• Tidak ada hasil yang ditemukan

建築解体廃棄物の適正処理の可能性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2024

Membagikan "建築解体廃棄物の適正処理の可能性"

Copied!
19
0
0

Teks penuh

(1)

建設廃棄物について

−建築解体廃棄物の適正処理の可能性−

建設廃棄物パート

竹内収

藤田真吾

青山春人

芹川慎哉

(2)

Ⅰ  産業廃棄物における建築廃棄物の位置付け

  産業廃棄物に占める建設廃棄物の割合は、非常に大きい。また、建設廃棄物のリサイク ル率は、全産業の平均に比べても低いことが分かっている。資源の有効利用、循環型社会 の形成に向けて、この現状を何とか打開しなくてはならない。そのためには、建築系廃棄 物、特に建築解体廃棄物での発生抑制、そしてリサイクルの促進が今最も求められている。

1.建設産業からの廃棄物

建設産業の資源利用量は、全産業の24億tに対して11億tと約46%を記録しており1、 非常に多い。そのため、当然のことながら建設産業からの廃棄物排出量も多く、下図の通 り平成 5 年度には全産業廃棄物排出量の約2割を占めるまでになっている。平成2年から 平成7年にかけては、建設産業からの廃棄物排出量が約30%増加したと言われている2図表Ⅰ−1  建設産業からの廃棄物(平成5年)

全産業 建設産業 割合

排出量 4億t 0.82億t 21%

リサイクル量 3.1億t 0.45億t 15%

リサイクル率 77.5% 54.8%

最終処分量 0.84億t 0.37億t 44%

不法投棄量 39万t 34万t 87%

出所:『解体・リサイクル制度研究会報告』  1998  p.5

ここでとりわけ注目すべきところは、廃棄物排出量に占めるリサイクル量の割合である。

全産業ではリサイクル率が3、77.5%なのに対し、建設産業では54.8%と低く、最終処分に まわる量が多くなっていることがわかる(全産業廃棄物の約4割)。平成2年度の建設廃棄 物のリサイクル率である 42%に比べると、後述する公共土木工事でのリサイクル率の向上 から確かに改善はされているが、まだまだ低水準であることには変わりない。また、建設 産業からの不法投棄の量も特筆すべき点である。全産業からの不法投棄量は39万tで、そ のうち建設産業からの量は34万tを占めている。実に9割近くもの不法投棄が建設産業か らのものなのである。

1  平成5年度の数値  『解体・リサイクル制度研究会報告』 1998 p.5 

2  『平成7年度建設副産物実態調査』 1997  建設省 p.3 

3  排出された建設廃棄物のうち、再利用、減量化されたものの割合、以下同様 

(3)

近年最終処分場が逼迫しており、しかもその新設が住民の反対から困難になっている状 況の中、建設産業の持つ低いリサイクル率、そして不法投棄の量は、大きな問題であろう。

殊にリサイクル率については、建設産業からの廃棄物の絶対量が多いことを鑑みると、少 しでも高める必要がある。

この論文では、循環型社会の形成に向けて、ここでの取り組みが、今後の廃棄物問題の 行方を占う上で極めて重要だということを念頭におきながら、建設廃棄物の問題への有効 な対策案を提言していきたい。

2.建設廃棄物とは

  先ず、建設廃棄物についての定義をはっきりさせておく。建設廃棄物と一言で言っても、

実は注意が必要である。というのも、建設工事に伴い副次的に得られる物品の中には、廃 棄物以外に再生資源が存在するからである。そのまま原料となるここでの再生資源は、建 設廃棄物には含まれず、あくまで再生資源として扱われる。具体的には建設発生土、金属 くずである。一方、そのまま原材料とはならないが、原材料として利用の可能性があるも のは、廃棄物と同時に再生資源として扱われる。具体的にはアスファルト・コンクリート 塊、コンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、そして建設混合廃棄物である。これら以 外は、原材料として利用が不可能なものであり、完全に廃棄物として位置付けられる。主 に有害・危険な廃棄物がこれに当たる。ここで述べた、3種類の物品を総称して建設副産 物と呼ぶ。ベン図で示すと以下のようになる。

図表Ⅰ−2  建設副産物の内訳 

前節で言及した建設廃棄物(建設産業からの廃棄物)とは、上図の原材料として利用の 可能性があるもの、そして原材料として利用が不可能なものを合わせて指している。つま り、建設副産物のうち、そのまま原材料となる建設発生土、金属くずを除いたものが建設 廃棄物となるのである。量としては、建設廃棄物が9900万t(平成7年)に対して、その

建設副産物

廃棄物 再生資源

原材料として利用が 不可能なもの

(有害・危険なもの)

原材料として利用の 可能性があるもの

(コンクリート塊、

建設混合廃棄物等)

そのまま原材料 となるもの

(建設発生土 金属くず)

(4)

まま原料となる建設発生土が4億4600万t(平成7年)となっている4

3 .土木系建設廃棄物と建設系建設廃棄物

  さて、建設廃棄物の定義がはっきりしたところで、建設廃棄物の詳細について見ていき たい。建設廃棄物は大分して、土木系廃棄物と建築系廃棄物に分けられる。土木系廃棄物 とは主に公共土木によって出てくる廃棄物で、建築系廃棄物とは解体、新築・改築の際に 発生する廃棄物である。それぞれの排出量は図 表 Ⅰ − 3の通りで、全建設廃棄物の対する シェア−は62%、38%である。

図表Ⅰ−3  品目別の排出量とリサイクル率(平成7年)

土木系建設廃棄物 建築系建設廃棄物 排出量

(万 t)

リサイクル率

(%)

排出量

(万 t)

リサイクル率

(%)

建設廃棄物 6160 68 3760 42

アスファルト・コンクリート塊 3450 82 120 62 コンクリート塊 1780 69 1860 60

建設混合廃棄物 160 8 790 11

建設発生木材 60 69 570 37

建設汚泥 700 14 270 14

出所:『解体・リサイクル制度研究会報告』  1998  p.6

一見すると、土木系建設廃棄物の量の方が建築系建設廃棄物より多く、より土木系建設 廃棄物での取り組みが重要に思われるかもしれない。しかし、リサイクル率に着目すると、

論点はまったくその逆であることが分かる。土木系建設廃棄物のリサイクル率は、総量で

68%と、建築系建設廃棄物での同数値である42%を大幅に上回っている。品目別に見ても、

土木系建設廃棄物のリサイクル率は、そのほとんどで建築系建設廃棄物を上回っており、

土木系建設廃棄物のリサイクルは比較的進んでいると評価できる。特に土木工事から排出 されるアスファルト・コンクリート塊のリサイクル率は高く、建築工事から排出される建 設混合廃棄物、建設発生木材のリサイクル率の低さとは対照的である。

  この差が生じる最大の理由は、土木工事が主に公共工事のためである5。公共工事の発注 者である国は、自ら技術面で先導的な役割を果たし、またリサイクル、適正処理を行うよ うに元請の建設業者に直接指示をしてきたことにより、リサイクル、適正処理に向けての 誘導を進めている。これに対して、建築工事のほとんどは民間工事のため、上記のような

4  『平成7年度建設副産物実態調査』 1997  建設省 p.4 

5  『解体・リサイクル制度研究会報告』  1998  p.7 

(5)

取り組みがされにくく、コストを重視して皆行動してしまう。その結果、適正な最終処分 よりも安く処分する形で、不適正処理が行われてしまい、低いリサイクル率という結果を 招いている。現に、建築工事のリサイクル率が平成2年の45%から平成7年の42%、と減 少しているのに対して、公共土木工事では同39%から69%へと向上している6

  リサイクル率の低い建築系建設廃棄物だが、その中でも建築解体廃棄物は特に対策を必 要としている。というのも、建築系建設廃棄物に占める建築解体廃棄物の割合は約6割と 高く、また、不法投棄に占める木くず(ほとんどが建築解体廃棄物と言われている)の割

合も42%と高いためである。建築物を解体した場合、分別解体したときは基本的に木くず

を含め、コンクリート塊等はリサイクルされているが、分別されないとき、それらは建設 混合廃棄物となって最終処分される。場合によっては、不法投棄に占める木くずの割合が 示唆するように、建設混合廃棄物は不法投棄されることもある。

  以上のことから、建設産業からの廃棄物対策として、建築系廃棄物、その中でも特に建 築解体廃棄物での発生抑制、ならびにリサイクルの促進が必要なのである。

6  『平成7年度建設副産物実態調査』 1997  建設省 p.3 

(6)

Ⅱ  建築解体廃棄物排出量の見通し

  下図(図表Ⅱ−1)の関東1都8県の建築物着工延べ床面積の推移を見ると、1965年以 降床面積が急激に増加していることがわかる。特に非木造の増加が顕著である。日本は建 築物の存続期間が他国と比べて短く、木造で約40年、非木造で30〜40年と言われており、

これらの建築物が更新期を迎える2000年以降、建築解体廃棄物の排出量もそれに伴って増 加し、2010年には1995年の4倍に達すると見られている。(図表Ⅱ−2)

(7)

Ⅲ  建築解体廃棄物のリサイクル促進

1.建築物の解体時の問題

  建築解体廃棄物が今後重要な問題となってくることがはっきりしたところで、具体的な 対策を考えてみたい。まず、建築解体廃棄物のリサイクル促進にあたっての課題としては、

大きく分けて3つあることを述べておく。それは次のようなものである。

(1)建築物の新設時の問題(設計・建築段階での長寿命化、解体容易性等)

(2)建築物の解体時の問題(適正なコスト、解体工事のチェック等)

(3)再資源化時・リサイクル市場の問題(施設拡充、再生品の品質基準・需要等)

今回は、この中でも(2)建築物の解体時の課題について論を展開していきたい。なぜ ならば、解体時の問題が現在最も差し迫った問題であり、実際に建設省でつくられている 建設リサイクル法の中核をなす内容であるからである。(2)の問題の解決が、(1)や(3)

の問題の解決に結びつく性格のものであるともいえる。また、(1)や(3)に比べて技術 的な部分が少なく、法的・経済的な面からのアプローチが比較的容易であると判断したこ とも理由の一つとして付け加えておく。

2.分別解体か混合解体か

解体時の問題とは、リサイクルの比較的容易な分別解体という手法ではなく、混合解体 という手法がとられやすいという問題である。循環型社会の構築に向けて分別解体を進め、

混合解体をなくしていくことが重要である。混合解体は、不法投棄にも通じる。建築解体 廃棄物がこれから増加していくものであることを考えれば、分別解体を進めることは不法 投棄問題に対する一策となりうる。

  現在、最終処分場の逼迫により最終処分コストはかなり高くつくものとなっている。そ れにより、分別解体と混合解体を比べた場合、最終処分場に持ち込まれる量の少ない分別 解体の方が安く上がるのは当然である。次ページの1998年の解体・リサイクル制度研 究会報告の表を見てもらいたい。

(8)

図表Ⅲ−1  解体方法、処理方法別木造建築物のリサイクル率とコスト(3 0 坪あたり)

単位:万円 分別機械解体 分別手解体 ミンチ機械解体 混廃  ⇒ 

選別・破砕

混廃  ⇒ 

埋立処分 混廃なし 混廃  ⇒  選別・破砕

混廃  ⇒  埋立処分 リサイクル率 74% 73% 75% 50% 0%

①解体工事費 74万円 74万円 88万円 61万円 61万円

②収集運搬費 25 25 21 27 27 小計(①+②) 99 99 109 87 87

③処分費用 26 42 22 45 103

④諸経費 12 14 13 13 19

⑤合計 137

(1.00)

154

(1.13)

144

(1.05)

146

(1.06)

209

(1.54)

出所:『解体・リサイクル制度研究会報告』  1998  p.14

*四捨五入の関係で合計が合わない場合もある

*括弧内は、分別機械解体により混廃⇒選別・破砕としたときのコストを 1.00 としたときの値

解体工事にかかる総費用は、適正処理を前提とすれば分別解体を行ったほうが混合解体 の場合よりも低価格になる。これはさっきも述べた通りである。ところが、解体工事費と 収集運搬費の小計で比べてみると、逆に混合解体のほうが分別解体よりも安くつくことに なる。つまり、不法投棄などの不適正処理により処分費用を浮かせた場合(収集運搬以降 の処分を不適切に行えば)、これと混合解体を組み合わせた方法が、最も低価格な手段とな る。この結果、混合解体→混合廃棄物の発生→不法投棄などの不適正処理という構図が生 まれるわけである。しかも、当然この構図は分別解体を行う優良な業者よりも低価格に抑 えられるため、悪質業者のほうが市場で勝ち残り、優良業者が淘汰されていってしまう。

慶應義塾大学の細田衛士教授の言うところの、「逆選択」という現象である。

3.「逆選択」を起こすメカニズム

  では、分別解体が進まず、混合解体がほとんどであるというこの構図をもたらした根本 的な原因は何なのだろうか。それは、次の2点に集約される。

①  解体工事に対して適正な費用が支払われていないこと。現状では発注者・受注者(元請 け)ともに適正な解体工事コストを支払うことに対する認識は低く、むしろいかに低く 抑えるかという方向で考えている。解体工事は、新築工事の際のサービスの一環として とらえられてさえいる。さらに、排出事業者である元請けは、法律で禁止されているに も関わらず、解体業者に対して解体工事と廃棄物処理を一括で請け負わせるという、一 括請負(いわゆるまる投げ)で解体業者と契約し、解体工事コストと廃棄物処理コスト

(9)

を内訳が不明確なまま一括で解体業者に支払っている形が多い。

②  解体工事および解体工事業者をチェックするシステムが存在しないこと。建設業を営む 者が請負工事額500万円以上の解体工事を行う場合、とび、土工工事業の許可が必要 になる。また、建設業法に基づき、工事現場へ技術者を配置するなどの適切な施行が求 められている。しかしながら、通常の解体工事で500万円以上の規模のものは稀であ り、建設業の許可を有しない解体工事業者が工事を行うことが多い。このため、行政等 が解体工事の内容や解体工事を行う業者のチェックをできない状態にあり、一部では解 体工事業者により、廃棄物の不適正処理も行われている。

つまり、この2つの問題の解決が必要になってくるわけである。特に①の問題が重要で ある。循環型社会が叫ばれる中で、行政・企業・消費者の役割分担が必要になってくるわ けだが、この建築解体廃棄物の問題については、いかに消費者である発注者が分別解体を 意識し、そのための適正なコストを支払うかがかぎとなる。そこで、発注者によるコスト 負担というものをどのようにして引き出すかを重点的に論じ、補足的に①の残りの問題と

②の問題にも触れていくという形にしたい。

4.発注者による適正なコスト負担について

  発注者が適正なコストを負担するためにはどうしたらよいだろうか。効果的であると考 えられるのは、発注者に対してインセンティブを与えることである。つまり、分別解体を 行い、そのためのコストを負担した発注者に対して何らかの形で税の軽減を図るか、また は分別解体を行わず混合解体を選択した発注者に対して課徴金を課すのである。

  しかしながらこれには条件が必要となってくる。発注者に対してインセンティブを付与 する立場である行政が、発注者の選択および負担コストを知っていなければならないとい う条件である。現状では、それを行政が確認する手段は無い。しかし、可能性は存在する。

その可能性とは、建築基準法により定められている建築工事届の利用であり、横浜国立大 学の北村喜宣助教授も廃棄物対策に利用すべきだと考えているものである。建築基準法1 5条により、建築工事を行うためには発注者からの知事への届出が必要とされている。こ れが、建築工事届である。床面積10㎡を超える建築物を除去する場合には、建築主(発注 者)は所定事項をこの届出の中に記載しなければならないことになっている。これを通じて、

行政はどこで解体工事が行われるのかを事前に把握することができるから、工事に伴って 発生する廃棄物の処理が適正に行われるように指導することが可能である。しかし、届出 書様式(施行規則8条)には、除去工事により発生する廃棄物をどのように処理するのかに関 する事項を記載する個所は無い。これは、基本的にこの制度が建築行政に関する統計作成 を目的としたものであるためであり、建設部局が扱うものであって、産業廃棄物担当部局 は関わっていないからである。しかし、法律を一部改正し、この届出の中に除去工事の種 類(分別解体か、混合解体か)およびそれにかかる費用を記載するようにする処置は、そ

(10)

れほど難しくなく、実現可能性が高いものだと考えられる。実際に新築工事の部分に関し ては建築工事費予定額を記載する欄もあり、解体工事についてもこの記載欄を設ける形は 十分検討が可能であろう。

  では、行政が解体工事の種類やコストを把握できる体制ができたとしたら、現実的には どのようなインセンティブを発注者に与えることが可能なのだろうか。言い換えれば、ど のような経済的手法が可能なのであろうか。最初に税の軽減について、次に課徴金につい て考えてみたい。

  建築関係で利用できそうな税制度は2つある。市町村税である固定資産税と、都道府県 税である不動産取得税である。前者が毎年取られるものであるのに対して後者は不動産を 取得した年にだけ取られるものである。工事を対象としたいと考えているので、どちらか といえば不動産取得税のほうが適当であると思われる。しかしながら、結局はどちらにも 問題点がある。

  まず固定資産税であるが、これは税金の性質上の問題がある。固体資産税は、そもそも 土地、家屋などにかけられるものなのであるが、家屋(建築物)の場合、すでに建てられ たものについて自治大臣が定めた基準(固定資産評価基準)をもとに計算される。つまり、

工事の方法はもともと考慮されないのである。

不動産取得税には、性質上の問題は無いが算定方法上の問題がある。不動産取得税は固 定資産税をもとに評価されることになっている。したがって、不動産の購入価格や建築工 事費は考慮されないのである。固定資産税をもとに計算しているので、結局は工事は対象 とならないというわけである。ちなみに、不動産取得税には軽減条件があるが、それも自 治省によるものである。

次に、混合解体を行ったものへの課徴金について考えてみたい。この方法は、分別解体 に対して税軽減をするよりも導入が簡単であるかもしれない。なぜなら、おそらく、分別 解体か混合解体か、およびそのコストさえ分かれば可能だからである。税とは関係なくな るので、建設部局のみの扱いでよく、財政部局との縦割りを意識する必要は無くなる。実 現可能性の観点からすると、課徴金を課す手法の方が、税の軽減よりも有効であろう。前 述した建築工事届の情報をもとに、市町村の建築指導課が課徴金を取る形にすれば良いの である。

5.解体業者と委託契約のチェック

  ここまでくると、前述した①の問題の最重要課題は出口が見つかったことになる。しか も、この仕組みの中で解体工事がチェックされることになるので、②の問題も一部解決す る。ただし、まだ問題は残されている。

②の問題を先に片付けてしまうことにする。解体業者が優良であることが必要である。

つまり、解体工事業者のチェックが可能であること。適正なコストが負担されたとしても、

(11)

結果として不適正処理されない保証が無いわけではない。むしろ、混合解体よりも高い費 用が支払われているのだから、不適正処理してしまえば混合解体のときよりもさらにうま みがあることになる。よって、解体業者が優良であること、少なくとも分別解体が可能な 技術を保有している業者である必要があるといえる。 

これに対する処置としては、先ほど述べた解体工事については500万円以上でなくて はとび・土工業者の許可が要らないとなってしまっている点を改正することが最も実現可 能性が高いと考えられる。この500万円という基準を引き下げるかまたは削除すること により、解体工事に対して一定の技術を保有する業者が解体工事を請け負うことができる ようになる。 

次に、解体工事および解体工事に伴う廃棄物の処理についての契約の中で、適正な料金 の流れを作り、一括請負を無くしていかなければならない(①の残りの問題)。ここで、ま ず下の図を見てもらいたい。 

 

図表Ⅲ−2  解体工事および解体工事に伴う廃棄物の処理 

現状          今後 

                     

契約     支払い 

①:解体廃棄物の数量を積算し、適正な金額を確保する。②:数量・単位を記載した委託契約を運搬・処 分それぞれ直接締結し、直接支払いを実施する。③:元請と解体・積込みまでの請負契約を締結する。④:

数量・単位を記載した委託契約を元請と直接締結し、直接支払いを受ける。⑤:数量・単位を記載した委 託契約を元請と直接締結し、直接支払いを受ける。 

出所:「マンガで学ぶ  建設廃棄物とリサイクル」

    左の図が現在の契約のあり方、右の図が(社)建築業協会で推奨している契約のあり方 である。もう一度一括請負について説明しておくと、左の図では排出事業者は解体業者に 対してのみ料金を払っており、しかもその中での解体工事コストと廃棄物処理コストの内 訳は不明である。つまり、解体業者から収集運搬業者と処分業者に対して適正なコストが 支払われるかどうかは不明だったわけである。(株)クワバラ解体によれば、実際は元請け が収集運搬業者・処分業者を手配していない場合のほうが大多数であり、解体業者は自分

排出事業者 (元請)

排出事業者 (元請) 建設施行会社 

収集運搬会社

処分会社

建設施行会社

収集運搬会社

処分会社 一括支払い

請負契約

請負契約 収集運搬・処分費支払い

処分費支払い 収集運搬委託契

処分委託契約

処分委託契約 処分費支払い

収集運搬委託契 収集運搬費支払い 産業費用を除く支払い

①,②

(12)

たちで壊して出てきた廃棄物を自分たちのトラックに積み込んで持ち去り、自分たちの土 地に保管したり、野焼き・不法投棄などの不適正処理を行うケースが多いということであ った。解体業者は下請けであり、元請けではないので自社処理はできない。つまり、解体 業者が自分たちのトラックに積み込んで何らかの処置をとること事態が、違法な行為なの である。これがまかり通っているのが現状である。 

  こういった現状を改善し、右の図のような形にする必要がある。これについて参考にで きるのは、東京都によるもので、委託料金を契約書に明示して委託料金支払いも処理業者 に直接行うようにという指導である。都ではモデル契約書を作成し、その普及に努めてい る。また、委託処理という形式を考えた場合、マニフェストの利用も考えられる。解体工 事をする際には建築工事届を利用する形が望ましいことは先ほども述べたが、解体廃棄物 を適正に委託処理したことを確認するために、解体工事終了後にマニフェストのコピーを 提出するように排出事業者に義務付けるのも一案である。行政としては建築工事届で解体 工事をチェックしたあと、その工事での解体廃棄物の適正処理の確認をマニフェストのコ ピーで行うという形である。ただし、前者は建設部局の担当であり、後者は廃棄物部局の 担当であるので、両者の協力が必要とされるであろう。 

 

5.まとめ 

 

  ここまでの対策により、建築解体廃棄物の解体時の問題は大きく前進すると考えられる。

インセンティブの付与により発注者からは適正なコストが支払われ、それは適正な委託契 約の推進により、元請けから解体業者、収集運搬業者、中間処理業者へと適正に配分され る。建築工事届の変更により、解体工事の手法と料金はチェックされ、500万円という 基準を引き下げることにより解体業者の質もある程度保証される。このシステムが、大き な法改正を必要としないという点でおそらく現時点で最も実現可能性が高いのではないか と考えられる。 

                     

(13)

補論1:中間処理業者以降の処理について(2ページ後の図を参照) 

   

  ここまでで、少なくとも解体業者からの廃棄物が、排出事業者である元請けの手配によ り、収集運搬業者を通して中間処理業者まで適正なコストを伴って進んでいく道筋は確保 できる。しかし、問題が残っていないわけではない。建築解体廃棄物だけに関わらず、建 設副産物全体に対して言えることなのであるが、中間処理業者以降の道筋が確実ではない のである。中間処理業者は廃棄物を受け取ったあと、リサイクルのまわせる種々の物質(燃 料チップ用の木くずなど)を分別し、リサイクルへまわすわけだが、ここでどうしようも ないものがやはり廃棄物として残ってくる。これがいわゆる、中間処理後の残さ物である。

この残さ物の排出事業者にあたるのはもちろん中間処理業者であり、中間処理業者が責任 を持って自社処理するか、または収集運搬業者を通して最終処分場まで運んでもらうとい う委託処理を行わなければならない。ここで問題となってくるのが自社処理である。最終 処分費用が高騰している現在、自社処理という形が取られやすいことは想像に難くない。

しかし、自社処理と称して不法投棄を行う例は、不法投棄の最も多いパターンであるとさ れている(1997:北村論文)。 

  このように、排出事業者としての中間処理業者が不適正処理を行う可能性が否定できな いのである。これに対する対策は、現在、廃掃法の改正案の中に盛り込まれている。それ によると、この中間処理業者の残さ物の処理についても、もともとの排出事業者にあたる 元請けが責任を負うという形をとっている。具体的に説明すると、まず中間処理業者が委 託処理を行う場合、当然そこにもマニフェストが必要とされる。マニフェストは排出事業 者である中間処理業者から収集運搬業者、そして最終処分場までいって最後に最終処分場 から中間処理業者にD票が戻ってくる。改正案はこのD票をさらに中間処理業者がもとも との排出事業者である元請けに提出することを求めたものである。 

  確かに、D票の提出の必要性が法的に決まれば、必然的に中間処理業者は委託処理をし なければならなくなるので、不法投棄へつながりやすい自社処理への道は絶たれる。その 点での効果は大きい。しかしながら、マニフェスト制度の限界を考えると、その効果にも 疑問をもたざるを得なくなる。静脈産業では情報が伝わりにくく、また顔と顔とのつなが りが意味を持つ馴れ合い的な部分がある。排出事業者に対して、A票とD票をまとめて渡 してしまう例もあると聞く。マニフェストがまわっているからといって、物が適正に処理 されているという絶対的な保証は無いのである。 

中間処理業者が元請けに対してD票を渡さなければいけないといっても、例えばA票と D票をまとめて渡されているような中間処理業者でも、時間差をつけてD票を元請けに提 出すれば問題は無い。 

これに対しては、もともとこの改正案の土台となった「産業廃棄物処理の東京ルール」

を参考にしたい。東京ルールの中では、D票ではなく中間処理業者の、収集運搬業者・最

(14)

終処分場との委託契約書の確認という手法もとられている。中間処理業者が元請けに戻す マニフェストのD票に最終処分場の名前を書き込むという方法でも可とされているが、委 託契約書の確認というのが最も信用できる手法であると考えられる。また、元請けと中間 処理業者の間でモデル契約書を使用する際には、その中に最終処分場の名前を記入するこ とになっている。このように、委託契約書の確認によって中間処理後の残さ物の処理やそ の料金が明確にわかる方法を、改正案の中でとるべきであると考える。安易にマニフェス トに頼るのではなく、その他の方法の検討されてしかるべきである。これにより、中間処 理後の廃棄物の適正処理がより確実に保証されることになる。 

 

産業廃棄物処理についての図(月間廃棄物 2000.1 月号より・一部修正) 

(太い矢印が問題の部分。廃掃法改正案と東京ルールでは手法が異なる) 

                                                   

排出事業者

建設省

運搬業者

中間処理業者

運搬業者

最終処分業者

廃棄物 廃棄物 廃棄物 廃棄物

マニフェスト

マニフェスト

(15)

補論2:建設省による建設リサイクル法について 

   

  前述したように、現在国会では建設リサイクル法が審議中である。この詳しい内容につ いては、最後に添付してある3枚の概要を参考にしてほしい。今回の論文でわれわれが着 目した観点についても、発注者による事前届出や解体工事業者の登録など、内容的にもそ して手法的にも重なっている部分が多い。大きく違うのは、受注者(元請け)に対して分 別解体を義務付けしていることである。われわれは発注者に対してインセンティブを与え る方法を選択したわけだが、この選択の違いは法律そのものを新しく作るか、既存のシス テムの中でいかに有効な手段をとるかという選択から生まれた違いであるといえる。また、

今回われわれは着目しなかった部分についても、受注者に対して再資源化実施義務を課す などの新たな施策がとられており、静脈産業の発達を促すものであるといえる。ただ、再 資源化等に関しての情報の整備は整っているといえるが、廃棄物の部分に関しては触れら れていない。これは、廃棄物が厚生省の管轄であるからという理由からであるが、こうし た縦割りの状況で、社会的により低いコストでの廃棄物の処理および再資源化が進むかと いうのは、きわめて疑問である。さらに付け加えると、(株)クワバラ解体の桑原次男氏に よれば、不法投棄対策としては、廃棄物の運搬車両への許可番号の書き込み等を工夫する ことが有効な手段になりうるという。このためにもやはり、運輸省と厚生省のすり合わせ が必要となる。廃棄物行政を考えるにあたっては、こうした縦割りの壁を小さくしていく ことが重要であろう。 

                               

(16)

参考文献および図表の出典 

○「解体・リサイクル制度研究会報告」・・・1998:建設省リサイクルホームページ 

○「建築解体廃棄物リサイクルプログラム」 

・・・1999.10:建設省リサイクルホームページ 

○「建設廃棄物リサイクルの経済的側面」・・・2000:細田衛士 

○「循環型社会にふさわしい産業廃棄物対策を目指して」 

・・・1998.3:東京都産業廃棄物処理新体系検討委員会報告概要  東京都清掃局 

○「建設廃棄物を斬る」・・・1992:桑原一男・日報 

○「自社処理の現状と法的規制のあり方」・・・1997:北村喜宣・ジュリスト 1120 号 

○「産業廃棄物処理に関する東京都の新たな取組み」 

・・・1997:矢渕利裕・ジュリスト 1120 号 

○「東京都の 21 世紀の廃棄物対策」・・・2000:安樂進・月間廃棄物 1 月号 

○「建設業の廃棄物処理法Q&A−平成 9 年改正を中心として−」 

・・・1998:監修:厚生省水道環境部廃棄物法制研究会・大成出版社 

○「改訂版  建設副産物適正処理推進要綱の解説」 

・・・1999:監修:建設省建設経済局建設業課 

        :建設省建設経済局事業総括調整官室          :建設省住宅局住宅生産課 

     :編集:建設副産物リサイクル広報推進会議 

○「マンガで学ぶ  建設廃棄物とリサイクル」:1999 建設廃棄物を考える会・井上書院 

○「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律案について」・・・2000.3:建設省 

○「平成7年度建設副産物実態調査」・・・1997:建設省 

訪問先・質問先(TEL/FAX等)

○  建設省

○ (社)建築業協会

○ (株)クワバラ解体

○  東京都清掃局産業廃棄物課

○  東京都府中都税事務所

○  調布市財務部資産税課

○  調布市建築指導課

(17)

       

(18)
(19)

Referensi

Dokumen terkait

特 集 求められる廃棄物・リサイクル分野の気候変動適応策 特集 求められる廃棄物・リサイクル分野の気候変動適応策 『地方公共団体における廃棄物・ リサイクル分野の気候変動適応策ガイド ライン』の策定と今後の取組み 1.はじめに 近年、世界中で猛暑や大雨の増加や自然 生態系の変化等が観測されているが、この ような気候変動による影響が指摘される事

特 集 環境行政半世紀の「これまで」と「これから」 ~環境庁発足 50 周年・環境省設立 20 周年~ 土壌汚染対策法・廃棄物処理法における 法改正とその後 鏑かぶら 木ぎ 儀よし郎ろう 中間貯蔵・環境安全事業株式会社 参与・中間貯蔵事業部長 1.はじめに 本誌の環境行政半世紀のこれまでとこ れからを論じる本特集に、参加させてい

自治体レベルの 取組 地域ブロック レベルの取組 全国レベルの 取組 災害廃棄物処理のノウハウの蓄積・検証 国内の災害廃棄物取組状況の調査 廃棄物処理体制の整備(施設整備を含む) 全国規模の地域ブロック間の広域連携の推進 災害廃棄物処理に関する技術開発 災害廃棄物処理支援ネットワーク( D.Waste-Net )の整備 など

3 産業廃棄物・特別管理産業廃棄物等の処理実績報告書の記入要領 (別紙の「記入例」を参考にして記入方法を確認してください。) 1.提出の対象者 以下に該当する方が対象です。 ① 福島県内(福島市、郡山市、いわき市を含む)の事業場(建設工事等にあってはその現 場)における産業廃棄物の発生量が500t以上(福島市、郡山市、いわき市においては

食品廃棄物等のうち、可食部・不可食部の考え方について 1.基本的事項 食品リサイクル法第2条第2項にて規定された内容をもとに、「食品廃棄物等」のうち、可食部・不可食部 を以下のように整理しています。 可食部 食品ロス 仕入れた食材・食品、食材を加工・調理等してできた食品及び副次的に発生したもの

廃棄物エネルギーの利活用に係る先進的取組事例の紹介 仙台会場:川崎市「EVパッカー車への電力供給等廃棄物エネルギー高度利活用の取組について」 武蔵野市「廃棄物エネルギーの面的利用の推進について」 新潟会場:ふじみ衛生組合「災害時の備えも含めた廃棄物エネルギー利活用の取組について」 越谷市「今後の廃棄物エネルギー利活用の検討・計画について」

廃棄物エネルギーの利活用に係る推進の意義等について 東京会場:国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター長 大迫政浩氏 大阪会場:京都大学大学院 工学研究科教授 高岡昌輝氏 Ⅲ.. 廃棄物エネルギーの利活用に係る先進的取組事例の紹介 東京会場:北九州市「廃棄物発電を中心とした地域エネルギー事業の取組について」

はその様式に記載した内容のとおりとする。 ア 産業廃棄物の発生工程 イ 産業廃棄物の性状及び荷姿 ウ 腐敗、揮発等性状の変化に関する事項 エ 混合等により生ずる支障 オ 日本産業規格C0950号に規定する含有マークが付された廃製品の場合には、含 有マーク表示に関する事項 カ 石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含ま