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化学と生物 Vol. 51, No. 2, 2013

巻頭言

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牛乳の価値追求 ― 牛乳に魅せられて ―

桑田 有

人間総合科学大学

6年間酪農科学を学んだ後,乳業企業の 研究開発部門で,牛乳成分の分離,分離成 分を組み合わせて母乳代替ミルク,病態栄 養食品,機能性食品素材の製品開発と栄養 生理機能評価の研究に40年余り取り組ん できた.その後縁あり管理栄養士養成の大 学に奉職して5年目を迎えている.小学校 2年のときに給食で脱脂乳から牛乳に代わ り,生まれて初めて牛乳なる食べものと出 会った.当時はまだ牛乳は高価であったた め給食以外では飲用する機会がなかった.

特に誰から働きかけられたわけではなかっ たが,大学での専攻として牛乳に関する勉 強をしてみようと考えたのは幼少期の飲用 体験が引き金かもしれない.

牛乳はほかの生物材料より取り扱いが容 易で,欧米での長年の研究成果が集積され ており,農学以外で生体高分子を扱う理 学,薬学,医学の領域からの最先端の研究 手法を駆使した論文を目のあたりにし,大 いに学ぶ刺激を受けたことを記憶してい る.企業での研究では,牛乳を原料に,い かにしてヒトの母乳に近似させて人工乳を 作出するかの命題に取り組んだ.脂肪,糖 質部分も研究対象ではあるが,ミルクを構 成しているタンパク質組成,アミノ酸のパ ターンを近似させることが目標とされてき た.牛乳と母乳は似て非なるもので,新生 児に普通の牛乳を投与すると,相当な頻度 で新生児ではアレルギー症状を呈する.昨 今の人工乳では抗原性を低下させているの で,アレルギー症状を呈する頻度は減少し ている.

乳とりわけ初乳は生理活性成分のカクテ ルと称されるように無数の生理活性ペプチ ド,ホルモン類が多種類含まれている.こ

の種の低分子成分のパターンを母乳に似せ るのは,産業的な技術水準からして不可能 に近い.母乳がヒトの乳幼児にとってはい わば究極の機能性食品であり,単に栄養価 が適切であるばかりでなく乳幼児の各種臓 器の成熟化を促進する役割も有している.

今日まで,無数の栄養生理な有用性の実証 データが集積され,各種病態食品の素材と して牛乳成分が活用されてきている.日本 人の栄養摂取状況からすると,目標摂取量 を下回るカルシウムの手ごろに入手できる 適切な食品としてさらに消費拡大が望まし いと考えるが,牛乳は数ある飲料の1種類 の位置づけにとどまる風潮は困ったもので ある.その一方で,牛乳に関する科学的根 拠の疑わしい内容の出版物がベストセラー になり,一般の国民に限らず一部の専門家 まで影響を受け牛乳の消費が停滞した.そ のような状況以前から筆者は日本酪農乳業 協会の牛乳栄養委員会で普及啓発の仕事に 参画してきていた.アンチミルクへの対応 を強化するために新たに牛乳乳製品健康科 学会議を創設し,ヒトで実証されたエビデ ンスの整理,システマチックレビューを実 施した.それらの成果物を食品,栄養学,

医学の専門家向けに配布するとともに,日 本酪農科学会を主催に各種の関連学会の協 力を得ながら「牛乳市民講座」を2006年 から4年間日本各地で実施し普及啓発に努 めた.その後も国民に強い影響をもつイン フルエンサーに向けて集中セミナーを継続 している.学会,産業界挙げての普及啓発 活動は必須であるが,また一方で食品,栄 養に関連した巷のあふれる情報に左右され ないサイエンスリテラシーを広く国民にも たせることがさらに大切だと思う.

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