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372 化学と生物 Vol. 54, No. 6, 2016

魚介類不可食部に含まれるコンドロイチン硫酸

廃棄物の高付加価値化

近年,「コンドロイチン硫酸」は健康サプリメントと してたいへん有名になった.新聞や雑誌の広告,webサ イトやテレビのコマーシャルなどに登場しない日はない と言ってもいいほど,頻繁に私たちの目に触れており,

市民権を得た天然有機化合物の一つと言ってもいいだろ う.コンドロイチン硫酸(CS)は医薬品でもある.需 要は年々上昇しているが,化学合成できない高分子化合 物であるので,天然からの採取に依存することとなる.

CSの原料は,古くはクジラ軟骨であり,ウシやニワト リも一時期その原料であった.しかし,捕鯨は規制さ れ,陸上動物は感染症の危険にさらされている.現在で はサメとブタが主力原料となっているが,ブタにも感染

症の危険はあり,サメは保護動物としてその捕獲が難し くなりつつある.折しも日本のサメの主要漁業基地であ る気仙沼や大船渡のある三陸地方は被災して復興が遅れ ている.このようにCSの供給基盤はたいへん脆弱であ り,需要の増加を考えると代替生物の探索は焦眉の課題 である.

CSの基本的な分子構造を図1に示す.後述するよう に,CSは「糖鎖」で,コアタンパク質のセリン水酸基 と糖鎖(グリコサミノグリカン)が共有結合したコンド ロイチン硫酸プロテオグリカン分子として存在する.グ リコサミノグリカンは構成する糖の種類により,CS,

デルマタン硫酸(DS),ヘパラン硫酸に分類される.こ

図1コンドロイチン硫酸(CS)の構造

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化学と生物 Vol. 54, No. 6, 2016

れらは共通して還元末端にキシロース,2分子のガラク トース,グルクロン酸からなる結合領域四糖をもち,還 元末端でセリン水酸基に結合している.CSは,非還元 側に向かって -アセチル-D-ガラクトサミンとD-グルク ロン酸からなる二糖が繰返し結合した構造をもつ.これ らを構成する糖の水酸基はしばしば硫酸エステルになっ ており,その硫酸化パターンによっていくつかのサブク ラスに分類される(図2

CSは,動物の結合組織の細胞外マトリックスの一成 分である.そのため,量の多寡はあっても,たいていの 動物に存在すると考えられる.CSを含有する生物やそ の部位は半世紀以上も前から研究されており,生物や部 位に特徴的な硫酸化パターンに基づく糖鎖構造も明らか になっている.しかし,含有量の多寡を動物種間や部位

間で比較した網羅的な調査研究はこれまでなされてこな かった.筆者らの研究プロジェクトである「CSの代替 資源動物の探索」に当たっては,未利用魚・低利用魚,

あるいは魚介類不可食部を利用することで,水産廃棄物 の軽減やサメなどの資源生物の保護など,環境に配慮し た産業創成ができることや,低迷する水産業を中心とす る雇用創出による本質的な地域活性化(六次産業化)に もつながることを意識している.

地域創成や産業創出という重要な方向性をもっている 研究でも,学術的な位置づけは欠かせない.本研究で は,生物種や部位によるCSの含有量という産業的な価 値を探索するとともに,硫酸化パターンに代表される糖 鎖構造と生理活性,あるいはそれらを左右するファク ターとの関連も追求している.

魚介類の特徴的な部位に関するCSの硫酸化パターン の解析については,これまで多くの研究がなされている が,個体の各部位の網羅的な分析調査は行われていな かった.そこで,日本海で水揚げされる大型のソデイカ

(図3a)の各部位におけるCSの硫酸化パターンと脱脂 乾燥物100 g当たりの含有量を分析した.興味深いこと に,どの部位の硫酸化パターンも類似していたが,食用 である外套には含有量が極めて少なく(4 mg),通常食 用にしない皮や頭部に多く含まれること(250〜380 mg)

が判明した(1).このことは,ソデイカの不可食部がCS の原料として妥当であることを支持する結果となった.

魚介類の不可食部に着目し,同様の解析を進めること 図2コンドロイチン硫酸(CS)繰り返し 二糖構造

図3分析に使用したソデイカ(a)とノロゲンゲ(b

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とした.まだ網羅的な結果とは言えないが,これまでに 未利用魚・低利用魚や魚介類不可食部を中心とするCS とヒアルロン酸(HA)の含有量(mg/脱脂乾燥物 100 g)を明らかにした(2).魚種間で含有量に統一した傾 向が見られなかったため,産業利用に当たっては個々の 魚種について調査する必要がある.安定して原料を確保 できるのであれば資源として利用できるかもしれない.

黄金カレイの背ビレには特徴的に多量のCSが含まれて いた(約1,300 mg).残念ながら,赤カレイなど,ほか の種のカレイにはそれに匹敵する含有量は確認できず

(2〜300 mg程度)(3),ここでも魚種間の差が見られた.

注目すべきは,魚種や部位によって硫酸化パターンに 傾向が見られることである.多くの魚種では4-硫酸であ るA型(CS-A)が主要な成分だが,6-硫酸であるC型

(CS-C)の比率が高い魚種もある.最近筆者らは,いく つかの種類のサメに含まれるCSの量と硫酸化パターン を分析した.その結果,組成比(CS-A/CS-C)とCSの 含有量には正の相関があることが判明した.サメの運動 性に起因するラジカル酸素の発生の多寡と,CSがその 阻害剤として機能する量に関連があると推測した(4)

一方,深海性の魚の体表にある粘性の物質にはHAが 存在することも明らかになった.アジとノロゲンゲ(図 3b)のように,同じスズキ目の魚でも結果に共通性が 見られないため,CSの含有量や硫酸化パターンは,通 常の生物分類とは関係なく,生息環境などに左右される のかもしれない.しかし,食餌の異なる天然魚と養殖魚 の比較では,含有量と硫酸化パターンに差は見られな い(3)ことから,短期間の環境変化はこれらに影響を与え ないようである.

興味深いことに,天然マグロの胃と腸に高い割合

(35%程度)でコンドロイチン硫酸E(CS-E)が確認さ れた.通常CS-Eは魚類にはほとんど見られず,海洋生 物ではイカに特徴的に存在する(20〜45%).このマグ ロの胃の中には摂食したイカが確認されたことから,当 初イカ由来のCS-Eが吸収されたと理解し,そうであれ

ばCSの吸収メカニズムの解明につながるのではないか と考えた.しかし,CS-Eを含むイカなどを全く与えて いない養殖マグロの胃でも同様の結果となった(3).マグ ロの心臓などにはCS-Eは含まれないことから,マグロ の胃(たぶん腸も)のCS-Eは器官特異的に存在すると 考えられる.山田らは「外部環境と接している部位では ヘパラン硫酸の硫酸化度が高く,外敵の侵入をブロック しているのではないか」と仮説を立てている(5).現在わ れわれは,いくつかの生物の消化管に含まれるCS分析 を進めている.今後コンドロイチン硫酸に軸足を置き,

生物進化と分子進化の関係を詳細に解明してみたいと考 えている.

  1)  J. Tamura, K. Arima, A. Imazu, N. Tsutsumishita, H. Fu- jita, M. Yamane & Y. Matsumi: 

73, 1387 (2009).

  2)  K.  Arima,  H.  Fujita,  R.  Toita,  A.  Imazu-Okada,  N. 

Tsutsumishita-Nakai, N. Takeda, Y. Nakao, H. Wang, M. 

Kawano, H. Tanaka  :  , 366, 25 (2013).

  3)  J. Tamura: unpublished data.

  4)  N. Takeda, S. Horai & J. Tamura:  , 424,  54 (2016).

  5)  S.  Yamada,  K.  Sugahara  &  S.  Özbek: 

4, 150 (2011).

(田村純一,鳥取大学地域学部)

プロフィール

田村 純一(Jun-ichi TAMURA)

<略歴>1984年東京工業大学理学部化学 科卒業/1989年同大学大学院総合理工学 研究科博士課程修了/1991年アレキサン ダー・フォン・フンボルト財団奨学生/

1993年理化学研究所基礎科学特別研究 員/1996年 鳥 取 大 学 教 育 学 部 助 教 授/

2008年同大学地域学部教授,現在に至る

<研究テーマと抱負>生理活性糖鎖の設計 と化学合成,有用天然糖鎖の抽出・精製・

構造決定とその有効利用<趣味>乗りもの 全般

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.372

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