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抗体医薬開発の新潮流 - J-Stage

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864 化学と生物 Vol. 54, No. 12, 2016

抗体医薬開発の新潮流

ベストインクラス抗体医薬の創薬と求められるマウスモデルの関係

「抗体医薬」の勢いはいまだ衰えず,ますます拡大の様 相を呈している.2014年の世界医薬品売上ランキングの 上位トップ10は抗体医薬が5品目を占めて,医薬品市場 の中心的存在となっている.日本発の抗体医薬も,中外 製薬のIL-6受容体抗体アクテムラはグローバル売上が 1,800億円に成長し,小野薬品が世界に先駆けて開発した PD-1抗体オプジーボは,非小細胞肺がんへの適用が認め られて将来4,000億円の売り上げに達すると見込まれ,さ らに協和発酵キリンのCCR4抗体ポテリジオは,このオプ ジーボとの2剤併用療法に関する開発提携契約を締結す るなど,世界市場での存在感を飛躍的に高めている.

これらの抗体医薬が臨床で成功した最も大きな要因 は,臨床効果に直結する標的抗原を見いだし,その抗体 の臨床開発という高いハードルをいち早くクリアできた ことにある.抗体医薬開発には,非常に大きな先行者

(ファーストインクラス)利益が伴っていたと言うこと ができる.しかし,抗体工学とその製造方法の進歩に伴 い,従来のネイティブタイプのヒト化IgG分子そのもの ではなく,進化した新しいプラットフォームの抗体医薬 が顕在化し,またオプジーボの成功に刺激されてさまざ まな免疫チェックポイント阻害抗体医薬の開発が精力的 に進められている(1)

.新しいプラットフォームにより既

存の抗体医薬と同じ抗原に対して活性を高めた抗体,副 作用を低減化した抗体,血中動態を変化させた抗体など が開発できるようになるため,抗体医薬の開発にもベス トインクラスの時代が訪れている.筆者が2015年12月 にサンディエゴで開催された抗体医薬の学術集会である Antibody Engineering & Therapeutics 2015に参加して 見聞きした情報(2)に沿って,これら進化する抗体医薬開 発の新しい潮流,およびその開発に求められるマウスモ デルの関係について概観する.

一つ目の新しい潮流は,抗体と低分子抗がん剤を適切 なリンカーを介して結合させた抗体‒薬物複合体(Anti- body‒Drug Conjugate; ADC) で あ る(3)

マ イ ロ タ ー グ,カドサイラ,アドセトリスの3剤がすでに上市され ており,40品以上のADCが臨床試験段階にある.低分 子抗がん剤と抗体医薬の良いところを併せ持ち,その世 界市場は2018年までにおよそ3,000億円以上に成長する

とされ,世界中から注目を集めている.今回の学術集会 でもADC開発が独立したセッションとして取り上げら れ,抗体のドラッグ結合部位,共有結合性リンカー,前 臨床,および臨床試験の成績などが議論された.ADC のメリットは,低分子抗がん剤を抗体と結合させて標的 特異性を高め,正常細胞への影響を限定できることにあ る.副作用のため単独では使用することができなかった 強力な薬剤を,ADCにより再び抗がん剤として 復活 させる可能性が広がることになった.さらに,ADCの リンカー部位,薬剤結合法にはいまだ多くの改善余地が 残されているため,抗体医薬の専門家である分子生物学 者よりむしろ,天然有機合成化学者たちの興奮が,会場 から非常によく伝わってきた.

2つ目の新しい潮流は,2つの異なる標的抗原に同時 に結合できる二重特異性抗体である.レモマブ,ブリン サイトの2剤がすでに上市されている.二重特異性抗体 のメリットは,例えば,がん細胞とエフェクター細胞,

あるいは2つの血液凝固因子に同時に結合して効果的に 接触させることで,抗腫瘍作用を増強させたり,血液凝 固因子の活性化を促すなど,全く新しい生物反応を誘起 することができる点にある.今回の学術集会では,

Novimmune社から発表された免疫チェックポイント阻 害活性をもつ二重特異性抗体が印象的であった.彼ら は,腫瘍抗原と腫瘍が過剰発現するCD47に同時に結合 する二重特異性抗体を投与すると,赤血球および血小板 のような正常細胞の傷害を避けて,特異的かつ安全に腫 瘍免疫応答を誘導することができると報告した.CD47 はNK細胞やマクロファージなどの自然免疫の細胞にブ レーキをかけるチェックポイント分子であり,むやみに 阻害してしまうと重篤な副作用が懸念されるため,この 方法はほかの多くの免疫チェックポイント阻害抗体の開 発にも応用できる優れた治療戦略で,非常に示唆に富む 発表であった.

もう一つの新しい潮流は,免疫チェックポイント阻害 抗体である.免疫チェックポイント阻害抗体とは,免疫 機能の攻撃力を高める従来のがんに対する抗体医薬と異 なり,がん細胞による免疫機能へのブレーキ(免疫 チェックポイント)を解除することで免疫細胞を活性化

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し,がん細胞を攻撃させる新たな抗体医薬である.先の 2つと異なり,これらはネイティブタイプのヒト化IgG 分子そのものを利用する抗体医薬であるが,その作用機 序が従来の抗体医薬とは全く異なっている.ヤーボイ,

キートルーダ,オプシーボの3剤がすでに上市されてお り,ヤーボイのグローバル売上は発売後3年目の2014年 には1,570億円に達した(ブリストル開示資料)

.これら

の標的であるCTLA-4, PD-1/PD-L1に加えて,TIM-3,  LAG3などの免疫チェックポイント阻害抗体や4-1BB,  ICOS, GITRなどの免疫チェックポイント活性化抗体な ど,世界では80社以上が400件を超える開発プロジェク トを走らせているとも言われる.

ところで,抗体医薬はヒトの標的抗原にのみ結合して 作用するため,動物実験によるインビボ評価がほとんど 実施されていない.上記のようなベストインクラスの抗 体医薬の効果を臨床試験で初めて実証するという,従来 の医薬品開発よりもリスクの高い開発を迫られている.

宿主の腫瘍免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻 害抗体は,当然のことながらヒトの腫瘍免疫のみを活性 化できるので,免疫不全マウスにヒト腫瘍組織を移植す るゼノグラフトモデルには全く歯がたたない.筆者ら は,抗体医薬のFab領域が結合する抗原分子とFc領域 が結合するFc

γ

受容体の両方をヒト化したマウス(「ヒ ト抗原マウス」)を開発している.200 kbにも達するマ ウスゲノムDNA配列の制御下でヒト遺伝子を発現させ

る組換えBACトランスジェニックマウス技術を利用す ることにより,ヒト抗原分子およびヒトFc

γ

受容体の組 織特異的発現を正確にマウスに再現させることができ る.そのため,このマウスに投与された抗体医薬がヒト 抗原を発現する標的細胞に結合し,やはりヒトFc

γ

受容 体を発現するNK細胞と結合して活性化させることがで きるため,抗体医薬の有効なインビボ評価方法となる

(図

1

.ヒトCD20遺伝子とヒトFc γ

受容体を発現する マウスを利用することにより,新規CD20抗体医薬であ るBM-caの でのB細胞除去効果がrituximabよ りも優れていることを見いだし,今回の学術集会で発表 した.このようなマウスを利用した アッセイに より,ベストインクラス抗体医薬の創薬,または既存抗 体医薬の新規適用の探索に大きなメリットを得ることが できる.今後は免疫チェックポイントなどのヒト抗原マ ウスをラインナップして抗体医薬のスクリーニングサー ビスを提供することにより,新薬メーカーの抗体医薬開 発のサポートしていきたい.

  1)  山口照英:国立医薬品食品衛生研究所報告,132,  36 

(2014).

  2)  M. Pauthner, J. Yeung, C. Ullman, J. Bakker, T. Wurch,  J.  M.  Reichert,  F.  Lund-Johansen,  A.  R.  Bradbury,  P.  J. 

Carter & J. P. Melis:  , 8, 617 (2016).

  3)  R.  V.  J.  Chari,  M.  L.  Miller  &  W.  C.  Widdison: 

53, 3796 (2014).

(塩田 明,株式会社特殊免疫研究所)

図1「ヒト抗原マウス」を利用した抗体医薬の アッセイ

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866 化学と生物 Vol. 54, No. 12, 2016 プロフィール

塩 田  明(Akira SHIOTA)

<略歴>1991年京都大学大学院農学研究 科修士課程修了/同年雪印乳業(株)生物科 学研究所/1996年米国ミネソタ大学医学 部訪問研究員/2003年(株)ワイエス研究 所研究室長/2006年(株)フェニックスバ イオ営業部長/2014年(株)特殊免疫研究 所取締役本部長,現在に至る<研究テーマ と抱負>応用ゲノム科学による抗体医薬開 発,リキッドバイオプシーによる診断方法 の確立など<趣味>庭いじり

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.864

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無駄な実験をしない合理的な創薬手法が主流となった現在でも,セレンディピティで薬の種を見つけることは可 能であると思っている.しかし,そのためには,いかに与えられたチャンスを逃さず,誰よりも早く拾い上げる 感性をもって創薬に臨むかが重要である.筆者のセレンディピティ創薬の成功例として,2017年に日本でも承認