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土壌細菌叢の化学的撹乱に対するロバスト性 - J-Stage

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446 化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

土壌細菌叢の化学的撹乱に対するロバスト性

経時的な土壌メタゲノム解析から見えてきたこと

次世代シーケンス技術の普及により,さまざまな環境 のメタゲノムデータが近年爆発的なスピードで蓄積され ている.土壌環境はその莫大な微生物多様性によってメ タゲノム解析が最も難しい環境の一つであり,土壌メタ ゲノムシークエンスの大規模プロジェクトが世界的に進 行中であるものの(1),そのメタゲノムの地理的または時 間的な変動はいまだ十分に捉えられていない.われわれ は特定環境因子の変動に対する土壌メタゲノムの時間的 変動を明らかにするために,汚染歴のない土壌を有害化 学物質で人工的に汚染した後に経時的なメタゲノム解析 を実施し,棲息細菌叢の系統組成や機能遺伝子組成がど のような変遷をたどるのかを検討した(2).土壌のメタゲ ノム解析のほとんどは野外開放系の土壌を対象としてお り,このような土壌ではさまざまな物理的・化学的・生 物学的環境因子が同時に変動するため,どの因子がメタ ゲノム組成の変動に関与したかの特定が難しい.そこで われわれは,ガラスポットに土壌を入れた閉鎖系を採用 し,一定条件(暗所25 C)での実験を行った.特に外 界からの生物的遮断は,「新たな微生物の出入りのない 条件」で細菌叢がどこまで変化し,また戻ることが可能 なのかを調べるうえで極めて重要である.またわれわれ は,変動させる環境因子として有害化学物質を取り上 げ,閉鎖系土壌に易分解性の3-クロロ安息香酸(3CB)

と3種の難分解性多環芳香族化合物(フェナントレンと ビフェニル,カルバゾール)を同時添加した.本土壌で は,棲息微生物の働きによって,3CBは3週目までに分 解,ほか3種の多環芳香族化合物は3週目前後で分解が 始まり,12週目には検出下限にまで分解された.

このような分解様式を念頭に置いて,汚染化直前の0 週目,そして,汚染後の1, 3, 6, 12,および24週目でメ タゲノムDNAを抽出し,Roche 454 GS FLX Titanium による16S rRNA遺伝子のPCRアンプリコンシーケン スで菌叢解析を,Illumina GA IIxによるショットガン メタゲノムシーケンス(75塩基×2)で機能遺伝子解析 を実施した.特に16S rRNA遺伝子のPCRには,真核 生物ならびにミトコンドリア由来のrRNA遺伝子の増幅 を最小限にしつつ,原核生物のV3‒V4領域を増幅でき る非縮重型オリジナルプライマー(3)を使用した.16S 

rRNA遺伝子解析によって,汚染後に を含 む の急激な優占化が起きたが,汚染化合 物が消失していた24週目には元の菌叢組成へと戻る傾 向が見られた.このような菌叢組成が元の状態へと戻る 現象を生態学では「レジリエンス」と呼ぶが,土壌細菌 叢が実際にレジリエンスを示すかについては,いまだに 議論されている(4).ただ,後述のショットガンメタゲノ ム解析では,菌叢の機能遺伝子組成(KEGG orthology の組成)も24週目には元に戻る傾向を示しており,今 回の結果は土壌細菌叢のレジリエンスの実例の一つとみ なせる.

ショットガンメタゲノム解析では,KEGG(Kyoto En- cyclopedia of Genes and Genomes)による機能遺伝子の 解析のほか,ACLAME(A CLAssification of Mobile Ge- netic Elements) やPOGs(Phage Orthologous Groups)

データベースを用いたファージDNAやプラスミド DNAの解析も行った.その結果,汚染土壌で最も増殖 した を宿主とするファージの存在,そし て,宿主減少に伴ったファージの爆発的増加が確認され た.この結果から,汚染物質(主に3CB)分解によって 増殖した のファージ捕食による減少が推 定でき,ファージによる “Kill-the-Winner” 現象(5)が土 壌環境でも起きていたと示唆された.微生物集団は個体 システムと同様に,さまざまな撹乱にあらがって機能を 維持する能力(ロバストネス)を有すると考えられてい

るが(6, 7),細菌叢のどの要素によってロバストネスが発

揮されるかは不明な点が多い.本研究で見られたファー ジ捕食による の減少は,菌叢変動におけ るネガティブフィードバックと言えよう.また,ショッ トガンメタゲノムの機能解析によって,ほかのいくつか のロバストネスの要素が浮き上がってきた.フェナント レンは主に6週目前後で盛んに分解されたが,メタゲノ ムでの代謝遺伝子数の増減様式から, に よるフタル酸経由のフェナントレン分解が起きたと予想 された.その一方で同時期には, タイプ のフタル酸分解遺伝子や,ナフタレン経路へと分岐させ る分解遺伝子の数も増加していた(図1.したがって,

多環芳香族系のような化合物が土壌で分解される場合,

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単一細菌種で完全分解されるのではなく,多様な分類群 の細菌がさまざまな分解過程に関与していた可能性が示 唆された.また,メタゲノムの機能遺伝子の変動様式を 調べた結果,上記の芳香族化合物代謝遺伝子のように分 解に伴って数的に増減する遺伝子群以外に,増減しない 様式を示す遺伝子群が存在した.このような遺伝子は,

主に基本代謝にかかわるものが多く,調べた146の KEGGパスウェイのうちの100が,菌叢組成の激しい変 動時でも,安定した組成を維持した.この結果は,異種 細菌間の機能冗長性に起因すると考えられるが,土壌細 菌叢の組成が変化しても基本的な代謝については機能を 維持できる遺伝子的ポテンシャルを有していると言えよ う.今回の研究で認められた土壌メタゲノムの時間的変 動性と,そこから見いだされたロバスト性は,トランス クリプトームやプロテオームなどのさまざまなオミクス 解析手法を用いて土壌細菌叢の振る舞いを研究する際の 基盤的情報となろう.

  1)  J. Nesme, W. Achouak, S. N. Agathos, M. Bailey, P. Bal- drian, D. Brunel, A. Frostegard, T. Heulin, J. K. Jansson, 

E. Jurkevitch  :  , 7, 73 (2016).

  2)  H. Kato, H. Mori, F. Maruyama, A. Toyoda, K. Oshima,  R. Endo, G. Fuchu, M. Miyakoshi, A. Dozono, Y. Ohtsubo 

:  , 22, 413 (2015).

  3)  H. Mori, F. Maruyama, H. Kato, A. Toyoda, A. Dozono,  Y. Ohtsubo, Y. Nagata, A. Fujiyama, M. Tsuda & K. Ku- rokawa:  , 21, 217 (2014).

  4)  A. Shade, H. Peter, S. D. Allison, D. L. Baho, M. Berga, H. 

Burgmann, D. H. Huber, S. Langenheder, J. T. Lennon, J. 

B. Martiny  :  , 3, 417 (2012).

  5)  F.  Rodriguez-Valera,  A.  B.  Martin-Cuadrado,  B.  Rodri- guez-Brito,  L.  Pasic,  T.  F.  Thingstad,  F.  Rohwer  &  A. 

Mira:  , 7, 828 (2009).

  6)  H. Kitano:  , 5, 826 (2004).

  7)  B. Stenuit & S. N. Agathos:  , 33,  305 (2015).

(加藤広海,津田雅孝,東北大学大学院生命科学研究科)

プロフィール

加藤 広海(Hiromi KATO)

<略歴>2009年博士(農学),東京農工大 学/〜2016年博士研究員 東北大学大学 院生命科学研/〜2016年助教 東北大学 大学院生命科学研究科,現在に至る<研究 テーマと抱負>土壌細菌叢の形成原理の解 明,土壌細菌による汚染物質分解および硫 黄化合物分解のメカニズム解明<ウェブサ イト><趣味>音楽鑑賞と演奏

津田 雅孝(Masataka TSUDA)

<略歴>1978年東京大学理学部生物学科 卒業/1983年同大学大学院理学系研究科 単位取得退学(理学博士)/同年マックス プランク分子遺伝学研究所ポスドク/1984 年東京大学理学部助手/1989年山口大学 医学部講師/1995年岡山大学理学部助教 授/1998年 東 北 大 学 遺 伝 生 態 研 究 セ ン ター教授/2001年同大学大学院生命科学 研究科教授<研究テーマと抱負>環境微生 物学

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.446 図1土壌細菌叢によるフェナントレンの協 調的分解

縦軸はメタゲノムDNAにおける遺伝子の存在 量(当該遺伝子のリード数を,遺伝子長および サンプルのユニバーサルシングルコピー遺伝子 のリード数で標準化した),横軸は芳香族化合物 添加後の時間(週)を示す.赤, ; オレンジ,α- ;青,β- ; 緑, γ- .文献2のデータを抜粋.

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