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進むストリゴラクトンアゴニスト創製 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 8, 2012

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今日の話題

進むストリゴラクトンアゴニスト創製

科学的 実用的応用を目指した展開

薬と受容体の関係は,しばしば鍵と鍵穴の関係にたと えられる.鍵が鍵穴にぴったり合っていないと扉を開け ることができないように,薬もその受容体にぴったり 合っていなければ効果を示さない.薬と受容体の結合特 異性が高い場合,他の物質がその薬と同様の作用を示す ことは難しくなる.一方で薬と受容体の結合特異性が低 く,複数の類縁体が一つの受容体に結合して同様の作用 を示す場合や,また逆に一つの薬がいくつかの受容体に 作用する場合には,合成類縁体によりその作用を模倣し たり,また受容体に対する親和性を制御したりできる可 能性が高くなる.このような状況は,薬の場合だけでな く天然の植物生理活性物質と受容体の関係にも当てはま る.

ストリゴラクトン (SL) は,2008年に植物ホルモンと して枝分かれを制御することが報告された物質で,ラク トン環を含む縮合したABC環とエノールエーテルを介 して結合したラクトン環(D環)からなる四環性のアポ カロテノイドである(1, 2).この報告以前の2005年には,

SLが根共生菌の一種であるアーバスキュラー菌根菌

(AM菌)の菌糸分岐誘導物質であることも報告されて いるが(3),もともとSLは根寄生植物の種子発芽誘導物 質として発見された物質であったため(4),植物の生産す る物質が植物自身の体内で機能をもち,また他の生物と の間でのシグナル伝達物質としても作用することはSL 関連の研究者に驚きを与えた.植物ホルモンとしての機 能が発見されてから日が浅いために,植物体における SLの生合成経路や受容体,および情報伝達経路は未解 明部分が多く,SL機能の農業への応用という観点から も解明が期待されている.このような状況下,枝分かれ を制御する新しい植物化学調節剤としての応用だけでな く,植物におけるSL分子の受容メカニズムを明らかに するうえでSLの機能をまねるアゴニストや,機能を阻 害するアンタゴニストといった化合物の開発が期待され ている.そして,これら化合物の重要性という点では,

根寄生植物やAM菌における受容メカニズム解明研究 においても同様である.また,枝分かれ制御剤としてだ けでなく,天然型SLの合成に伴う困難さや安定性の問 題から,安価に合成でき,安定な実用的SLアゴニスト

の創製が望まれている側面もある.アフリカや中東アジ ア,地中海沿岸などでは,根寄生植物による作物への被 害が深刻であり,サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では根 寄生植物ストライガ (  spp.) による損失額が年間 100億ドルに上るとの試算もあるように,世界各地で重 要な農業上の問題となっている(5).このため,根寄生植 物の防除法の確立が望まれているが,ストライガの種子 は約0.2 〜0.3 mmと非常に小さく,いったん土壌に紛れ 込むと人の手で取り除くことは事実上不可能である.ま た,一度に作る種子の数も数万粒単位であるため,汚染 土壌の拡大も速く物理的な防除は困難となる.そこで,

有力な化学的防除法として期待されている方法の一つが 自殺発芽の誘導である.根寄生植物の種子は上記のよう に小さく,発芽しても宿主植物に寄生できなければやが て枯死してしまうため,宿主の存在なしに化学的に発芽 を誘導することで自殺を誘導することができる.この方 法の防除効率やコストの問題が解決すれば,実用的に有 効な手段になると考えられている.

ハマウツボ科の根寄生植物 の種子発芽誘 導物質として初めて発見されたSLであるstrigolは,そ の全合成が報告された後,根寄生植物の種子発芽誘導活 性を指標としてアナログ合成が行われた.現在,最も一 般的に利用されているSLアゴニストであるGR24はこ の当時開発された化合物であり,その後の多くのSLア ゴニストはこの構造を基にデザインされてきた.Ni- jimegen 1はGR24のラクトン環部分を開裂させたよう な部分構造をもち,実際に南ドイツの圃場でタバコに対 する寄生試験に用いられた.結果からいえば,Nijime- gen 1により自殺発芽が誘導され,タバコに対する寄生 率は低下しているが,土壌の浅い部分の種子のみが発芽 するにとどまっており,化合物処理による防除の難しさ がうかがえる(6).また,構造が簡略化された合成容易な アゴニストも開発され,ABC環の構築を必要としない テトラロンやインダノンを原料とするアゴニストも開発 された.このような多くのSLアゴニストが根寄生植物 の種子発芽誘導活性を指標に探索されてきたなか,われ われはSLのほかの生理作用の側面,すなわち植物地上 部の枝分かれ抑制活性を指標に化合物の活性評価を行

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い,合成簡便な新規SLアゴニスト(debranone型SLア ゴニスト)の創製に成功した(7).われわれの合成した化 合物は,フェノールとブロモブテノライドを縮合させる ことで容易に得られ,分子内にエノールエーテルをもた ないことが構造的な特徴である.この化合物の生理作用 を調べた結果,植物地上部の枝分かれは単子葉・双子葉 の区別なく抑制しGR24と比較しても強い作用を示した が,一方で根寄生植物 の発芽を誘導 するためには既存のSL類縁体と比較して高い濃度を必 要とすることがわかった.このことから,われわれの化 合物は対象とする生物種によって効果の強さが著しく異 なるSLアゴニストであり,生物種によるSL受容体また は受容機構の違いを示唆する結果になったと考えてい る.SLは植物,寄生植物,根共生菌の3つの生物種に 受容されており,それぞれの生物で受容体や受容機構が 同じである必然性はない.これまでも,根寄生植物の種 子発芽誘導作用には不活性であったdihydro-GR24の,4 つの立体異性体のうち,一つの異性体だけはAM菌の

菌糸分岐誘導活性を有することが報告されており,根寄 生植物とAM菌の間でも受容に関する差異が存在する であろうことが示唆されている(8).現在のところ,deb- ranone型SLアゴニストのAM菌菌糸分岐誘導活性は評 価できていないが, とイネを用いた 試験では,ベンゼン環上の置換基修飾によりそれぞれの 活性を4-Br debranoneの1/100 〜100倍程度の幅でコン トロールできることがわかっている.つまり,少なくと も根寄生植物の種子発芽誘導におけるSLに対する構造 要求性と,植物地上部の枝分かれ抑制における構造要求 性が異なるため,標的を指向した分子デザインが可能で あると考えられる結果が得られている.今後,SLの実 用化を考えた場合に様々な課題はあるが,GR24のよう にすべての生理作用に対して活性を示す化合物がある一 方で,標的選択的な化合物が創製できる可能性が示され たことは応用への大きな進展と考えている.また,これ までに化合物の側面から得られた知見が少なからず役立 ち,SL受容体や受容機構が遺伝学的な側面や分子生物 学的な側面からも明らかになっていくことを期待する.

  1)  V.  Gomez-Roldan,  S.  Fermas,  P. B.  Brewer,  V.  Puech- Pages, E. A. Dun  : , 455, 189 (2008).

  2)  M.  Umehara,  A.  Hanada,  S.  Yoshida,  K.  Akiyama,  T. 

Arite  : , 455, 195 (2008).

  3)  K.  Akiyama,  K.  Matsuzaki  &  H.  Hayashi : , 435,  824 (2005).

  4)  C. E. Cook, L. P. Whichard, B. Turner, M. E. Wall & G. H. 

Egley : , 154, 1189 (1966).

  5)  米山弘一,謝 肖男,米山香織:植物の生長調節,45,  83 

(2010).

  6)  B. Zwanenburg, A. S. Mwakaboko, A. Reizelman, G. Anil- kumar & D. Sethumdahavan : , 65, 478 

(2009).

  7)  K. Fukui, S. Ito, K. Ueno, S. Yamaguchi, J. Kyozuka & T. 

Asami : , 21, 4905 (2011).

  8)  K.  Akiyama,  S.  Ogasawara,  S.  Ito  &  H.  Hayashi : , 51, 1104 (2010).

(福井康祐,浅見忠男,東京大学大学院農学生命科学 研究科)

図1天然型 SL strigol SLアゴニスト

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