いて目的酵素遺伝子が発現しない,または活性が微弱な ために,一般にそのスクリーニング効率は低下する.表 1に,一般的なメタゲノムからのターゲット遺伝子の探 索効率(活性による探索)を示すが,だいたい0.0003〜

0.2%程度である(4〜6).メタゲノムからの酵素遺伝子の単 離法は各種考案されてはいるものの,この表のデータの ように,その分離効率はかなり低いと言わざるをえな い.一方,平成16年の文科省通達により,使用するメ タゲノムが一般土壌由来のメタゲノムのように,その安 全性が100%担保できない場合でも認定宿主ベクター系 を構成する宿主の実験分類はクラス1に分類されてお り,メタゲノム関連の実験はおおむねP1レベルで対応 で き る よ う に な っ て い る(3)(http://www.lifescience.

mext.go.jp/bioethics/data/anzen/position̲10.pdf参照). 筆者のグループでは,ターゲット酵素遺伝子をもっと 効率的に取得する方法として,screening of gene-spe-

表1各種メタゲノムからの活性検出法による酵素遺伝子ヒット率(5, 6)

メタゲノムの由来 ベクター/宿主 酵素 ヒット率(%)*

海水/土壌 プラスミド/ キチナーゼ,セルラーゼ 0.15

グリセロールデヒドラターゼ 0.0003

アルコール脱水素酵素 0.006

BAC/ リパーゼ/アミラーゼ 0.05/0.2

Cosmid/ アガラーゼ/リパーゼ 0.26/0.07

ヒト腸内微生物叢 エステラーゼ/プロテアーゼ/アルコール脱水素酵素 0.2/1.2/0.4

堆肥 プラスミド/ エステラーゼ/ホスファターゼ/ジオキシゲナーゼ 0.07/0.11/0.006

*活性が認められたクローン数÷スクリーニングに供したクローン数×100(%).ヒット率については,megabases(Mb)当たりのポジ ティブクローン数で表現される場合もある.

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cific amplicons from metagenomes(S-GAM法)と命名 したPCRを基本技術としたメタゲノムからの効率的な 酵素遺伝子ライブラリー構築技術を考案し(図1 S-GAM法をメタゲノムからの汎用的な有用酵素遺伝子 単離技術として展開している(7, 8).その結果,実用レベ ルに供しうる各種有用生体触媒の創製に成功している.

本法は,以前から報告されている遺伝子のカセットク ローニング法(9)を原理としているが,酵素活性が容易に 検出できるようにさまざまな工夫を凝らしている.

本法の概略はシンプルさと効率を重視し,以下の手順 を踏む:①特殊環境も含む各種メタゲノムを調製し,こ れを直接鋳型DNAとしてPCRを行う.②PCRプライ マー(GAM-プライマー)設計は,アライメントを参考 にその保存領域を使用するが,In-Fusion法(http://

catalog.takara-bio.co.jp/PDFS/200805̲26.pdf)でもとに なる遺伝子とN-/C-末端領域で融合させることから,あ らかじめ15塩基の相同領域を付加した25〜30 bpの縮重

プライマーを使用する.また,なるべくN-/C-末端領域 の保存領域を利用する.③In-Fusion法で融合するベク ター遺伝子は,ターゲット類縁酵素でその発現が最適化 されているものを直鎖状にして使用する.④得られた などのライブラリーを簡便な酵素活性でスク リーニングする.⑤得られた酵素遺伝子はすべてN-/C- 末端領域でキメラとなり,必要に応じてその配列を解析

図1S-GAM法の概略

表2メタゲノムから得られた 遺伝子のBLASTP分析(8)

クローン番号 既知登録酵素 既知登録酵素との相

同性*(アミノ酸)(%) LSADHとの相同 (アミノ酸)* (%)

001‒011 Short chain alcohol dehydrogenase (  sp. S749) 98‒99 98‒99 014‒016 Short chain alcohol dehydrogenase (  sp. S749) 73‒75 73‒75 012 2,5-Dichloro-2,5-cyclohexadiene-1,4-diol dehydrogenase (  sp. HGF7) 52 52

013 SDR (  DSM 17093) 55‒64 55‒63

017‒019 021‒022 034‒038

020 SDR (  sp. BAL39) 55 55

023 Oxidoreductase, SDR family protein (deltaproteobacterium NaphS2) 49 50

024, 025 SDR (  sp. BNC1) 51‒52 50‒52

026 Putative oxidoreductase, SDR family (  B4) 55 40

027‒030 SDR (  DSM 20745) 91‒96 44

031 SDR (  AK-01) 57 36

032 SDR (  ATCC BAA-798) 53 43

033, 039, 040 Molybdopterin molybdochelatase (  DSM 6799) 48 8‒17

*LSADHのN-/C-末端相同領域を除いた配列について算出.

表3メタゲノムから得られた 遺伝子の解析結果(8) メタゲノムの由来 

(サンプル数)

解析した  遺伝子数*/ 

コロニー数

と異なる  遺伝子数/ 

重複した遺伝子数

土壌(12) 27/185 4/23

農業系堆肥(3) 34/495 7/27

発酵中バーク堆肥(5) 162/1338 29/133 合計(20) 223/2018** 40/183

*活性を有するものから任意に解析,**1,200コロニーでADH活 性を確認.

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する.特に本法で特徴的なものは②と③であり,サブク ローニング・発現などの手間のかかる工程をスキップで きる.

具体例として,キラルアルコールの合成に有用な還元 酵素である  sp. S749由来アルコール脱水素酵 素(LSADH;  short-chain  dehydrogenase/reductase  family)にS-GAM法を適用した例を示す(8).この場合,

メタゲノムの由来を一般土壌から高温で発酵している バーク(樹皮)堆肥に変更することにより,LSADHの ホモログに加え,さまざまな新規 遺伝子(LSADH に対する相同性が73〜75%, 50〜63%, 36〜44%, 17%以 下, と命名)を効率的に多数取得することができ た(表2.釣りで言えば入れ食い状態だろうか.分析 した約2,000クローン中,その60%がADHポジティブ であった(表3.原理的に重複遺伝子は認められるも ののそのなかの40種のHLADHについて,酵素化学的 な性質の解析を行った結果,極性有機溶媒中で高い活性 を有する酵素,基質特異性が明らかにLSADHと異なる 酵素など多様な機能を示す優れた酵素が取得でき,当該 酵素ライブラリーが光学活性アルコール生産用酵素触媒 のスクリーニングに極めて有用であることが明らかと なった.特にHLADH-021酵素(LSADHとの相同性は 55%)は各種ケトンの不斉還元反応に最適であり,

LSADHを比活性,基質特異性などで凌駕した.この結 果は,S-GAM法を上手く使えば,簡単にターゲット遺 伝子の多様なライブラリーが得られることを示してい る.筆者は,通常の進化分子工学的手法による酵素改良 の有用性(10)を十分に認識しているが,S-GAM法ではこ うした手法よりもときにはるかに高効率で多様性に富む ライブラリーが得られる.一般的に,酵素特許のクレー ムでは相同性90%以上が認められる範囲である.メタ ゲノム由来の酵素遺伝子の多様性は,広範な特許を取得 する際に明らかに有利な材料となる.

同様に,  sp. ST-10由来スチレンモノオ キシゲナーゼ(RhSMO)(11)についてS-GAM法を一部改 良して適用したところ,土壌メタゲノムより多くの新規 遺伝子(相同性が50〜99%, と命名)を効率 的に取得することができ,現在得られた類縁酵素を各種

酸化反応のスクリーニングに使用している.もちろん,

新規な酵素遺伝子が増幅されないケースも認められてい るが,S-GAM法は汎用性の高いメタゲノムからの酵素 遺伝子探索技術だと考えている.現在,同法の改良につ いても継続的に研究を行っており,多くの企業との共同 研究を推進したいと考えている.また,メタゲノム由来 酵素の配列情報は酵素のタンパク質工学的改良にも利用 できることから,今後産業用酵素の開発技術として大い に期待できるのではないだろうか.

  1)  服部正平監修:メタゲノム解析技術の最前線,シーエム シー出版,2010.

  2)  E. P. Culligan, R. D. Sleator, J. R. Marchesi & C. Hill: 

5, 399 (2014).

  3)  松永 是,竹山春子監修:マリンメタゲノムの有効利用,

シーエムシー出版,2009.

  4)  P. Lorenz & J. Eck:  , 3, 510 (2005).

  5)  F. Lefevre, C. Jarrin, A. Ginolhac, D. Auriol & R. Nalin: 

25, 242 (2007).

  6)  T. Uchiyama & K. Miyazaki:  , 20,  616 (2009).

  7)  伊藤伸哉ほか:特許公開2014-168387.

  8)  N. Itoh, S. Kariya & J. Kurokawa: 

80, 6280 (2014).

  9)  A.  Okuta,  K.  Ohnishi  &  S.  Harayama:  , 212,  221  (1998).

10)  伏見譲監修:進化分子工学,NTS, 2013.

11)  H.  Toda,  T.  Ohuchi,  R.  Imae  &  N.  Itoh: 

81, 1919 (2015).

(伊藤伸哉,富山県立大学工学部生物工学科・生物工学 研究センター)

プロフィル

伊藤 伸哉(Nobuya ITOH)

<略歴>1980年京都大学大学院工学研究 科工業化学専攻修士課程修了/1980〜1989 年天野製薬(株)(現 天野エンザイム(株))

研究開発部・同主査/1983〜1986年京都 大学農学部農芸化学科受託研究員/1988 年同大学農学博士/1989〜1991年福井大 学工学部講師/1991〜1997年同助教授/

1997年富山県立大学工学部教授/2012年 同生物工学研究センター所長兼務<研究 テーマと抱負>生体触媒化学,バイオプロ セスによる物質生産<趣味>シュノーケリ ング,ガーデニング

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.651

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