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放線菌の化学と生物学 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 56, No. 11, 2018

放線菌の化学と生物学

木梨陽康

広島大学名誉教授

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

巻頭言 Top Column

Top Column

8年前に広島大学を定年退職した後,1 年間は非常勤講師として研究室に残り,そ の後4年間ほど博士課程留学生の実験の進 展を大学の図書館でみてきたが,今は研 究から全く離れている.それゆえ,最先 端の研究を語る能力はないが自身の経験 を記し,それが少しでも若い人たちの参考 になれば幸いである.

私は東大応微研(分生研)

,理研,三菱生

命研を通じて放線菌(理研では米ぬか)の 生産する生理活性物質のスクリーニング,

単離精製,構造決定に携わってきた.その 結果,サリノマイシン,オーキシン(IAA)

の酸化産物,コンカナマイシンなどの化学構 造を明らかにした.コンカナマイシンの18 員マクロライド構造を発表した後,この分野 の権威である大村 智先生にセミナーの講師 をお願いした.セミナー後の懇親会でいろい ろとお話したが.特に印象に残ったのは,先 生が北里研究所と北里大学にわたって学部 学生を含めると総勢100人近くのグループを 率いていることだった

「補佐員と2人でス クリーニングをしていてはとてもかなわな い.生命研にいるメリットを何とか生かせな いか.」と考えるようになった.そしてウィ スコンシン大学への遅い留学を機に放線菌 の分子生物学へと方向転換した.

抗生物質生産にプラスミドが関与してい るという説が古くから唱えられていたが,

それが物理的に証明された例はなかった.

その代表例がメチレノマイシン生産にかか わるプラスミドSCP1であった.米国から 帰国後,パルスフィールド電気泳動を用い てSCP1が350 kbの巨大線状プラスミドで あることを明らかにしたが,同じ研究室の 酵母グループが当時最先端のこの装置を 使っていたことが幸いした.この発見が

「放線菌は原核生物であるにもかかわらず 線状染色体をもつ.」というCarton Chen

らの発見につながった.広島大に移ってか らは,放線菌の線状染色体が両末端の欠失 結合によって環状化すること,線状プラス ミドpSLA2-Lの大半が二次代謝遺伝子クラ スターに占められていることなどを明らか にした.これらの結果から,細菌型環状染 色体と線状プラスミドの組み換えによって 放線菌型線状染色体が生まれ,線状プラス ミドと線状染色体の組み換えによって二次 代謝生産能が染色体末端に移ることが示唆 された.このような成果を上げることがで きたのは,これまでに在籍した研究室にお いて放線菌を対象として研究を続けてきた おかげである.

テニスが好きな人はわかるだろうが,切 れのあるテニスをするフェデラーもねばり 強くボールをつなぐナダルもともに立派な チャンピオンである.研究においても同じ ように最先端の課題に鋭く切り込んでいく 人がいれば,流行を追わず地道に自分の研 究を続ける人もいる.さまざまな研究スタ イルがあっていいし,それらが全体として 健全な研究の発展に貢献している.化学的 基盤に基づいた生命現象の解明や地道な物 取りは農芸化学の伝統である.長期間にわ たる努力の継続なしに大村先生のノーベル 賞受賞はなかったろう.

大学教員の半数以上が非常勤であるとい う新聞報道があった.大型プロジェクトに 研究予算が集中し恒常的な研究費が激減し ている現在,流行を追わない研究を続ける ことはますます困難になっている.しか し,それなしに真に新しい発見を生むこと はできない.わが国の研究環境が改善され ることを願うとともに,常に時代を切り開 いてきた若い研究者の力に期待したい.

Copyright © 2018 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.56.707

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プロフィール

木梨 陽康(Haruyasu KINASHI)

<略歴>1969年東京大学農学部農芸化学 科卒業/1974年同大学農学研究科博士課 程修了(農博),理化学研究所特別研究 員/1976年三菱化成生命科学研究所研究 員/この間,1984〜1986年ウィスコンシ ン大学薬学部客員研究員/1990年広島大 学工学部醗酵工学講座助教授/1997年同 大学工学研究科教授/1998年同大学先端 物質科学研究科教授/2010年同大学名誉 教授<研究テーマと抱負>放線菌の線状染 色体・プラスミドの構造・機能および進化 に関する研究<趣味>囲碁,山歩き,テニ ス,庭いじり

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

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