公開草案「財務諸表の表示」に 関するスタッフ・ドラフト
第 1 項 ‐ 第 134 項
報告者:市原・榮・戴・真田
2011年5月31日(火)
財務会計論
A
1
報告の概要
• イントロダクション (真田)
• スタッフ・ドラフトの内容報告 – 第 1 項 ‐ 第 42 項 (市原)
– 第43項‐第112項 (榮)
– 第 113 項 ‐ 第 134 項 (戴)
• 論点の整理 (真田)
2
イントロダクション
問題の背景 討議資料の論点
3
問題の背景
• 2001 年ごろから IASB と FASB がそれぞれ別個に行っ ていた財務業績報告プロジェクトは, 2004 年に財務 諸表の表示プロジェクトへと引き継がれた。
• 同プロジェクトは,財務諸表における情報の構成お よび表示に関して指針を与えるグローバル・スタン ダードを設定することを目的としている。
• 進捗状況に関しては,フェーズAは終了。フェーズB は2008年に討議資料、および2010年にスタッフ・ドラ フトが公表。フェーズCは手付かずの状況。
4
財務諸表の表示プロジェクトの進捗状況
フェーズ 内 容 現在の状況
フェーズA
•完全な一組の財務諸表を構成す
る計算書および表示すべき期間を 扱う改訂IAS第1号「財務諸表 の表示」の公表(2007年9 月)により終了。
フェーズB
•財務諸表における情報の表示に
関するより本質的な論点を扱う。•具体的には,①IAS第1号とIAS第 7号の置き換え,②非継続事業,
③その他の包括利益の表示,に より構成されている。
2008年10月に討議資料
「財務諸表の表示に関 する予備的見解」を公表。
2010年7月にFASB/IASB
スタッフ・ドラフトの公表フェーズC
•米国会計基準における中間財務
情報の表示を扱う。•IAS第34号「中間財務諸表」を見
直す可能性審議はまだ開始されて いない。
改訂 IAS 第 1 号
[改訂IAS第1号の主な変更点]
•
包括利益が導入されたこと•
会計方針の変更,誤謬の修正または項目の組替えが生じた 場合における比較対照期間の財政状態計算書を開示するこ と•
リサイクリングを行った場合には,その金額をその他の包括 利益の項目ごとに開示すること•
その他の包括利益の各項目について法人税額を開示するこ と•
配当および関連する1株当たり情報は,所有者持分変動計 算書本表または注記のいずれかで開示すること討議資料「財務諸表の表示に関する予備的見解」
[フェーズ B における論点]
•
情報の合算(aggregation
)および分解(disaggregation
)•
合計および小計の定義•
キャッシュ・フローの表示における直接法と間接法について の再検討[フェーズ Bで再検討を行わない論点]
•
どの項目を純利益以外のその他の包括利益で表示すべき か,または表示できるか。•
その他の包括利益項目を純利益に組み替えなければならな いか,いつおよびどのように組み替えなければならないか。7
財務諸表の表示の目的(討議資料)
1. 企業の活動に関する一体的( cohesiveness ) な財務情報を提供すること
2. 企業の将来キャッシュ・フローの予測に役立 つよう,財務情報を分解( disaggregate )する こと
3. 財務情報利用者が企業の流動性および財 務的柔軟性(liquidity and financial
flexibility )を評価するのに役立つこと
8
財務諸表の表示の目的
•
一体性–
財務諸表の利用者が同一企業の財務諸表間の情報の流れを 把握することを可能とすること•
分解–
財務諸表の利用者が企業の将来キャッシュ・フローの金額,タ イミングおよび不確実性を評価する際に役立つように,経済事 象に対して異なる反応を示す項目が区分して表示されるように すること•
流動性–
報告企業が財務約定を履行するための能力(resource)•
財務的柔軟性–
ビジネスチャンスへの投資能力,将来の成長に向けての資金 拠出能力ならびに予期せぬニーズおよび機会への対応能力を 示す広い概念9
討議資料の提案のうち現行規定に重要な変更 を生じさせることとなる主なもの
•
財務諸表の項目は「事業」(business),「財務」(financing),「所有者持分」(
equity
),「非継続事業」(discontinued operations)および「法人税」(income taxes)のセクションに分
類。これらの分類はマネジメント・アプローチに基づき各財務 諸表に適用される。•
包括利益を損益計算書と包括利益計算書に分けて表示する 選択肢を排除し,単一の包括利益計算書による表示を義務 付ける。•
キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フ ローについては直接法を用いて表示し,間接法を排除。•
新たな開示規定の導入(キャッシュ・フローから包括利益へ の調整)10
セクションの内訳
事業セクション 製品の製造やサービスの提供といった価値の創造 を目的として行われる活動に関するもの。このセク ションは,さらに、企業が事業を営む主目的に関連 する営業カテゴリーと,利息,配当または市場価格 の上昇といったその他の事業活動に関する投資カ テゴリーに分けられる。
財務セクション 事業およびその他の活動に資金を供する活動が含 まれる。
非継続事業セクション 非継続事業に関連するすべての要素が含まれる。
法人税セクション
IFRSに従って認識されるすべての当期税金と繰延税
金項目が含まれる。ただしIFRSの他の規定によりそ の他のセクションに割り振られたものは除く。所有者持分セクション 所有者持分としての要件を満たす項目を表示する。
出所:IASB [2008] より報告者が作成。 11
財務諸表の様式(討議資料案)
財政状態計算書 包括利益計算書 キャッシュ・フロー計算書 事 業
営業資産及び負債 投資資産及び負債
事 業
営業収益及び費用 投資収益及び費用
事 業
営業活動によるCF 投資活動によるCF 財 務
財務資産 財務負債
財 務 財務資産収支 財務負債費用
財 務
財務資産によるCF 財務負債によるCF
法人所得税 法人所得税
(事業及び財務に係るもの)
法人所得税
非継続事業 非継続事業
―税引後
非継続事業 その他の包括利益
―税引後
所有者持分 所有者持分
12
出所:IASB [2008] para.2.22より。
キャッシュ・フローから包括利益への調整表(簡略版)
A B C D E F G
キャッシュ・フロー計算書の表題 キャッシュ・
フロー 経過勘定,
配分その他継続的な評 価額の修正その他の再
評価 包括利益
(B+C+D+E) 包括利益計算書の表題
事業 事業
営業 営業
顧客からの現金の収入 xxx xxx xxx 総収益
商品の仕入による現金の支出 xxx xxx xxx xxx 売上原価合計
販売費の現金支払額 xxx xxx xxx 販売費合計
一般管理費の現金支払額 xxx xxx xxx xxx 一般管理費合計
その他の営業活動による現金の収入 xxx xxx xxx その他の営業利益合計
営業活動によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx xxx xxx 営業利益合計
投資 投資
投資活動によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx xxx xxx 投資利益合計 事業活動によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx xxx xxx 事業利益剛毅
財務 財務
財務資産 財務資産
利息の受取額 xxx xxx xxx 受取利息
財務資産によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx 財務資産からの収益合計
財務負債 財務負債
社債の発行による収入 xxx xxx
利息の支払額 xxx xxx xxx 支払利息
財務負債によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx 財務負債にかかる費用合計
財務活動によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx 純財務費用合計
法人所得税 法人所得税
法人所得税等の支払額 xxx xxx xxx xxx 法人所得税費用
非継続事業 非継続事業
非継続事業による現金の支出 xxx xxx xxx xxx 非継続事業による損失
xxx タックス・ベネフィット
非継続事業によるキャッシュ・フロー xxx xxx xxx xxx 非継続事業による純損失
資本取引を除く現金増減 xxx xxx xxx xxx xxx 純利益
その他の包括利益(税考慮後)
xxx xxx 売却可能有価証券に係る未実現利益
xxx xxx 為替換算調整勘定 xxx xxx xxx その他の包括利益
資本取引を除く現金増減 xxx xxx xxx xxx xxx 包括利益合計
包括利益計算書 所有者との取引以外による資産及び負債の変動
再測定以外 再測定
13 出所:IASB [2008] より筆者が作成。
討議資料のまとめ
•
討議資料の提案の革新性–
マネジメント・アプローチにより財政状態計算書における 資産・負債をセクションとカテゴリーに分類することとし,こ の分類を包括利益計算書における収益・費用の分類およ びキャッシュ・フロー計算書におけるキャッシュ・フローの 分類に横展開し,一体性のある財務諸表表示を実現。⇒財務諸表本体に極めて多くの情報が盛り込まれるように なる。
–
直接法によるキャッシュ・フロー計算書の作成を求めた上 で,財務諸表の注記にキャッシュ・フローから包括利益へ の調整表も開示させることで大幅に情報量が増加。14
スタッフ・ドラフトは,コメント・レターおよびフィールド・テストの 検討結果を踏まえ,討議資料の内容から大きく変更された
第 1 項~第 42 項
15
目的
•
本ガイダンス案は,企業の過年度財務諸表の首尾一貫 性を確保するとともに,
他の企 業の財務諸表との比較可 能性をもたらすために,
一般目的財務諸表の表示の基 礎を規定している。それは,財務諸表の表示の全般的な 要件や財務諸表の構造の要件,財務諸表内の 情報の 分類や分解の原則を示している。16
範囲
•
企業は,米国における一般に公正妥当と認められた会 計原則( GAAP)に準拠した一 般目的財務諸表を作成し 表示する際に,本ガイダンス案を適用しなければらない。•
本ガイダンス案は,第4 項から第 6 項に記載されている
ものを除くすべての主体に等 しく適用される。範囲
•
本ガイダンス案は,以下によって作成された財務諸表に は適用されない。a.
非営利団体b. FASB 会計基準体系のトピック 960(確定年金給付保証
制度の会計),トピック962(確定拠出年金制度),およびト
ピック
965(従業員福利厚生制度)の範囲 内の従業員給
付制度
財務諸表の目的
•
財務諸表は,企業の財政状態および財務業績の構造化された表現である。財 務諸表は, 企業についての以下の情報を提供する。a.
資産,負債および純資産b.
損益を含む収益と費用c.
所有者の立場としての所有者による拠出と所有者に対する分配d.
キャッシュ・フローこの情報は,純資金流入を生成する企業の能力を評価したり,企業の資源を 効率的かつ 効果的に利用する責任を経営陣がいかに果たしているかを評価 したりするのに有用である。
19
財務諸表の完全なセット
•
財務諸表の完全なセットは以下を含む。a.
期間末の財政状態計算書b.
期間の包括利益計算書c.
期間のキャッシュ・フロー計算書d.
期間の持分変動計算書e.
重要な会計方針およびその他の説明情報の概要を含む注記f.
第33項~第36項で要求される比較情報g.
可能であれば,必要な比較期間の開始時点における財政状態計算書(第37項参照)•
企業は,財務諸表の完全なセットを用いて財務書類のすべてを平等に開示しなけれ ば ならない。20
財務諸表の識別 [IASB のみ ]
•
企業は,明らかに各財務諸表と注記を識別しなければならない。また,企業は,目立 つように次の情報を開示し,それが理解する必要がある情報である場合は,繰り返し 開示しなければならない。(a)
企業名またはその他の識別の手段と,上記の報告対象期間の最終日からのそ の情報についての変更(b)
財務諸表が個別企業のものか,企業グループのものかどうか(c)
報告書の対象期間または財務諸表や注記のセットがカバーしている期間の最 終日(d) IAS 第 21 号(外国為替レートの変動の影響)で定義されている現在の通貨
(e)
財務諸表の金額表示で使用される表示項目[IAS 第1 号51 項]21
報告の頻度
•
企業は,少なくとも毎年財務諸表(比較情報を含む)の完全なセット を開示しなければならない。企業は,その報告対象期間の最終日を 変更し,1 年よりも長い,または短い期間で財務諸表を開示する場 合,財務諸表の対象期間に加えて、次のものを開示しなければなら ない。a.
長い,または短い期間を使用する理由b.
財務諸表に記載されている金額が完全に同等ではないという 事実22
IFRS における公正な開示と
コンプライアンス[IASB のみ]
•
財務諸表は,企業の財政状態,財務業績およびキャッシュ・フローを公正に開示しなけれ ばならない。公正な開示は,財務報告のための概念フレームワーク(フレームワーク)に定 める資産、負債、収益および費用の定義と認識基準に基づいて,取引や他の事象の影 響と状態を忠実に表現することを要求している。IFRS(必要に応じて追加開示される)の 適用は,公正な開示を実現する財務諸表になると推定される。[IAS 第1 号15 項]
• IFRS に準拠した財務諸表を作成している企業は,注記にそのようなコンプライアンスの
明示的で留保条件なしの計算書を作成しなければならない。企業は,IFRS のすべての要 件に準拠していない限り,IFRS に適合するものとして財務諸表を記述してはならない。
[IAS 第 1 号 16 項]
23
IFRS における公正な開示と
コンプライアンス[IASB のみ]
•
企業は,使用する会計方針の開示や注記または説明資料のずれかに よって不適切な会計処理方針を修正することはできない。[IAS 第1 号 18 項]
•
経営陣が,IFRS の要件に応じることはフレームワークに定める財務報 告の目的と反すると誤解させると結論付けるような極めて稀な状況で は,企業は,第24項に定める方法でその要件から逸脱しなければならな い。もし,その関連規制の枠組みがそのような逸脱を必要とする場合は, 少なくともそれを禁止しない。[IAS 第1 号 19 号(一部変更)]
24
IFRS における公正な開示と コンプライアンス[IASB のみ]
•
第23項に従ってIFRS の要件から逸脱するとき,企業は,以下の項目を開示しなければ
ならない。(a)
経営陣が,財務諸表は企業の財政状態や財務業績,キャッシュ・フローを公正に開示 していると結論付けていること。(b)
公正な開示を実現するために,特定の要件から逸脱していることを除いて,該当するIFRS に準拠していること。
(c)
企業が逸脱したIFRS のタイトル,IFRS が要求する取り扱いを含む逸脱の性質,それ
がフレームワークに定める財務報告の目的と競合する状況ではその取り扱いが誤解を 招く理由とその取り扱いを適用する理由。(d)
開示期間ごとに,要件を遵守することで報告される財務諸表内の各項目についての 逸脱の財務的効果。[IAS 第1 号20 項(一部変更)]25
IFRS における公正な開示と コンプライアンス[IASB のみ]
•
前期にIFRS の要件から逸脱があり,その逸脱が当期の財務諸表に認識された金額に影響を与える
とき,第24項の(c)および(d)に定める開示を行わなければならない。[IAS 第
1 号21 項]
•
経営陣が,IFRS の要件に応じることはフレームワークに定める財務報告の目的と競合すると誤解さ せると結論付けているが,その関連規制の枠組みが要件からの逸脱を許可していないような極めて 稀な状況では,企業は,最大限可能な範囲で,開示に従うことで引き起こされると考えられる誤解を低 減しなければならない。(a)
問題となっているIFRS のタイトル,要件の性質となぜ経営陣が,それがフレームワークに定める財
務報告の目的と競合するような状況では,その要件を遵守することが誤解を引き起こすと結論付けて いるか。(b)
開示期間ごとに,公正な開示を実現するために必要であると経営陣が結論付けた財務諸表の各 項目の調整。[IAS 第1 号 23 項(一部変更)]
26
ゴーイング・コンサーン [IASB のみ]
•
財務諸表を作成する場合は,経営陣は,継続企業として存続する企業の能力を評価 しなければならない。経営陣が企業を清算するか,取引を中止しようとしない限り,ま たは,そうはしないまでも現実的な代替案を持っていない限り,企業は,継続企業の 概念に基づいて財務諸表を作成しなければならない。継続企業として存続する企 業の能力に大きな疑問を唱えるかもしれない事象や状況に関連する物理的状況 に(その評価の中で)経営陣が気づいたとき,これらの不確実性を開示しなければな らない。企業が継続企業の概念に基づいて財務諸表を作成していない場合,作成 した財務諸表が基づいている概念とともに,なぜその企業が継続企業としてみなさ れていないのかを開示しなければならない。[IAS 第1 号 25 項]
27
会計の積算概念 [IASB のみ ] / 比較情報
•
企業は,キャッシュ・フロー情報を除いては,発生主義会計の概念を使用して,その財 務諸表を作成しなければならない。[IAS 第1 号27 項]•
体系の別のガイダンスが別の方法を許可もしくは要求している場合を除き,企業は, 当期の財務諸表に開示されたすべての項目について前期(要求された比較期間) の比較情報を開示しなければならない。もし,今期の財務諸表を理解するために関 連している場合 は,企業は,記述的説明的な情報についても比較情報を含めなけ ればならない。•
第9項と同様に,比較情報を開示する企業は,財務状況,包括利益,キャッシュ・ フ ロー,持分の変化および関連する注記について最低限2 つの計算書を提供しなけ
ればな らない。28
会計方針の変更と エラーの修正
•
もし,遡及的に会計原則を適用する,財務諸表を置き換える,またはその財務諸表 の項目を分類し直す場合,企業は,要求される比較期間の開始時点における財政 状態の追 加計算書を開示しなければならない。•
企業が,財務諸表の開示や項目の分類を変更する場合,分類が不可能でない限り, 比較金額を再分類しなければならない。企業は,比較金額を再分類するとき,要求さ れる 比較期間の開始時点において開示しなければならない。a.
分類の性質b.
各項目の金額,または再分類された項目の分類c.
分類理由会計方針の変更と エラーの修正
•
比較金額の再分類が不可能である場合,企業は以下の 項目を開示しなければならない。a.
金額を再分類しない理由b.
金額が再分類される場合は,調整に関する定性的情 報第 43 項~第 112 項
31
財務諸表の表示の一般特性①
• 財務諸表の表示の目的
• 会社の財務状況にしっかりと結びついた情報を伝 達するように体系化された分解情報を提供する
• 財務諸表の表示の主な原則
• 財政状態と業績の構成要素を説明するように情報 を分解し、企業活動の一体性のある財務の全体像 を表現するように情報開示をしなければならない
32
財務諸表の表示の一般特性②
• 分解原則
•
企業は以下のために,財務諸表における情報を表す• a.
企業が従事する活動を明白にするため• b.
企業のキャッシュ・フローを明白にするため• c.
資産(負債)と資産(負債)の変化の効果の間の関係が,財 政状態や包括利益、キャッシュ・フローを通して表されている•
項目の機能,項目の特性,項目の測定基礎をもとに,財務 諸表に表示する項目を決定する33
財務諸表の表示の一般特性③
• 重要性
•
同種の項目を重要性のクラスごとに区分して表す•
それらが,重要性がない場合を除き,様々な性質,機能,測 定基礎の項目を構成要素に区分する•
表示項目が個々に重要でないならば,計算書や注記の他の 項目と合算される•
計算書の中で分けて表示するほど重要でない項目でも,注 記で区分した表示が妥当である場合もある•
本IFRS(案)では,周囲の環境の内容を評価するために,大 きさ(例えば金額),項目の相対的な重要性の両方に重要性 が依拠している34
財務諸表の表示の一般特性④
• 相殺
•
相殺が必要とされるまたは認められない限り,資産,負債,収益費用項目,キャッシュインフロー,アウトフローの相殺を してはならない
•
特定の取引,事象の実質を反映するときを除いて,財務諸 表を相殺することは,利用者の能力,つまり取引,事象,状 態を理解することと,企業の将来キャッシュ・フローを評価す ることの両方を阻害する35
財務諸表の表示の一般特性⑤
• 財務諸表で一体性のある情報を表示するために,
企業は,財政状態,包括利益,キャッシュ・フロー,
そして,それら 3 つが一貫するように,セクション,カ テゴリー,サブカテゴリーで分解された情報を表示 する
• 企業は財務諸表を通して関係づけられた情報に,
しっかりと結びつくようなやり方で表示項目を表示し,
利用者がこれらの項目を理解しやすいようにしなけ ればならない
36
財務諸表の構成①
• セクション,カテゴリー,サブカテゴリーにおける情 報の表示
• a.
事業セクション• 1.
営業カテゴリー ⅰ 営業ファイナンス・サブカテゴリー• 2.
投資カテゴリー• b.
財務セクション• 1. 借入カテゴリー
• 2. 資本カテゴリー
• c.
税金セクション• d.
非継続事業セクション• e.
複数カテゴリー取引セクション37
財務諸表の構成②
•
セクション,カテゴリー,サブカテゴリーにおける情報の分類•
財務報告において,当該項目がどのような活動に関係する かに基づいて,セクション,カテゴリー,サブカテゴリーを分類 する•
財務諸表の注記の中で,表示項目の分類を基本として開示 する•
特に企業は財務報告の情報の表示と企業活動の間の関係 を開示しなければならない38
財務諸表の構成③
• 事業セクション
•
企業の事業セクションは営業活動と投資活動からなり,そし てそれらは別々に表示しなければならない• 営業カテゴリー
•
企業の日々の事業の一部として用いる資産負債とこれらす べての変動• 営業ファイナンス・サブカテゴリー
•
企業の営業活動に直接関係したものであるが,長期的な ファイナンス活動の源泉も提供するもの39
財務諸表の構成④
• 負債は以下の基準を満たすならば営業ファイナン ス・サブカテゴリーにおいて別々に表示される
• a.サービス,使用権,商品の交換から起こるか,事業活動の
結果として直接に起こる
• b.長期的なものである
• c.利子または時間の経過に伴う負債の累積によって裏付け
られる,貨幣の時間価値構成要素をもつ
40
財務諸表の構成⑤
• 投資カテゴリー
•
リターンを生むのに使う資産または負債とその変動は,投資 活動として分類しなければならない• 財務セクション
•
企業の資本構造,企業が従事する財務活動についての透明 性を提供するセクション•
資本構造を財政状態計算書,包括利益計算書の2つのカテ ゴリーの中で財務活動をグルーピングすることによって,透 明性のあるものにする財務諸表の構成⑥
• 借入カテゴリー
•
資金の獲得(又は返済)を目的として締結された借入契約で ある負債及び関連する収益への影響は、借入カテゴリーに 分類しなければならない•
企業自身の資本に関連する取引から生じる資産及び負債並 びに関連する収益への影響は、借入カテゴリーに分類し、借 入カテゴリー内で借入契約と区別して表示しなければならな い財務諸表の構成⑦
• 資本カテゴリー
•
トピック505で決められたすべての資本項目を、財政状態計 算書の資本カテゴリーに 表示する•
資本のすべての変動を、持分変動計算書に 表示する•
資本取引に関連するすべてのキャッシュ・フローを、キャッ シュ・フロー計算書の財務セクションに表示する• 法人所得税セクション
•
トピック740
に従って認識される当期税金資産及び負債並び に繰延税金資産及び負債のすべて、並びにその他法人所得 税に関連する資産又は負債を含めなければならない43
財務諸表の構成⑧
• 非継続事業セクション
•
サブトピック205‐20に従って決定された非継続事業に係る資 産及び負債は、財政状態計算書の非継続事業セクションに 分類しなければならない• 複数カテゴリー取引セクション
•
財政状態計算書の複数のセクション又はカテゴリーでの資産及び負債 の認識を生じる取得による、包括利益及びキャッシュ・フローへの影響の 純額は、包括利益計算書及びキャッシュ・フロー計算書の複数カテゴ リー取引セクションに分類しなければならない•
財政状態計算書の複数のセクション又はカテゴリーでの資産及び負債 の認識の中止を生じる処分取引の影響の純額は、包括利益計算書及び キャッシュ・フロー計算書の複数カテゴリー取引セクションに分類しなけ ればならない44
財務諸表の構成⑨
• その他の分類ガイダンス
• デリバティブ
•
デリバティブ及びデリバティブに関連するキャッシュ・フロー は、関連する資産及び負債が表示されているセクション,カ テゴリー及びサブカテゴリーに表示する• 複数の機能を有する資産又は負債
•
複数の機能に使用している資産又は負債を、主に使用して いるセクション又はカテゴリーに分類しなければならない45
財務諸表の構成⑩
• 利息
•
利息費用及び利息支出は、利息を生じさせる負債と同じセク ション、カテゴリー及びサブカテゴリーで表示しなければなら ない• 表示及び分類の継続性
•
企業は、次の場合を除いて、財務諸表の表示と財務諸表上の資産及び 負債(及び当該項目の変動)の分類を、毎期間維持しなければならない。•
①変更が他のガイダンスにより求められている場合、又は•
②企業の活動の変化又は財務諸表の表示の再検討により、サブトピック250‐10
「会計上の変更と誤謬の訂正」に定める会計方針の選択と適用の規準に関して別の表示の方がより適切であることが明らかな場合
46
財務諸表の構成⑪
•
企業が財務諸表の表示を変更できるのは、(a)変更後の表示 が財務諸表の利用者にとってより目的適合性があり、かつ、(b)
変更後の構成が継続する可能性が高く、比較可能性が損 なわれない場合のみである•
セクション又はカテゴリーでの資産又は負債(及び関連する 収益やキャッシュ・フローへの影響)の分類の変更が当期の 財務諸表に影響を及ぼす場合には、企業は以下を開示しな ければならない。a. その資産又は負債の新しい機能
b. 新しいセクション又はカテゴリーに分類する理由
c. 当期及び要求される比較期間に係る、影響を受ける各財務諸表の表
示科目、カテゴリー及びセクションの修正金額47
財務諸表の構成⑫
•
財政状態計算書、包括利益計算書及びキャッシュ・フロー計 算書において、企業は各セクション、カテゴリー及びサブカテ ゴリーに係る小計及び関連する見出しを表示しなければなら ない48
第 113 項~第 134 項
49
財政状態計算書 財政状態計算書の表示
113. 財政状態計算書は、一定時点の企業の資産、負
債、資本及び相互関係に関する情報を提供しなけれ ばならない。
114.企業は、資産及び負債の使用と整合するセクショ ン、カテゴリー及びサブカテゴリーに当該資産及び負 債を分類しなければならない。
•討議資料は、資産と負債を一緒にして各セクション及びカ
テゴリーで表示する便益の1つは、財務諸表利用者が重要 な財務比率を計算するのが容易になることだと指摘した。•FASB/IASB
は、コアとなる財務諸表表示の一体性の原則を達成することが必要と考えている。
50
財政状態計算書の表示
115.企業は、短期資産、長期資産、短期負債及び長期負
債を、財政状態計算書の各カテゴリーで区分して表示しな ければならない。ただし、流動性に基づく表示の方が目的 適合性の高い情報を提供する場合を除く。116
企業は、目的適合性のある情報を提供する場合、一部 の資産及び負債については短期・長期の区分により、その 他については流動性の順序に従って表示することができる。117.
現金は、財政状態計算書において営業カテゴリーに分 類しなければならない。118.
現金は、流動性や満期の近さにかかわらず、短期投資 を含まない。51
財政状態計算書における資産及び負債の分解 119. ある項目又は類似項目の合計の機能、性質又は 測定基礎が、区分表示が財政状態の理解に関連性が あるものである場合には、企業は、資産及び負債を分 解し、財政状態計算書で区分して表示しなければならな い。
120. 企業の資産合計及び負債合計は、同様の経済事 象への反応が異なるかもしれない個別の資産及び負債 から構成される。同様の経済事象に同様に反応しない 資産又は負債は、財政状態計算書で区分して表示しな ければならない。
52
財政状態計算書における資産及び負債の分解
121. 性質の類似した資産又は負債を異なる基礎を用
いて測定する場合には、企業は、当該資産又は負債 を分解しなければならない。
–FASB/IASBは、財政状態計算書に別々の科目で表示す
べきだという討議資料の提案を維持することを決定した。–FASB/IASBは、測定基礎に従って企業の財政状態計算
書で項目を分解することは、財務諸表利用者が将来キャッ シュ・フローの金額、時期及び不確実性を評価するのに役 立つと判断した。財政状態計算書における分類 短期・長期分類
122. 契約上の満期、もしくは実現又は決済の予定 日が報告日の 1 年以内である場合には、資産又 は負債は短期に分類しなければならない。そうで はない場合、資産又は負債は長期として分類する。
–討議資料では、資産・負債の短期・長期の分類は、企業の
営業サイクルではなく、1 年基準の区分を基礎とすべきだと 提案した。–FASB/IASBは、1 年基準の区分の方が、企業の営業サイ
クルに基づく区分よりも単純で理解が容易だと判断した。短期・長期分類
123.繰延税金資産及び負債は、関連する資産又は負 債の分類に従って、短期又は長期に分類しなければ ならない。[IASB のみ]
–IAS 第 1 号は繰延税金資産・負債を流動に分類することを
禁じているので、この分類は
IFRS
適用企業の実務を変更す ることになる。55
金融負債の分類 [IASB のみ ]
124.次の場合であっても、返済期限が報告期間後 12
か月以内に到来する場合には、企業はその金融負 債を短期に分類する。
– a. 当初の返済期間が 12 か月超であり、かつ
– b.
長期の借換又は支払繰延の契約が、報告期間末日の 翌日から財務諸表の公表承認日の前日までの間に締結 されている場合125‐128(略)
– IAS 第 1 号と US GAAP は、金融負債の流動・非流動の分
類について異なるガイダンスを含んでいる。
56
財政状態計算書における小計及び合計の表示 129. 財務諸表に表示することを要求される小計及び合 計に加えて、企業は財政状態計算書で資産・負債の合 計額を表示しなければならない。
130. 企業が資産及び負債を短期と長期に分類して表示
する場合には、財政状態計算書において、短期・長期の 合計額も表示しなければならない。
131. (略)
–討議資料は、企業は資産・負債合計及び短期・長期の小計を
財政状態計算書又は財務諸表注記のいずれかで開示するこ とができると提案していた→財政状態計算書の有用性の低下–スタッフ・ドラフトでは、 FASB/IASB
は、財政状態計算書で表示することを企業に求めることを提案している。
57
財政状態計算書、持分変動計算書 又は注記で表示すべき情報
132. 企業は、財政状態計算書、持分変動計算書又は
注記のいずれかで、株式資本の種類ごとに、次の事 項を開示しなければならない。
– a. 授権株式数
– b. 全額払込済みの発行済株式数及び未払込額のある発
行済株式数
– c. 1 株当たりの額面金額又は無額面である旨
– d.
発行済株式総数の期中における変動内訳– e. 自己株式及び子会社又は関連会社保有の自社株式
58
財政状態計算書、持分変動計算書 又は注記で表示すべき情報
133. パートナーシップや信託などのように株式資本の ない企業では、第 132 項で要求された情報に相当す る情報を、資本持分の項目ごとに期中の変動並びに 資本持分の各項目に付随している権利、優先権及び 制限を表示し、開示しなければならない。
134. 企業が特定のものについて金融負債と資本との
間で分類を変更した場合には、各区分(金融負債から 資本)に、及び各区分から分類変更した金額並びにそ の分類変更の時期及び理由を開示しなければならな い。
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論点の整理
スタッフ・ドラフトにおける主要な提案 分解の原則と一体性の原則 財務諸表の構成(案)
IASB 案と FASB 案との相違
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スタッフ・ドラフトにおける主要な提案
• 財務諸表の新様式
• キャッシュ・フロー計算書
• ロールフォワード分析
• 純借入の増減分析
• セグメント情報(FASBの提案のみ)
矢野[2011]より
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分解の原則と一体性の原則
• 分解の原則
¾ 財務諸表の表示項目は、それぞれの性質、機能、
および測定基礎にもとづいて別個の表示項目と される
• 一体性の原則
¾ 財務諸表全体(財政状態計算書、包括利益計算 書、およびキャッシュ・フロー計算書)にわたって 同一取引を首尾一貫して表示すること
62
財務諸表の構成( para. 62 )
事業セクション
営業カテゴリー
企業の日々の事業の一部として用いる資産とこれ らすべての変動、 企業の日々の事業から生じる負 債とこれらのすべての変動
営業ファイナンス・
サブカテゴリー
退職給付債務の純額、 リース債務、 ベンダーファ イナンス、資産除去債務、 株式報酬以外の繰延報 酬契約、 計画化された決済など
投資カテゴリー 企業がリターンを生むのに使う資産または負債と その変動
財務セクション
借入カテゴリー 資金の獲得(又は返済)を目的として締結された借 入契約である負債及び関連する収益への影響 資本カテゴリー すべての資本項目、資本のすべての変動、および
資本取引に関連するすべてのキャッシュ・フロー 法人所得税
セクション
当期税金資産および負債、ならびに繰延税金資産および負債のすべて、
ならびにその他法人所得税に関連する資産または負債 非継続事業
セクション 非継続事業に関連する資産、負債、およびその変動 複数カテゴリー
取引セクション 複数のセクションやカテゴリーに影響をおよぼす取得および取引 63
IASB 案と FASB 案との相違
• IASB 案と FASB 案の相違が意味するもの
• 米国のIFRSアドプション戦略
– 政権交代や SEC 委員長( Cox ⇒ Schapiro )の交代⇒
ロードマップ案からの後退(?)
• 金融商品会計
– 討議資料「金融商品の財務報告に関する複雑性 の低減」⇒ IFRS 第 9 号「金融商品:認識及び測定」
– 全面公正価値モデルと混合属性モデル
64
参考文献
•
草野真樹[2005]『利益会計論』森山書店。
•
辻山栄子[2008]「収益認識と業績報告」『企業会計』第60巻第1号,
39‐53ページ。
•
徳賀芳弘[2007]「業績報告のあり方―包括利益か純利益か」『企業
会計』第59巻第1号,86‐93ページ。
•
西川郁生[2009]「財務諸表の表示プロジェクトと包括利益の表示」
『季刊 企業会計』第25号,18‐21ページ。
•
矢野貴詳[2011]
「財務諸表の表示プロジェクトの進捗と今後の見込み」『企業会計』第63巻第1号,121‐126ページ。
•
和久友子[2009]「財務諸表の表示」『税経通信』2009年8月臨時増刊
号,
69‐78
ページ。• IASB [2008]『ディスカッション・ペーパー「財務諸表の表示に関する予