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巻頭言 Top Column - J-Stage

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化学と生物 Vol. 57, No. 3, 2019

ビーフ・ステーキを食べなくなる日

室岡義勝

大阪大学名誉教授

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

巻頭言 Top Column

Top Column

「鯨でも 牛肉と思って食べなさい 夕 餉に母は寂しく笑う」

.同級生が中学のと

き作った句である.近年,クジラやイルカ の捕獲に対して欧米や豪州,ニュージーラ ンドなどの保護団体からの反対圧力が強く なっている.ほかの動物に比べて知能が高 いのが理由の一つらしい.一方で,これら の捕獲現場の殺戮場面がテレビの映像など で流され,視聴者の「むごい」という感情 伝播がそれに拍車をかけている.鯨を魚と して食べてきた日本人としては,「ならば,

牛や豚ましては神聖な鹿まで殺して食べる のはよいのか?」と反論したくなる.

子どもたちが家畜の屠殺現場を見学した り,SNSで流したりしたら,屠殺反対運 動が起こるに違いない.一方で,幾度も屠 殺中継を目にしていれば,次第に慣れてい くのだろうか.子どもの頃,親戚が集まる 祭りには,家で鶏を絞めていた.首を切ら れた鶏は,庭を走り回ってやがて倒れる.

何ともむごい風景であった.その夜の鍋の 鶏皮には産毛が残っていて,食べるのを躊 躇した.その後こうした風景を忘れていた が,数年前パキスタン北部のパミール高原 を訪れたとき,案内人が連れ歩いたヤギを 殺す現場を見た.イスラムのお祈りをし て,ヤギの喉元を切り,血抜きをした後,

皮を剥ぎ,膀胱を傷つけないで内臓を取り 出す.その日の夕食は到底食べられないと 思ったが,新鮮な肝がめっぽう美味しかっ たのである.私は無慈悲な人間なのだろう か.

さて,私より慈悲深く動物と憐れみを共 有する人々が大半を占める世の中がきたと して,動物を食べないで,植物のみの食生 活が成り立つだろうか.元からベジタリア ンでない人々は,そのうちあのビーフ・ス テーキやカツ丼を恋い焦がれないだろう か.そのときは,動物肉と同じものを植物 材料や微生物から作ればよい.すでに私た ちは1960〜70年代にそれを経験した.酵

母で石油タンパク質を作ったのである.大 学院生のとき,二国二郎教授が石油タンパ ク質を研究室にもってこられ,カレーに加 えて食した.食感も柔らかい牛肉と変わら なく美味しかった.この石油タンパク質 は,シングルセルプロテインと名前を変え たが,消費者に受け入れられずに消えた.

それから50年,今の科学技術をもってす れば,動物肉と栄養的にも食感でも遜色の ない植物肉ができるだろう.

そのときこそ,農芸化学の知と技術の見 せ所である.ゲノム編集技術とAIを駆使 して,不毛地帯で育つ穀物を開発する.乾 燥にも,冷害にも,酷暑にも,害虫にも強 い植物である.この穀物は,必須脂肪酸や アミノ酸,ビタミンも含んでいる.食品加 工,食品科学,栄養科学,調理科学は農芸 化学の得意とするところだ.植物材料から 動物類似品,いやそれを上回る健康食材を 作ることは,お手の物である.あるいは,

iPS細胞工学により動物肉組織を工業生産 してもよい.

これで,技術面は克服できた.問題は,

畜産業が廃頽する.人間が殺戮を止めると 野生動物が増える.魚も動物だけど食べて よいか.卵やミルクはどうする.いや,植 物にも生命がある.こうした問題の解決 は,ニューベジタリアンにおまかせしよ う.

ところで,本当にそんな時代がやってく るだろうか.ヒトは,肉食というDNAを 抑制できなくて,数百年・数千年後も兄弟 の動物を殺して食べ続けるのだろうか.そ れとも,『知恵をもったヒト』であるホ モ・サピエンスは,その英知を進化させて ベジタリアンの道を歩むのであろうか.あ るいは,愚かな過ちで核によって滅びてし まうのだろうか.

Copyright © 2019 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.57.137

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プロフィール

室岡 義勝(Yoshikatsu MUROOKA)

<略歴>1964年広島大学工学部醗酵工学 科卒業/1966年大阪大学大学院工学研究 科醗酵工学専攻修士修了/1967年同大学 産業科学研究所助手,米国NIH客員研究 員/1981年 広 島 大 学 工 学 部 第 三 類 助 教 授/1988年同大学教授/1995年大阪大学 大学院工学研究科応用生物工学専攻教授/

1999年同大学生物工学国際交流センター 長/2002年同大学情報科学研究科バイオ 情報専攻教授/2004年同大学北米拠点所 長,大阪大学名誉教授/2007年広島工業 大学教授/2014年同大学退職,現在に至 る<研究テーマと抱負>生物共生工学,伝 統発酵食品の科学<趣味>絵画,山岳ト レッキング

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

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