女性勤労者の精神的健康に関する研究 - 桜美林大学

2012 年度 博士学位論文（要旨）

女性勤労者の精神的健康に関する研究

－女性役割ストレッサーと対処の影響についての検討－

桜美林大学大学院 国際学研究科 環太平洋地域文化専攻

柴田 恵子

目次

第1章 序論

第1節 本研究の意義

第1項 女性勤労者の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1－4 第2項 本研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第2節 研究の背景

第1項 女性勤労者が経験するストレス研究とその問題・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6－18 第 2 項 心理的ストレスモデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19－21 第 3 項 女性勤労者が経験するストレスへの対処・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22－27 第 4 項 女性勤労者のストレスに対する影響要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28－29

第2章 研究の目的と意義

第1節 本研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30－31 第2節 本研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 第3節 本研究の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33－34

第3章 女性ゆえのネガティブな経験についての女性勤労者の認知（予備研究）

第1節 本章の問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 第2節 女性ゆえのネガティブな経験についての女性勤労者の認知

第1項 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 第2項 研究結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37－39 第3項 本章の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40－44 第4項 用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45－46

第4章 女性勤労者の女性役割ストレッサー尺度作成と信頼性、妥当性の検討（研究1）

第1節 本章の問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 第2節 女性役割ストレッサー尺度作成と信頼性、妥当性の検討

第1項 予備調査（研究1－1）・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48－51 第2項 女性役割ストレッサー尺度作成と信頼性の検討（研究1－2）（研究1－3）・・・・・52－60 第3項 女性役割ストレッサー尺度の妥当性の検討（研究1－4）・・・・・・・・・・・・・60－66 第3節 本章の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67－70

第5章 女性勤労者の女性役割ストレスコーピング尺度作成と信頼性、妥当性の検討（研究2）

第1節 本章の問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71－72 第2節 女性役割ストレスコーピング尺度作成と信頼性、妥当性の検討

第1項 予備調査（研究2－1） ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73－77 第2項 女性役割ストレスコーピング尺度作成と信頼性の検討（研究2－2）（研究2－3）・・78－86 第3項 女性役割ストレスコーピング尺度の妥当性の検討（研究2－4）・・・・・・・・・・87－94 第4節 本章の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95－98

第6章 女性勤労者の女性役割ストレスモデルの検証（研究3）

第1節 本章の問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99 第2節 女性役割ストレスモデルの検証

第1項 調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100－101 第2項 調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102－107 第3節 本章の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108－110

第7章 女性勤労者の属性からみた女性役割ストレスモデルの検討（研究4）

第1節 本章の問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 第2節 女性勤労者の属性からみた女性役割ストレスモデルの検討

第1項 雇用形態による女性役割ストレッサー得点

女性役割ストレスコーピング得点の差の検討・・・・・・・・・・・・・・・・112－116 第2項 職位別による女性役割ストレッサー得点

女性役割ストレスコーピング得点の差の検討・・・・・・・・・・・・・・・・117－130 第3項 職位別による女性役割ストレスコーピングが精神的健康におよぼす影響の検討・・・131－132 第4項 18歳以下の末子の年齢、配偶者の有無、職位による女性役割ストレッサー得点・

女性役割ストレスコーピング得点の差の検討・・・・・・・・・・・・・・・・132－137 第5項 本章の結果のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138－140 第3節 本章の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141－145

第8章 総合考察

第1節 本研究の結果の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146－148 第2節 本研究の総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149－155 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156－157 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・159－179 APPENDIX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ⅰ－ⅶ

要 旨

第 １ 章 ・ 第 ２ 章 序 論 ・ 本 研 究 の 目 的 １ ． 序 論

総 務 省 統 計 局 「 労 働 力 調 査 」 に よ る と 、 女 性 の 労 働 人 口 は 上 昇 し （ 厚 生 労 働 省 雇 用 均 等・児 童 家 庭 局,2009）、女 性 の 平 均 勤 続 年 数 も 長 く な っ て い る（ 厚 生 労 働 省,2010）。ま た 、18~34 歳 の 未 婚 女 性 が 理 想 と す る ラ イ フ コ ー ス は 継 続 就 業 を 理 想 と す る 割 合 は 上 昇 し て い る 。一 方 、専 業 主 婦 コ ー ス は 減 少 し て お り 、女 性 の 就 業 意 識 は 高 ま っ て き て い る（ 厚 生 労 働 省 雇 用 均 等 ・ 児 童 家 庭 局,2004）。 さ ら に 、 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 施 行 、 育 児 休 業 法 、 少 子 化 対 策 を 通 じ て 、女 性 が 結 婚 ・ 出 産 し て も 雇 用 継 続 で き る た め の 支 援 策 の 拡 大 が 進 め ら れ て い る 。こ れ ら の こ と か ら 、今 後 も 女 性 が 就 労 し 、男 性 同 様 の 就 労 形 態 で 働 く 女 性 は 一 層 増 え る も の と 予 測 さ れ る 。し か し 、男 性 に 比 べ 女 性 勤 労 者 は 、 管 理 職 の 女 性 の 占 め る 割 合 や 給 与 水 準 も 低 い 。ま た 、女 性 勤 労 者 は 時 間 雇 用 労 働 者 や パ ー ト 、派 遣 労 働 者 な ど 非 正 規 雇 用 者 の 割 合 が 高 く な っ て い る 。こ の よ う な 雇 用 形 態 の 多 様 化 に 伴 い 、正 規 社 員 に 比 べ て 健 康 管 理 サ ー ビ ス が 十 分 に 受 け ら れ な い 女 性 勤 労 者 が 今 後 も 増 え る こ と が 予 測 さ れ て い る 。以 上 の よ う に 今 後 も 就 労 す る 女 性 は 一 層 増 え る も の と 予 測 さ れ る 一 方 、女 性 勤 労 者 の 雇 用 状 況 に は 数 多 く の 取 り 巻 く 課 題 が あ げ ら れ る 。

女 性 勤 労 者 を 取 り 巻 く 課 題 に は 雇 用 に 関 す る こ と の ほ か 、女 性 に 特 有 の 健 康 課 題 、女 性 が 就 労 す る こ と で 生 じ る 健 康 課 題 、男 性 よ り も 女 性 に 多 い と さ れ る 健 康 課 題 な ど の 健 康 課 題 が あ げ ら れ る 。女 性 特 有 の 健 康 課 題 に は 、月 経 関 連 疾 患 （ 星 野,2004）、 妊 娠 ・ 出 産 、 更 年 期 障 害 に 伴 う 体 調 不 良 、 疾 患 や 自 己 免 疫 性 疾 患 （ 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス ）、 甲 状 腺 疾 患 、 偏 頭 痛 、 膝 関 節 症 な ど が 報 告 さ れ て い る （ 天 野,2008； 荒 木,2007）。 ま た 、 女 性 が 男 性 よ り も ス ト レ ス 反 応 が 高 く 、 抑 う つ 的 で う つ 病 の リ ス ク が 高 い こ と が 報 告 さ れ

（ Aneshensel, 1992 ; Cyronowski ・ Frank, 2000 ； Kessler, 2000 ； Mirowsky・Ross, 1995 ; Piccinelli ・Wilkinson , 2000）、 う つ 病 は 男 性 よ り 女 性 の ほ う が 1.7 倍 の 患 者 数 で あ る（ 厚 生 労 働 省,2007）。就 労 す る こ と で 生 じ る 健 康 課 題 に は 、頸 肩 腕 障 害 や 腰 痛 な ど の 作 業 労 働 関 連 筋 骨 格 疾 患 が あ げ ら れ 、 そ の 罹 患 率 は 男 性 よ り も 女 性 に 高 い こ と が 報 告 さ れ て い る ( 北 原, 2007； 厚 生 労 働 省, 2007） に よ る ）。 ま た 、 仕 事 に よ る ス ト レ ス を 感 じ て い る 女 性 の 割 合 は 74.6％ で 、 同 じ 職 場 で 働 く 男 性 の 68.7％ よ り や や 高 い （ 日 本 能 率 協 会 総 合 研 究 所, 2008； 下 開, 2006； 下 開, 2008）。 こ の よ う に 、 健 康 課 題 に は 男 女 差 が あ り 女 性 勤 労 者 は 、ス ト レ ス を 抱 え な が ら 就 労 し て い る こ と が 伺 え る 。

こ れ ま で 女 性 が 勤 務 す る 職 場 は 限 定 的 で 、年 齢 層 も 比 較 的 限 ら れ て い た た

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め 、職 場 の 健 康 管 理 に お い て 、女 性 勤 労 者 に 対 す る 対 応 が 積 極 的 に 議 論 さ れ て こ な か っ た 。し か し 、女 性 の 職 域 は 広 が り 、男 性 同 様 の 雇 用 形 態 で 働 く 女 性 は 一 層 増 え る も の と 予 測 さ れ 、女 性 と 男 性 の 健 康 課 題 か ら み た 差 を 考 慮 し た 、 女 性 勤 労 者 に 対 す る 健 康 管 理 の あ り 方 の 検 討 が 期 待 さ れ て い る （ 森, 2001； 森, 2004； 佐 藤 ・ 久 米, 1997）。

２ ． 先 行 研 究 の レ ビ ュ ー

1970 年 か ら 2009 年 ま で の 女 性 勤 労 者 の ス ト レ ス 研 究 を 概 観 す る と 、女 性 勤 労 者 が 経 験 す る ス ト レ ス に は 、職 場 生 活 に 関 す る ス ト レ ス 、仕 事 と 家 庭 の 多 重 役 割 間 の 関 係 、性 役 割 意 識 な ど が も と に な っ て い る ス ト レ ス に 大 分 さ れ た 。職 場 生 活 に 関 す る ス ト レ ス に は 、男 性 と 同 様 の ワ ー ク ス ト レ ス と 女 性 特 有 の ワ ー ク ス ト レ ス （ 平 島, 1997； 小 阪 ・ 柏 木, 2007） や キ ャ リ ア ・ ス ト レ ス と い っ た （ 金 井, 1993）、 職 場 で 経 験 す る ス ト レ ス が あ げ ら れ た 。 仕 事 と 家 庭 の 多 重 役 割 間 の 関 係 に は 、 仕 事 と 家 庭 の 多 重 役 割 数 や 負 担 （Biemat・

Wortman, 1991 ; Hammer・Allen・Grigsby, 1997 ; 菊 澤, 2001;Thoits, 1986）、 ス ピ ル オ ー バ ー （spillover）、 仕 事 と 家 庭 の 葛 藤 （work family conflict）（ 土 肥 ・ 広 沢 ・ 田 中, 1990； 濱 田, 2005； 小 泉, 1997） が あ げ ら れ た 。性 役 割 意 識 な ど が も と に な っ て い る ス ト レ ス に は 性 役 割 葛 藤（ 金 井 ・ 若 林, 1998； 金 井, 2002）、 ジ ェ ン ダ ー ・ タ イ プ （ 土 肥 ・ 廣 川, 2004）、 ジ ェ ン ダ ー ・ ス ト レ ス （ 平 田 ・ 平 野 （ 小 原 ）・ 加 耒 ・ 豊 福, 2004） が あ げ ら れ た 。

職 場 生 活 に 関 す る ス ト レ ス 、仕 事 と 家 庭 の 多 重 役 割 間 の 関 係 、性 役 割 意 識 な ど が も と に な っ て い る ス ト レ ス の い ず れ も 、職 場 、家 庭 、 日 常 生 活 の 場 面 に お い て 、女 性 勤 労 者 が 経 験 す る ス ト レ ッ サ ー と な り う る こ と が 伺 え た 。ま た 、 女 性 格 差 、 環 境 か ら の 圧 力 、 要 求 や 義 務 感 、 葛 藤 、 ズ レ 、 期 待 に 応 え よ う と す る こ と 、 期 待 さ れ て い る と 認 識 す る こ と が ス ト レ ッ サ ー と 捉 え ら れ 、 緊 張 や 抑 う つ な ど と い っ た ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 と の 関 連 が あ る こ と も 明 ら か に さ れ て い る 。以 上 の こ と か ら 女 性 勤 労 者 を 対 象 と し た ス ト レ ス 研 究 に お け る 女 性 勤 労 者 が 経 験 す る ス ト レ ッ サ ー は 、女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 が 大 き く 影 響 す る と 考 え ら れ る 。女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 と 緊 張 や 抑 う つ な ど と い っ た ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 と の 関 連 の 研 究 は 報 告 さ れ て い る が 、女 性 が ス ト レ ッ サ ー を 生 じ た 際 に ど の よ う な 対 処 を と り 、そ の 対 処 は ど の よ う に ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 低 減 さ せ る の か と い っ た 、精 神 的 健 康 に 影 響 を お よ ぼ す 過 程 を 検 討 し た 研 究 は み あ た ら な い 。

こ れ ら を 踏 ま え た う え で 、本 研 究 に お い て は 、女 性 勤 労 者 が 女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 が 、女 性 勤 労 者 の 精 神 的 健 康 に ど の よ う に 影 響 す る の か 、女 性 が ス ト レ ッ サ ー に ど の よ う な 対 処 方 法 を と り 、そ の 対 処 方 法 は ど の よ う に

ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 低 減 さ せ る の か と い っ た 、精 神 的 健 康 に 影 響 を お よ ぼ す 過 程 の 検 討 を 行 う こ と を 目 的 と し た 。

第 ３ 章 女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 に つ い て の 女 性 勤 労 者 の 認 知 （ 予 備 研 究 ） 予 備 研 究 で は 、女 性 勤 労 者 が 女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 に つ い て ど の よ う に 認 知 を 男 性 と の 比 較 で 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 勤 労 者 103 名

（ 男 性 36 名 平 均 年 齢 32.14 歳 、女 性 67 名 平 均 年 齢 33.07 歳 ）を 対 象 に 自 由 記 述 に よ る 調 査 を 行 な っ た 。 自 由 記 述 か ら 得 ら れ た デ ー タ を 男 女 別 に 分 類・整 理 し た 結 果 、女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 は「 女 性 特 有 の 心 身 の 変 化 」、

「 女 性 役 割 規 範 の 期 待 」、「 仕 事 の 不 公 平 感 」、「 身 体 的 な 外 見 」、「 家 庭 役 割 の 期 待 」、「 同 性 と の 対 人 関 係 」 で あ っ た 。 こ れ ら は 、 性 別 役 割 分 業 、 性 役 割 意 識 、 生 殖 機 能 に も と づ く も の で あ り 、 ま た 、「 仕 事 の 不 公 平 感 」 は 職 場 生 活 、

「 家 庭 役 割 の 期 待 」 は 家 庭 生 活 、「 女 性 規 範 の 期 待 」、「 身 体 的 外 見 」「 同 性 と の 対 人 関 係 」、「 女 性 特 有 の 心 身 の 変 化 」は 日 常 生 活 面 で 構 成 さ れ て い る 事 が 明 ら か に さ れ た 。

女 性 勤 労 者 が 女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 の な か 、性 別 役 割 分 業 、性 役 割 意 識 や そ れ ら が も と に な っ て い る 「 仕 事 の 不 公 平 感 」、「 家 庭 役 割 の 期 待 」、

「 女 性 規 範 の 期 待 」は 、従 来 か ら の 性 役 割 研 究 で 定 義 さ れ て い る 内 容 で あ る こ と か ら 「 女 性 役 割 」 と 捉 え ら れ た 。 女 性 勤 労 者 が 職 場 、 家 庭 、 日 常 生 活 に お い て 女 性 役 割 を 負 担 や ネ ガ テ ィ ブ に 感 じ る こ と か ら 生 じ る ス ト レ ス を 本 研 究 で は 操 作 的 に 女 性 役 割 ス ト レ ス と 定 義 し た 。

第 4 章 女 性 勤 労 者 の 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 作 成 と 信 頼 性 、 妥 当 性 の 検 討

（ 研 究 1 ）

研 究 1 で は 、 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー を 測 定 す る 尺 度 を 作 成 し 、 信 頼 性 ・ 妥 当 性 の 検 討 を 目 的 と し た 。項 目 収 集 の た め 女 性 勤 労 者 115 名（ 平 均 年 齢 は 34.46 歳 ）を 対 象 者 に 自 由 記 述 に よ る 調 査 を 行 い 、そ の 結 果 233 件 が デ ー タ と し て 得 ら れ 、 項 目 を 整 理 ・ 検 討 し 計 30 項 目 を 原 項 目 と し た 。30 項 目 を 用 い て 女 性 勤 労 者 542 名（ 平 均 年 齢 34.66 歳 ）を 対 象 者 に 探 索 的 因 子 分 析（ 主 因 子 法 、 プ ロ マ ッ ク ス 回 転 ） を 行 っ た 。 そ の 結 果 「 第 1 因 子 ： 職 場 で の 女 性 役 割 ４ 項 目 、 α 係 数=.856」「 第 2 因 子 ： 日 常 的 な 女 性 役 割 ４ 項 目 、 α 係 数

=.811」「 第 3 因 子 ： 家 庭 で の 女 性 役 割 ４ 項 目 、 α 係 数=.779」3 因 子 12 項 目 が 抽 出 さ れ た 。再 検 査 に よ る 信 頼 性 の 検 討 の た め 女 性 勤 労 者 115 名（ 平 均 年 齢 は 34.02 歳 ）を 対 象 者 に 検 討 し た 結 果 、再 検 査 信 頼 性 係 数 は 、職 場 で の 女 性 役 割 は ｒ=.698（p<.01）、 日 常 的 な 女 性 役 割 は ｒ=.824（p<.01）、 家 庭 で の 女 性 役 割 は ｒ=.775（p<.01）、 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 全 体 ｒ=.797

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（p<.01） と 正 の 有 意 な 相 関 が み ら れ た 。 妥 当 性 の 検 討 は 平 等 主 義 的 性 役 割 態 度 ス ケ ー ル 短 縮 版 （ Construction of a short-form of the scale of egalitarian sex role attitudes : SESRA -S） と の 相 関 係 数 と 確 証 的 因 子 分 析 で 検 討 し た 。 平 等 主 義 的 性 役 割 態 度 ス ケ ー ル 短 縮 版 （Construction of a short-form of the scale of egalitarian sex role attitudes : SESRA -S） と 有 意 な 相 関 が み ら れ た （r=.339～r=.462,p<.01）。 ま た 、 探 索 的 因 子 分 析 で 選 定 さ れ た 3 因 子 12 項 目 に 基 づ き 、 探 索 的 因 子 分 析 の 対 象 者 と 異 な る 女 性 勤 労 者 549名（ 平 均 年 齢 は 34.27歳 ）を 対 象 者 に 確 証 的 因 子 分 析 を 行 っ た 結 果 、 高 い 適 合 度 が 得 ら れ （GFI=.926、AGFI=.895、CFI=.927、RMSEA=.082）、

女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 は 信 頼 性 お よ び 妥 当 性 の 有 し た 尺 度 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。

第 5 章 女 性 勤 労 者 の 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 作 成 と 信 頼 性 、 妥 当 性 の 検 討 （ 研 究 2 ）

研 究 2 で は 、 女 性 が 経 験 す る 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー に 対 す る 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ を 測 定 す る 尺 度 を 作 成 し 、信 頼 性 ・ 妥 当 性 の 検 討 を 目 的 と し た （ 研 究 2 は 研 究 1 と 同 様 の 対 象 者 で あ っ た ）。 項 目 収 集 の た め 自 由 記 述 に よ る 調 査 を 行 っ た 結 果 238 件 が デ ー タ と し て 得 ら れ 、項 目 を 整 理・検 討 し 計 30 項 目 を 原 項 目 と し た 。30 項 目 を 用 い て 探 索 的 因 子 分 析 （ 主 因 子 法 、 プ ロ マ ッ ク ス 回 転 ） を 行 っ た 結 果 、「 第 1 因 子 ： 受 容 的 コ ー ピ ン グ ４ 項 目 、 α 係 数=.771」「 第 2 因 子：回 避 的 コ ー ピ ン グ ４ 項 目 、α 係 数=. 761」「 第 3 因 子 ： 主 張 的 コ ー ピ ン グ ４ 項 目 、 α 係 数=.696」3 因 子 12 項 目 が 抽 出 さ れ た 。 再 検 査 信 頼 性 係 数 は 、 受 容 的 コ ー ピ ン グ は ｒ=.601（p<.01）、 日 常 的 な 女 性 役 割 は ｒ=.604（p<.01）、 家 庭 で の 女 性 役 割 は ｒ=.618（p<.01）、 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 全 体 は ｒ=.608（p<. 01） と 正 の 有 意 な 相 関 が み ら れ た 。 妥 当 性 は Tri-axial Coping Scale 24（TAC-24）、 対 人 葛 藤 方 略 ス タ イ ル 尺 度

（Handling Interpersonal Conflict Inventory） と の 相 関 係 数 と 確 証 的 因 子 分 析 で 検 討 し た 。女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ と Tri-axial Coping Scale 24

（TAC-24）、 対 人 葛 藤 方 略 ス タ イ ル 尺 度 （Handling Interpersonal Conflict Inventory） に は 有 意 な 相 関 が み ら れ た 。 ま た 、 探 索 的 因 子 分 析 で 選 定 さ れ た 3 因 子 12 項 目 に 基 づ き 、 探 索 的 因 子 分 析 の 対 象 者 と 異 な る 対 象 者 に 確 証 的 因 子 分 析 行 っ た 結 果 、 高 い 適 合 度 が 得 ら れ （GFI=.949、AGFI=.907、 CFI=.903、RMSEA=.075）、 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 は 信 頼 性 お よ び 妥 当 性 の 有 し た 尺 度 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。

第 6 章 女 性 勤 労 者 の 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル の 検 証 （ 研 究 3 ）

研 究 ３ で は 、女 性 役 割 ス ト レ ス は 精 神 的 健 康 に ど の よ う に 影 響 し て い る の か 、ま た 、女 性 勤 労 者 は ど の よ う に 対 処 し て い る の か 、そ の 対 処 方 法 は 精 神 的 健 康 に ど の よ う に 影 響 し て い る の か を Lazar us・Folkman, 1984 本 明 ・ 春 木 ・ 織 田 訳, 1991 の 心 理 的 ス ト レ ス モ デ ル を 基 に し た 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル の 検 証 を 目 的 と し た 。 女 性 勤 労 者 1993 名 （ 平 均 年 齢 は 39.68.歳 ） を 対 象 者 に 検 討 を 行 っ た 。女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー を 潜 在 変 数 、女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ の 下 位 尺 度 に お け る「 受 容 的 コ ー ピ ン グ 、「 回 避 的 コ ー ピ ン グ 」、

「 主 張 的 コ ー ピ ン グ 」と ポ ジ テ ィ ブ お よ び ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 観 測 変 数 と し て 最 尤 法 に よ る 共 分 散 構 造 分 析 を 行 っ た 。ま た 、女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー の 下 位 尺 度 に お け る ｢ 職 場 で の 女 性 役 割 ｣「 日 常 的 な 女 性 役 割 」、「 家 庭 で の 女 性 役 割 」と ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 相 関 は み ら れ な か っ た た め 、 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー が 精 神 的 健 康 へ の 直 接 影 響 の 検 討 に は 、ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 の み で 検 討 さ れ た 。そ の 結 果 、最 尤 法 に よ る 共 分 散 構 造 分 析 の 結 果 、 モ デ ル の 適 合 度 は 、GFI=.998、AG FI=.993、CFI=.999、RMSEA=.017 を 示 し 、 モ デ ル の 適 合 度 は い ず れ も 良 好 で あ っ た 。

ま た 、女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー が 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ を 媒 介 し 、「 受 容 的 コ ー ピ ン グ 」 は ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に 有 意 な 負 の 影 響 を お よ ぼ し 、 さ ら に 、ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 正 の 影 響 を お よ ぼ し て い た 。「 回 避 的 コ ー ピ ン グ 」は ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 有 意 に 正 の 影 響 を お よ ぼ し 、「 主 張 的 な コ ー ピ ン グ 」は ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 正 の 影 響 を お よ ぼ す と と も に 、ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 も 有 意 な 正 の 影 響 を お よ ぼ し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。「 受 容 的 コ ー ピ ン グ 」 と 「 回 避 的 コ ー ピ ン グ 」 の 精 神 的 健 康 へ の 影 響 は 、こ れ ま で の ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 研 究 と 同 様 の 結 果 で あ っ た が 、「 主 張 的 コ ー ピ ン グ 」 に 関 し て は ネ ガ テ ィ ブ お よ び ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に 影 響 を お よ ぼ し て い た 。 こ の こ と は 、「 主 張 的 コ ー ピ ン グ 」 を 行 使 す る こ と で 生 じ る 無 効 性 と 有 効 性 が 関 連 し て い る と 考 え ら れ 、今 後 の 課 題 と さ れ た 。

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第 7 章 女 性 勤 労 者 の 属 性 か ら み た 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル の 検 討 （ 研 究 4 ） 研 究 ４ で は 、女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー お よ び 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ の 程 度 が 女 性 勤 労 者 の 年 齢 、婚 姻 状 況 、雇 用 形 態 、職 位 の 違 い に よ り 差 が み ら れ る の か を 明 ら か に す る こ と と 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ が 精 神 的 健 康 に お よ ぼ す 影 響 を 職 位 別 に 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。

女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー お よ び 女 性 役 割 コ ー ピ ン グ 行 使 に は 、女 性 勤 労 者 の 雇 用 形 態 の 違 い に よ り 差 が あ る こ と が 示 さ れ た 。そ の た め 、正 規 職 員 を 対 象 者 と し 職 位 、年 齢 、婚 姻 状 況 の 違 い に よ る 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー や 女 性 役 割 コ ー ピ ン グ 行 使 の 差 の 検 討 を 行 っ た 。そ の 結 果 、職 位 に よ る 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー お よ び 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 行 使 に 差 が あ る こ と が 明 ら か に さ れ た 。ま た 、女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー は 一 般 職 、管 理 職 と も に 婚 姻 状 況 に よ り 差 が み ら れ て い た 。 ま た 、 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 行 使 は 管 理 職 の 30 歳 代 は 20、40、50 歳 代 よ り 得 点 が 低 い こ と 、つ ま り 他 の 年 代 よ り も 女 性 役 割 ス ト レ ス へ の コ ー ピ ン グ を 行 使 し て い な い こ と が 明 ら か に さ れ た 。さ ら に 、 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ が 精 神 的 健 康 に お よ ぼ す 影 響 の 検 討 で は 、 特 に 、主 張 的 コ ー ピ ン グ は 一 般 職 に お い て ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 正 の 影 響 を お よ ぼ す が ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 影 響 は お よ ぼ し て い な か っ た 。一 方 、管 理 職 は ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 正 の 影 響 を お よ ぼ し て い た が 、ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 に は 有 意 な 影 響 は お よ ぼ し て お ら ず 、職 位 に よ り ポ ジ テ ィ ブ 、ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 へ の 影 響 は 異 な っ て い た 。こ れ ら の こ と か ら 、女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ へ の 介 入 に よ り 精 神 的 健 康 に 正 の 影 響 を 与 え る 効 果 を も た ら す 支 援 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 そ の 際 に 職 位 や 属 性 に 考 慮 し た 介 入 案 の 提 示 が 必 要 で あ る こ と が 本 結 果 か ら 読 み 取 る こ と が 出 来 、今 後 の 有 効 な 支 援 の 実 践 の た め の 貴 重 な 資 料 と い え る 。

女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー の 程 度 お よ び 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ の 行 使 の 程 度 に は 、女 性 勤 労 者 が 家 庭 で 担 う 役 割 の 数 や そ の 役 割 の 負 担 感 が 影 響 す る と 考 え 、18 歳 以 下 の 末 子 の 年 齢 、 配 偶 者 の 有 無 、 職 位 に よ る 得 点 の 差 の 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、18 歳 以 下 の 末 子 の 年 齢 、 配 偶 者 の 有 無 、 職 位 は 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー の 程 度 お よ び 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ の 行 使 の 程 度 に 影 響 し て い な い 事 が 明 ら か に さ れ た 。女 性 勤 労 者 が 家 庭 で 担 う 役 割 の 数 や そ の 役 割 の 負 担 感 が 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー の 程 度 に 影 響 し て い な か っ た こ と は 、役 割 負 担 感 だ け で な く 女 性 勤 労 者 へ の サ ポ ー ト が 大 き く 影 響 し て い る こ と も 考 え ら れ 、 こ の 点 に つ い て 今 後 の 課 題 が 残 さ れ た 。

第 8 章 総 合 考 察

本 研 究 は 、女 性 勤 労 者 が 就 労 す る こ と で 生 じ る ス ト レ ス を 職 場 、家 庭 、日 常 生 活 に お い て 経 験 す る「 女 性 ゆ え の ネ ガ テ ィ ブ な 経 験 」に 焦 点 を あ て 、女 性 勤 労 者 が 健 康 に 就 労 す る た め の 対 処 方 法 に つ い て 検 討 し た 。

研 究 １ で 作 成 さ れ た 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 の 項 目 は 、変 化 し つ つ あ る 性 役 割 意 識 で は あ る が い ま だ に 根 強 く あ る こ と か ら 、家 庭 生 活 で は 男 性 と の 性 役 割 意 識 へ の 認 識 の 差 や 職 場 に お い て は 男 女 の 地 位 の 不 平 等 感 が 背 景 に あ り 構 成 さ れ た と 考 え ら れ る 。女 性 勤 労 者 が 経 験 す る 性 役 割 意 識 が も と に な っ て い る 女 性 役 割 ス ト レ ス を 軽 減 す る に は 、男 女 平 等 な 社 会 の 実 現 が 必 要 で あ る 。男 女 平 等 な 社 会 の 実 現 に は 法 制 度 の 整 備 と と も に 、女 性 勤 労 者 を 取 り 巻 く 社 会 や 個 人 の 性 役 割 意 識 、家 事 ・ 育 児 ・ 介 護 等 の 家 庭 内 役 割 は 本 来 男 女 共 に 担 う べ き も の と い う 意 識 の 積 極 的 な 啓 発 を 継 続 す る こ と が 望 ま れ て い る （ 彭 ・ 佐 藤 ・ 福 渡, 2001）。 ま た 、 「 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 」 の 程 度 は 雇 用 形 態 、職 位 よ り 差 が み ら れ て い た こ と か ら 、立 場 の 違 い を 踏 ま え た 対 策 を 考 慮 す る こ と も 必 要 で あ る 。さ ら に 、過 重 労 働 や 待 遇 に 恵 ま れ な い 女 性 勤 労 者 に つ い て の 対 策 を 今 後 、検 討 す る こ と が 重 要 で あ る（ 井 上・矢 野 ,2010）。

こ れ ら の 視 点 か ら の 知 見 は 、女 性 勤 労 者 の 精 神 的 な 健 康 に と ど ま ら ず 、企 業 側 の 働 く 女 性 に 対 す る 理 解 を 深 め る こ と に も つ な が り 、そ れ に 基 づ い た 施 策 を 講 じ る こ と も 可 能 に な る と 考 え ら れ る 。

一 方 、女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー に 女 性 勤 労 者 自 身 が 取 り 組 む 対 処 方 法 に 、心 理 的 ス ト レ ス 反 応 の 低 減 ・ 緩 和 要 因 と し て 、特 に 重 要 と さ れ て い る コ ー ピ ン グ （ 小 杉,1998： 小 杉 他,2004； 田 中,2009）、 つ ま り 、 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ を 柔 軟 に 活 用 で き る よ う な ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 能 力 が 向 上 さ ら れ る よ う な ス ト レ ス コ ー ピ ン グ へ の 介 入 が 必 要 と 考 え ら れ た 。そ こ で 、本 研 究 で は 、女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 を 作 成 し 、ス ト レ ス コ ー ピ ン グ の 個 人 へ の ア プ ロ ー チ の 可 能 性 を 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル の 検 証 か ら 検 討 し た 。そ の 結 果 、受 容 的 コ ー ピ ン グ を 行 使 す る こ と で ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 促 進 し 、ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 低 減 す る 。回 避 的 コ ー ピ ン グ を 行 使 す る こ と で 、ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 促 進 す る 。主 張 的 コ ー ピ ン グ を 行 使 す る こ と で 、ポ ジ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 促 進 す る と と も に ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 を 促 進 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。今 後 は 、本 研 究 で 示 唆 さ れ た 女 性 役 割 コ ー ピ ン グ の 精 神 的 健 康 へ の 影 響 か ら 考 え ら れ る 、女 性 役 割 コ ー ピ ン グ の 行 使 へ の 方 略 の 有 用 性 や 女 性 役 割 コ ー ピ ン グ が 精 神 的 健 康 に 影 響 を お よ ぼ す 要 因 を 縦 断 的 な 調 査 に よ り 検 討 す る 必 要 が あ る 。こ れ ら の 知 見 を 検 討 す る こ と で 、 女 性 勤 労 者 の 女 性 役 割 ス ト レ ス の み な ら ず 、女 性 の 精 神 的 な 健 康 へ の 支 援 介 入 プ ロ グ ラ ム の 提 案 ・ 実 施 が 望 ま れ る 。

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ま た 、本 研 究 で 作 成 さ れ た 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 は 、男 性 と い っ た 特 定 の 人 で は な く 、女 性 勤 労 者 の 周 囲 の 人 と の 対 人 関 係 か ら の ス ト レ ッ サ ー で あ る 。 職 場 で は 女 性 同 士 、 家 庭 で は 母 娘 間 、 嫁 姑 間 で の 「 女 性 ら し さ 」 の 有 り よ う に 始 ま り 、子 育 て ・ 子 の 教 育 ・ 仕 事 に 対 す る 態 度 の と り 方 な ど 広 範 囲 に 、 同 世 代 、 世 代 間 の ギ ャ ッ プ に よ る き し み が 認 め ら れ 、 ま た 、 そ の 個 人 差 は 大 き い （ 加 茂, 2004） 。 こ の よ う な 女 性 間 の 状 況 が 背 景 に あ り 、 本 研 究 で 作 成 さ れ た 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ に は 、他 者 に 依 存 す る 、他 者 に サ ポ ー ト を 求 め る と い っ た 内 容 が 女 性 役 割 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 の 項 目 に 抽 出 さ れ な か っ た と 考 え ら れ る 。

し か し 、こ れ ま で の 職 業 性 ス ト レ ス 研 究 に お い て ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト が コ ー ピ ン グ 資 源 と 機 能 し 、 コ ー ピ ン グ 方 略 の 選 定 、 コ ー ピ ン グ 努 力 の 維 持 、 コ ー ピ ン グ 方 略 の 効 果 に 影 響 を お よ ぼ し て い る と 考 え ら れ て い る 。ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト が 豊 富 な 人 ほ ど 、問 題 焦 点 型 、積 極 的 な コ ー ピ ン グ 方 略 を 選 定 す る こ と が 報 告 さ れ て い る （Schreurs ・ Ridder, 1997；Specter, 2002）。

女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル に お い て も ソ ー シ ャ ル・サ ポ ー ト が 心 理 的 ス ト レ ス に な ん ら か の 影 響 が 示 さ れ る こ と が 推 測 さ れ 、今 後 、ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト と い う 視 点 か ら も 検 討 す る こ と は 、個 人 へ の メ ン タ ル ヘ ル ス 介 入 プ ロ グ ラ ム 提 案 の 可 能 性 が 広 が る と 考 え ら れ る 。

本 研 究 で は 、女 性 勤 労 者 の 精 神 的 な 健 康 状 態 を 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル に よ っ て 捉 え 、周 囲 か ら 女 性 役 割 を 期 待 さ れ る こ と に 起 因 す る 女 性 役 割 ス ト レ ッ サ ー と そ れ ら へ の コ ー ピ ン グ と の 相 互 作 用 の 結 果 と し て 、ネ ガ テ ィ ブ な 精 神 的 健 康 状 態 が 生 起 す る と 考 え 、 女 性 役 割 ス ト レ ス モ デ ル の 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、女 性 役 割 ス ト レ ス 低 減 へ の 介 入 プ ロ グ ラ ム の 基 礎 資 料 と し て 用 い る こ と が 出 来 る 可 能 性 が 得 ら れ 、 意 義 あ る も の と い え る 。

今 後 は 、女 性 勤 労 者 の 雇 用 形 態 お よ び 職 位 、女 性 と 男 性 の 健 康 課 題 か ら み た 性 差 を 考 慮 し た メ ン タ ル ヘ ル ス へ の 支 援 プ ロ グ ラ ム を 提 案・実 施 す る こ と で 女 性 勤 労 者 に 対 す る メ ン タ ル ヘ ル ス の 健 康 管 理 が 期 待 さ れ る 。

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