日本数学教育学会第1回春期研究大会「創成型課題研究」
モデル・モデリングに関わる数学教育研究の動向と今後の課題の同定
オーガナイザー: 池田敏和(横浜国立大学)
発表者: 佐伯昭彦(鳴門教育大学)
松嵜昭雄(埼玉大学)
平林真伊(筑波大学大学院院生)
研究題目と要約
題目:日本における数学的モデリング研究の動向と今後の課題 発表者:佐伯昭彦(鳴門教育大学)
要約:日本における数学的モデリング研究は,三輪(1983)の理論的背景をもとに行 われ,1990 年以降,課題学習・選択学習・総合的な学習の時間などの導入に伴い,指 導実践が徐々に行われるようになった。池田(2010)は,日本数学教育学会編『数学 教育学研究ハンドブック』の中で,日本における数学的モデリング研究について,(1) 数学的モデル化の指導の意義と数学科への位置づけ,(2)数学的モデル化の能力と指導,
(3)教材開発とテクノロジー活用,の視点で概括している。本稿では,数学的モデリン グ研究の多様性という新たな視点,(1)数学的モデリング過程の多様性,(2)より良いモ デル化の多様性,(3)子どもなりの考え方・モデリング能力の多様性,を切り口に日本 における数学的モデリング研究の動向と今後の課題をまとめる。
題目:諸外国における数学的モデリング能力の研究動向 発表者:松嵜昭雄(埼玉大学)
要約:日本数学教育学会編『数学教育学研究ハンドブック』の中で,池田(2010)は,数 学的モデリング能力について,「モデル化の要所要所で要求される考え方」と「思考過 程のメカニズムに着目した捉え」いう,2 つの立場について説明している。本稿では,
この2つの立場を下敷きとして,最近の諸外国におけるモデリング能力に関する研究動 向を探ることを目的とする。方法は,ICMI認定研究グループの1つであるICTMA(The International Community of Teachers of Mathematical Modelling and Applications,
数学的モデリング・応用の国際教師集団)が隔年で開催している国際会議(International Conference on the Teaching of Mathematical Modelling and Applications)の発表論 文の中から,モデリング能力に関わる研究をレヴューする。
題目:数学的モデル化能力の発達的視点に関する世界的動向 発表者:平林真伊(筑波大学大学院院生)
要約:数学的モデル化のサイクルにおいて,問題を解決するという目的を達成するため には,問題状況を数学的に解釈する能力,すなわち数学的モデル化能力を習得すること が必要である。問題解決の初心者である子どもたちにとって,はじめから熟達者のよう に問題状況を解釈することは容易なことではなく,熟達者による解釈の方法を直接的に 教えることはできない。ある一定の学習指導のもとで活動に取り組むことを通じて,子 どもたちは数学的モデル化能力を漸次的に発達させていくことができると考える。本稿 ではこのような立場のもと,子どもたちによる問題状況の解釈に焦点を当て,長期的に 数学的モデル化能力が発達する過程に関して、世界的にどのような研究がなされている のかを分析し、今後の課題を明らかにする。