令和2年9月12日実施
令和3年度 和歌山大学大学院教育学研究科専門職学位課程(教職大学院)
入学試験問題・解答用紙 [小論文]( 3 枚の内の 1 )
コ ー ス:特別支援教育コース
問題
下記の図は、学校における合理的配慮と基礎的環境整備の関係を示したものです。
1.この図をもとに、「合理的配慮」と「基礎的環境整備」の関係について簡潔に説明しなさい。
受験番号
※
中央教育審議会 初等中等教育分科会 特別支援教育の在り方に関する特別委員会
「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(平成24年7月23日)参考資料より
令和2年9月12日実施
令和3年度 和歌山大学大学院教育学研究科専門職学位課程(教職大学院)
入学試験問題・解答用紙 [小論文]( 3 枚の内の 2 )
コ ー ス:特別支援教育コース
2.学校における「合理的配慮」について、具体的な事例を挙げ、①教育内容および教育方法、②支援体制、③施設・設備 の3つの観点から論じなさい。その際、知的障害、視覚障害など特定の障害のある児童・生徒を想定して論じなさい。
受験番号
※
令和3年度 和歌山大学大学院教育学研究科専門職学位課程(教職大学院)
入学試験問題[小論文]解答例・出題の意図 コ ー ス:特別支援教育コース
【出題の意図】
1.一つ目の問いは、「合理的配慮」と「基礎的環境整備」の関係を説明することを求めている問題である。解答にあたっ ては、以下のような内容で説明することが期待される。
「合理的配慮」とは、障害のある子どもが他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するた めに、個別の状況に応じて必要かつ適当な変更・調整を学校の設置者および学校がおこなうことである。このような「合理 的配慮」には、個々の学校や教師の努力では実現しえない財政的・人的配置等を伴うものも含まれる。「基礎的環境整備」
とは、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県で、市町村は各市町村内で行う教育環境 の整備を指す。「合理的配慮」と「基礎的環境整備」は、設置者および学校が、「基礎的環境整備」を基に、各学校において 障害のある子どもに対し、その状況に応じて「合理的配慮」を提供する、という関係になっている。
2.学校における「合理的配慮」について、特定の障害のある子どもを想定し、具体的な事例を挙げ3つの観点から論じる ことを求めている問題である。解答例として、ここでは学習障害を例に挙げる。
学習障害の子どもは、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のう ち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。
学校教育においては、このような学習障害の認知の特徴をふまえた「合理的配慮」の提供が必要である。
(1)教育内容・教育方法については、①個々の理解度に応じて学習内容に軽重をつける、②習熟のための時間を別に設 ける、③ノートテイクしやすいように穴埋め式のワークシートを利用するなど書字量を調整する、④認知特性に応じて口頭 試問によるテストを行うなど評価の際の配慮を行う、 ⑤学習障害の子どもが文章を読みやすくするため体裁やフォントな どを変えたり、拡大文字を使用したりフリガナをつける、⑥必要に応じてパソコンやタブレット端末、デジタルカメラ、電 卓などICT機器を当該子どもが利用できるようにしたり、家庭で使用している機器等を学校でも使用することを認める、⑦ 活動内容を分かりやすく簡潔に説明し、見通しをもちながら安心して学習活動に参加できるようにする、⑧お互いが認めあ える受容的な学級の雰囲気づくりを心掛ける、⑨成功体験を増やしたり、友達から認められたりする場面を設ける、などが 考えられる。
(2)支援体制については、①校内の支援体制を確立し、障害の特性や学習障害の子どもが抱く困り感に関する教職員の 共通理解を図る、②特別支援学校のセンター的機能や発達障害者支援センターなどの巡回相談・教育相談などを活用し、学 習障害の子どもの理解と日常的な指導・支援に活かす、③保護者や周囲の子どもなどの理解促進を図るため、感じ方や学び 方の違い・苦手さには個人差があることに関する授業をすべての通常の学級で実施する、④研修や学級通信・学校だよりな どを活用して計画的・継続的に周囲の子ども、教職員、保護者等の理解促進を図る、⑤リソースルームなど必要に応じて個 別的な指導を行える場所、クールダウンできる場所を校内に確保する、などが考えられる。
(3)施設・設備については、①「通級指導教室」を設置し、個別指導の機会・時間を確保したり、視覚的な理解を促す 教材・教具を充実させる、②教室など校内環境の整備として、余分なものを覆うカーテンを設置する等不要な情報を隠し必 要な情報が確実に入ってくるよう、校内環境を整備する、③視覚的に分かりやすい表示等の工夫をする、③災害時等への対 応として、災害発生後における急な環境の変化に対応できない場合を想定し、心理的不安定を誘発するような外部からの刺 激を可能な限り制限できるような避難場所を整備する、などが考えられる。
以上のような3つの観点から示した「合理的配慮」の提供は、学習障害のある子どもが障害のない他の子どもと同様に十 分な教育を受けるために必要なものである。そして、「合理的配慮」の提供にあたっては、一人一人の障害の状態や教育的 ニーズ等に応じ、発達段階を考慮しつつ、本人・保護者と学校とが合意形成を図り、適宜結果を評価して柔軟に見直すべき ものである。